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■関西ウーマンインタビュー(アーティスト編)


中田 彩葉さん(女優)

誰かに必要とされるかではなく、自分がやりたいかどうか

中田 彩葉さん
女優
戦国時代や江戸時代、終戦直後を舞台にした物語を、野外演劇というスタイルで公演してきた「劇団犯罪友の会」の看板女優であり、「関西現代演劇俳優賞」最優秀女優賞を2度受賞した経験のある実力派女優の中田彩葉さん。

近年は舞台のみならず、映画やドラマに出演し、2018年公開の映画『ロッキンハートブレイカーズ』では主演を務めるなど活躍されています。

中田さんは当初、ピアノの調律師をめざしていたそうですが、一気に方向転換。21歳の時に女優をめざし、今の劇団に入団しました。それから24年、現在のように活躍するようになったのはこの数年のことで、「実力と、現実の矛盾に気づいて、自分のやり方は間違いだったのかもしれない」と悩んだ時期もあったそうです。

「役者では食べていけない」などの理由から3~5年ほどでやめていく人が多い中、中田さんは長年芽が出なくても「やめたい」と思うことなく、続けてこられたと言います。その根っこには、どんな想いや覚悟があったのでしょうか。
高校時代に抱いた憧れを実現すべく、動く
ピアノの調律師をめざして専門学校に通っておられたそうですが、途中で方向転換。女優をめざすきっかけは何だったのですか?
今だったら「1回やってみてあかんかったら変えたらいい」と思うのですが、10代の頃は真面目すぎて(笑)。「一度就いた仕事は一生続けないといけない」という価値観があって、子どもの頃にピアノを習っていて好きだったということもあり、「一生の仕事=手に職」という発想から、調律師をめざしていたんです。

でも、専門学校で学び始めると、技術の世界だから難しく厳しく、「これを一生の仕事にするのは無理じゃない?」と思うように。親からは「途中で退学するのはよくないから、卒業だけはして」と言われたので、一応卒業したものの、「やっぱり、この仕事じゃない」と思ったんです。

それから、フリーターをしながら期限を決めず、自分は何をしたいのかを考えました。

専門学校に行く時も、自分のしたいことを考えての選択でしたが、「受験までに決める」という縛りがある中での思考。期限もない中で思う存分考えられるようになると、自分の中からいろんな選択肢が出てきました。

その1つが、役者だったんです。

高校時代に友だちに誘われて大学生のサークルによる芝居を観に行った時、舞台装置がなくても、役者の芝居で場面が変わるのに衝撃を受けたことが心に残っていました。その記憶が、野外に1から劇場を組んで公演する劇団のドキュメンタリー番組を観た時によみがえり、自分の中でつながるものがあったんです。

あの芝居を観た時から、役者に対する憧れがずっとあったんだと思います。当時は「一度就いた仕事は一生続けないといけない」と思っていたから、役者で食べていけるのかを考えると、「私には無理や」って選択肢から外したんです。でも、根っこではずっと、役者をやりたかったんだと思います。

ひねくれものだから、本当にやりたいことを口に出して言えず。そんな私をよく知り、見てくれている友だちは、口に出さなくてもわかってくれていて、「芝居、やってみたらいいやん」と背中を押してくれたから、覚悟が決まりました。

雑誌で劇団員募集の案内を見つけて、あのドキュメンタリー番組の劇団とは違うけれど、野外に1から劇場を組んで公演するという劇団。劇場も含めて世界観をゼロからみんなでつくっていくことに興味があって、「ここだ!」と思い、電話しました。それが、今の劇団です。
役者をめざして入団してから24年。これまでに、どんな「壁」または「悩み」を経験されましたか?
春は室内、秋は野外で公演をする劇団で、野外での場合は野宿しながら10日から2週間ほどかけて劇場を組み立て、1週間公演をして、5日でばらします。

初めての公演が東京での野外公演だったので、体力的にも大変でしたが、これまで経験したことのない初めてのことばかりで刺激的。「ああ、自分のやりたかった世界の中身を見ているんだ」という感じで、目の前のことに精一杯な日々でした。

入団から5年ほど経つと、先輩がパンッと抜けた時期があって、すると自然と私も重要な役をもらえるように。さらに5年ほど経つと、後輩が増えてきたり、ほかの役者との交流が深まったりして、「こうなりたい」「こうはなりたくない」というのがわかってきて、自分がどんな芝居をやりたいのかも見えてきました。

ちょうど、その頃、30代目前のことだったと思います。実力と、現実の矛盾に気づいて、自分のやり方は間違いだったのかもしれないと思ったことがありました。

役者をやろうと決めた時からずっと「うまくなりたい」と思って突き進んできました。

練習をきっちりして、演出家が要求することに応え、経験を積み重ね、うまくなっていけば、さまざまな仕事に声がかかり、役者だけで食べていけるようになるなど、自ずと道は拓けると信じてきたのに、現状はそんなに変わっていきません。

そもそも「うまくなりたい」の、「うまい」って何?

