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■関西ウーマンインタビュー(お店オーナー)


上山 恵さん(恵古箱)

上山 恵さん (恵古箱(えこばこ)オーナー)
2004年7月より父の形見の紺色の車で奈良県を中心に関西地域で移動雑貨屋として活動を続ける。その後、築50年の平屋の一軒家と出会い、2010年3月より店舗を構える。現在は雑貨販売だけでなく、ギャラリー運営、イベントやワークショップの企画、教室、玄米と野菜のランチとおやつと喫茶など古民家から広がる無限の可能性を求め、人の輪が心地よくつながっていく場所をめざして日々楽しんでいる。

恵古箱(えこばこ)
奈良県葛城市新庄392-3 TEL:0745-43-7602
営業時間:11:00~17:00 定休日:日・月曜、夏休み、年末年始 http://ekobacouti.exblog.jp/
雑貨屋さんを始めたきっかけは?
10年間、某ファーストフード店でアルバイトをしていましたが、接客以外にマネージャーとして、採用、教育、営業企画、販売企画など多くのことを任されていました。そろそろ限界かなと考えていた頃、息子を出産した病院のベッドの中で「35歳までに一生できる仕事をみつける」と決めたことがきっかけです。「私の好きなことってなんだろう」って考えてみると、雑貨屋めぐりしか浮かんでこないので、雑貨に関わることを一生の仕事としてやっていこうと決めました。

とはいえ雑貨屋さんで働いた経験もなく、普通の主婦だった私には、いきなりお店を持つことにリスクがあります。そこで友人との世間話から、父の形見の車に雑貨を詰め込んで、移動販売のお店をしようと思いつきました。それから数年間、美容室の駐車場やカフェをお借りしたり、イベントに呼んでいただいたりしながら、いろんな出会いを探して活動していました。
なぜ古道具だったのですか?
子どもの頃から、ピカピカの新品より、錆びていたり欠けていたり、凹んでいたりするものに愛おしさを感じていました。両親とも仕事をしていて、祖父母の家で過ごすことが多かったので、古いものをたくさん目にしていたからでしょうね。祖父母は、鉛筆を小さくなるまで使い続けていましたし、ものを捨てずに使い続けることを教えられました。

骨董市も好きでよくのぞいていましたが、ある時、出店されていたおじさんに、「今ここで出会ったのも縁やで。来月また同じもんはないで」と言われ、ピーッと胸に刺さりました。

古いものや捨てられそうなものに、使い方を変えても今の暮らしに合うよう命を吹き込みたい。そんな気持ちを思い出したんです。

お店を始めた当初は、作家さんの手づくり雑貨と一緒に、メーカーの商品も販売していましたが、あのおじさんの言葉をきっかけに、古物商の許可を取得して、生活骨董と呼ばれる古道具を販売するようになりました。
移動販売から店舗を構えられたのはなぜですか?
移動販売でずっとやっていこうと思っていましたが、体力的に無理が生じてしまい、友人の紹介でこの築50年の一軒家に出会いました。移動販売を始めて6年目のことです。借りるとなると、家賃など毎月の支払いが必要になってきますから、自分にやっていけるだろうかと不安はありましたが、家主さんと相談するうちにだんだん、「どうすればここでお店をやっていけるか」と考えが変わってきたんです。悩んだ末、これ以上の場所はないと思い、お店を持つことを決めました。
店舗になってどんなことが変わりましたか?
古い物が好きな方は、ものとご自身との歴史を作りながら、永く大事に使われます。私はその橋渡しをしたいと考えていましたが、移動販売の時は、商品の仕入れに追われ、古道具も「商品」として見てしまっていたこともありました。

もちろん「商品」なんですが、「商品」をたくさん揃えてお店を回転させようとすることは、やっぱり違うなと思うようになったんです。

お店を持つようになってからは、「ずっと一緒にいたい」と思う古道具を選ぶようになりましたから、まるで私のお家にお客様が遊びに来てくださっているような心地よさを感じています。買っていただけると、「ご縁があって、大切にしてくださる方のところに貰われて良かったね」と思うんです。

古道具も暮らしの一部。「古道具満載の古道具屋」というより、古道具もあり、手作り雑貨もあり、カラダにやさしいごはんもあり、イベントもある。ここに来たお客様が、普段の自分と違う時間を持っていただけることに、喜びを感じるようになってきました。
お店を続けてこられて、いろんな悩みもありましたか?
私には「日々の暮らしをたいせつに」「自分のことをたいせつに」「地球のことをたいせつに」という3つの根っこがあります。なにかで迷ったら、いつもこの3つを判断基準にしてきました。「自分は本当はどうしたいんだろう」と、思いきり自分自身と向き合います。

なにごとも最後に決めるのはやっぱり自分。自分が決めたことであれば、思うように進まなくても、「今はその時ではない」と思えますし、お客さまが来ないときも、調べものをしたり、ベジごはんの献立を考えたり、お掃除をしたり、イベントのことを考えたりする時間だと気持ちを切り替えてきました。

古道具を扱うお店は他にもたくさんありますし、女性ひとりで古道具屋をやっていくことは体力的にも大変。都心でもなく、駅から近いわけでもなく、路面店でもない山のふもとの一軒家で、自分らしく経営をつづけていくことの難しさは感じます。でもその中で、今の自分ができる最大限のこと、どうすればお客様の心にとまる場所になれるか。私が私らしくできる、みんなが幸せになれる豊かさのまわし方を常に試行錯誤しています。
「私が私らしくできる、みんなが幸せになれる豊かなまわし方」とは?
お店を経営していくためには、収入と支出のバランスが上手くとれないといけませんが、お金を得るためだけに、自分が「どうかなあ」「やりたくないなあ」と思うことは避けたいと考えています。

作家さんの作品を買っていただいて、「良いもん買った。よかった!」とお客様が幸せになる。一所懸命に作った作品を誰かが喜んでくれて、それが収入になれば作家さんも幸せになる。この場所を使ってもらえて良かったと私も幸せになる。お金も周り、人の幸せな気持ちが周っていくことが私の理想です。

将来的にはオリジナル商品を作ってみたいし、この場所から発信するリトルプレスもつくってみたい。もう少し広い古民家を手に入れて、小さいお子様からご老人まで、どの世代にとっても居心地のいい場所をつくりたいと思っています。野菜を育てたり、カフェがあったり、遊び場があったり、異世代交流の場になったり。みんなが暮らすように、そこにいることができたら楽しいだろうなと思っています。
雑貨屋さんを夢見る女性にアドバイスをひとこと。
やりたいことが実現しないのは、実現する前に断念してしまうから。今まで経験してきたことは、ひとつも無駄にならないと思います。すこし方向は変わったとしても、かならず実現できる日がくると信じ続けて欲しいです。始めは誰かのマネから入ってもいいんです。でもマネだけでは長続きしないので、「自分はこうしていきたい」という主張が見つかれば、自分らしさに繋がって行けると思いますよ。
ありがとうございました。
(2015年4月) 
取材:小森利絵
ライター/HP:『えんを描く』
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。


 

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