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■関西ウーマンインタビュー(アーティスト編)


大塚 ゆきさん(フルート奏者/にこ音楽教室 代表)

フルートは『人との出会いをくれる魔法のスティック』

大塚 ゆきさん
フルート奏者/にこ音楽教室 代表
クラシックやジャズ、ポップス、フォーク、童謡、オリジナル曲など幅広いジャンルの音楽を演奏するフルート奏者の大塚ゆきさん。

演奏のみならず、音楽教室や大学で後進を育てるほか、公立小学校で楽器・楽曲のレクチャー&演奏会、海外のアーティストが来日した際の通訳など、仕事の幅は多岐に渡ります。

音楽を軸に枠を超えていく、大塚さんの根底にある想いとは? 「フルートは『人との出会いをくれる魔法のスティック』」という言葉の意味することは何なのでしょうか?
常にまわりは音楽であふれていた
歌手であるお母さまの影響を受けて、幼い頃から音楽と親しんでこられたそうですね。
母はオペラ歌手でしたが、テレビの歌番組ではバックコーラスとして演歌やポップスなども歌っていたようです。ピアノを弾きながら歌う母をそばで見ていましたから、私も歌ったり踊ったりすることが大好き。常にまわりは音楽であふれていて、物心がつく頃にはピアノを習っていました。

フルートとの出会いは中学時代、従兄弟の結婚式がきっかけです。演奏を聴いて、なんて素敵なんだろう、と。その奏者は従兄弟の友人で、近所で教えているということだったので、習うことにしました。

当初から「フルート奏者になりたい」と考えていたわけではなくて、高校時代には学外のミュージカル劇団で歌や演技に挑戦するなど、音楽全般が大好きだったんです。

大学進学の際は、英語が好きだから英文科もいいなあと考えたのですが、やっぱり音楽がいい、と。その時、たまたま習っていたという理由で、フルートで音大を受験したんです。
フルート奏者としての道を意識し始めたのはいつですか?
大阪音楽大学卒業後、アメリカのインディアナ大学に留学して、27歳の時に帰国。その時にようやく「これからどうする?」と考えたように思います。

帰国後すぐは海外留学などの経歴が注目されて演奏の依頼がありましたし、外部の音楽教室で講師を務めたり、自宅で教室を始めたりしていました。

今はありがたいことに、ライブやコンサートでの演奏をはじめ、自分で経営する『にこ音楽教室』やほかの音楽教室での講師、母校の大阪音楽大学の非常勤講師など、仕事に恵まれています。
「演奏家」一本ではなく、最初から「後進を育てること」との2本柱なんですね。
日本のエンターテイメントを司る音楽が東京に集中する中、関西にいる音楽家はこの2本柱でやっている方が多いように思います。「後進を育てること」は生計を立てる上で定期収入になりますから。

ただ、私は永い生涯に渡って真の音楽家であり続けるためには、演奏も、後進を育てることも、どちらも必要ではないか、と。「教える」ということは、自分が理解していないとできないから。そこができてはじめて、真の音楽家になれると思っています。

世界の音楽家を見ても、後進の指導に熱心です。自分が学んできたことを伝えて残したい、共有してみんなが上手くなってほしい、弟子が大きく成長して自分を超える存在となり、その弟子がまた弟子を育ててくれればいい・・・といった想いがあるのではないでしょうか。
お仕事はどのようにして開拓されていったのですか?
今のお仕事の多くは、出会った人たちからの紹介がほとんどですが、一時期は種まきをしたこともあります。

自分のプロフィールやアーティスト写真、音源など「こういう活動をしています」と自分の売り出しパッケージをつくって、相手に知ってもらい、「こういう演奏の機会があれば、ぜひやらせていただきたいんです」と自分の意志を伝えることが大事だと思っています。

「クラシックをしています」「ジャズをしています」だけでは、そんな人はたくさんいるからダメで、加えて「即興もできます」「譜面も書けます」「英語もできます」「通訳もできます」「人とのコミュニケーションも得意です」など、いろんな引き出しを持つことが必要かなあ、と。

海外から来日したアーティストにアテンドすることもあります。「これしかできません」と1つに固執するのではなくて、自分ができることを演奏に限らず、すべて強みにして「こんなことも、あんなこともできます」とアピールすることが、今は必要ではないかなと、教え子にも話しています。
語るように、演奏する
演奏を通して、どのように自分を表現しているのですか?
「クラシック音楽」と「ジャズでの即興」「自作曲」、大きくこの2つで表現の方法も変わってきます。

モーツァルトやベートーヴェン、バッハなど過去の偉大な作曲家による曲は、まずは楽譜に忠実に演奏すること。「忠実に演奏する」とは、その作曲家の人生や生きた時代のこと、影響を受けたものなどを勉強して、尊重して向き合って表現することです。

音楽の教科書でおなじみのモーツァルトやベートーヴェン、バッハといえば、「本当に存在していたの?」と思うくらい、雲の上の存在かもしれませんが、ほんの200~300年ほど前に生きていた同じ1人の人間です。

演奏する曲が戦時中の生死に直面した時に書かれたのであれば、それがわかるだけでもその曲に対する捉え方が変わってきます。

そういった歴史の大きな流れはもちろん、どの作曲家と交友があって、どんな交流をしていたのかなど、一つひとつを知るだけでも、想像できることが変わってくるので演奏にも表れます。

