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■「私のお店」オーナーインタビュー


八津谷 恵美さん(『JAM POT』『ギニョール』店主)

「好き」は自分と共に変わっていく。
いつも異世界にいるような、ワクワク感に包まれていたい。

八津谷 恵美さん
(『JAM POT』『ギニョール』店主)
真っ白な扉を開けた瞬間、ぱあぁっと広がる、かわいくて、美しくて、きらきらとした世界。

小さなお花を閉じ込めた押し花のリング、すずらんをモチーフにしたピアス、歌声が美しい小鳥が暮らしていそうな鳥かごのペンダント、どこかさびしげなところが愛らしい犬のぬいぐるみ、海外ヴィンテージ古切手を飾りにしたヘアゴム・・・など、『JAM POT』は店主の八津谷恵美さんの「好き!」がぎゅっと詰まった宝石箱のようです。

「かわいいものに囲まれて仕事ができたら、どんなにいいだろう」と、お店を始めて13年。歳月とともに、取り巻く環境や状況はもちろん、八津谷さん自身の「好き」という気持ちが変わり、それが『JAM POT』を続けていく上での壁になったと言います。

「好き」という気持ちの変化とは? どのような壁として立ちはだかったのでしょうか。
かわいいものに囲まれる幸せ
どうして、雑貨のお仕事をしようと思われたのですか?
雑貨の魅力に目覚めたのは大学時代。先輩の家に遊びに行ったら、はじめて見るようなかわいいインテリア小物や食器などで部屋が飾り付けられていて、衝撃を受けました。

それからは暇さえあれば、雑貨屋さんを巡るように。お店に一歩入ると、まるで外国にいるような空間が広がっていて、「こんな世界があるのか」とすっかり魅了されてしまったんです。

雑貨屋さんでお気に入りの雑貨を見つけては買って、家の押入れの一角に飾り付けていました。

実家は昔ながらの土壁で、部屋全体はどうにもかわいらしくならないので、押入れに布を貼って、雑貨コーナーをつくり、照明でライトアップするなどして楽しんでいたんです。

「かわいいものに囲まれて暮らせたら、毎日すごく幸せだろうなあ」という妄想が、すべてのはじまりでした。
雑貨の魅力に目覚めるものの、大学卒業後はアパレル会社に就職されています。すぐに「雑貨のお仕事を」とはならなかったのですか?
当時は「雑貨を仕事にする」という発想がなく、就職情報を探す中で、その世界に近いと思えたアパレル会社に就職してしまったんです。

でも、入社して半年が経ち、「これは私がしたいことなのだろうか」と悶々としていたところ、職場でたまたま雑貨の専門誌を見つけました。

仕事や学校情報が掲載されていて、「この道しかない!」と。「自分が好きなものに囲まれて仕事できたら、なんて楽しいんだろう」と、さらに妄想が広がっていったんです。

最初から「自分のお店をやろう」とは考えていなくて、ディスプレイするのが好きだったので、雑貨のスタイリストをめざしました。

専門学校に通い、在学中に事務所にも所属しましたが、先生であり事務所の代表から「あなたはスタイリストに向いていないから、他の道に進んでは?」と。

ショックでしたが、自分でもショップ運営のほうに心惹かれていることに気づいて、憧れの雑貨店でアルバイトを始めました。

働けば働くほどに、「自分だったら、こうディスプレイするのに」という想いが募り、ついには自分でお店を開くことにしたんです。
フランス雑貨と手づくり雑貨のお店にした理由は?
お店を開こうと考え始めた頃、個人が営む雑貨屋さんが増えてきていました。店主さんにお話をうかがうとフランスで買い付けているとのこと。

