HOME ■関西ウーマンインタビュー(アーティスト) 游 礼奈さん(ダンサー/大阪芸術大学 大学院生) 前のページへ戻る
■関西ウーマンインタビュー(アーティスト)
游 礼奈さん(ダンサー/大阪芸術大学 大学院生)
游 礼奈さん (ダンサー/大阪芸術大学 大学院生)
大阪芸術大学舞台芸術学科を卒業後、同大学院に首席入学、修士号取得。主にクラシックバレエやコンテンポラリーダンスの舞台で活躍中。上海万博にて堀内充振付の舞踊作品を踊り高い評価を得るほか、KAORI aliveメンバーとしてロサンゼルスで開催された18th VIBE dance competitionに参加し、第3位受賞。その他、なかの国際ダンスコンペティション1位入賞など、国内の舞踊創作コンクールにて自ら振付・出演し多数の受賞歴あり。現在、大阪芸術大学大学院にて、舞踊の博士号取得を目指している。現在、京都でロングラン公演中のノンバーバルパフォーマンス『ギア』に、ドールパートとして出演中。 |
大学院で舞踊の博士号を目指すきっかけは? |
4歳からバレエを習い始めてから、バレエダンサーになりたいと思っていました。小学校6年生くらいの時、習っているスタジオに講師として来られた先生がすごくステキで憧れてしまって。その方が大阪芸術大学の大学院を卒業されていたので、私も芸大に行く!と決めました。 大学に入ると、バレエだけじゃなくてもっといろいろ試してみたい、オーディションも受けてみたいと、何か違うことをやってみたいという気持ちも出てきました。当時の教授から、「ポジションを選ばなければどこかのバレエ団に入れるかもしれないけど、あなたはそれで満足かな」と言われことがきっかけで、バレエ団のオーディションを受けず、大学院で振付の勉強をすることを決めました。 大学院では、先輩方は「踊りにおける呼吸の間」といった難しいことを研究されている方もおられますが、私はあくまでも、プレイヤーの立場で、踊りを作る、振付けるという分野で研究論文を書きたいと思っています。 |
創作ダンスを作ってコンクールに出ておられますね。 |
2011年のダンスクリエーションアワードというコンクールに初めて出たときに入賞しました。順位的にはそんなに上ではありませんでしたが、そうそうたる顔ぶれの中で入賞できたことは、私にとって、踊りを続けてもいいんだという一つの自信になりました。 その後ずっとそのコンクールに作品を出し続けてきましたが、3年目に、入賞者を海外のコンクールに推薦していただけるというチャンスがあったんです。海外のコンクールには、推薦がないと出せないコンクールがたくさんありますから、どうしてもそれが欲しくて挑戦することにしました。 出品した作品は、審査員の先生から「悪くないけど、もう1回練り直しておいで」と言われたもので、同じ曲、同じテーマで、ガラっとイメージを変えて出しましたが、「1歩抜けたけど、二人が仲が良くて、お互いが優しすぎて、逆に裏目に出たかもしれないね。もっとお互いを突き詰めれられたはずだ」と言われ、残念ながら入賞には届きませんでした。 |
仲が良いことと、チームワークとは違うのでしょうか |
誰かと一緒に作ることが好きなので、ソロの作品はあまり作らないんです。最初に作品を作ったとき、「この作品に出られて楽しかった。また踊らせてね」と言ってもらえたのが、何よりも嬉しかったんです。 誰がどう評価しようと、踊ってくれた人たちがそう言ってくれることが嬉しくてしょうがない。その一言のために私は踊りを作っていると思います。コンクールに落ちた作品は、推薦が欲しいとか、認められたいとか、こうすれば受かるという、自分の欲だけで作ってしまったので、そういう青臭さを先生方は見抜いていたんでしょうね。 大学の修士号を取得するとき、作品を作らないといけなくて、舞踊コースの同期や後輩など、気心知れたダンサーたちにお願いして踊ってもらったんですが、自分の卒業制作のために、みんなに時間を作って来てもらうわけですし、私自身、まだ大人になりきれていないからか、ちょっとしたことでも衝突してしまう。 |
どうすれば気持ちよく踊ってもらえるだろう、どうすれば、あの作品に出て良かったと思ってもらえるだろうと、すごく悩みました。でもやはり、いかに自分が作品に愛情を持っているか、踊ってくれる人たちにどれだけ愛情を持っているか、それをちゃんと伝えないといけないんだなと思いました。 一生懸命やっていればいいという問題ではなくて、きちんと言葉にして伝えないと意味がない。それがきっと、舞台で何かを表現するということに繋がるんじゃないかなと。そういう気持ちを忘れないようにしないと、またコンクールで落ちた作品の二の舞になると思いました。 |
『ギア』のオーディションを受けたきっかけは? |
「仕事」で舞台に立ってみたかったんです。「仕事」となるとコンクールや発表会とはまた違うので、そういうこともチャレンジしてみようと考えました。いろいろ探していて、たまたま『ギア』のオーディションを見つけました。オーディション合格後、デビュー前の1年間は、公演を何回も見て、アンダースタディとして、演技研究会で、キャストの方々の芝居に対する考え方を聞かせていただいて勉強したり。それも自発的に参加しなければ何も変わらないというポジションなので、ひたすら通いました。 |
これまで作ってきた自分を表現する踊りと、決まった役を芝居で演じること、その間にジレンマはありましたか? |
