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■関西ウーマンインタビュー(クリエイター)


居野家 華枝さん(銀製かんざしアーティスト/Atelier華e)

 
居野家 華枝さん 銀製かんざしアーティスト
銀製かんざしと帯留を中心に、和のデザインを活かしたシルバージュエリーデザイナー。短大・モード学園卒業後 京都のウェディングドレスメーカーに就職。ドレスのパタンナー・デザイナーとして5年勤務。退職後、日本宝飾クラフト学院と京都の工芸工房鎚舞にて彫金を学び、2005年「Atelier華e・アトリエハナエ」開設する。国内で個展を開催する他、中国浙江省の国際交流博覧会、イギリス「世界芸術競技inロンドン」、フランス「ジャパンエキスポWABI-SABI」に出展、フランス芸術協会より「アール・ヌーヴォーの美グランプリ」授与されるなど海外でも作品を出展している。
Atelier華e (アトリエ ハナエ)
HP:http://hanae05.com/index.html   BLOG:http://ameblo.jp/atelierhanae/
もともとウェディングドレスのデザイナーをされていたそうですね。
大阪モード学園卒業後、ウェディングドレスメーカーに就職し5年間勤務しました。憧れて第一希望で入れましたが、やはりメーカーのデザイナ-となると制約が多く、「もっと自由なデザインがしたい」と思うようになりました。それに、ウェディングドレスは結婚前に女性に限定されるますから、もう少し広いターゲットの仕事がしたくて、在籍中から密かに次のことを考えていました。
ジュエリー制作に転向されたのはなぜ?
もともとデザインが好きなので、自分にできることは無いかといろいろ模索しました。陶芸やガラス工芸もやってみましたけど、食器や置物を作っても仕事にするには、何か違うなと感じました。

同じ作ることでも、私は身に着けるものでないとやる気が起こらないということが分かりました。そこで大阪にある「日本宝飾クラフト学院」に通い、その後京都の工房で彫金の勉強をしました。

銀を磨くには何工程もあるので、磨いて洗って、たぶん普通の方が写真で見れば、ほぼできたと思うような状態でも、そこからまだまだ磨かなければ完成しないというのが大変で、勉強を始めた頃は、なかなか努力って見えないものだと思いました。勉強し始めの頃は、売れるようになれば、いつでも職人さんに頼もうという気持ちでいましたが、今10年経って、ほぼ自分でこなせるようになったという感じです。
家紋をデザインに使おうと思われたきっかけは?
たまたまご縁があって、婚礼用貸衣装の会社で、マリッジリング販売のアルバイトをしていたのですが、そこでは着物の家紋入れ用に、家紋帳があったんです。そこで生まれて初めて家紋帳を見て、「これ全部家紋なの?」と、デザインのすばらしさに驚いたのがきっかけです。

デザインとしてこんなに素晴らしくて、なんておもしろいんだろうって。そこから自分でも家紋帳を買って眺めながら、これを帯留めにすると楽しいかな、かんざしにしても楽しいなとか、一人妄想していましたね。家紋はモノトーンで平面ですが、例えば千鳥だと、ちょっと丸みをつけて立体的になれば、ぐっとかわいいだろうなとか。家紋帳にしばらくはまってしまい、これ1冊あれば相当楽しいと思いました。

家紋は日本の伝統文様ですが、古人(いにしえびと)が考えた家紋デザインのユーモアのセンスに感動しました。例えばこの「桔梗形光琳鶴」は桔梗に見えますが、実は1つ1つが鶴が羽を合わせた形になっているんです。

またこの、「三つ割り重ね源氏車」は、平安貴族の牛車の車輪をわざわざ割って重ねて、より幾何学的に見えてすごくセンスが良いですね。そのひとつひとつの意匠にもびっくりしましたし、普通の皆さんは、そういうことを知らないと思うんです。なので見つけたときは、早く誰かに伝えたいと、一人ワクワクしていましたね。
その作品を「売る」ためには、どんなことを考えられましたか?
売るということに対しては、全く知識がありませんでした。デザインを考えるのが好きで、ついつい作品制作に没頭してしまい、一切動かなくなる。ただ作っていればいいと思っていましたが、それだけではだめなんだと気付きました。

