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■「私のお店」オーナーインタビュー


福元 陽子さん(co-fuque shop)

自分の人生。楽しくするのもしないのも、自分次第

福元 陽子さん
co-fuque shop
神戸・栄町通のレトロビルに入るオリジナルブランド&セレクトショップ「co-fuque shop(コフクショップ)」。元パタンナーの福元陽子さんがオープンしたお店です。

「お店を訪れた人に小さな幸福(小福)を持ち帰ってもらえるようなお店になれば」との願いが込められた店内には、思わず笑みがこぼれてしまうような、のほほんと、かわいらしい柄のテキスタイルでつくられた洋服やかばんなどが並んでいます。

「お店をするのも、ものづくりをするのも、楽しい」と話す福元さんですが、オンラインショップのみで展開していこうと、実店舗を閉店したことがありました。2002年にオープンしてから15年目の出来事です。一体、何があったのでしょうか? 実店舗を復活された理由とは?
自分が「楽しい」と思えることを仕事にしたい
以前は企業で事務職をされていたそうですね。
母が私の洋服を手づくりしてくれていたこともあって、私も物心がつく頃からいろいろなものをつくるようになっていました。

まずは編み物から。母に聞いたところによると、幼稚園の時には自分で自分のセーターを編んだこともあったそうです。中学生になると、ミシンを使えるようになり、ブラウスを縫うなど洋服をつくるようになりました。

夢が「パタンナー」になったのは、短大の家政科に通っている時のこと。

パタンナーが主人公の漫画を読んで、「デザイン画から服をつくるために型紙を起こす専門職だから技術力がなければできない仕事」「手に職をつけられる」と憧れ、めざすようになりました。

でも、パタンナーになるためには服飾の専門学校を卒業しなければならないとわかり、「まあ、いいか」とあっさり断念。それで一般企業に事務職で就職したんです。
一度は諦めた夢、再びめざすきっかけは?
いざ会社員として働き始め、朝8時40分に出勤して、夕方5時に退勤するという日々を送ると、「仕事をしている時間って、人生の大部分を占める時間」「このまま、この仕事でいいのかなあ。なんかもったいなくない?」という気持ちがふつふつとこみ上げてきました。

確かに堅実で安定している仕事だけれど、自分が心から楽しめているかといえば、そうではない。なんか、楽しくないぞって。自分が楽しいと思えることに時間を注げるほうが有意義なんじゃないのって。

入社わずか数カ月で、やっぱりパタンナーをめざそうと軌道修正したんです(笑)。

両親にはせっかく就職したばかりなのにもったいないと理解してもらえず、私自身もどこかでこの道に進んで後悔しないかどうか、自信を持ちきれず。会社を続けながら、夜間の専門学校に通い始めました。

1年ほど通う中で、「やっぱり、この道に進みたい」と思えたから。会社を辞めて学校に求人のあったアパレルメーカーに転職し、デザイナーのアシスタントからスタートしました。

卒業後は、そのままその会社でパタンナーとして働けることになったんです。
パタンナーの夢が叶ったんですね。「お店を持つ」という夢はいつから持っていたんですか?
自分が着たい洋服や持ちたいカバンを、趣味で自分のためにつくっていました。

中には、自分では着こなせないけれど、「こんなデザインの服をつくってみたい」というイメージがあって、誰かに着てもらえたらいいなあと思うようになったんです。 そこで、2000年から「co-fuque(小福)」というブランド名で、雑貨店に置かせてもらうようになりました。つくったものが売れていたので、「なんか、いけるんちゃうん?」とふわっと思ってしまったのが始まりです。

メーカーになることも考えたのですが、打たれ弱いので自分で営業に回れるほどの強い気持ちを持てず。それならば、自分で売ろうと「お店を持つ」ということに結びつきました。

昔からの知り合いのお姉さんがセレクトショップをしている2階にスペースが空いていて、カフェをしたい友人と一緒にやろうという話になったので、会社を辞めて2002年にお店をオープン。それから、今年で17年が経ちます。
スタッフを雇ったからこそできた経験
ご自身で製作されながら、実店舗の経営や接客をされています。どのようにバランスをとっていますか?
オープン直後から、両立する難しさを感じていました。

お客さまがいる時は製作できないので、営業時間が終わってから、日付が変わるまで残業するという日々。ただでさえ、私はつくるペースが遅いんです。

「このままのペースではシーズンが変わってしまうやん」という焦りもあって、お客さまとしゃべっている間も「早く製作しないと間に合わない」という思いに駆られるようになってしまったんです。

