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■関西ウーマンインタビュー(クリエイター)
山本 佳世さん(コラージュ作家)
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■関西ウーマンインタビュー(クリエイター)
山本 佳世さん(コラージュ作家)

山本佳世さん(コラージュ作家)グラフィックデザイナーを経て2005年フリーに。書籍、雑誌に掲載の他、ワークショップの開催、年に10回ほど高校の非常勤講師も務める。「コラージュ・ブック」(BNN新社)、「リトルプレスの楽しみ、のつづき」(PIE BOOKS)の表紙、「MORE」(集英社)、「ゼクシィ」(リクルート)、「mina」(主婦の友社)などの女性誌でのアートワークを手がける。他にも個展や合同作品展に作品を出し、カレンダーやポストカード、レターセットなどをショップ販売。加えて、今年6月からトランプ、双六、ミニブックも販売を開始。 大阪府柏原市出身、大阪市在住。 |
WEB:http://lusikka-design.com/ |
コラージュなんて全く知らなかった私。 ある日ふらりと出かけた作品展で、コラージュの世界と出会った。 そして、それを作っている女性にも。 作品の第一印象は「何だコレ!?」作者の第一印象は「何だコノ人!」 何となくシュールで、お洒落なような、異次元のような…。 そもそもコラージュとは、バラバラの素材を組み合わせることで 作品を造る現代アートの創作技法の一つである。と、書いてある。 難しくて分からないけれど、要は色々な素材を切り貼りして組み合わせ、 一つの作品にしていくらしい。 今回はコラージュアーティスト山本佳世さんと楽しい一時をすごしてきた。 |
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ほんの少しのユーモアと可愛さ~コラージュと山本佳世~ |
スタートは古い印刷物の収集 | |
![]() 玄関ドアを開けた早々、ありきたりな挨拶を さっさと切り上げて、もどかしいように テーブルを指さす佳世さん。 「わっ、何コレ!すごい…」 気付いた時には万華鏡の長い筒を クルクル回していた私。 今まで知っていた万華鏡のイメージが 大きく変わった瞬間だった。 クリエイターたちの世界感を知るには、 制作の現場が一番と、 自宅取材をお願いしたのだけれど。 |
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彼女の作品を見る前から早くも[山本佳世ワールド]に踏み込んでしまった。 「この万華鏡たちは作家もので、私のコレクションなの」 お茶を淹れながら、慌ただしく万華鏡や部屋の小物を説明し始めた。 気がつけば、小さな物から大きな物まで、 愛おしく感じたらすぐに手に入れてしまう。 そんな彼女のコレクションたちが[山本佳世ワールド]の断片のような気がした。 デザイン事務所に勤めていた頃、 アンティークショップや古本屋、古本市巡りを楽しんでいた。 国内外にこだわらず、古い図録や雑誌、 とにかく何か描かれている古い「紙」に魅力を感じてしまうそうだ。 そんな趣味が嵩じて、気がつけばコラージュの世界にのめり込んでいった。 佳世さんがコラージュを手掛けるようになったのは、必然だったのでは… 部屋に飾られたさまざまなものを眺めていると、そんな風に考えはじめる。 |
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![]() すごろく&ミニブックセット:840円(税込) 不思議なコラージュの世界を旅する「すごろく」と 飾っているだけでも素敵な「ミニブック」のセット |
2005年フリーデザイナーとして独立後、 大好きなコラージュを 仕事の中心にしようと決心。 それまで作品は作り続けてきた。 けれど、ただコラージュが好きな 趣味の延長上ではなく、 プロになろうと一大決心をしたのだ。 当時はまだ「コラージュ」を 「コサージュ」と間違われることも度々で あたふたと説明し、やっとこさ理解される。 それぐらいの知名度だった。 もっと知って欲しい。 コラージュも、山本佳世も。 まずはWEBで自身の作品を発信し始めた。 そんなある日、転機が訪れる。 |
2009年「コラージュ・ブック/身近なものを切って貼って」(BNN新社)の表紙に 作品を提供することになった。 「めっちゃ嬉しかってん!! ほんまに、ほんまに。この一冊から始まってんよ」 昨日のことのように笑顔で、全身で伝える彼女。 「いつかは」と心に描いた初の書籍装丁(本の表紙デザイン)。 それが突然、現実となった。 何年経っても、あの時、心臓がギュッと止まりそうになって 深呼吸した息を、長く長くはき出した瞬間を思い出す。 この感動は、彼女の中で今も色あせてはいない。 その大きな喜びと共に、この一冊がプロとしての第一歩となる。 |
