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■関西ウーマンインタビュー(クリエイター編)


山本 弥生さん(革カバン作家「repique」)

自分がつくりたいものじゃないと、作品が生きてこない

山本 弥生さん
革カバン作家「repique」
地中深く古代の地層に存在していたかもしれない生き物、身近に存在する美しい造形のダンゴムシ、青い空に浮かんで流れる雲、「なんじゃ、こりゃ!」な破壊力を持つ見た目のドリアンなど、「repique(レピケ)」山本弥生さんがつくる革カバンはどれもユニークです。

自然や旅先の風景などからインスピレーションを受けて、自分の中から湧き出てくるものを、まるで立体アートをつくるように1点1点手づくりされています。

「使いにくい」ことも、決してマイナスではないと話す山本さん。どのように、自分の中から湧き出てくるものを「革カバン」という形で表現し続けているのでしょうか。
「おもしろそう」という自分自身の感覚を大切にして
以前はテキスタイルデザイナーをされていたそうですが、革カバン作家になるきっかけは何だったのですか?
会社の先輩から「近所におもしろいところがあるから行ってみよう」と誘われて行ったのが革工房で、革カバンづくりとの出会いでした。

革や金具といった材料、見たことのない工具、機械類のあるものづくりの現場、そして自由な発想で生み出されていく作品にワクワク。

当時、私は繊維会社でテキスタイルデザイナーをしていました。ちょうど手描きからコンピューターに移行していた時期で、コンピューター上での作業にものづくりをしている感覚を持てずにいたので、平面的な革が立体になっていく過程がとても魅力的に映ったんです。

「おもしろそう」という興味から工房に出入りするうち、会社を辞めて、昼間は派遣の仕事をしながら夕方に工房でお手伝いをするようになりました。

工房の工具や機械類を使わせてもらって、自分でも革カバンづくりを始めると、知人から「私にもつくってほしい」と依頼が。自分がつくったカバンを後々までフォローしていけたらいいなあと想いが膨らんで、独立してアトリエを持つことにしたんです。

「革カバンづくりを一生の仕事にしよう」と気負ったことはなく、「自分が好きなものをつくりたい」という気持ちだけで進んできたように思います。それから20年が経ちます。
店頭やネットではなく、展覧会での作品発表を中心にされているんですね。
小物は雑貨店等で販売していただくこともありますが、カバンは個展やグループ展など展覧会で発表しています。

実際に手に取って素材感や使い勝手を感じてほしいですし、革について「雨に濡れてシミになった」「色が変わってきてがっかり」と思われるのが悲しいので、特性や経年変化について説明し、育てていくおもしろさもお伝えできれば、と。

また、人それぞれ体格や雰囲気が異なるので、その人に合うカバンをつくりたいと、セミオーダーを受け付けています。

会場でセミオーダーを受け付けることで、直接お話しできますし、お会いした印象や雰囲気などから「この人はスポーティーな感じだったなあ」「この人はかわいらしいものが好きだったなあ」などイメージできることも増えます。

その方の体格に応じてモチーフを少し小さめにするなど、要所要所でその人に合うつくりにアレンジすることもあって、出来上がったカバンがその人にピタッとはまる瞬間がすごく嬉しいんです。
自分の中から湧き上がるものを革カバンで表現
カタツムリにダンゴムシ、ドリアンなど、山本さんのおつくりになられる革カバンはどれもユニークですね。
アトリエを持った当初は「こんな形のカバンをつくってほしい」「普通のトートバックがほしい」などいろんな依頼に応えていましたし、企業のノベルティ製作など数の多い仕事も受けていました。そうやって収入が見込める仕事をすることで、工具や機械類を揃える足固めの時期だったんだと思います。

それから3年ほど経って2001年に初個展を開催した後から、自分らしいものづくりを考えるようになって、自分の中から湧き出てくるものをつくりたいと今に至ります。「売れそうなもの」ではなく、自分がつくりたいものをつくらないと作品は生きてこないから、好きなものをつくろうって。

