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■関西ウーマンインタビュー(お店オーナー)


角口 裕美さん(町屋カフェ「ひよこ」)

自然食と無農薬にこだわった
ふわとろオムライスとおばんざいの店 
『ひよこ』

オーナー:角口裕美さん

〒603-8225 京都市北区紫野南舟岡町71-28
TEL:075-441-3777
OPEN:11:30-19:30/定休日:月曜日
角口さんは、京都三条でライブハウス「モダンタイムス」を経営されていますが、
このお店を始めたきっかけは?
モダンタイムスはもともと、母が町屋カフェをやりたいということで始めた店なんですが、当時母は65歳ですから私が融資を受けることになって、それなら音楽も、とライブハウスになりました。

最初は母も元気にやってくれていたんですが、60~80人ほど収容する店ですから1人では大変なので、若いスタッフたちに手伝ってもらうようになったんです。

そのうち彼らに任せるようになって、母には「身体もしんどいし、家で休んでていいよ」と言う日が増えてきたんです。すると家で1人で居るようになった母が、すごく寂しかったみたいで、エンディングノートを書いてみたり、遺影を撮りたいと言い出したり。まだ早いよと言うのに、終活を始めたんですね。

これは何とかしなくてはと心配になって、年齢的にはギリギリなんですけど、もう一回、儲けというより「生きがい」として、母が働ける場所を作ってあげたいと思ったんです。たまたま知り合いの不動産屋さんから「いい物件が空きましたよ」とご紹介頂きまして、それが、本当に、魅力的な物件だったから、どうしてもやりたくなってしまって(笑)これもご縁ですね。

母は今73歳で、お店を始めてその分しんどいこともありますが、これからは、心も身体も元気になってもらえたらいいなと思っています。モダンタイムスは夕方からの営業なので、昼間は私も手伝っています。
ご両親がそばにいると、互いに安心ですね。
喧嘩ばっかりしてますけどね(笑) でも喧嘩できるのも、両親だから言いたいことを言えるということでしょうね。他人には言えない愚痴も、言えますし(笑)

私はたぶん両親と離れて暮らしていたら、仕事が忙しいと言ってぜんぜん面倒みないと思うんですよ。でも「はい、介護」となって両親の元に通うとなると大変ですけど、店の2階に両親が住んでいるので、将来的にも放ったらかしにしなくて済むと思って。お店があると来ないといけない理由もできますから(笑)
このあたりはどういう場所なのですか?
近くに船岡温泉があって、特に外国人観光客には穴場的な観光スポットになっているようです。金閣寺も近いですが、有名な観光名所は行き尽くして、もっとローカルな京都の古い町に行ってみたい方に人気だそうです。

古くから住んでおられる年配の方が多い土地柄、お豆腐やさんや八百屋さんなど昭和なお店が残っていますが、いろんな学校からも近いので学生の方たちがたくさん住んでいて、若い人たちが始めたお店が増えてきています。ゲストハウスや銭湯を改装したカフェなど、個性的なお店が多いですね。
お客様はどんな方が来られますか?
若い方も来られますが、お子様連れウェルカムを前面に出していますから、主婦層が多いです。無農薬や油や塩にもこだわっていますが、「健康食だから」という意味での広がりはこれからですが、お子さん用の椅子も置いていますし、床に上ってゆっくり座っていただいて、お子さんを遊ばせておいたり寝かせておけますから、お母さんたちがよく来てくれはりますね。
無農薬や健康食へのこだわりは、どのようなきっかけですか?
私が無農薬というか、農業が気になりだしたのは、「カンタ!ティモール」という映画に関わってからです。油田のある東ティモールは紛争に巻き込まれるのですが、そこに住む人たちの暮らしは、トラクターを使わない古いやり方で農業をやっているんです。

