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■関西ウーマンインタビュー(お店オーナー)


福本 昌代さん(雑貨店&カフェ『Dent-de-lion』店主)

 
福本 昌代さん(雑貨店&カフェ『Dent-de-lion』店主)
短大卒業後、バンタンデザイン研究所東京校にて、スタイリングやディスプレイ、買付、店舗運営など雑貨に関わる仕事について学ぶ。その後、雑貨メーカーにて4年勤めたのち、2001年に大阪・南堀江で雑貨店『Dent-de-lion』をオープン。2015年には兵庫県尼崎市に移転して、新たにカフェスペースを設けた。自身も作り手としてオーダーバッグを受注・製作している。
Dent-de-lion(ダン ドゥ リオン)
尼崎市東難波町2-4-17 TEL:06-7164-3482
営業時間:11:00~19:00、日曜~18:00/定休日:不定休 HP: http://dent-de-lion.biz/
FB: https://www.facebook.com/Dentdelion2001 BLOG: http://ddl2001.jugem.jp/
兵庫県尼崎市の住宅地にある築65年の古民家を改装した雑貨店&カフェ『Dent-de-lion』。バッグやアクセサリー、洋服、帽子、器、紙もの、インテリアなど、日々の暮らしが楽しくなるような出会い&発見のあるお店です。2001年に大阪・南堀江でオープンしてから今年で15周年。実は10年目の時に「お店を辞めようか」と悩んだ時期があったと言います。10年目にして直面した “継続していく難しさ”とは何だったのでしょうか。
目の前の、一つひとつの出会いがつながって
もともとは服飾関係のお仕事をめざしていたそうですね。
小学生の頃から巾着袋を手作りして友だちにプレゼントするほど手作りすることが大好きでした。将来は服飾関係のお仕事をしたいと、短大では洋裁・和裁の勉強を。でも、アルバイト先の雑貨店でお店の商品セレクトやワンコーナー企画を任してもらううち、雑貨のお仕事にやりがいを感じ、どっぷりはまってしまったんです。
その後、どのようにして雑貨店をオープンされたんですか?
短大卒業後、当時はまだ関西に雑貨の専門学校はありませんでしたから東京へ。1年半ほど寮生活を送りながら、スタイリングやディスプレイ、買付、店舗運営など雑貨に関するさまざまな仕事について実践を交えながら学びました。その後、関西に戻り、雑貨店オープンを夢見て雑貨メーカーに就職したんです。

プライベートでは、フリーマーケットで自分の手作り雑貨を販売するほか、作家としてお店に商品を置いてもらっていたことも。すると、作家さんとのつながりができてきて、その人たちが「こんな人がいるよ」と紹介してくれる。「いつか、雑貨店をオープンできたら」と漠然と思っていたのが、お店を内装してくれる人や作品を置いてくれる人がすでに私のまわりにいて、出会った人たちが私の夢を知って「お店をオープンするなら協力できるよ」と声をかけてくれる。みんなに、ぽんっと背中を押された感じで、お店をオープンしたんです。
ご自身も手作りすることが好きということで、アトリエ兼雑貨店にされたんでしょうか?
確かに、手作りすることが好きだし、作家として活動していた時期もありますが、人とお話するのが好きなので、お店というあり方が私のやりたいこと。販売に徹したいと、当初は作家さんの雑貨だけで店内を構成していました。

でも、オープンまもない頃は、お客様が来ないという日もありましたから、店頭でポーチなど簡単なものを作っていたことがあったんです。それを見たお客様から「もっとサイズが小さければ」といった声をいただき、リクエストに応えるようになりました。そのお客様からご友人へと口コミで広がり、リクエストが増えてきたので、今のようにオーダーでバッグづくりをお受けするようになったんです。

 
10年目に直面した“継続していく難しさ”
今年で15周年。これまで、どんな壁や悩みがありましたか?
今でも壁にぶつかることばかりなんですが、一番大きな壁は10年目にして感じた“継続していく難しさ”です。3年目の時は「5年目まで頑張ろう!」、5年目の時は「7年目まで頑張ろう!」と、先の目標を立てられていたのが、急に見えなくなってしまいました。

店内企画も、あれほど次から次へとアイデアが湧いてきていたのに何も思い浮かばない。自分の気持ちもグンと下がっていきました。「お店を辞めたほうがいいのかな」と思いながらも、閉店という道も決断できず、もんもんと3年くらい悩み続けていたんです。
何かきっかけや原因はあったのでしょうか?
これという原因は思い当たりません。たぶん、お店を10年続けていると、時代も、環境も、私自身も、変わりますから、積もり積もったものがあったのではないでしょうか。

大量生産品を安価で販売する雑貨店が増え、お店の商品を見たお客様から「高い!」という反応が返ってくる。お店がちょこちょこある程度だった南堀江も、ファッション系のお店が増え、流行に敏感な人たちが訪れるようになる。

作家さんと出会うのも大変だったのに、今ではインターネットが普及して、誰もが名前を検索すればたどりつける。私がお店を始めた頃とはずいぶん変わりました。大量生産品、安価で販売、流行・・・私は「これからどうしていったらいいのだろう?」とわからなくなったんだと思います。
その壁や悩みを乗り越えるために、どんなことをしましたか?
先のことを考えても、何も思い浮かばず、「何か見つけなきゃ!」と気持ちだけが焦るばかり。「他のお店はこんなことをしているのに・・・」と他店と比較して、できていないことを責めたり。どんなに悩んでも考えても答えが出ないので、とりあえず目の前のやるべきことを必死にやろうと思いました。

