HOME
■関西ウーマンインタビュー(クリエイター)
長野 陽子さん(帽子作家)
前のページへ戻る
■関西ウーマンインタビュー(クリエイター)
長野 陽子さん(帽子作家)

長野 陽子さん(帽子作家)アーティストネーム DEL-HITS(デルヒッツ) 京都府出身、大阪市在住。 バッグメーカーの企画部に勤務した後、2003年よりアーティストネーム「DEL-HITS」として作家活動を開始する。トルコなどヨーロッパの素材や国内の創作糸などを使用したオリジナル作品を制作。百貨店イベントを含むさまざまなイベントに多数参加。他にもネット販売やオーダーメイド受注も好評で全国にファンを持つ。 |
|
DEL-HITS HP https://www.del-hits.info/ |
「いつか自分のために創りたい」と笑うニット帽作家の長野陽子さん。 幼い頃にお母さんの趣味である手芸に触発されて編み物を始めた。 いつしか編み物を通して何かを作りだすことが大好きな女の子に。 気がつけばずっと「誰かのため」に編んでいた。 そしていつしか、自分の編んだ物を好きになってくれる「お客さん」のために。 そんな彼女が、自分のために編み棒を動かす日はいつやって来るのだろう。 |
大胆と優美を編む作家 | |
![]() 緊張しながら会いに行くと、土曜日の百貨店の喧騒の中とは思えないほど、ただ静かに編み棒を動かしていた。遠巻きに見てもそこだけ空気が違い、厳かにさえ感じた。 カラフルなニットの花園に埋まるようにして座っていた彼女。醸し出す独特な世界は、自身も作品であるかに思える。意を決して声をかけると、デルさんは「あら、こんにちは」と顔を上げやさしく微笑んだ。 |
|
「大胆で上品」「奇抜で優雅」 デルさんの作品は相反する2つの言葉で表現されている。その組み合わせの不思議さが圧倒的な個性を作り上げている。 その個性に惹きつけられるように、作品を一目見ると必ず手にとって見たくなる。子供から白髪のマダムまで、年齢も生活環境も全く異なるだろう女性達が、それぞれの想いを抱きながら。作品の個性に自分を委ねたくなるのか、はたまた自分に足りないスパイスを作品に見つけだすのかもしれない。 彼女はハッキリと「作品で勝負する」と言う。その目論見どおりに、人は作品を通して作家を想像する。いったいどんな人が創っているのだろう、と。 |
|
![]() |
|
デルさんの帽子を手に取れば誰もが驚く。素材の良さを活かした触り心地、緻密な計算によってデザインされた装着感。一見チクチクしそうな素材でも、手に取って見ると、それは柔らかくフワリと軽い。 このように完璧な作品を作り上げる人は、真面目以外の何ものでもない。 事実デルさん自身、真面目で几帳面で、そして人を想う心優しい女性なのだ。 |
|
![]() |
|
オーダーメイド以外、デザイン画もラフ案も描かない。素材を触りながらジッと動かずイメージする。頭の中がシンと静まってくると、フラットになる「不思議な瞬間」がやってくる。 静寂の中にストンと落ちてくると、そこから一気に編み目の数を決め、大まかな形が徐々に細部の構築へと移り、完成形のイメージ図になる。制作には12時間以上かかることもあるが、平均してその6割の時間をイメージに費やす。 それでも作品に同じものは一つもない。作れないのだ。仮に同じ素材で同じデザインであっても、一つひとつを手から生み出している以上、それは違う作品になる。作家が生みだす1点モノには、計り知れない「想い」が刻まれている。 「制作は楽しくなんてない」とデルさん。時には辛くなるほど真剣に向き合うこともある。 ようやく完成しても、そこで終わるわけではない。 「お客様に喜んでもらえるまでは、楽しいなんて思わない。」 ストイックに真面目で、どこまでも優しいのだ。 |
|
![]() |
|
デルさんの作品は素材がユニークだ。時には細く切った布を編んだり、ゴージャスなファーやクモの巣のような素材、羽がついた毛糸を使用することもある。 「元気になれるこの世界観が好き。」と言われることが一番嬉しい。誰かを喜ばせるために、素材で、デザインで、デルさんは誰知れずどこまでもイメージを追求する。 |
|
![]() |
|
作家として10年を迎えた今、これからチャレンジしたいことの一つに 「日常的な帽子を非日常的なアートにしたい」という。 帽子という概念を突き破ってみたいそうだ。 では、とっておきの「自分のもの」はいつ作るのだろう。 「DEL-HITSを辞めたとき」とデルさんは笑った。 作品を待ち望むファンは、「なんだか自分に自信ができた」「特別な気分になれる。」 「新しい自分を発見した」と言って憚らない。 帽子はただオシャレで被るだけじゃない。人生を変えることもある。 私も特別な自分に出会う帽子が欲しくなった。 いつもよりも大股で颯爽と、ちょっぴり胸を張って歩けるような帽子を、 早速デルさんに相談しよう。 |
|
![]() |
|
