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■関西ウーマンインタビュー(お店オーナー)


トノイケミキさん(「雑貨店おやつ」店主)

トノイケミキさん(『雑貨店おやつ』店主)
ディスプレイ会社に8年間勤務し、退職後2002年に大阪市北区に雑貨店をオープン。出産を機に大阪の店舗を辞めてネットショップに転換。『雑貨店おやつ』を立ち上げる。2008年より再び自宅の一角にて期間限定の実店舗をスタート、2011年には京都・桂で常設店舗をオープンする。著書に『カナリヤ手帖―ちいさな雑貨屋さんのつくり方』(西日本出版社)、『はじめまして京都』(宮下亜紀共著/ピエ・ブックス)がある。

雑貨店おやつ
京都市西京区桂野里町10-9 TEL:075-204-6023
営業時間:11:00~18:00、金のみ11:00~20:00 定休日:木・日
HP:http://www.o-ya-tsu.com/
FB https://www.facebook.com/oyatsudaisuki
「雑貨店おやつ」という名前はとてもかわいいですね。お店もかわいい雑貨があふれています。
雑貨って、「生活にあったら便利」「どうしても生きるために必要な道具」ではなく、いわば主食ではなくおやつのようなものですよね。無くても生きていけるけれど、あれば「日々の楽しみ」「ごほうび」「心の栄養」となります。雑貨もおやつと一緒だなと思ってこの名前にしました。作った人の顔が思い浮かぶ雑貨や、おいしい手作りの焼き菓子、無添加のジャムなどを販売しています。
最初は大阪でお店をされていたそうですが、お店を始められたきっかけは?
ディスプレイ会社に勤務していた頃、新商品の企画開発や、百貨店のショーウィンドウのデコレーター、ショップのディスプレイデザインの営業をしていました。デコレーターの仕事では、洋服よりも雑貨を並べているほうが楽しかったですし、ディスプレイの知識も営業としての経験もあったので、「このいろんな経験を活かせるのは、雑貨店を開くことだ!」とひらめいたんです。

保険制度が変わることを機に、とりあえず会社を辞めて、それからいろいろ考えようと思っていたのですが、偶然に雑貨店を開くという知人に出会い、オープンを手伝ったことで私の世界が変わりました。「私もできそうだな」と思い込み、なりゆきで会社の元同僚と一緒に大阪で雑貨店をオープンしたんです。
ご出産を機にネットショップに転換されましたが、その後再び実店舗をオープンされました。
それはなぜですか?
出産を控え、大阪のお店を辞めましたが、これまでずっと仕事を続けてきたので、自分の人生の中に仕事が無くなるなんて考えられなくて、出産後すぐに仕事復帰できるよう、ネットショップ『雑貨店おやつ』のサイトを立ち上げました。

当時は「実店舗がネット上になるだけ」と考えていましたが、実際にやってみると、これは別の職種だ、と思うくらい全然違っていたんです。 お店をしていた頃、お客さんや作家さんとのコミュニケーションを大切にしていましたし、私自身、それが得意でもありました。ネットショップは雑誌を作るような感覚。商品を売るという目的も、扱う商品も同じだけど、これまでの私の経験や特性がまったく活かされないと感じたんです。

そこで、やはり実店舗がしたいと思うようになり、実家の一角で期間限定のお店から始めました。まだ1歳児の子育て中だったので、3日間から始めて、1週間、1ヶ月間と、様子を見ながら期間と店の面積を少しずつ拡大していって。そうして3年後、子どもも4歳になり、ネットショップは常連のお客さんがいたのでそのまま営業しつつ、桂で常設の実店舗をオープンすることにしたんです。
なぜ住宅街の桂を選ばれたのですか?
一般的にお店をするなら、商業地や店舗がたくさんある地域を選ぶ方が多いと思いますが、私の場合、子育てをしながら、また将来は親の介護も必要になるかもしれない、という自分の状況を考え、「ここなら」と思ったのがこの場所でした。