それを観たときに、人の生き方や生活は、もっと自然に戻していかないといけないと感じました。モダンタイムスで「カンタ!ティモール」の上映会を定期的にしているんですが、やっぱりそういった農業や食に関心のある人は集まってくるんです。

ある人が健康食品の会社で働いていて、「店長、この本を読んでください」と言われて渡されたのが、「病気がイヤなら油を変えなさい」という本。読んでみたら衝撃的で。。私たちが知らないで摂っていたマーガリンがどんなに身体に悪いかや、良質な油がどんなに大事かが載っていたんです。

脳を形成するのは油なので、朝から良質な油を摂ると頭の回転も違うそうです。その本を書いた人は、スポーツ選手の栄養指導もされているそうで、「まごわやさしい」食事で実際に成績が上ったり、全部食べ物から治していくという話を読んで、食の大切さを知りました。

それでもっと勉強したいなと思っていたら、農業の本を薦めてくれる人がいて、農薬や塩の話を知ると怖くなりました。 安くて利益があるからと、国が専売特許で売っていたナトリウム塩しか食べていない時代があって、身体に悪いと判ったから塩分を控えないといけないと聞くけれど、普通の自然塩を摂っていれば、他のミネラルも入っているのでそんなに減らさなくていいとか、農薬や化学肥料で生きていない野菜が増えているけれど、無農薬で作るのは大変なことなんだとか、もう知らないことばかり。

そういうことを知るともう放っておけないと思ったんです。おばあちゃんやおかあさんが、安心して自分の子どもに食べさせたいものを作る、これがこの店のコンセプトですね。
角口さんのお母さんの子育て時代は日本の高度成長期時代。農薬や化学薬品をふんだんに使った食材が出はじめた頃ですが、そうした考え方にお母さんも賛同されましたか?
私が読んでから、「はい、これ読んで」と渡しました。普段から本が好きな人なので、関心持って読んでいましたね。母は私が子どもの頃から、人に聞いたり勧められたりして、自然塩や油にはこだわっていたようです。当時は今ほど解明されていませんが、身体に良いものを選んでいたようです。

当時はお母さんというのは家に居ることが普通の時代で、近所でも主婦が働くのは内職くらい。その中で母は外に働きに出ていましたから、「働く女性のハシリ」だったんです。その分私たち子どもには、一生懸命手料理を作ってくれていました。毎朝必ずおやつを作ってくれていて、私が学校から帰ると必ず冷蔵庫に手作りのプリンやゼリーが入っていました。

他に家の子は毎日お母さんがいるので、申し訳ないというのもあったのかもしれません。でも毎日作ってくれる手作りのありがたさは、私の中にずっと感じていたんでしょうね。
今後、どんなお店にしていきたいですか?
この店を出すにあたって、マクロビや健康食をいろいろ勉強したんですが、その基本には沿った形で、でも、あまり深くこだわり過ぎず、もっと自然に、気軽にいろんな人に立ち寄ってもらえる店にしたいなと思っています。

おばあちゃんが作るご飯なので、時々キュウリやニンジンがちゃんと切れてなくて繋がっていたりするけれど、そんな所にほっこりしてもらえれば。おばあちゃんの家にご飯食べに来た、みたいな感覚でね。

それでたとえば、週に何回かここで食べてたら、半年後や1年後、「あれ?体調悪かったんやけど、最近なんか調子良いわ」とか、「気がついたら健康になってたわ」とか。食べに来てくれはる皆さんがそうなったら良いなというのはあります。「健康食だからですよ!」ではなくて、気が付けば健康になってた、それが理想ですね。