『ギア』はノンバーバル(非言語)ですが、同じ非言語表現でも、踊りとは全く違います。芝居は自分が考えている以上に自分自身が出てしまう。踊りは、その「形」を決めるために何歩でいくかというような、準備の動きはありますが、芝居になると、理由なく動くことはできないということを教わりました。 「今、なぜそこ動いたの?」と聞かれても、自分で理由がわからない。その切り替えがうまくいかなくて悩みました。でも、芝居の動きにはひとつひとつに理由があって、それを自分の中で理解していないと伝わらないと分かって、これも面白いなと思うようになりました。 |
『ギア』に出演されて気付いたこととは? |
『ギア』の皆さんは、プロの誇りをきちんと持っておられて、プロフェッショナルなチームです。入ったばかりの頃の私は、いつも自信が無くて、「いやいや、私なんて・・」という感じでいましたが、それを謙虚さと勘違いしていたと思います。 かなり厳しいダメ出しもされますから、稽古なんて恥かいてナンボ。全力でやらないほうが恥ずかしい。「私なんて・・・」と思うくらいなら、そんなこと言わずに済む力を身につけないとプロじゃない、と思うようになりました。 |
これからの目標は? |
舞台が、踊りが、表現することが好き。「好き」は何よりの原動力だと思います。好きだったら頑張れる。好きだったら挑戦する。でも、「好き」であり続けるためには、誠実でいなければならないし、立ち止まってはいけないと思っています。走っても歩いても、立ち止まらなければいつか素敵な景色に出会えると信じて、「好き」を貫き通したい。自分の「好き」に責任をもって、表現し続けられたらとても幸せですね。 |
ありがとうございました。 |
(取材:2015年2月 関西ウーマン編集部) |
『ギア-GEAR-』 演劇でもない、ミュージカルでもない、サーカスでもない!日本発!日本初!京都で出逢える、感動エンターテイメント! ギア専用劇場(ART COMPLEX 1928) 〒604-8082 京都市中京区三条御幸町角 1928ビル3階http://www.gear.ac/ |
■関西ウーマンインタビュー(アーティスト) 記事一覧
-
「誰かに必要とされるかではなく、自分がやりたいかどうか」劇団に入団して24年。実力派女優の中田彩葉さん
-
「生きることと、音は直結する」生活と音楽のギャップに悩み、自分にできる音楽を表現する友加里さん
-
「人生そのものを演劇に。もっともっと自由に生きていい」演劇を通して自分の表現を見つめ続ける亜紀さん
-
「誰に何を言われようとも、自分が信念を持って生きることが大事」新しいお箏の世界を創る小森さん
-
「誰しもの中にいる小さな子どもが喜ぶ歌」を作り歌い続けることが自分の音楽というユカさん
-
「自分の心に100%の嘘は絶対につけない」音楽一家に生まれながらも、自分の音楽を見つけた黒田さん
-
「過去から現在、未来へとつながる流れの中に身を置く」薩摩琵琶に魅了され天職となった荻山 泊水さん
-
「なんとなく」ではなく「好き」と確信できることを 北欧の伝承音楽の演奏活動に取り組む上原さん
-
「フルートは人との出会いをくれる魔法のスティック」幅広いジャンルの音楽を演奏するフルート奏者の大塚さん
-
「歌うように、二胡を演奏する」喉を壊し、声楽家の道を断念するも、二胡奏者の道を選んだ一圓 さん。
-
「魂が響けば、身体は動いてくれる」障がい者にしかできない表現を追究する金滿里さん
-
「続けていれば新展開」音大卒業後、自分らしいスタイルを探して「ひとりおもちゃ楽団」に辿りついたアキさん
-
「自分の殻を破って、自分を解放する」ドラムや音楽を通して、「楽しい自分」を表現することを伝える藤谷さん
-
「誰もがその人自身のダンスを持っている」喜怒哀楽さまざまなダンスで対話を表現する高野さん
-
「自分の気持ちに素直に」出産を機に断念したジャズシンガーの道。子育てしながら再開の道をみつけた臼井さん。
-
「好き嫌いという次元のものではない」迷い悩んだ時期を経て、琵琶奏者として生きることが運命と決めた川村さん
-
手話から創作する「観る音楽」を身体で表現する「サインアーティスト」の三田さん。
-
「これが弾きたいと思ったら、とことんその世界をつきつめる」マリンバと民族音楽に惹かれ演奏家になった山本さん
-
「演奏家は目の前にいる人間を喜ばせること」教職から邦楽界へ。箏・三絃で京地唄を伝承する戸波さん
-
古典は実生活に役立つものでは無い。でも心は確実に豊かになります。源氏物語の語り部として活動する六嶋さん
-
「能管の響きが持つ力を伝えたい」一生を貫くものを探そうと能管に出会った野中さん。ご縁を繋げながら海外でも活躍中
-
「踊れなくなるまでずっと踊りたい」日本人というコンプレックスを超えてブラジルのエネルギーを伝えるみちるさん
-
「私なんて・・・と言わずに済む力を身につけないとプロじゃない」大学院で舞踊の博士号を目指す礼奈さん
-
「踊りたくなるような気分で帰っていただける、そんな舞台人になりたい」バレリーナ&指導者として活躍する有可さん
-
「「こうするもの」を超えて楽しむ」ことをNYで学んだ、パフォーミングアーティストとして活躍するちさとさん。
-
「いつも感受性を豊かにもち、ロマンチストでありたい」フルートに魅せられ数々のコンクールで入賞、現在はアンサンブルが楽しいと話す麻里子さん。
-
「"おおきに"という言葉を広げていきたい」元芸妓&JAZZシンガーの真箏さん。病気を克服し人の幸せを想い活躍中
-
「舞台は世界!」初主演映画がカンヌで絶賛を浴び、女優として活躍。京都でロングラン公演中の『ギア』ドール役として出演中の祐香さん
-
「教えることも歌うことも表現は同じ」シンガーとして数多くのステージに立ち、ボーカル講師でもある西潟さん
-
「クラシックをより身近に」自らの言葉で語りかけるコンサートが評判。国内外で活躍する美人チェリスト。