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■関西ウーマンインタビュー(クリエイター編)


大南 友香理さん(帽子デザイナー/「ohminami yukari chapeau」オーナー)

「続けるためにはどうしたらいいのか」を考え続けて

大南 友香理さん
帽子デザイナー/「ohminami yukari chapeau」オーナー
「日常をいつもより少し素敵にしてくれる帽子」をコンセプトに、上質感がありながら、普段の生活の中でコーディネートしやすい帽子を製作する「ohminami yukari chapeau」の大南友香理さん。

国内工場や専属職人と連携しながらも、最後は大南さんが1点1点確認して、かぶり心地やシルエットを調整し、手仕事のあたたかみのある帽子に仕上げています。

大南さんが帽子づくりを本格的に始めたのは、知人のお店での委託販売がきっかけでした。以降、大手アパレルメーカーや百貨店、セレクトショップなどの仕事が決まり、仕事が増えていきますが、それを順風満帆とはせず、仕事として続けていくための仕組みづくりをされます。

帽子づくりを仕事にして17年、大南さんが仕事を続ける上で大事にしてきたこととは?
会社勤めとは別に始めた「自分のものづくり」
服飾関係のお仕事をめざすきっかけは?
母は昔、オーダーメイド洋服店のお針子やアパレルメーカーのパタンナー、毛皮店のデザイナーなど、服飾関係の仕事をしていたそうです。

子育てと介護のために仕事を辞めてしまったのですが、私が子どもの頃、洋服をよくつくってくれていました。家には洋裁やファッション関係の本もたくさんあったので、恐らくその影響を受けていたんだと思います。

私も布でスカーフをつくったり、マフラーを編んだりしていました。

アパレル業界の大変さを知る母からは「時間も不規則で、大変な仕事だからやめとき」と言われていたものの、「やっぱりファッション関係のお仕事をしたい」と高校2年生の時に服飾の専門学校に行くことを決めたんです。
さまざまなファッションアイテムがある中で、どうして「帽子」だったのですか?
なんとなく帽子が好きだったんです。

高校時代にはベレー帽をかぶったりヘアーバンドをつけたりしておしゃれを楽しんでいましたし、専門学校の課題では帽子をかぶったスタイリングをよく描いていました。

ファッションショーや作品展用のデザイン画にも帽子を描いていたものだから、洋服と一緒に帽子もつくらなければならず、本を見ながら見よう見まねで、帽子をつくるようになったんです。

帽子は洋服に比べると小さいので、すんなりとつくることができ、つくるのも楽しい。でも、当時は帽子づくり単体を仕事にできるとは考えつきもしなかったので、卒業後はアパレルメーカーに就職し、洋服のデザイナーをしていました。

再び、帽子づくりを始めるきっかけは、知人のお店で委託販売をさせてもらえることになった時です。

会社勤めをしながら、自分のものづくりをするなら、洋服より気軽につくることができる帽子がいいという理由からだったと思いますが、つくって販売すると、気に入って購入してくれる人たちがいて、「もっとつくろう」と意欲が湧きました。

帽子にますます目が行くようになると、まわりには技術力が高くてすごいなと思う帽子はたくさんありますが、普段、気軽にかぶれて、上質だけど少しカジュアルな帽子があまりないことに気づきました。

「日常でかぶりやすく、かぶった人を少し素敵にする帽子をつくりたい」と、帽子づくりの基礎を学ぶために教室に通い始めました。その1年後には帽子づくりを仕事にしようと会社を退社して、個展とオーダー会を半年に1回開催するところから始めたんです。
当初は派遣アルバイトと両立されていたそうですが、帽子づくり一本になったのはどんなタイミングですか?
2002年から始めて、その5年後の2007年に帽子づくり一本でとなりました。

初個展時から順調に帽子は売れていて、毎回足を運んでくれる人もいるなど、回を重ねるごとに個人のお客さまが増え、次第にセレクトショップから声をかけていただくようになっていきました。

当時は個人で帽子をつくっているというのも珍しく、量産品とは違うデザインで興味を持ってもらいやすかったですし、個展の開催場所はガラス張りのギャラリーだったので、たまたま通りすがったセレクトショップのオーナーなどが立ち寄ってくれることもあり、販売先が増えていきました。