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人間味と温かさが山本佳世ワールド | |
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散歩をするには理由がふたつある。と、彼女は真面目にいう。 「運動不足解消と気分転換」 何て明確な理由だろう。思わずニヤリとしてしまう。 見たことのない不気味なキノコを発見したり、 花壇の隅に巣作りしている蜂を二日連続見守ったり、 (勝手に)定点観察している犬を柵越しに撮影したり、 野良猫をカワイイと思うものの、名前を付けると愛着がわくからと色で呼んだり。 この夏はレモングラス・ティーにハマり、 秋と冬は野菜スープで過ごすと楽しそうに話す。 (ちゃっかりとご相伴に預かったけれど、そこいらのカフェよりもずっと美味しい。) 片付けが苦手。 コラージュの素材や作品展でもらう紙も、大切に取っておくから。 |
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![]() だから、できるだけ美術展や 作品展に出向いて、 他の作家との交流を大切にする。 「なんて人間くさいアーティストだろう」 これが彼女の正直な印象。 アーティストって、 人間味が薄いのかと勝手に思っていた。 アートと人が好きで、 喋り出すと止まらなくて、 好きなものに囲まれて生きていたい と願う彼女。 |
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自由人とはまた違う。 ただ、とても素直に生きていると感じさせられる。 新しさと懐かしさを感じられるコラージュの世界を これからも、もっとたくさんの人に、広く知って欲しい。 ちょっとシュール、だけどユーモアを忘れない佳世さんのコラージュ。 そのために装丁をはじめ、多様な場所に自分の作品を発信したい。 |
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![]() コラージュトランプ:1,890円(税込) コラージュを知らない人に知ってもらうために、作品ができる過程をトランプで表現。 オリジナルの遊び方もできる。 |
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そんな彼女は、30代の頃の自分に会ったなら、まず謝るという。 「世の中に対してもっと発信していけるはずなのに、まだまだ努力が足りない」 今後は作家活動として、コラージュに物語をつけたアーティストブックを作りたいそう。 彼女の作品は、作家の人柄がにじみ出てフワリと心に残る。 山本佳世の世界を日常でふと目にすれば、心の奥がほんのり温かく、 「ほんの少しのユーモアと可愛さ」に、優しい気持ちになれる。 この冬は野菜スープを飲みながら コラージュ・トランプで過ごしてみようかな。 |
四十宮麻美 (よそみや あさみ) ≪ライター≫ |
![]() 外部スタッフとしてフリーペーパーの編集に約4年間たずさわり、関西と東海地方を中心とした高齢者施設の取材訪問数は400件以上。他にも情報サイト、情報誌の執筆や外部広報、広告ディレクターなど手がける。 趣味は読書と旅行。愛するものは冬のお布団と夏のかき氷。人生に必要なものは、白飯&明太子、果物、整体、温泉。最近のハマりものはヨーグルトパック。 自慢は10時間以上寝続けられること。 |
■関西ウーマンインタビュー(クリエイター) 記事一覧
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「自分がつくりたいものじゃないと作品が生きてこない」ユニークな形のカバンが人気の革カバン作家、山本さん
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「どんな人が作っているか、わざわざ来ていただいけるようになりたい」銀製かんざしアーティスト華枝さん
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「思い出を載せられるものを作れるのは、たまらない」一生ものの宝物を作れることは幸せという徳永さん
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「色を重ねていくことは人との繋がりや想いと同じ」クマのイラストに「祈り」を込めて絵本を出版されたツナ子さん。
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