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■関西ウーマンインタビュー(クリエイター編)


岡田 路子さん(アコーディオン修理・調律師)

 
岡田 路子さん(アコーディオンの修理・調律師)
大阪芸術大学映像学科卒業後、アパレル・アクセサリーをデザインする事務所を経て、友人と共同経営のアクセサリーショップをオープン。その後、アコーディオンの修理・調律師のもとで修行を積み、2010年に工房『ネネロロ』をオープンする。アコーディオンの普及活動として、紙で小さなアコーディオン風の楽器を作る『papernica(ペパニカ)』を考案し、2013年よりワークショップを全国各地で実施している。アコーディオン楽団『リュクサンブール公園』の一員。
neneroro 大阪市西区九条1-28-2
HP: http://neneroro.com/ BLOG: http://neneroro.blogspot.jp 
紙で作るてのひらサイズのアコーディオン風の楽器『papernica(ペパニカ)』
HP: http://papernica.com/ BLOG: http://papernica.blogspot.jp
てのひらサイズの小さなアコーディオン風の楽器『papernica(ペパニカ)』。とっても愛らしい見た目で、じゃばら部分を押したり引いたりすると、ぷぉーっと音が鳴ります。自分で世界に一つだけの楽器を作るのも、その場に居合わせた人たちと演奏するのも、楽しい!考案したのは、アコーディオンの修理・調律師として仕事をしながら、アコーディオン楽団『リュクサンブール公園』の一員としても活躍する岡田路子さん。“あきらめの悪さ”が今につながっていると言います。
人の手から手へと。可能性が広がる
『ペパニカ』を考案されたきっかけは?
私がアコーディオンを好きな理由の一つに「見た目がかわいい!」というのがあります。ヨーロッパの古いアコーディオンには、じゃばらに色や柄が入っていてかわいらしい。現代のものはそこまで装飾されていないので、かわいらしくする方法はないかと考えていたんです。

紙で立体物を作る本を見つけて、工夫すれば、じゃばらを作れるのではないかと、紙で研究を始めました。「角度を変えたら、どうなるかな」と夜な夜な試作を重ねて、アコーディオンのじゃばらを再現。今度は「音を出せるかもしれない!」とリードをはめて鳴らしてみたら、音が出た!

おもしろいので、アコーディオンぽい形に仕上げて、本物のアコーディオンの隣に並べてみたんです。すると、修理に訪れたお客さんから「これは何ですか?」「作れるんですか?」と話題となり、ワークショップを開催するようになりました。
1つ1音、みんなで演奏できるのが楽しいですね。
ペパニカは構造が単純なので、押しで1音、引きで1音の合計2音までしか出せません。そこを1つにつき1音とすることでシンプルにわかりやすくしました。ワークショップで6人ほど集まれば、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ」と曲演奏に必要な音が揃いますから、みんなで演奏しようと思いついたんです。

そこまでは想像していたのですが、ワークショップ参加者によって、想像を超えたさまざまな広がりを見せています。たとえば、高校のブラスバンド部のOB会でペパニカをたくさん作って演奏会を、障がい者向けの地域活動支援センターでは、これまでハンドベル演奏をしていたところを、ペパニカに持ち替えて演奏してくれたこともありました。

アコーディオンのじゃばら研究としてペパニカを作っただけなのに、みんなが「おもしろい!」と思ってくれて、さまざまな方法で楽しんでくれている。私も刺激を受けて「学校の教材にできないかな」など「こんなことをしてみたい」と夢が膨らみます。
ペパニカを通して伝えたいことは?
最初は、アコーディオンのことを知ってもらう普及活動になると思いましたが、今はそれに加えて、アコーディオン職人をめざす若い人が増えるきっかけになったらいいなあとも。ワークショップにはさまざまな年代の方々が参加してくださっています。

50代・60代の方々はペパニカ作りも器用にこなされますが、20代・30代と若い世代になると少々、不器用な気がしています。物に溢れた時代ですから、自分から「一から作る」という経験が失われてきているのではないでしょうか。ペパニカづくりを通して、構造を知り、興味やアイデアを刺激することができれば、ものづくりに興味を持つ若い人が出てくるのではないかと思っているんです。

 
続けていると、たどり着ける
そもそもアコーディオンをはじめるきっかけは何だったんですか?
高校時代にアコーディオン奏者のライブを観て、「一人でもこんなにかっこいいライブができるんだ!」と衝撃を受け、私もやってみたいと思ったんです。知人からアコーディオンを譲り受けることができたので、ピアノを習っていた経験を活かして独学でやり始めました。社会人になってからも、趣味でバンドを組んで活動を続けています。
趣味で始めたアコーディオンが修理・調律師のお仕事につながったのですね。
所属しているアコ-ディオン楽団『リュクサンブール公園』で自主制作CDをつくることになった時、調律がバラバラで合っていないことに気づいたんです。仕事をしながら有志で楽しくやっているバンドで、「とりあえずCDを出そうか」と話しているだけなのに、「そんな高額な調律代を用意できない!」となって。「じゃあ、私が調律を覚えたらいいんだ!」と単純に思ってしまったんです。