ここは商業地でもないですし、お店がたくさんあるわけでもない住宅街ですから、集客にはいつも苦労しています。「誰かお知り合いがいたの?」とよく聞かれますが、まったく何のゆかりもありません。だからこそ、「こうしたらこうなる」ということがまったく通じないんだと改めて感じ、視点を変えるきっかけになりました。
視点を変えるとは?
私が最初のお店を始めた14年前と比べると、今は雑貨業界自体も変化していて、大型商業施設で手作り雑貨市が開催されたり、ネット上で誰もが気軽に出品できるサイトが登場したり、雑貨をただ売り買いするだけなら、そういうところで充分な時代になりました。

そんな状況下では、以前は「これができた」「これもできた」ということが、今では「これができない」「これもできない」と続いてしまい、今だからこそできることも多くなっているはずなのに、できないことにクローズアップしてしまう。このまま「以前はこうだった」に捉われすぎていると、そこまでしかないと気づいたんです。

これまでの経験をいったんゼロにするということは、勇気と覚悟が必要ですが、住宅街でお店をオープンしたことも、子育てを経験したことも、今の自分の状況や環境。その「今」だからこそできることをやろうという視点に変わりました。

 
「今」だからこそできることとはどんなことから始めましたか?
まず、地元の方たちに紹介してもらって、パン屋さんや眼鏡屋さん、お風呂屋さんまで、あちらこちらに挨拶に行きました。行く先々でもどんどんつながって、今度は向こうからお店に来てくれるように。昨年は地域の人たちと『桂ヴィレッジフェス』というイベントも開催しましたが、志が高く地域の活性化に取り組んでいる皆さんの姿を見て、私の価値観はすっかり変わりました。かつての、「縁もゆかりもない、商業地でもない、お店も少ない街、桂」というイメージから「素晴らしい街、桂」になりました(笑)

商業地などお店がたくさんある地域だと、「店」という点と点だけで繋がってしまい、どうしても感性が似ているお店同士のつきあいなってしまいがちです。でもここではお店も少ないし、感性が似ているところを探そうにも多くありません。だからこそ、多彩なジャンルのお店、さまざまな感性の人たちと地域全体でつながって「面」になることができます。

「地域」というと漠然としているようですが、結局は人と人とのつながり。パン屋さんや眼鏡屋さんとコラボでイベントをしたり、それぞれの得意なことをお願いし合ったり。それがすごくおもしろい!今まで、なんて狭い世界で生きてきたんだろうと思うほどです。もちろん利益は大切だけど、「利益にならないからやらない」ではなくて、できることは全部やってみようと思うようになりました。
これからどんな展望を思い描いていますか?
お客さまともっと深くお付き合いしたいんです。ただ単にレジでお金をやりとりをするのではなく、もっとじっくりとその人の人生につき合っていきたい。場所と空間を提供したり、じっくり取り組む講座を開催したり、自分企画で自分が講師となってできることをしたり。商品の提案だけではなく、ものの考え方やとらえ方、日々をもっとこころ豊かに暮らす提案をしたいと考えています。
トノイケさんの著書『ちいさな雑貨屋さんのつくり方』がありますが、
お店をしたい方に向けてメッセージをお願いします。
「こうでなければいけない」なんて無いので、常に時代の変化に合わせ、自分の中の使い慣れたアプリケーションを入れ替えていく「覚悟」も必要です。

山の頂点を変えずに行くなら、そこには何通りも道がある、ということを知ってほしいですね。それとも、その道が好きで、その道しかないと思うなら、登る山を変えることも必要かなと思います。
ありがとうございました。
(取材:2016年4月) 
「できない」と思うことはあります。その「できない」の中には、これまでの経験や誰かと比較して、そう思ってしまっていることもあるなあと、トノイケさんからのお話をうかがいながら考えました。今の自分のことを知らないからこそ、何かと比較して「できない」と思ってしまう・・・。そうすると、可能性を狭めてしまうので、「今の自分ならどんなことならできるか」という視点を持つことが大切だと思いました。
取材:小森利絵
ライター/HP:『えんを描く』
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。


 

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