日々の接客、作家さんとのやりとり、企画展・百貨店でのイベント進行と、一つひとつクリアしていると、不思議なのですが、自分の気持ちがどんどん前向きになってきたんです。それから、自分を褒めてみるということもしました。
“自分を褒めてみる”とは?
知人から「自分をもっと褒めてね」と、アドバイスもらって気づいたんですが、私はいつも「こんなに弱気だからあかん!」「もっとこんなふうにできたんじゃないか」と自分を責めてばかりいたんです。

たとえば、1日のスケジュールでやろうと思っていたことができていないと、「あれができていない」「これもできていない」とできていないことばかりに注目して、自分に「いーっ!!」となっていました。

そんな毎日では、しんどくなってしまいますよね。だから、小さなことでも、今日やると決めたことが一つでもできたなら、「よくできたね!お疲れ様」と自分に言ってから寝るように。すると、だんだんと気持ちが楽になっていったんです。
“目の前のことに必死になる”と“自分を褒めてみる”ことがよかったんですね。
目の前の一つひとつをこなすことが、ささやかでも経験となり、その自分を認めることで自信へとつながっていきました。「自分にできるかな?」「大丈夫かな?」と漠然と不安だったことが「できるんじゃない?」「大丈夫!」という前向きな気持ちとなって、「やってみよう!」というエネルギーに変わっていくのだと思いました。

 
立派な大木ではなく、しなやかな柳のように
壁を乗り越えたからこそ、わかったことはありますか?
継続するためには、ゆらゆらとした柳のような柔軟性を持つことが大切だと思いました。女性一人でお店をするということで気を張っていた部分もあるし、気づかぬうちに「こうあるべき」「こうじゃなきゃいけない」とこだわりができていて、凝り固まっていたんです。

思い返せば、お店を立ち上げた時もオーダーバッグを始めた時もそうでした。自分から「やるぞ!」と決めて始めたわけではなくて、自分の想いも大切にしながらも、いろんな人と出会って、その人たちの声に耳を傾けて、背中を押されたからこそだったんです。そういうふうに、何事も「こうあるべき」と決めつけず、こだわりすぎず、柔軟でありたいと思うようになりました。
2015年に大阪・南堀江から尼崎市へお店を移転されました。移転もいい影響になりましたか?
尼崎市に移転してきて、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層のお客様が訪れ、いろんなお話をしてくださるので、興味やアイデアに刺激を受けることが多いんです。

長年、ファッション系の作品展や展示会をメインとしていましたが、もっと暮らしのなかで「こんなことができるんだ!」とお客様の想像力をかきたてられるようなことをしたいと、食べ物を絡めた展示をしたり、アーティストを招いて演奏会をしたり、楽器をつくるワークショップを開催したりと、さまざまなことをやってみるようになりました。この場所ならお客様の年齢層も幅広いですし、一軒家でお庭もあるから植物を絡めたイベントもできるなあと、更に発想が自由になりましたね。
新たにカフェスペースを設けられ、それもよかったそうですね。
実は当初カフェスペースを設けるつもりはなかったんです。南堀江時代からお世話になっているお店の内装を手伝ってくださった方が「ここまでお客様に来てもらうのに、カフェがなかったら厳しいのでは?」と。カフェ経験がないので不安はあったのですが、あれよあれよという間に、カフェスペース付きの図面を引いてくださって(笑)、カフェをやってしまったんです。

カフェスペースがあることで、お客様の滞在時間が長くなるので、会話できることが増えました。作家さんについてお話したり、企画展のヒントをもらったり、自分の想いや考えていることもしゃべることで引き出されるものがあっておもしろい!
近い将来、実現したいことを教えてください。
お庭を活かした植物の講座やリースづくり、あと料理教室もしてみたい!お客様との会話を大切に、ヒントをもらいながら、この場所でいろんなことができたらいいなあって思っています。今は、お店をオープンした頃のように、いろんなことをしてみたくて仕方ないんです。
ありがとうございました。
取材:2016年7月
1年、3年、5年・・・と続けるのも大変ですが、何年・何十年と続ければ安定するものではなく、続ければ続けるほどに“継続していく難しさ”に直面するのだと思いました。時代も、環境も、ニーズも、自分自身も変化していくものだから。その時々に、どう向き合い、何を選択していくのか。これはお店を営む人に限らず、生きていれば、誰もが直面することですね。

そういえば、学生時代に「生きることは、大海原で航海しているようなものだから、自分で羅針盤をつくっておくことが大事」とアドバイスをもらったことがあります。大きな海を航海しているようなくらい不安定で、何も確かなものはないから、自分の経験や想いをもとにつくった羅針盤だけが頼り。方向を見失ったとしても、あるかどうかわからない遠くの何かを探すのではなくて、福本さんのように、まずは目の前の一つひとつのことに取り組んでみる。そうすれば、取り戻せる感覚や、ささやかでも小さな経験を積み重ねることで自信を取り戻していけるのだと思いました。
取材:小森利絵
ライター/HP:『えんを描く』
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。



 

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