「うまい=技術」と思ってきたけれど、技術がうまいからといって、その人の芝居が自分の心に響いてきたかといったら、必ずしもそうではありません。技術がなくても、「なんか心に残るなあ」という芝居をする人はいます。

それに役者だけで食べていこうと思うなら、技術を磨くより、事務所所属など先にやるべきこともあったなと(笑)。

いろんな方法や可能性があるけれど、自分のしたいことは何なん?

自問自答の末に、自分を信じるしかないと思って、乗り越えた気がします。
その世界の中にいる、その人を生きたい
自問自答の末に見つけた、中田さんがしたいこととは?
芝居は、個人の自己表現ではなく、誰かがつくった世界の中で表現するもの、関わる人みんなで表現するものです。

そう思った時、いつの頃からか「芝居をする」というより、「その世界の中で生きたい」「その人自身を生きたい」と思うようになっていました。

子どもの頃から本を読むのが好きで、特に実在人物の偉人伝みたいなのを好んで読んでいたように思います。今も、ふと気になって観るのは、ドキュメンタリー番組が多いんです。だから、芝居をしていても、生で生きている人にしたい、フィクションやけどノンフィクションにしたいんやと思います。

「その人になりきる」でも、「その人が宿る」でもありません。

1時間半の芝居なら、「その人」が生まれてから死ぬまでの人生の一部分を芝居として表現します。芝居中は、私はその人で、その世界の中で生きていて、観る人たちもそう観てくれています。

後付けかもしれないけれど、高校時代に役者になりたいと思った根っこには、「いろんな人生を生きてみたい」という気持ちがあったように思います。私は自分のことが好きじゃなくて、どこか否定的に思っていたところがあったから、「他の人の人生を生きてみたい」って。

それは今も変わらず。「いろんな人生を生きてみたい」と思うから、出演作を選ぶこともほぼほぼなくて。声がかかって、予定さえ合えば、さまざまな作品に出演したいと思っています。
その役を生きるために、どんなことをされていますか?
すごくわかりやすく言うと、小説を読む時に、主人公など登場人物について、「どんな人物か」など人それぞれ、自分なりに勝手に想像するじゃないですか。それと同じです。台本を読んで、自分から出てきたイメージの人に近づけていく感じです。

わからないところは、台本を書いた人に聞きます。「どうして、この人はこんなセリフを吐くのか」など聞くと、答えが返ってくるので、人物像や思考と行動のパターンを組み立てていきます。

自分は「こうだ」と思って芝居をしても、演出の人から「そうじゃない」と言われることもあります。その時は、私の意図を伝え、演出の人の意図を聞き、ディスカッションして納得してから、また1からそのセリフへの想いをつくります。

言うのはアドリブではなく覚えたセリフだったり、その人の言葉にするためにセリフを何百回も練習したり、稽古を重ねたりするので、「その人を生きる」という感覚との両立が難しいところもあります。段取りにならず、初めての練習時のような気持ちや感覚が大切なんだと思っています。

また、自分の予想外の行動をする時が一番、いい状態で芝居ができているんじゃないかなとも。私ではなく、「その人」がした行動のような気がするからです。

そう思う私はあまりいい役者じゃないと思います。
ご自身で「あまりいい役者じゃない」と思う理由は?
そういう予想外を制御できる役者さんのほうがいいと思うんです。

頭の中で考えながら芝居をしているので、自分では制御してもっと賢くできると思っていたんですけど、できないこともあって。もうしょうがないと思っています。

与えられた世界の中で、その人を生きたいという一心で芝居をすることで、これまで納得してもらってきましたし、その芝居がいいと言ってくれる人もいます。

私が出演する舞台を見て、「映画を撮りたい」と声をかけてもらい、その監督が作品を撮る時は声をかけてもらったり、そのつながりで仕事をいただけるようになったりしています。