1番の転機は2005年に大手アパレルメーカーとの取引が始まったことです。

高校時代からの友人が勤めていて上司に私の帽子のことを話したところ興味を示してくれたそうで、私はなんとか仕事につなげたいと「1回、会わせてほしい」と懇願。「じゃあ、ごはんを食べながら軽く顔合わせでも」というくらいだったのに、自分がつくった帽子をいっぱい持って行って営業したんです(笑)。

ちょうど帽子を展開していきたいというタイミングだったらしく、納品させていただけることになりました。納品数や納期が恐ろしかったのですが、「ここは死ぬ気で頑張るしかない」と帽子教室の仲間に手伝ってもらうなどまわりを巻き込んで、なんとか無事に納品。

これを機に「大手アパレルメーカーとの取引がある」という信用ができたので、百貨店での常設や催事の仕事などにもつながり、2007年に派遣アルバイトを辞めて帽子づくりに専念することにしました。
仕事として続けるための仕組みづくりを
これまでにどんな「壁」または「悩み」を経験されましたか?
何も計画性を持たないまま、突き進んできたことに、「このままで大丈夫?」と危機感を持ちました。

起業するならば、事前に経営について学んだり、計画性を持っていたりするものだと思うのですが、私はなりゆきに任せてきてしまいました。大手アパレルメーカーと取引をする時も、書類を揃えられなかったり、慌てて事業所名を掲げたりとアタフタ。

実践しながら「こうするものなんだ」とわかってきたけれど、この先もこのままで大丈夫? 自宅兼アトリエでは手狭になってきたので、アトリエを別のところに構えたいけれど、資金は大丈夫? 将来を考えると急に不安になってきたんです。

裏を返せば、帽子づくりを仕事として続けていける見込みが立ったタイミングだったのかもしれません。仕事としてちゃんと続けていける形にしたいと思いました。
「仕事としてちゃんと続けていける形にしたい」。そのために、どんなアクションを起こしたのですか?
クリエーターのためのインキュベーションオフィスの存在を知り、事業計画や収支計画の立て方などを学ぶために、入所することにしました。

入所前から事業計画書や収支計画書を作成してプレゼンテーションしなければならず、不得意分野ゆえにとてもしんどい作業でしたが、ここを逃すと絶対にしないままになると、自分を奮い立たせて取り組みました。

入所してからも、計画通りに受注できてもこなすのがとても大変で、百貨店など販売先に行って1日販売して、帰宅後はひたすら製作の日々。必死で取り組んだおかげで、7割ぐらいは計画書通リに進めることができ、仕事を続けていく上でのベースができました。

また、事業計画の立て方や仕事の組み立て方、売上の考え方、プレゼン方法などを学べ、入所しているグラフィックデザイナーやシステムエンジニア、人材派遣会社社長などさまざまな業種の人たちの仕事のやり方を見ることができたのも勉強になりました。
「よりよく」を積み重ねて
お仕事をされる中で、いつも心にある「想い」は何ですか?
当たり前になり過ぎていて、自分では気づかないのですが、スタッフから「続けていくために『こうしよう』『ああしよう』ということを、よく言っていますよ」と言われて、まさにそれだなと思いました。

続けるのは、本当に大変です。趣味でなら続けられそうですが、仕事となったら相手がいるものだから全然違います。

どうすれば、お客さまに「またほしい」と思っていただけるのか。また、工場や職人、スタッフと一緒に仕事をしていますから、どうしたら誰もにとって仕事として成り立ち、続けていける仕組みにできるのかといったことを考えなければなりません。
続けるために、どんなことを大事にされてこられましたか?
「続けるためにはどうしたらいいのか」を考え続けることでしょうか。歳月とともにさまざまな経験を積み重ねながら、よりよくすることも積み重ねてきました。

たとえば、帽子づくりの工程では、最初はアルバイトさんに協力してもらいながらも、基本は製作も販売も自分で行っていましたが、仕事が増えるとともに全工程を担うのは無理になってきました。