もともと前の工房にいた時、自分が好きなようにカバンをつくり、それを見た知人から「私にもつくってほしい」と依頼されたのが始まりだったので、原点に戻った感じです。
それぞれのカバンには、どんなイメージが表現されているのですか?
初期の頃は曲線のカバンをつくっていましたが、「どんな形であっても物が入れば、カバンになるんじゃないの?」と思い至って、ますます自由に表現するようになりました。

自然や旅先の風景からインスピレーションを受けて、持っているだけで口笛やハナ唄がこぼれてくるようなカバンづくりをめざしています。

たとえば、「ララミディア」シリーズは古代の大陸をイメージしています。今、自分が立っている足元のずっとずっと下のほうにはこんな時代があったのかなあと想像を膨らませながら、三葉虫や海だった時代に存在していたかもしれない生物をモチーフに取り入れています。

そのほか、ダンゴムシは一見すると気持ちが悪いですが、さまざまな形に変化してユニークですし、造形的にも美しい。ドリアンは見た目が強烈で虫っぽく見えますし、食べ物と知らなければ、「なんじゃ、こりゃ!」みたいな感じで(笑)。

「どうして、こんな形になったの?」と思わせる自然の造形の美しさ、その造形には一つひとつに意味があって感動します。「これをカバンにしたら、どうなるだろう」と自分の中で形やイメージを消化して、自分の表現としてカバンを形づくっているんです。

「ララミディア」
自然から受けたイメージをカバンとして表現する際、どのような過程を経るのですか?
自分の中から湧き出てくるものをつくりたいという気持ちが先にありますから、「これを表現するにはどうしたらいいんだろう」とつくりながら解決するしかないんです。

下描きならぬ、チャラ描きをして「だいたいこんな感じ」という出来上がりのイメージを持ち、自然界には曲線のものが多いですから、フリーハンドで型紙をつくります。

あとは試作用の革を使ってパーツごとにつくりながら、「こうしたら、こうなる」「じゃあ、こうするには、これをするといいのでは」など試行錯誤の連続。時にはつくるうちに新しいイメージに変わっていくこともあります。

パーツがだいたい出来上がると、本番用の革で全体を形づくっていくんです。

こうして1つの作品が出来上がっても、セミオーダーを受けてお一人おひとりに合うようにつくる過程で、手仕事ですから縫う位置や力加減などによって変わってくるものがあり、どれも同じには仕上がりません。

「この通りにつくる」ではなく、「最終的にはこんな感じ」というゴール地点に向けて、毎回アドリブでつくっているという感じです。

「ドリアン」
「使いにくい」はマイナスではない
表現と、カバンとしての使いやすさ。その両立は難しいのでは?
オブジェをつくりたいとは思わなくて、自分の中から湧き出るものを表現したいですが、「革カバン」であることにこだわっています。革って使えば使うほどに育っていくので、一人ひとりの愛着のあるカバンに育てていただけたら嬉しいなあと思うからです。

表現と使いやすさを考えた上で、どこを落としどころにするかはいつも悩みます。パッとひらめくこともありますし、何年か越しに形になることもあります。出来上がってみたら、思ったより面白くできなくて、ボツにすることも。

それに「使いにくい」ことも、マイナスではないと思うんです。

たとえば、青い空に浮かんで流れる雲を表現したカバンは、サイズが大きくても形が四角ではないので、A4サイズが入らないものもあります。じゃあ、機能性を重視して「A4が入るように四角くするのがいいの?」と言ったら、そうではないと思うんです。使いやすさを追求し過ぎると、味わいも、おもしろみもなくなってしまいます。

使いにくさは愛着にもつながるとも考えていて、ペットで例えると、「この子、本当に言うことをきかんわ」という子ほどかわいいじゃないですか。気になるし、手がかかるし。カバンもそうで、「この子は本当に!もう」というところが愛着になり、「物」じゃなくなると思うんです。

現に、お客さんは私の想像を超えてさまざまな使い方を発見し、それぞれが自分の暮らしに合うようにカバンを育て、相棒にしてくれています。
「カバン=使いやすいことがいい」と思いがちでしたが、「使いにくさもマイナスではない」とは、なるほどです。その考えに至ったのはなぜですか?
私ってあまのじゃくなんだと思います(笑)。