確かにフランス映画で登場する家具や雑貨はかわいいものばかり。「フランスに行けば、かわいいものがあるのでは!」と思い立って、フランスに行ったら妄想以上でした。

蚤の市にはかわいいものがたくさんあって、「すごい世界がある!」とまたまた衝撃。 こういうふうに買い付けられるのなら、お店ができると思いました。

私がフランスで受けた衝撃をお店というカタチで再現して、お客様に「わくわくする」気持ちを感じてもらえたらいいなあ、と。

作家さんがつくるかわいい手づくり雑貨も好きだったので、その両方で展開することにしたんです。
10年経ってから見つめ直した自分の気持ち
これまでにどんな「壁」または「悩み」を経験されましたか?
歳月とともに、取り巻く環境や状況はもちろん、自分が好きなものも変わっていました。

その変化に合わせて、姉妹店として『ギニョール』をオープン。『JAM POT』では作家さんによるかわいい手づくり雑貨を、『ギニョール』ではフランスで買い付けた雑貨と作家さんによる個性的でシュールな作品を取り扱うことにしたんです。

でも、自分の中で『ギニョール』の世界観が好きという気持ちのほうが膨らんでいき、『JAM POT』では何をめざしたらいいんだろうと迷いが・・・。

客層も若くなっていて、「お母さんが好きそう」と言われることもあったので、「このままではだめなのかな」と時代に取り残され、まるで浦島太郎状態になっているような気もしてきました。

オープンから10年。「このままでいいのだろうか?」「『JAM POT』はいったん閉店して、新たに1からやったほうがいいのではないか」と悩み、迷い始めたんです。
その悩みや迷いをどのように解消されたのですか?
自分が好きなものは何だろう、そこから見つめ直すことにしました。

どんなお店に行った時に自分が一番わくわくするかなと思って、関西や関東にある雑貨店、骨董屋、ギャラリー、カフェなど気になるお店や展示、イベントに足を運ぶことにしたんです。

それぞれの世界観を体験し、自分のお店に足りないものは何かを研究しました。そうしたら、なんとなく「こんな世界観をつくったら、自分もわくわくするかな」というものがぼんやりと見えてきたんです。

『ギニョール』は2年目から夫が担当していて、よりユーモラスで少し不気味な・・・色でたとえるならダーク寄りになっていたので、私は『JAM POT』で白い『ギニョール』のような世界観をつくれたらいいのではないかな、と。

美しく、幻想的なものもありながら、ほっこりする、かわいいものもある。どちらも好きだから、その両方が私には必要だと改めて思えたんです。
その後、どのように世界観をつくっていかれたのですか?
お店も什器もオープン当時のままだったので、それが一番の課題だと思いました。同じ品物でも、什器やディスプレイの仕方で全然違ってくるからです。

まずは什器やディスプレイの備品を新しいものに入れ替えることから始めようと。お店が狭いので一気に入れ替えることはできないので、イベントのたびに新しいものに交換していきました。

これまでのナチュラル、カントリーテイストの雰囲気から、白い洋館のイメージに。アンティーク風の白い什器やガラスのショーケースを置くようにしました。

1年かけて9割ほど入れ替えが済み、今後は床や壁のペンキも塗り直す予定です。 従来のかわいいイメージから、美しく洗練されたイメージへと移行しつつあります。そこに自分がいるのを想像したら、楽しい気持ちになりました。
「そこに自分がいるのを想像したら、楽しい気持ちに」、いいですね!
自分がどんな空間にいるのかは大切です。夫は『ギニョール』担当として、自分が好きなものを買い付け、好きなものに囲まれているので、お店に住みたいくらい大好きと言います。

私も『JAM POT』が大好きでしたが、迷いがありました。什器は昔のままだし、「もっとこうしたい」という気持ちはあっても相当なパワーが必要だから、いつしか妥協していたことに気づいたんです。

「今までの10年より、これからお店にいる時間のほうが長いから、自分が好きと思えるものに囲まれていたほうがいいよ」という夫の一言に後押しされました。

すると、お客様にも伝わるんです。お店を見て「明るくなりましたね」「きれいになりましたね」と言っていただけるように。

自分自身も以前は「本当はこうしたいのに」という気持ちが「このままでいいのか」という自信のなさにつながっていたのですが、それもなくなりました。
好きなものは変わっていく
先ほどのお話の中であった「自分が好きなものが変わる」とは? どのように変わっていったのですか?
最初の頃は、フランスに買い付けに行っても、かわいいものしか目に入らず、エッフェル塔の置物など現在生産されている雑貨を購入していました。