取材協力:(デルさんのお気に入りのお店) お洒落な本格スペイン料理居酒屋 「EL Nague」 |
四十宮麻美 (よそみや あさみ) ≪ライター≫ | |
1979年生まれ。20代で突然勤め先を退職しフリーランスと名乗りはじめた結果、気がつけばライターに。取材執筆を中心とし、緊張感のなさと相手の懐にグイグイ入りこむ厚かましさで、上辺だけではない踏み込んだ取材を得意とする。 外部スタッフとしてフリーペーパーの編集に約7年間たずさわり、関西と東海地方を中心とした高齢者施設の取材訪問数は400件以上。他にも情報サイト、情報誌の執筆や外部広報なども手がける。 愛するものは冬のお布団と夏のかき氷。人生に必要なものは、白飯&明太子、整体、温泉。自慢は10時間以上寝続けられること。 |
![]() |
■関西ウーマンインタビュー(クリエイター) 記事一覧
-
「音楽に関わりたい」がスタートライン職業や肩書きには囚われず、さまざまな肩書きを持つ岡安さん
-
「おもしろい!と思うものには目がない」出会いに感化されてイラストレーターの道を歩む暢さん
-
「自分が好きで動いてきたことは無駄じゃない」眠っていた印刷機を復活させ、活版印刷の味わいを伝える雅子さん。
-
「チャレンジし続けないと現状維持できない」1点1点手描きでマトリョーシカをつくる小林さん
-
「気の向くままを表現することが心地よい」布に絵を描くように独特な存在感の刺繍作品をつくる幸貴さん
-
「あるものを生かして自分らしい表現をしたい」「播州織」と出会い、ブランドを立ち上げた大塚さん
-
「続けるためにはどうしたらいいのかを考え続けて」帽子を作り続けて17年。秘訣は仕事の仕組み作り
-
「一家に一輪あれば平和の素になる」花を仕事にして32年の三品さん。長年続けてきたからこそ、見えたこととは?
-
「何者にもならなくていい」自身の表現に悩みながらイラストレーターから転身した青木さん
-
「体験をつなぎ合わせたら自然とこの形に」木工と音楽の2つを組み合わせる川端さん
-
「私が着てみたい服をつくる」自分のイメージを形にした洋服が大人気ブランドになった甲斐さん
-
「オーダーメイドはいつも新しいことへの挑戦」好奇心からのはじまりで現在のお仕事に辿り着いたという降矢さん
-
「自分がつくりたいものじゃないと作品が生きてこない」ユニークな形のカバンが人気の革カバン作家、山本さん
-
「人と人が出会うことで起こせる化学反応」アートスペース『ブリコラージュ』を運営する増谷さん
-
「人形劇をしたいというよりその世界に行きたい」人形劇で自分の思い描く世界を表現する亜矢子さん
-
「記憶に刻まれるカバンをつくりたい」自分発信のものづくりをしたいとカバン職人になった前波さん
-
「「私にしか」が自信につながる」ボタンづくりに魅せられ、創作することで素になれたと仰る山田さん
-
「その人の人生と結びつく、奥深いにんぎょうをつくりたい」人生を背負った相棒としてにんぎょうを創る入江さん
-
「個展は「お芝居」、ぬいぐるみと人形は「役者」」結成11年。自分たちが愛着を持てる人形を創り続けるお二人
-
「どこにどんなチャンスがあるかわからない」やわらかな色彩で魔法のような世界観を描く絵本作家の水穂さん。
-
「信頼しているから互いの仕事には口出ししない」オーダーメイドウェディングドレスのブランドを作る森下さん母娘
-
「自分がくじけない限りは失敗とは言わない」てのひらサイズのアコーディオン風楽器ペパニカを考案した岡田さん
-
「プロになるということは目がプロになること」パッケージデザイン界の「さかなクン」を目指す三原さん。
-
「どんな人が作っているか、わざわざ来ていただいけるようになりたい」銀製かんざしアーティスト華枝さん
-
「思い出を載せられるものを作れるのは、たまらない」一生ものの宝物を作れることは幸せという徳永さん
-
「色を重ねていくことは人との繋がりや想いと同じ」クマのイラストに「祈り」を込めて絵本を出版されたツナ子さん。
-
「人の想いを引き出せる写真を撮りたい」単身ニューヨーク等世界中を旅するカメラマン後藤みゆきさん
-
「元気になれるこの世界観が好き。と言われることが一番嬉しい」編み物が大好きだった女の子が全国にファンを持つニット帽作家に
-
「自分で作りたい」手芸が好きで手芸業界に就職。幼い頃からの想いを叶えるため作家に転身されたこのみさん
-
「一つ一つがニューヨークの香りがする」初めて訪れたニューヨーク。古い小さな雑貨との出会いからスーベニール創作作家に
-
「壁画に恋した作家」日本全国のみならず海外でも活躍中の「おえかきさきえ」こと今川さん。彼女の絵には数え切れないほどの幸せが隠れています。
-
「何もないまま帰国したら中身のない30代になってしまう」27歳の時オーストラリアのワーキングホリデー留学中に偶然出会ったチョークアート。
-
「趣味ではなくプロになろうと一大決心」一冊の本の表紙デザインから始まったシュールでお洒落な「山本佳世ワールド」