今思えば失礼な話ですが、調律をお願いに行った先で「教えてください」とお願いしました。すると、師匠もアコーディオンをやめてピアノ調律一本にしようと考えていたらしく、引き継ぎたいと弟子入りを快諾してもらえたんです。

CDのレコーディングまでに1年ほどありましたから、それまでには調律できるようになっているだろうと甘く考えていたら、そんなわけもなく、長期に渡って修行をすることに。一度追求し始めるとトコトンやらないと納得できない性格、もともと分解したり作ったりすることが好きだから、続けているうちに本業になっていました。
修理・調律師として仕事をはじめてから8年目。壁にぶち当たったそうですが・・・。
最初のうちは、海外の情報を集めたり、師匠以外の調律師にも話をうかがったり、フランス旅行の時は工房に突撃したり、勉強することがおもしろくてたまりませんでした。当時は修理・調律師だけでは稼げないので、アルバイトとかけ持ちをしていたのですが、アルバイト代はすべて勉強につぎ込んでいるという現状。「家族に迷惑をかけているだけだな」「やっている意味があるのかな?」という思いがふつふつと込み上げてきました。

仕事をもらおうと楽器店をまわっても門前払い、アコーディオンサークルに飛び入りで参加して名刺を配っても反応なし。さすがにしんどくなってきて、ピークに達したのが8年目だったんです。今年いっぱいで仕事のめどが立たないのであれば、思いきってやめよう。そう覚悟を決めたら、突如としてイタリア修行の話が舞い込んできて、かけてみることにしたんです。

イタリア修行に行ったおかげで、技術的に自分に足りないところ、もっと勉強しなきゃいけないところが見え、もう少しアルバイトをしながら頑張ろうと思えたと同時に、これまで門前払いしていた人たちが、修理や調律を依頼してくれるようになりました。それまでは「どこの誰かもわからない人」だったのが、「イタリアで修行」というところで実績と熱意を認めてもらえたんだと思います。
 
“あきらめの悪さ”はいいこと
8年目で辞める決断、それを乗り越えての今。壁を乗り越えたからこそ、わかったことはありますか?
“あきらめの悪さ”が今につながっていると気づきました。壁にぶち当たったとしても、気持ちさえあれば、そのうち何かしらのカタチになっていくだろうから大丈夫と信じられるようにもなりました。

以前、友だちが「何かやりたいけど、失敗したら嫌だからしない」と話しているのを聞いて、「失敗ってなんだろう?」と思いました。

たとえば、事業を大きく展開し過ぎて、莫大な借金を抱えて、工場を閉鎖したとしたら、失敗と言えるかもしれません。でも、自分の身の丈に合う、日常の手に負える範囲のなかで、少しずつでも始めると、自分がくじけない限りは失敗とは言わないんじゃないかなって。
「自分がくじけない限り」、岡田さんらしいメッセージですね。
世の中はペースが速くって、結論を急がされているように感じますが、自分が「好き!」「楽しい!」「おもしろい!」と思うところからやっていけば、“そのうち”を待てるのではないでしょうか。それが“あきらめの悪さ”です。他人からすると、遅いペースに感じるかもしれませんが、急いでカタチにする必要もないと思っていて、時間はかかるけれども、着実につながっていくものがあります。

私のまわりにはそんな「あきらめが悪い=マイペース」な人が多くて、みんな壁にぶち当たることもありますが、自分のやりたいことを自分のペースを崩さずにやった結果、その世界観や価値観でお客さんを掴んでいる人がいるから、私も「あきらめが悪くていいや!」と思うんです。
ワークショップで作ったペパニカを持って靭公園でライブ
ありがとうございました。
取材:2016年7月
「あきらめが悪い」。その一言が印象に残っています。自分が「好き!」「楽しい!」「おもしろい!」と思えること、プロセスを楽しめることと出会えるのは、とても貴重ではないでしょうか。それと出会ったのならば、気長に、「ああかな」「こうかな」と模索しながら、大切に育てていきたい。効率が悪くても、結果が出なくても。はたから見ると、無駄に見えたり、意味がないように思えたりすることでも。

私自身、ライフワークとして取り組んでいることに対して、「それで何がしたいの?」「どんな意味があるの?」「何をめざしているの?」と問われて、答えに困ることがあります。時々、まわりからいろんな声を受けて落ち込むことがありますが、岡田さんのお話を聞いて、私も「あきらめが悪く、いこう!」と勇気をもらいました。
取材:小森利絵
ライター/HP:『えんを描く』
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。



 

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