それがだんだんと、シックなものや美しいもの、博物的なものが目に入ってくるようになったんです。以前からあったはずなのに、気づいていなくて、ようやく気づけるようになったという感じでした。

教会の影響が大きいかもしれません。厳かで美しい佇まいに感動して、単純に「きれいだなあ」という気持ちからロザリオやメダイを買い付けるようになりました。

美術館に行けば、キリスト関連の作品が多くあって、さらに興味を持って本で調べたり読んだりするように。知れば知るほどに、歴史があって美しいものに心惹かれていく自分がいました。

すると、蚤の市でも、おばあちゃん、そのまたおばあちゃんからのものなど、何世代も受け継がれてきたものを手に取るようになっていました。

100年以上も昔のものなんて、戦争などさまざまな出来事をくぐり抜けて今ここにあるのだと思うと、「当時の人たちはどんな暮らしをしていたのだろう」「どんな人が使っていたのだろう」「どんなふうに使っていたのだろう」と妄想が広がっていく。

1つのものから、こうして広がっていくおもしろさを感じられるようになっていました。
歳月を重ねるほどに、自分自身も、自分の「好き」「かわいい」も変わっていきますね。
たとえば、夫の影響で耽美的な映画を観るようになって、「ああ、こんな世界があるんだ」と発見するなど、自分では気づかないうちに、日々見たり読んだりしたもの、聞いたりしたもの、体感したものが蓄積されていって、少しずつ心が動かされて影響を受けて、時間が経ってみれば、以前とは違うものに興味が湧いていた・・・となっているのかもしれません。

そんな変化に対して、守りに入らず、常に新しいことをチャレンジしていきたいと思うようになりました。

いろんなお店や展示、イベントに行ってみることで、客観的に自分や自分のお店を見ることができ、「今はこういう感じが流行っているのか」「このイベント、おもしろい」「こういう世界があるんだ」と表現の幅が広がることもありますから、そんな時間も大切にしたいです。
最後に、お仕事をされる中で、いつも心にある「想い」を教えてください。
私が雑貨屋さんにはじめて行って衝撃を受けたのは、現実ではなく、異世界にいるようなわくわく感。その世界に触れた瞬間、「わあぁ!」となったんです。

お客様にとっても、日常から離れて、わくわくしたり、幸せを感じたりしてもらえるようなお店でありたいと思っています。
八津谷 恵美さん
神戸商科大学商経学部経営学科卒業後、アパレル会社に入社。その半年後、会社を退職して、ビスタキャリアスクール雑貨コース雑貨コーディネート科に入学。在学時に雑貨スタイリスト事務所でアルバイトを経験。卒業後は雑貨店で2年ほどアルバイトした後、はじめてのフランスへ。2004年にフランス雑貨と手づくり雑貨を取り扱う『JAM POT』をオープン。姉妹店として、2005年には『ONE PLUS 1 gallery』、2011年にはフランスで買い付けた雑貨と個性的でシュールな作品を取り扱う『ギニョール』をオープン。2011年から百貨店に定期的に出店している。
JAM POT
大阪市北区中崎3-2-31 TEL:06-6374-2506 HP: http://jampot.jp/
ギニョール
大阪市北区中崎2-3-28 TEL:06-6359-1388 HP: http://guignol.jp/
(取材:2017年5月)
歳月とともに変わるのは、まわりの環境や社会、自分のライフスタイルだけではなく、それに伴い、気持ちも変わっていくもの。

「これが好き!」と思っていても、最初は漠然と「好き!」だったものが、「こういうところが好き」と深まったり、「こういうのも好き」と広がったり。

好きなものは、昔から変わっていないような気がしても、長いスパンで振り返ると、変わっていることがあるのではないでしょうか。

自分の気持ちが一番の壁で、これからも変わっていくものだから、それに対してどう向き合っていくのか・・・それが鍵になるのだと、八津谷さんのお話をうかがいながら思いました。
小森 利絵
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』

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