先ほど、実力と現実の矛盾に気づいて、自分のやり方は間違いだったのかもしれないと悩んだと話しましたが、ドラマや映画は撮影してから公開まで時間が開くので、すぐに結果や評価などをもらえません。だから、現実が変わっていかないもどかしさがあったんだと思います。

20代後半に取り組んでいたことの結果や評価が追いついてきて、30代からは次の仕事につながっていくようになりました。

それからは、すぐに結果を求めるより、今取り組んでいることが、自分自身の成長や次の何かにつながるんだと考えていけばいいのかなあと思うようになりました。
「役者になりたい」と思った時の、初心を忘れない
「結果や評価が出るのに時間がかかるから、役者だけで生活していくのは難しいと3~5年ほどでやめる人が多い」と聞きました。現に、中田さん自身も「結果や評価が出るのに時差がある」とのこと。そんな中、どうして役者を続けてこられたのですか?
初心を忘れないことです。

役者になりたいと思って劇団に電話をした時は、誰に必要とされていなくても、自分がやりたいという気持ちだけで、物事が動いていったわけじゃないですか。

でも、人って、何年も経つと、自分がもともとやりたかったという気持ちが薄れていって、自分が必要とされることのほうに重心を置いて、必要とされたくなってくるんです。

たとえば、「ほかにこんなことをしたいけど、今ここを抜けたら、困るだろうな」と思うことがありますが、自分がそこを抜けても代わりの人が入ってくるからなんとかなるはず。また、「私、今ここに必要じゃないんちゃうん」と思うこともありますが、自分が望んでここにいるんやろうって。

誰かに必要とされるかされないかではなく、自分がやりたいかどうか。実はシンプルなことだと思います。必要とされているかされていないかを差し引いた後に、自分がまだ「やりたい」と思うなら、やめるべきじゃない。ただそれだけ。それが初心を忘れないということです。
「初心を忘れない」、シンプルなことですが、とても難しいことでもあると思います。
役者をやろうと決めた時から、この最初の気持ちだけはずっと忘れずにいようと思いました。

生半可な気持ちで入れる世界ではないし、その世界に入ると決めたんだから、ずっと続けていくためには、この気持ちだけは絶対に忘れたらあかんって。

それは今でも変わりません。
近い未来、お仕事で実現したいことは何ですか?
すごく、難しい質問ですが(笑)。

これまで「役者だけで食べていきたい」というこだわりがあまりなかったのですが、「売れなあかんやろう」とおっしゃってくれる人たちがいて、映画やドラマなどにも出させてもらえるようになり、今があります。

そうやってお世話になった方々に、私が役者として芝居をすることで、いろいろ返せていけたらいいなあと思っています。
中田 彩葉さん
専門学校卒業後、1996年に「劇団犯罪友の会」に入団。2006年と2011年に「関西現代演劇俳優賞」最優秀女優賞を受賞。2017年には映画『菊とギロチン』、2018年には映画『ロッキンハートブレイカーズ』、2019年にはドラマ『元町ロックンロールスウィンドル』に出演など、舞台のみならず、映画やドラマでも活躍。2020年には映画『デッドフラワーズ』が公開予定。
劇団犯罪友の会
HP: https://hantomo.wixsite.com/hantomo
(取材:2019年11月)
まわりから「必要とされているか?されていないか?」ではなく、自分が「やりたいか?やりたくないか?」というお話、すとんと落ちてきました。

自分がやりたくて始めたことも、気がつくと「必要とされているか?されていないか?」を軸に考えていて、自分の本当の気持ちより、「まわりのために」というほうを優先するようになります。ですが、自分が「まわりのために」と思っていることは、本当に「まわりのため」になっているのでしょうか? 自分の力を過信して、うぬぼれているだけということもあると思います。

また、「必要とされているかどうか」も大切な要素かもしれませんが、そこを重視するがあまりに気持ちが腐ることもあるのではないでしょうか。「本当はこうしたいけど、ここを離れられないから」と、我慢する。その気持ちが驕りになったり、ストレスになったりするほか、うまくいかないのを他人や何かのせいにすることにもつながるように思います。

多くのことは、自分が抜けても大丈夫なんだと思います。何事も、そんなふうにしてまわってきたのだから。

自分が「やりたいか?やりたくないか?」とシンプルに考え、始めた頃の気持ちに立ち返ることで、驕らず、腐らず、また純粋な気持ちで、目の前のことと向き合い、続けていけるのだと、中田さんのお話をうかがって思いました。
小森 利絵
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』

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