一人でものづくりを始めるなら、技術はもちろんだけど、やっぱり人脈が大切かなと。 引きこもっていて、誰かが見つけてくれるだろうと思っていては、これを必要としている人に出会えない。ネットショップも、誰もが気軽にできるようになりましたし、写真だけではなかなか分かってもらえません。

放っておくとますます埋もれてしまうと思ったんです。自分の中に新しい風を吹かせるつもりで、交流会や仲間の展覧会などには積極的に参加したり、時間はかかっても、どこどこで展示会しましたといった、やってきたことを見てもらうしかないと思いました。
初めて百貨店の催事に出展されて、お客様の反応は?
2年目位に、知人のギャラリーさんのご縁で、東京・恵比寿の三越に呼んでいただいて、やっとたくさんの人に見ていただけると、喜び勇んで行ったんです。ところがいざ、「これは家紋なんですよ。素敵なデザインでしょう?」と言うと、へえーと驚いてくれますが、家紋と聞いたとたん、「うちの家紋って何だったかしら」とまず考えてしまうんですね。そして「他人の家紋は身に着けられないわ」となるんです。

家紋をご存知な方ほど敬遠される。私は家紋という日本の文様、そのデザインの素晴らしさを伝えたいのに、なかなか分かってもらえない。家紋と言ってしまうと、逆に1歩2歩引かれてしまうことが、すごくショックでした。

5000~6000もあると言われる家紋、この素晴らしい日本のデザインを、自分のものじゃないからと言って誰も使わずにいると、これから先も続いていくのだろうかと思うんです。さすがに着物に他人の家紋をつけるのはお薦めしませんが、お洒落なジュエリーとして、自分の好きな文様を身につけていただきたいなと思いますね。
海外でも作品を出展されています。
「現代日本のジュエリー作家」という本に載せていただいたこともあって、中国で開催された国際交流博覧会や、イギリスのヘンリームーアギャラリーなどに作品を出品しましたし、昨年(2014年)は、フランスのJapanExpoにも出展し、メインステージでのショーに当店の銀製櫛&かんざしが使われるなど、国内だけでなく世界の方にご覧いただく機会も多くなりました。

まだ子どもが小さいので、海外の会場にずっと付いていることは難しく、動画を作って言葉で説明しなくてもイメージで分かっていただけるようにしています。 ただセンスが良ければ売れるものではないので、やはりどういう人が作っているかが重要だと分かってきました。

今後の展望としては、動画やブログなどで発信するものを見てくださった方が、わざわざ京都に来て、世界からも来たいと思っていただけて、「実物を見てみたい。どんな人が作っているか知りたい」と思ってくれるようになりたいと思っています。
ものづくりで独立したい女性は多いですが、アドバイスされるとしたら?
もしデパートに出るチャンスがあれば、まず出てみることですね。もちろん不安もあると思いますし、売れなければ次は無いかもしれません。

でも出してみると、たくさんの人が見てくれて、なぜこの人はこの商品の前で止まったのか。ショートカットの方なのに、かんざしの前で止まったのは、「昔こういうの、家にあったから」とか、そういうお話が聞けると勉強になります。

それにもちろん、自分の作品を好きじゃない人も前を通りますから、「なんでこんな高いの?」とか普通に言われますし、売れなくて悔しい思いをするかもしれません。お友達は「良いね」と言ってくれますけど、それは間に気遣いがあっての言葉。買うかどうかとなると違いますし、まず自分でもなかなか言えません。

シビアなお客様の感想が聞けるだけでも、自分の作品に影響を与えられますし、次のチャレンジの機会に、きっと少しでも進歩したものを出せると思うので、勉強だと思ってチャレンジしてほしいですね。 
ありがとうございました。
(取材:2015年2月 関西ウーマン編集部) 
 

 

 

 


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