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■関西ウーマンインタビュー(お店オーナー)


郷田 英子さん(雑貨セレクトショップAlphabet)

雑貨セレクトショップ
Alphabet(アルファベット)

〒603-8054
京都府京都市北区上賀茂桜井町101 エデン北山1F
TEL:075-702-3498.
営業時間:11:00~20:00
http://www.alphabet123.com/
このお店を運営されて20年。お洒落なお店がたくさんある北山ですが、20年前は今と違っていましたか?
北山はバブル時代、高級品のお店がたくさんできて、地下鉄も通っていなかったので、車でしか来れないステイタスのある街といった感じでしたが、20年前私が入った頃は、バブルがはじけてほとんど空店舗で、ユーレイビルだらけでした。今は昔とはお客さんの感じも少し違ってきていますね。
郷田さんが最初にお店をされたのは、ここでは無かったそうですね。
最初、起業したいとか自分のお店を持ちたいという気持ちはあまり無くて、25歳の頃、たまたま仕事を辞めて時間があったので、特に何も考えずバリ島に旅行に行って、そこでステキな布に出会ったんです。

昔から織物とか染物が好きだったし、ステキなものやステキな人を見ると、「これ良いでしょう」とか、「この人良いでしょう」と言いたくなる「おせっかい」だったので(笑)、その布をみんなに見せたい、こういうものを置くお店がしたいと思ったんです。うちの実家が写真屋さんをしていて、2階の倉庫が空いていたので、父に貸してくださいって頼みました。もちろん家賃も払って。
始めてのお店の運営はどうでしたか?
初めはバリから商品を送ってもらったんですけど、それがなかなか届かなくて、騙されたんじゃないかしらと思いながら、やっと届いた商品を置いていましたが、1年間ほとんどお客さんは来なかったですね。

お客さんが来るとバリのコーヒーを入れてあげて、2時間くらい話して帰らはるという感じで。楽しかったんですが、だんだんお金が無くなってきたんです(笑)

まあ、また働きに出たらいいかなと思っていたんですけど、その時に百貨店の催事に出さないかというお誘いがあったんです。

京阪神のお店が10店舗出る催事で、なぜかすごく売れて、売り上げが大手を抑えて2番でした。それでお金が入ってきたので、まだ続けていいんだなと(笑)れから「うちにも来てくれ」といろんな百貨店からひっぱりだこになったんですよ。その後2年くらい催事に出ていました。

「今回は婦人服です」と言われたら婦人服を売り、「ベビーです」と言われたらベビー服を売り、雑貨もあれば服もありで、もう何屋かわからなかったですね。売れてお金になるというのは仕事的に必要ですけど、「これいけるかも」と自分が思ったものが売れるって、ものすごく面白いんですよ。夜寝ないで値付けして、朝から販売して。すごく楽しかったです。
その後、どんなきっかけで北山のお店に移られたのですか?
最初のお店をしていた頃に結婚したんです。百貨店の催事に出ていて、しばらくすると子どもが生まれて。それでちょっと時間の制約が出てきたんですね。当時の百貨店って保守的だったのか、それをあまり良く思わない百貨店の男性社員と、ある日すごいケンカしたんです。ちゃぶ台をひっくり返すように、「こんなとこ、二度と来ません」って(笑)

いつもニコニコしていたのにいきなりだったので、もうみんなびっくりしていたと思います。それからもう催事には行かないことに決めました。 そうしたら知人がこのお店を紹介してくれたんです。仕事の穴を開けるって私もアカンと思いますが、でもやっぱり子どもがいると、どうしてもということもあります。そこで自分のお店なら自分のルールでできるかなと思って、すごく良いタイミングでした。

大家さんもすごく良くしてくださる方で、家賃日払いで週末だけのお店から始めました。何の宣伝もしませんでしたが、いきなり近所の公園のお母さん達に、可愛いし安いと大人気ショップになったんですよ。誰かが買うと、皆それを買いに来てくれるので、同じものが売れるのは面白かったですね。
その後20年、大きなターニングポイントはありましたか?
お店がすごく忙しくなったので人を雇うことにしたんです。それはすごく大きなことでしたね。お給料を払うので経営的なことも考えなければいけないですし、責任も大きくなりますから。それと、雑貨が好きな子が来てくれるので、仲間ができたという楽しい部分とのバランスが、逆に難しかったですね。

今思うと、私が経営者になりきれていない部分があったんだろうなと思います。今は現場の仕事と、私の仕事をちゃんと区分けできるようになりましたが、10年は悩みました。
ずっと郷田さんが商品の仕入れをしておられるのですか?
何をどこと取引するとかといった初めの「1」は私がします。あとは担当制になっていて、皆それぞれの考えで仕入れています。なぜかというと、私がそうやってきたから。自分で仕入れて自分で販売して、売れたときはすごく楽しい、というのを知っているから。それを経験して欲しいんです。そう考えたのが5年前。それからメキメキ成長したと思います。

仕入れたものが結果的に売れなくても全然怒らないんですけど、売れないんじゃないかなと思って仕入れませんでした、というのは怒られるんです(笑)普通は仕入れて売れなければ、「どうするのよ」って怒られると思いますけど、うちはそれは怒られない。そのほうが楽しいんじゃないかなと思うんです。
お店の他にもいろんなことをされていますね。
10年くらい前になりますけど、「Trade mark Kyoto」という「学びの場所」みたいなのを作ったんです。それは私が作りたかったからではなくて、周りの人たちが、「お店ってどうやってできるんですか」とか、「こんなことしたいんです」って言って来られたんですね。やればいいじゃないと言うと、「場所が無いからできない」って言うんです。 「場所があればやるんだ」と思って、たまたますごく良い一軒家があって、「借りませんか?」という話があったので、借りることにしたんです。「場所があればやるって言ったやん」って(笑)

