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■関西ウーマンインタビュー(クリエイター編)


前波 りか子さん(かばん職人)

記憶に刻まれるカバンをつくりたい

前波 りか子さん
(かばん職人)
機能的でシンプルなデザインだけど、カタチや色、素材の組み合わせなどをはじめ、細部にまでおしゃれな遊び心が光る前波りか子さんがつくる革カバン。デザインから縫製まで、1つひとつ手作りしています。

ベビー服、婦人服、カバンと、デザイナーとしてものづくりに携わる中で、「使う人の顔を見ながら仕事をしたい」という想いが募り、自身のブランド『r*kukka(アェルクッカ)』を立ち上げました。

願いは叶い、お客さまの声がダイレクトに届くようになりましたが、それゆえの悩みも出てきたと言います。同時に「自分発信のカバンづくりを」という想いを強くするきっかけにもなったそうです。

一体、どんなことだったのでしょうか?
使う人の顔を見ながら仕事をしたい
以前は婦人服メーカーにお勤めだったんですね。
働きながら服飾系の専門学校に通い、卒業後はベビー服から婦人服メーカーに転職しました。

会社では企画・デザインに限らず、ものづくりに必要なすべての仕事を経験させてもらえたので、子どもの頃からものをつくったり、何かを企んだりするのが好きな私にとって、刺激的な環境でした。

でも、「服」が持つサイクルの早さに、気持ちがだんだんと追いつかなくなっていったんです。

春夏秋冬に「梅春」「晩夏」を加えた6シーズンがあって、その間にセールが入ったり、「今はこんなものが売れているからつくって」という依頼も舞い込んだり。追われる一方で、ゆっくりと企画している時間がありません。

「想いや提案を込める企画部分にもっと時間をかけたい」という気持ちとの間に、ズレがどんどん広がっていきました。

少し視野を広げて、いろんなものを見てみたいと考え始めた時、服飾雑貨の一つであるカバンに興味を持ったんです。
カバンに興味を持ったきっかけは何ですか?
南船場でカバンのセレクトショップを見つけて、心にズキュンときたんです。

そのお店は、いろんなタイプのカバンを揃えていて、ディスプレイも店員さんの接客も、「このカバンを、こんなふうに服に合わせたいなあ」とイメージが広がるものでした。

もともと服だけではなくて「もの」そのものが好きなので、カバンの企画・デザインも楽しそうと、居ても立っても居られず、履歴書を送って電話を。

求人を募集していなかったのですが、オリジナルのカバンをつくろうとしていたタイミングだったそうで、採用してもらえることになったんです。
在職中に、ご自身のブランド『r*kukka(アェルクッカ)』を立ち上げられたそうですね。
入社して2年ほど経った頃のこと、自分発信のカバンをつくってみたくなったんです。

これまでベビー服、婦人服、カバンと、ものづくりに携わってきて、根底にはずっと「使う人の顔を見ながら仕事をしたい」という気持ちがありました。

でも、会社で働いていると、会社のコンセプトだったり、お客さまよりもお店に対する提案だったりするので、もう少し違う側面から発信してみたいと思ったんです。

一方で、会社の仕事も好きだったので、社長に許可を得て、会社に在籍しながらブランドを立ち上げることにしました。が、その矢先、会社の業務縮小によって私が所属していた部署がなくなることに。

他部署では両立が難しそうだったので、退職して自分のブランドに専念することにしたんです。
自分発信のものづくりを
「使う人の顔を見ながら仕事をしたい」。自分のブランドを立ち上げたことで、その願いは叶いましたか?
願いは叶いましたが、お客さまの要望がダイレクトに届くからこその悩みが出てきました。

「ポケットを1つ増やしてほしい」「持ち手を長くしてほしい」など人それぞれ、さまざまな要望があります。その一人ひとりの要望を、どこまでお受けするのか。

当初は自分で企画・デザインまでして、以降は工場に依頼していたので、個別対応が難しかったんです。

1回目の個展の時は、工場のご厚意で個別の要望にも対応していただけたのですが、「今後は個別の要望を受けることはできない」と。
それがきっかけで、現在のように自分でカバンづくりを行なうようになったんですね。
工場で半年かけて、型紙のつくり方や革の裁断方法、縫製の仕方など、カバンづくりの基礎を教えてもらい、そこからは独学で現在に至ります。

お客さまのことを考えるとフルオーダーのほうがいいと思うのですが、中には「あのブランドの、このカバンがほしい」といった他ブランドの実存するカバンをつくってほしいという声も。