そこで、「それぞれの得意を伸ばすことで、ほかにないものをめざす」「専念することで技能を上げる」という考え方で分業体制を整えました。

工場の技術がなければできない部分は工場、ブレード(布地などをテープ状にした紐)や手編みなどは職人、そのほかの布はく(布地)などの部分は縫製スタッフ、私はデザイン考案からサンプルづくりまでと裁断仕上げ作業を担当しています。

帽子については、オリジナル素材をつくるなど新しい挑戦を重ねるとともに、ツバの部分は生地に応じて、二重にしたりワイヤーを入れたりするなど、年々気づいたことや身に付いた技術を取り入れて、永く愛用していただけるように、目立たないところの改良を積み重ねています。

販売については、百貨店やセレクトショップでは常設しているため、私が接客して説明できるわけではありません。想いや素材、良さなどをお客さまに伝えるためには、各店の販売員さんの存在が重要です。販売員さんに対して、口頭説明だけではなく、資料化、勉強会開催などを試みています。

続ける中で見えてきた「よりよく」できることを積み重ね、「ここだ!」と思うタイミングがあれば全力を注いできたからこそ、続けてこられたのだと思います。
近い未来、お仕事で実現したいことは何ですか?
新しい技術を学びたいです。

自分で積み上げてきた方法で帽子をつくっていますが、現状維持ではなく、他の作り方を吸収できる機会を作りたい。そのために、学びたい技術を教えてくれる教室へ行く事や、仕事をしながら工場さんや職人さんにご依頼の相談をすることで、「こんなことができたらいいなあ」というアイデアを実現するヒントを見つけたい。

帽子づくりを仕事にして17年。こんなにもたくさんのもので溢れる時代になって、つくっていてもいいのか、誰かの役に立っているのかと思うことがあります。

でも、仕事を生み出すことで誰かの仕事をつくることができればいいなあと思いますし、私がつくる帽子を喜んでくれる人がいます。さらにはご病気をされている方が求めてくださることもあって、肌に優しい布地でつくる帽子を提案できるなど、お役に立てることがまだまだあるなあと感じています。

かぶることで気持ちが豊かになるような、そんな帽子を、これからも妥協せずにつくっていきたいです。
profile
大南 友香理さん
服飾の専門学校を卒業後、アパレルメーカーでデザイナーとして4年間勤務。在職中に帽子教室で帽子づくりの基礎を学ぶ。2002年から帽子作家としての仕事を始め、個展や個人顧客向けのオーダー会を半年に1回ペースで開催。2005年に大手アパレルメーカーとの取引を機に、「ohminami yukari chapeau」という事業所名を掲げる。2007年から2年間はインキュベーションオフィス「メビック扇町」(大阪府)、2009年から4年間は「Duce mix ビルヂング」(京都府)に入居していた。百貨店やセレクトショップなどでの委託販売やオーダー販売イベントを行うほか、飲食店のユニホーム(帽子・エプロン)のデザイン・製作なども行う。
ohminami yukari chapeau
HP: https://ohminamiyukari.jp/
FB: Ohminami-yukari
(取材:2019年4月)
editor's note
「仕事として続ける」ための1つの方法として、自分1人で全工程を担うのではなく、工場や職人と連携した「ハンドメイド作家とメーカーの間のものづくり」という仕組みをつくられた大南さん。その仕組みがあったおかげで、出産・育児期もブランクなく、仕事を続けてこられたそうです。

さらには「生きていると、育児や介護などさまざまなことがあります。しなければならないことはこなしていかなければなりませんが、頭の中は自由でいたいと思うんです。好きな仕事だからそう思えるのですが、育児などで拘束されるものもありながら、帽子のデザインを考えている時は頭の中が自由になれます」という大南さんのお話も印象に残っています。

自分や周囲、社会、時代も変化し続ける中、「続ける」ということは本当に難しいことです。大南さんは常に「どうしたら続けられるか」と考え続け、「変わらないけれど、変わり続けてきた」からこそ、続けられているのであり、さらには「やっぱり好き、楽しい」という気持ちがあるのも重要なんだと思いました。

その「好き、楽しい」という気持ちも、きっと何もしないで守り続けられるものではなく、大南さんの「どうしたら続けられるか」という問いかけは「どうして続けたいのか」という問いかけにもつながっていて、ご自身の気持ちとも向き合ってこられたのだと思いました。
小森 利絵
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP: 『えんを描く』

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