お客さまに「会いに行こう」「ちょっとしゃべりに行こう」と思ってもらえるようなお店になればと思っていたのに、これでは本末転倒。「このままではあかん!」という危機感から、スタッフを雇うことを決めました。

給料をちゃんと支払っていけるだろうかという不安はありました。でも、3年を迎えて、ある程度の見通しがついてきたので、思いきって決断したんです。
もともとは「つくることが好き」からのスタート。両立の難しさに直面した時、「製作だけ」に絞るとは考えなかったのでしょうか?
製作も接客も、楽しくて好きだったから、どちらか一方でとは思いませんでした。

そのどちらもがあったからこそ、「ここにしかないもの」という私のオリジナル商品がお店の強みになりましたし、接客する中でお客さまがほしいものや求めているものがわかるので製作にも活かせていたんです。

スタッフを雇ったことで、製作に取り掛かれる時間は増えたのですが、今度は「人を育てるのって難しい!」という新たな悩みが出てきました。以降、10年以上に渡って悩み続けます。
スタッフを育てる難しさ。具体的にどんなことに悩んだのですか?
自分1人で3年ほどお店をしてきたということもあり、お客さまとの距離感や気持ちをくみ取った対応など、私の中に「これが大事」「こうしたい」という接客の仕方がありました。

スタッフの接客を見て「もっとこうしてほしいんだけどなあ」「そこは違うんだけどなあ」と思ってしまったり、スタッフの人数が増えると「この人はこんな対応をしているけれど、この人は」などの違いが気になったり。

ロールプレイングやその場でのフォローなど、どうしたらわかってもらえるのかとさまざまな方法を試みるも、やっぱり「うーん」と思ってしまうことが積み重なって、次第に「スタッフを育てられない自分が悪い」と思い悩むようにもなりました。

また、スタッフに対しても、厳しいことを言った時もあったと思います。ある時、スタッフから「私も私なりに考えて接客しているんです」と言われて、はっとしました。

私のお店だからといって、私の想いだけでしていたらいけない。ちゃんと考えてやってくれているのだから、スタッフの気持ちや考えも大事にしないといけないんだって気づいたんです。
「スタッフの気持ちや考えも大事に」と気づいて、どうされたのですか?
私の想いや考えを押し付けるのではなく、スタッフからの意見を聞く機会として、月1回スタッフ全員で話し合う会議を開くようになりました。

正直、私にとっては「ん?」「それって、どうなん?」と疑問に思う意見や改善案が出たこともありましたが、それぞれが考えて出てきたものだから、最初から否定せず、ひとまずやってみようとさまざまなことに取り組みました。

お客さまにゆっくりとくつろいでもらうためにお茶を出すようになったのも、お店のチラシにオープンまでのエピソードを手紙のように手書きしたのも、主軸となるブランドと出会えたのも、スタッフからの発案です。

私だったら「お茶を出したら、お客さまに『何か買わなければならない』とプレッシャーを与えてしまうのでは」など思ってできなかったと思います。

自分1人でお店をしているとわからない、いろんな意見や視点、接客法を知れたことは、とてもいい経験でした。
「今、楽しくないぞ」を変化する目安に
2016年からスタッフを雇うのをやめて、お一人でされているそうですね。
妊娠・出産後も営業時間を変えずにお店を続けてこられたのは任せられるスタッフがいたからこそですが、その半面、「スタッフに任せっぱなし」という状態を私がよしとはできなかったんです。

長年お店をしていると、スタッフの入れ替わりもあります。これまでなら新しいスタッフが入れば、私自身が想いや接客の上で大事にしたいことを伝えられましたし、最初はつきっきりで教えられたのですが、出産後はその時間をあまり持てず。

また、製作しながらも営業時間中はずっとお店にいられたのですが、保育園の送り迎えがあるので途中で帰らなければならなくなり、私が不在の空白の時間ができてしまいました。入ってまもなくのスタッフがいたので、「ちゃんとできているだろうか?」と心配でたまらなかったんです。

お店に置いている商品はネットで買おうと思えば買えますし、むしろネットのほうが安く買えるこの時代。わざわざ「お店に行きたい」と思っていただけるのは、店主やスタッフの魅力、空間の居心地のよさがあればこそだと思っています。

その部分にこれまでは100%の力を注げていたのが、出産後のさまざまな制約の中で注げなくなってしまったから、もう実店舗を続けていくのは難しいのではないか。

自分がつくったものをオンラインショップで販売する形にしようと思い、2016年6月に実店舗を閉めました。
実店舗を一度、閉められていたんですね!
その3カ月後に軌道修正します(笑)。