昔から他人が「いい」と言うからと言って、自分も「いい」とは思わないというか、他人は他人、自分は自分というところがあって、自分の好き嫌いをすごく大事にしてきました。

振り返ると、大学進学の時は高校の先生に「美術系に行ってみる?」と薦められて「その学科、おもしろそう」と進学したり、就職の時もテキスタイルデザインと聞いて「色彩に興味があるから、いいなあ」と決めたり、その時々感覚的にほわんほわんと生きてきたんですけど、嫌なことは一切選択していないんです。たまたまうまいこと、自分に合う選択肢と出会えていました。

嫌なことには「ノー」と言える人間ですから、たとえば「既存のカバンと同じにつくってほしい」という依頼に対しては再現することはできないし、私じゃなくてもいいものだからお断りしましたし、カバンの製造工場を紹介してあげるという話にも私が全工程をつくらないと別物になってしまうからと遠慮しました。

世間や他人がどうかではなく、その時々、自分が好きと思えること、やってみたいことを選んで、今があります。
近い未来、お仕事で実現したいことは何ですか?
普段はずっと一人でものづくりをしているので、展覧会でさまざまな人たちと出会えるのがすごく楽しみなんです。個展は準備など大変ですが、なくなるとさみしいから、ゆるく、ながく、続けていきたいと思っています。

17年前の初個展以来つながりのある人、「つくってもらったカバンです」と見せに来てくれる人、中には作家とお客さんとして出会ったけれど、一緒に旅行するまでに仲の深まった人もいて、長いお付き合いのお客さんが多いから、もうお友だちみたいな感覚。

個展の時もカバンを買ってほしいというより、「会いに来てくれて、ありがとう! 今年も会えて嬉しい」という感じ。わざわざ来てもらうから、「楽しんでほしい!」という気持ちで準備しています。

出会いを、これからも大事に。手仕事でつくることのできる数も限られていますから、一つひとつを丁寧につくっていきたいですね。
profile
山本 弥生さん
大学時代は美術科絵画コースに在籍し、立体作品の制作に取り組む。大学卒業後、繊維会社でテキスタイルデザイナーとして2年勤務。在職中に革カバンづくりと出会い、革工房に出入りするようになる。転職して派遣社員となり、夕方は革工房を手伝う日々を4年ほど続けた。1998年に自身のアトリエをオープン。2009年からスペイン語で「響き、(鐘・太鼓を)打ち鳴らす」という意味の「repique(レピケ)」を名乗る。2001年に初個展を開催し、以降は年1~2回開催する個展を中心にグループ展出展など、全国各地で作品を発表している。
repique
HP: http://repique-bag.com/
(取材:2018年4月/撮影協力場所:お伽工房 https://otogi-kobo.space/
editor's note
「『使いにくい』ことも、マイナスではない」という山本さん。「カバンだから使いやすいものを」と勝手に思い込んでいた私にガツンと響いてきたメッセージです。

そんなふうに、無意識のうちに「これはこういうもの」「こうあるべきもの」といった価値観や思い込みがあって、それが自由な発想を狭めているんだなあと気づきました。

山本さんは「自分が好きなものをつくりたい」「やってみたいことをやりたい」という想い、その選択の積み重ねから、そういった価値観や思い込みを取っ払うことができているのだと思います。また、カバンについて「物が入れば、カバン」とご自身で考えた結果、大きな枠組で捉え直すことができているから、こんなにも個性的でユニークな革カバンをつくることができるのだとも。

山本さんいわく、山本さんの革カバンを初めて見るお客さんは「え?!これがカバンなの」とびっくりされるそうですが、2回目、3回目と回を重ねるごとに馴染んでいかれるんだとか。山本さんの革カバンは見る側の価値観や思い込みを壊し、新しい視点を与えてくれるように思うので、そのお客さんの反応もわかる気がしました。
小森 利絵
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』

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