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■「私のお店」オーナーインタビュー


井岡 美保さん(カナカナ/ボリクコーヒー)

井岡 美保さん (カナカナ/ボリクコーヒー)
古い町並みの残る奈良町(ならまち)でカフェ「カナカナ」と「ボリクコーヒー」を夫と営む。かわいいものと旅への好奇心と探究心は尽きることなく、年数回ロシア・ヨーロッパを中心に雑貨ハンティングへ出かける。著書に『ロシアと雑貨〜ラブリーを探す55の旅〜』(WAVE出版)『カナカナのかわいいロシアに出会う旅』(産業編集センター)『はじめまして奈良』(ピエブックス)などがある。
カナカナ:奈良市公納堂町13 http://kanakana.info/
ボリクコーヒー:奈良市西新屋町40-1 http://kanakana.info/bolik-coffee
お仕事の内容を教えてください。
奈良町(ならまち)で「カナカナ」と「ボリクコーヒー」というカフェを夫と営んでいます。旅と雑貨が大好きで、旅先で見つけた雑貨を店内で販売し、旅の思い出を本に書いています。
「ならまち」でカフェをされるきっかけとは?
大学生の時に、奈良の観光雑誌で初めて「ならまち」の存在を知りました。当時はお店もほとんどありませんでしたが、その落ち着いた街並みに、「奈良にもこんなところがあるんや」と大好きになり、時々遊びに来ては「良いところやなあ」と思っていました。

奈良というと修学旅行や遠足以外に来たことが無いという方も多いので、私たちがお店をすることで、友達だけでも奈良に来てくれるきっかけになればいいなという、ほんのゆるい感じでしたが、主人は音楽が好きなので、CD・レコード屋さんをしたいと考えていたようです。でも、当時は音楽ダウンロードの世代が始まり、もうCDやレコードは売れなくなっていたので、それなら、自分の好きな音楽を分かってくれる人が来てくれるカフェを作ることになりました。
井岡さんご自身は、もともと旅行会社で働いておられたそうですね。
小学校の頃から「旅行の仕事をする」と決めていたんです。子どもの頃、家族旅行は1回しか連れて行ってもらったことが無いので、旅行に憧れていたんでしょうね。小学校の5年生くらいの時、初めて添乗員さんを見て、「こんな仕事があるんや。いいなあ」と思ったんです。

大学卒業後は旅行会社に 就職しましたが、仕事は添乗員ではなくて窓口業務でした。それはそれでいろんな経験させてもらったし、楽しいこともありましたけど、やっぱりなんか違うなと思い退職してしまいました。
その後、憧れのイギリスに初めて行かれたのですね。
イギリスはアガサ・クリスティの本で憧れていて、いつか行きたい、死ぬまでに一回行ってみたいと思っていたんです。旅行会社に勤めていた時は、結局行けませんでした。

当時、大阪の友人が雑貨屋さんをしていて、週末に経理を手伝っていたんです。彼女は年に2回、ロンドンとパリに買い付けに行くので、会社を辞めた後、その買い付けに付いていくことにしました。

行ってみるとイギリスは本当にすごくステキで、そこからもうイギリスへは10回以上行きました。初めて行ったのが29歳だったので、もっと早くもっと若い時に行っていたら、もっと楽しいことがあったかもしれない。やっぱり「一生に一回行けたらいいわ」という考えってダメだな思いました(笑)

それから毎回買い付けに付いていくようになって、その度に私の好きなアンティークの雑貨を買って帰るので、母に「これいったいどうするの」と言われるくらい、家はもう雑貨だらけになっていました。結婚後、主人とカフェをすることになったので、じゃあお店の端っこで私の雑貨を売ろうかなということになったんです。
カフェをオープンされましたが、やはり最初は大変でしたか?
最初の2年間はお客様が少なくて、赤字経営で大変でした。たぶん、「ならまち」自体、あまり知られていなかったと思います。駅からも遠いし、不動産屋さんや近所の人たちも、「こんな場所で店をしてもしょうがないで」と言われていましたし、店の前も、近所の人しか歩いていませんでした。