私のオリジナルではないですし、カバンをただ生産するだけになってしまうのではないか。それは私のやりたいことではありません。

日常で使うカバンについては、自分発信で、お客さまに満足してもらえるものをつくりたいんです。

だから、楽器用など特殊なカバンの場合はフルオーダーでお受けし、困り事や悩み事がある部分についてはセミオーダーで対応することにしました。
1つの提案が、次へ、その次へとつながる
前波さんが「自分発信のものづくり」にこだわる理由は何ですか?
ベビー服メーカーで働いていた時から、デザインを通して「こんなものはどうですか?」と発信したことで、「それ、いいね」と気に入ってもらえたり、「ここをもっとこうしたら」とアドバイスをもらえたり、そのキャッチボールを積み重ねながら、ものをつくっていく過程が好きなんです。

自分ひとりでものをつくっているのではなくて、社内の担当者や店舗担当者、お客さまなど、さまざまな人たちとのやりとりを積み重ねることで、1つのものが出来上がっていく。

1つのものが出来上がっても、そこで完結するのではなく、「今度はこうしよう」と、次へ、その次へとつながっていきます。

けちょんけちょんに言われることもありますが、「じゃあ、もっとこうしたら」と次の提案が出てくるので、ものづくりをやめたいと思ったことはありません。
以前は会社の中で、現在はお客さまと一緒に、ものづくりをされているイメージですね。
お客さまの気持ちをどれだけ吸い上げて、反映できるか。

自分のスキル試しじゃないですけど、お客さまに気に入ってもらえて「これ、いいわね」と言われたらさらに上にいけますし、気に入らない箇所があれば吸い上げて、次に活かします。

さまざまな要望を聞いた上で、私の「じゃあ、こうしたらいいのでは?」という提案をカバンに込めています。

めざすところは、お客さまから「こうしてほしい」など要望が出ないカバンです。
記憶に刻まれるカバンをつくりたい
お客さまからの要望を、どのように引き出しているのですか?
「こんなカバンを持ちたい」という具体的な要望ではなく、ライフスタイルを聞き出します。

こんな靴を履いている。こんなものが好き。この秋はこんな服を着たい。今度ここにおでかけする。

雑談から想像を広げ、「サイズはこれくらいがいいかな」「こんなところに出かけるなら、こんな使い方もできるといいよね」と自分の中でカバンを組み立てていきます。

そうして出来上がった自分発信のカバンを、お客さまと見ながら、にやける瞬間が楽しい。

最近作るバッグは全て、明るめの裏地を使用しています。これは数年前に、暗いと見えにくいのよね、というお声から、なるべく明るめの裏地を使ったことがきっかけで、今に至ります。

お客さまにいきさつを話して、「確かに!」「こういうのがあるといいと思っていた」とにやけてもらって、私も「でしょ!」とにやける・・・そんなやりとりがたまりません。
カバンに携わって15年。前波さんにとってカバンの魅力とは?
カバンには、いろんなものを詰め込めますが、思い出も詰め込めると思っています。

服とは異なり、お気に入りを1つ見つけたら毎日でも使えますから、その時々の自分の思い出がカバンには宿るのではないでしょうか。

たとえば、写真で当時のお気に入りのカバンを見ると「そういえば、このカバンを持って、こんなところに行った」「あの旅行でこんなことがあった」と、押入れに閉まったカバンを取り出すと「あの頃はこのカバンをよく持って出かけていたな」と。

記憶の扉を開くアイテムになってくれるような気がします。私はそんな記憶に刻まれるカバンをつくっていきたいんです。
前波 りか子さん
服飾系の短大を卒業後、ベビー服メーカーに就職。会社に在籍しながら、「専門知識を身につけたい」と専門学校に進学。卒業後は婦人服メーカーに転職したが、2002年にはカバンのセレクトショップ運営およびオリジナルカバンの製作等を手掛ける会社に転職した。会社に在籍しながら、2004年に自身のカバンブランド『r*kukka(アェルクッカ)』を立ち上げ、「二足のわらじ」となる。同年、会社の業務縮小により、退職。2005年にカバン工場で基礎を学び、自身で革カバンを製作するようになる。2007年に自身の革カバンと作家の作品を集めたアトリエ兼ショップを中崎町にオープン。2014年に建物の建て替えに伴って立ち退き、以降は全国各地で販売会と委託販売を中心に販売している。
r*kukka(アェルクッカ)
BLOG: http://yaplog.jp/r-kukka/
FB: r.kukka
(取材:2017年7月)
「使う人の顔を見ながら仕事をしたい」「記憶に刻まれるカバンをつくっていきたい」と前波さん。お客さまの要望を聞いて、どう表現していくのか。フルオーダー、セミオーダー、前波さんのように要望を聞いた上で自分自身の提案も重ねて表現する・・・など、人それぞれ、さまざまな方法や手段があるのだと思います。

もし、まったく同じ目標を持っていたとしても、「どんな方法で実現するのか」「どんな手段を選ぶのか」によって全然変わってくるので、方法や手段にもその人らしさが表れるのではないでしょうか。目標と同じように、「どんな方法や手段によってめざすのか」も大事であり、それによって目標の実現の仕方も、過程の楽しみ方も異なってくるんだと、前波さんのお話をうかがいながら思いました。
小森 利絵
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』

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