私が借りたから皆でシェアしましょうって。まあ家賃くらいなんとかなると思いましたし。スタッフの経費までは賄えないので、皆で掃除してきれいに使いましょうと。それを7年やっていました。
リトルプレスも発行されていたそうですね。
その中で私が企画したのは編集の講座です。本というより「紙モノ」が好きで、「紙モノ」を作るには編集の仕事って重要な役割を果たしていますし、知人に編集をしている人がいて、その人の話を皆が聞いてくれたら面白いなと思って。そこでミニメディアを作る講座を始めたんです。

先生が二人いたので月1回づつ交代で半年間。普通こういう講座って、こんなのを作りましょうというプランでダミーを作るだけで終わりますけど、デザイナーさんが入ることになったので、本物の形になって販売までしたんです。1期のメンバーは半年で卒業するので、6期、3年続けました。
さらに本も出版なさったそうですね。
私たちアルファベットのスタッフで「2週間」という本を1冊出しました。自分が住んでいないどこかに行って、1週間だと「旅行」だけど、2週間だとちょっと「生活」になるというのがコンセプトなんです。4人でパリに行ってアパートを借りて2週間住んで。ただただ今日はどこどこに行ったとか、普通に生活のことを書いて本にしたんです。すごく楽しくて良い企画だったので、違う国でもシリーズ化するつもりだったんですけど1回で終わりました(笑)
「Trade mark Kyoto」は7年で終了されたのですか?
ニーズはあったんですけど、大家さんの都合で辞めることになったんです。まあ辞め時かなと思ったので、スパっと辞めました(笑)私って自然に来たものは拒まないんです。来るもの拒まず、去るもの追わずという感じですね(笑) だから今でも、すごくやりたいと思うことでも、何かうまく前に進まないことは辞めとくんです。
いろんなことを企画されて周りをどんどん巻き込んで、それもとてもナチュラルな流れに沿っているような気がします。それはどのように培われたのですか?
私は何でもすぐ動きます。「え?もうやったん?」と言われるくらい(笑)でも考えてないわけじゃないんですね。常に考えているから、「今や」と思ったときにすぐできる状態を保っているんです。

それはどこで教育されたのかと思うんですけど、父もサラリーマンじゃないので、お金の感覚みたいなことが違っていたのかもしれませんね。お小遣いも、ちゃんと何に使うと言わなければ貰えませんでしたから、ウソをつくにも一生懸命でした(笑)
そんな郷田さんに事業のやり方を教えて欲しいという方もおられるのでは?
大阪で起業塾の講師に来て欲しいという話があって、何か役に立つならと思って喋ったことがあるんです。ビジネスって利益を上げるという目的がありますが、利益を上げるためだけなら、金額の大きい仕事をしたほうがいい。でも好きなことを仕事にするというのは、自分で掘り下げないと自分にしかわからないという話をしたんです。

そこで「目からうろこでした」と言われて、何が「うろこ」なんやろとびっくりしたことあります。私にすると、ものすごく普通のことですし、お店をしている人は皆そうなんじゃないかと思いますし。だからノウハウなんて無いと思うんです。
今後どんな夢を描いておられますか?どこかにミュージシャンになりたいって書いてありましたけど。
叶えるかもしれないです(笑)ミュージシャンも私の中でコンセプトは同じなんです、自分が好きな音楽を聞くとすごく良い気持ちになるでしょ。

雑貨屋さんはモノを売っていますけど、お店に来て良い気持ちになって欲しいなと思ってるんです。私はモノを買っていただくより、「楽しかった」と言ってもらえるほうが嬉しいんです。わざわざここに来てくださる方には本当にそう思います。

今ネット通販で、お店で買うより、そのお店のネット通販のほうが安いというのがあるじゃないですか。それもどうかなと思うんです。同じお店に来ているのに、来た人に優遇してくれたほうが良いのに。ネットで売れてる他の雑貨屋さんからも言われるんですけど、私は全く興味が無いんです。

もちろん実用品ならネットで買えば良いと思いますけど、私はお店に行くのが楽しいので、そこに遊びに行って、お店の人と話したりするのが楽しいというのがあるじゃないですか。そういうのが大事なんじゃないかなと思います。でも夢はミュージシャンになるんです(笑)
どんなミュージシャンに?歌うのですか?楽器?まさか演歌?
演歌も最近良いなあと思いますね(笑)でも人前で歌を披露するのは苦手なので、大道芸人になりたい。道でふらっとやって、そこにいるちびっ子が見て、「面白いなあ」と言ってくれるのが夢です。
若い女性たちの中にも、京都でお店をしたいという方がたくさんいらっしゃいますが、特に「京都でお店をすること」についてアドバイスをいただけますか。
京都はやっぱり小さい街ですから、東京や大阪のように人がたくさんいるところとは全然違うので、たくさんは売れないけれど、個性的であるとか、手間ひまかかったものは、一番に支持されると思います。なので、ちゃんと作って、ちゃんと売れば、全然可能性はあると思いますよ。
モノを見る目は確かだから、しっかりしたコンセプトと作りが「本物」でなければいけないということですね。あと京都に暮らす人を対象にするのと、観光客を対象にするのでは違いますか?
それは全然違いますね。やはり地元の人に支持されないと続きません。もちろん観光の時期になると、観光の方も来られますけど、でも本当に支えてくれはるのは地元の方だと思います。観光客を対象にすると、やっぱり浮き沈みがありますが、うちには無いんですよ。だから、『京都はやりやすくて、やりにくい』。両極端ですね。中途半端は無いです。
ありがとうございました。
(取材:2014年10月 関西ウーマン編集部) 
 

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