これでやっていけるのかなと思いましたけど、「どうせ今日もヒマやろうから来たで」と言いながら来てくださる近所の人たちに助けられて、細々と続けていました。

当時、雑誌で紹介されるカフェも多くなって、関西にもカフェブームが来ていましたが、この「ならまち」ではまだまだ少なく、雑誌で紹介してもらうにも、関西というと「京都・大阪・神戸」の3つのエリアとされているので、奈良はほとんど取り上げられませんでした。

それがお店のオープンから2年たった頃、ようやく雑誌「SAVVY」が初めて奈良特集をしてくれて、奈良にこんなステキなカフェがあるよって、うちの店が雑誌のトップに載せてもらったことで、お客様がたくさん来てくれるようになりました。
ロシアの雑貨が多いですが、なぜロシアだったのですか?
始めの頃はイギリスやフランスに買い付けに行っていましたが、物価がだんだん上がってきて、サンドイッチが1個1000円くらいになっていたんです。これでは売っても売れなくなる。それならちょっと東欧に行ってみようと、チェコやベルリンやハンガリーに行くようになりました。

まだ開拓している人も少なく、安くで良いものが手に入ったので、何度か東欧に行っていましたが、そのうち「ロシアもおもしろいよ」という話を聞いたことがきっかけです。

今のロシアはもう、アメリカやヨーロッパの文化が入ってグローバル化されていますが、当時はまだ共産主義時代のかわいいものがいっぱい残っていて、「ロシアってすごくかわいいものがいっぱいある!」とすっかり魅了されたんです。

それからは「ロシアが私を呼んでいる」という感じで(笑)、もう25回以上行っています。何度も行くうちに、マトリョーシカ作家さんやいろんな方と仲良くなって知り合いも増えたので、ついついロシアにばかり行ってしまいますね。
旅の本をたくさん出しておられますね
以前から買い付けの旅に出る度に、雑貨や旅行のことを書いた「ミニブック」を自分で作っていたんです。今でいうリトルプレスですね。それをうちのお店と知り合いのお店にだけ置いていたのですが、だんだん人気になって1冊1000部くらい売れるようになったんです。

すると出版社の方から、西洋のかわいいデザインを特集する企画があるので、本を出してみませんかとお声がけをいただいて。本はずっと出してみたかったのですごく嬉しかったですね。その後、ロシアを紹介する本も出させていただいて、今は全部で7冊出しています。
好きなものに囲まれて仕事をしたいというのは女性の憧れですが、
10年以上続けてこられた秘訣は何ですか?
売れるものを仕入れようとするはやめました。お客さんが買ってくれそうだとか、これは流行っているからとか、そういう基準で仕入れるのはやめたんです。

最初の頃は、自分の好きなものしか置いていませんでしたが、ある時期、レギュラースタッフが増えてくると、やっぱり売り上げは上げないといけないので、売れそうな商品を仕入れなくちゃと思うようになったんです。
 
すると、どうしてもお金のことだけになってしまって、売れるものばかり考えてきたら、だんだんしんどくなってきて。やっぱりそれは違うなと。

私にできることは、自分の目で見て、自分の感性に合ったものをお客様に紹介すること。やっぱり
自分の満足感というか、自分でお店をしているのなら、好きなようにやった方が 楽しいという結論に達しました。
井岡さんにとって旅って何ですか
自分が生きている意味みたいな感じですね。主人や友達と行くのも楽しいですけど、一番嬉しいのは一人旅。ヨーロッパの街が好きで、一人でいろんなところに行って、こんなお店があるんだとか、こんな人がいるんだとか、その空気を感じるのがすごく好きなんです。それをみんなに教えてあげるのも大好き。

どこの国の雑貨も、こうしてこの街の人たちに愛されて残ってきたんだなとか、作家さんたちは「かわいい」と思いながら作っているんだろうなとか、その物語を伝えていきたいし、旅の楽しい思い出を共有したい。旅行が好きで始めた仕事ですから、私が旅行に行かなかったら本末転倒なんです。一生ずっと旅をし続けられたらと思っているくらいです。
井岡さんの好きな「かわいい」とは?
「可愛い」でも「カワイイ」でもなくて、ひらがなの「かわいい」です。楽しくて愛すべきもの。ちょっと個性があるけど、なぜか好きになってしまうという感じ。私が目指しているのはラブリーな「かわいい」ですね。愛すべき人生。人生もラブリーに生きたいなと思っています。
ありがとうございました。
(取材:2015年9月 関西ウーマン編集部) 
 

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