オープンして15年ほど経っていましたが、知名度がなくて、オンラインショップだけではちょっと難しいぞというのがわかりました。

今、実店舗として開いているこの場所は倉庫として借りていた場所です。「実際に手に触れて着てみたい」という声をよく聞いていましたから、この倉庫を時々開けて、試着の機会をつくれたらと考えていたのでした。

お客さまにも「時々開けるかもしれない」と話していたから、その「時々開ける」頻度が多くなったという感じです。

今は実店舗を時々開けて、他の日は在宅で製作したりオンラインショップを運営したりしています。
再びパタンナーをめざした時といい、今回といい、「軌道修正」力がすごいですね!
「あの時に、ああすればよかった」と後悔するのは嫌なんです。「誰々がこう言ったから、こうした」と他人のせいにするのも嫌。全部、自分の責任。自分の人生を楽しくするのもしないのも、自分次第です。

「今、楽しくないぞ」と思ったら、「自分が楽しいと思えるためにはどうしたらいいのか」と考えて、小さなことも含めて、軌道修正してきました。

2016年に実店舗を一度閉めたのもそうです。「今、楽しくないぞ」とひっかかり、自分のお店の魅力や大事にしたいことを見つめ直し、「今できることはなんだろう?」と考えたからこその選択でした。

実店舗を復活したのも、販売において厳しい現実に直面し、そもそもお客さまとおしゃべりしている時間も好きだったから「なんか違うぞ」とひっかかり、「じゃあ、どうすれば、自分は楽しい?」「今、何ができる?」と考えたのが、今の形です。
近い未来、お仕事で実現したいことは何ですか?
「営業日時をもう少し増やせたらいいなあ」「レザーアイテムのワークショップもやってみたい」「衣食住にまつわるイベントを開催したいなあ」など、やってみたいことはいろいろあります。

やってみたいことの1つだった「ワークショップ」を昨年から2カ月に1回ペースで開催しています。「これをつくる」という1つの目標に向かって、一緒に過ごすことによって、お客さまとの距離がぐっと縮まりました。

週2日だけのオープンだからこそ、つくることのできた時間です。欲張らずにその時々にできることをしていきたいと思っています。
profile
福元 陽子さん
短期大学の家政科を卒業後、シンクタンク系の企業で事務職として勤務。就職後まもなく、仕事をしながら、夜間の専門学校に通い始める。その1年後に会社を退職し、アパレルメーカーに転職。当初はデザイナーのアシスタントを務めていたが、専門学校卒業と同時にパタンナーを務めるようになる。2000年にオリジナルブランド「co-fuque」を立ち上げ、雑貨店にハンドメイドの洋服やかばんを置くようになる。2002年に「co-fuque shop」をオープン。神戸・栄町内で移転したり、実店舗を一時閉店したりしながらも、現在に至る。
co-fuque shop
HP: http://too.main.jp/co-fuque/
BLOG: https://ameblo.jp/co-fuque
FB: cofuque.shop
(取材:2019年3月)
editor's note
今楽しいか、どうか。楽しくなければ、どうすればいいのか。考えて、行動を起こす。「現在進行形の『自分の想いや気持ち』」に素直な生き方だと思います。

分岐点では自分の意志を強く持って「この道だ」と選択できたとしても、その先「やっぱり違うのかも」と気づいた時、すぐには引き返せないことが、私にはあります。

なぜ引き返せないのか。「こう言って始めたのだからやめにくい」「途中でやめたら、恥ずかしい」という虚栄心や現実逃避が根本にあったのではないかなあ。一体、誰のため、何のためにそうしていたのだろうと、福元さんのお話を聞きながら、はっとしました。

福元さんは「違うかも」と思ったら、「次、どうするのか」とすぐに考えて行動しています。「どんな人生になっても自分の責任」という覚悟と、「自分の人生を楽しむ」ための努力や挑戦を惜しまない姿勢の表れではないでしょうか。

その積み重ねが、「あの時、こうしていれば」「あの時、ああしていれば」という人生の後悔ポイントを減らし、「どうしたら、楽しくなる?」という試行錯誤は失敗さえも「失敗ではなく、途中経過」に塗り替えてしまっているように思います。

だから、今を存分に生き、前を向いていられる生き方につながっているのだろうなあと思いました。
小森 利絵
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP: 『えんを描く』

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