それが食べ物だけじゃなくて店の雰囲気だったり、ちょっと気持ちをゆるめられるというか、ほっこりしていただければいいなと。で、そのあとで良いので、本や油を売って儲ける気は全くないんですけど、「あ、こんな本置いてるわ」とか、「こんな油売ってるわ」とか、いろんな人が少しでも関心持ってくれるといいですし、「健康食を食べないといけない!」という押し付けじゃなく、知らないことだらけだった私が「ああ、そうやったんや」と思ったように、ちょっとでも皆さんの意識が高まって、健康になってくださればと思っています。
角口さんにとってお店を持つこととは?
やっぱりどういうところであっても、生きるという人生の深みと幅を広げるのは、出会いの数だと思うんですよ。どれだけ人と出会ってその人の人生を知るか、どれだけの人とかかわれるか、が人生の深さだと。

お店をするということは、もう果てしなく人と出会い続けるんですよね。ずっと来てくれる人もいますし、引っ越されて来れなくなった人もいて、入れ替わりはいっぱいありますけど、次から次へと新しい人に出会うんです。そのうち、しばらく会えなかった人が、久しぶり~って帰ってきてくれたりして、縁が切れることは無いんです。それでどんどん人の輪が広がってくるんですね。

確かに、自分とは合わない人とも出会います。でも、自分の信念を曲げず、貫いていれば、合わない人は、自然と来なくなりますから。引き止める必要もないし、それでいいんです。
お店も客を選びますからね
そうなんです。お金が第一じゃないから、合わない人に媚びることもしないんですよね。それは、良くも悪くも、お客様にもちゃんと伝わってしまいますしね(笑) お金を儲けることは絶対必要なんですが。

モダンタイムスを経営し始めたころ、お金がなくて大変な時に、お金をちらつかせてくる人もいっぱいいましたよ。でもそんな人は、意地を張って全部断ってきたんです。

お金じゃなくてもこの店やってますと通してきたんです。やっぱりそれは人の繋がりや出会いがこんなに素敵で素晴らしいから。私1人で生きていけると思っていましたが、お店を始めてからは、いろんな人に支えてもらわないとできないと気づいて、それはもう「ありがとう」の繰り返しですね。

気が付けば周りは好きな人しかいないです。個性的な人ばかりなので、難しい部分もいっぱいありますけど(笑)基本、良い人ばかりなので、誰に会ってもストレスが無いんです。その出会いの宝庫が、お店をやることの利益ですね。

スタッフにはいつも「働くということと、お金を儲けることは、意味が違うからね」と言っています。「あなたたちは働いてください」と。どうすればお客さんの役に立てるか。自分はお客さんのために何ができるかを考えることが働くということ。それは主婦の方でも同じ。主婦はお金を貰わないけど働いておられる。あなたたちは仕事なのでお金を貰っている。お金儲けとは違うということを判ってねと言っています。
それはこれから起業する方にも言えることですね。
それで繋がってしまうと、お金が無くなったら関係が終わりますからね。スタッフに言われたことがあるんです。もうちょっとお金を儲けることを考えてくださいって。でも「今は大変だけど、間違っていないから。絶対大事なことはあるから」と言い続けましたね。

こういう考え方をしていると、ボロ儲けはできないですし、大変は大変なんですけど、儲けは無いけど潰れない。潰れない状況をどう作り出せるかだと思うんです。続けていけば、それだけ出会う人も増えますし、どんどん太く強くなっていきますから。
お店を持ちたい女性へメッセージをお願いします。
根性は要ります。男性はお金を儲けることが第一の方が多いでしょうけど、女性の場合、やりたいことや人と出会うことが先になるので、目的が違うかもしれません。なのでめちゃくちゃ儲けなくても、あまりブルーにならないのかもしれないですね。でも、経営を続けていく上での最低限の収益は必要だから。そこのバランスが、難しいんですけど。

男性の場合、良い時と悪い時がわかり易いですが、女性は違いますよね。お金があるときも無いときも見せないですから(笑) そういう意味では、女性はしなやかで強いと思います。どんなに苦しい時でも、にっこり笑って、「おおきに」言うて切り抜けていきたいもんですね。女ですから。
ありがとうございました。
 
(取材:2014年6月 関西ウーマン編集部) 
 

 

 

 


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