プロの演奏家であれば、そういったことを勉強して想像するのは当たり前。そこからどう想像するかは人それぞれまったく異なるので、そこがそれぞれの演奏家の表現となります。

私は人間が好きだから、過去の偉大な作曲家も1人の情あふれる人間だと知ると、親しみを感じます。作品に触れれば触れるほどに、作曲家に親しみを感じ、その作曲家が影響を受けた作曲家などにも次から次へとつながっていくんです。

また、作曲家がこの曲を書いていた時、日本では何時代でこんなことが起きていたんだと想像するのも、おもしろいんですよ。
「ジャズでの即興」「自作曲」を演奏する時はどうですか?
クラシック音楽が「過去の偉大な作曲家の言葉を通して自分を表現する」ならば、ジャズや自作曲は「自分の言葉でしゃべる」ということかなあと思います。

もちろん、ジャズも他人がつくった曲ですが、その場で瞬時に作曲する即興部分があって、ありのままの自分の言葉でしゃべれます。むやみやたらに演奏するのではなくて、自分がこれまで蓄積してきた経験や知識が入った引き出しからしか言葉は出てこないので、いかに自分が勉強しているかにかかっています。

自作曲はストレートに自分を表現できるものです。誕生日や結婚を迎える友人に向けて、たくさんの方々が亡くなった戦争に思いを馳せて、自然からインスピレーションを受けてなどさまざまなテーマで、わりと誰かのことを思い浮かべながら書いています。

自分で作曲するようになって、たとえばラヴェルが第1次世界大戦で右手を失ったピアニストのために『左手のためのピアノ協奏曲』を書いたなど、過去の偉大な作曲家もこうして誰かを思って作曲していたのかなと想像できることが増えました。
作曲し始めるきっかけは何だったんですか?
音楽仲間の中には自分の作品を持っている人もいて、一緒にライブやコンサートをする時に「オリジナルはやらないの?」と声をかけられたり、お店のマスターにも「書いたら?」とすすめられたりするうち、日記を書くみたいに始めてみようと思ったんです。

作曲して気づいたのは、誰かの真似をして、そこからオリジナリティが出てくるということ。自分の中にあるものでしか、言葉もしゃべれないですから、どれだけ自分の中にストックをつくることができるのかが大事だと思いました。

よくメロディーや言葉が「天から降ってきた」と言われますが、それは本当なんですけど、点と点が結び合った瞬間だと思うんです。今までの自分の人生で蓄積していた点と点が結び合った瞬間であって、まったくのゼロからは出てこないのではないか、と。

だから、暇さえあれば、CDやレコードをはじめ、友人のライブやコンサートにも行って、自分の中にたくさんインプットして、アウトプットすることを続けています。
「やっぱり音楽が好き」と日々、確信する
ここまでお話をうかがっていて、大塚さんが音楽に対して真摯に向き合う姿とともに、「音楽が好き」という気持ちも伝わってきます。
中学・高校時代にはマドンナやマイケル・ジャクソンが登場する『MTV』が好きでよく観るなど、昔からクラシックも、ジャズも、R&Bも、新しい音楽も、いろんな音楽が大好きなんです。

留学から帰国後、クラシックだけではなくて、ジャズやポップスなどいろんなジャンルの人たちとつながって、一緒にライブやコンサートをしたり、コラボレーションしたりするようになったのも、そういったベースがあるからかもしれません。

ジャンルのカテゴライズがあまり好きではなくて、関係なくやっていきたい。難しいことを考えなくても、いい音楽はいいじゃないですか。『スター・ウォーズ』シリーズの音楽も、ビートルズも、ベートーヴェンの『田園』『運命』もいい。ジャンルに捉われず、いいものはいい、それだけです。
お仕事をされる中で、いつも心にある「想い」は何ですか?
「音楽の力を信じる」です。きれいごとに聞こえるかもしれません。でも、演奏する私が「みんなが音楽を聴いて幸せになる」と信じていないと、聴いている人たちが幸せになれるはずがない。

少なくとも、私は音楽によって心が豊かになって、人生も豊かになったので、みんなと共有したいんです。聴く側がどう受け止めるかはそれぞれに委ねて、押しつけはしません。

「私はこんなに豊かになりました。みなさんはどうですか?」と問いかける気持ちで演奏しています。
大塚さんは、音楽を通して、どんなふうに心も人生も豊かになったのですか?
私にとってフルートは「人との出会いをくれる魔法のスティック」。これまでを振り返ると、フルートをしていたからこその出会いがたくさんありました。

たとえば、先輩・後輩も関係なく同じ土俵で意見を交換し合える音楽の仲間ができましたし、世界のオーケストラプレイヤーとも出会うことができました。さかのぼれば、アメリカのインディアナ大学では、今でも刺激を与え合える仲間が世界中にできました。

フルートをしていなくても、自分の好きなことを見つけて、その分野でいろんな人たちと出会えたと思いますが、ここまで世界に広がっていたのかなって。

音楽は世界の共通語です。楽器を演奏できればそれがどこであれ、誰とであれ音楽が言葉となります。ひとたび、歌をうたえば、誰かが口ずさむかもしれません。太鼓を叩けば、誰かが踊るかもしれません。言葉はなくても、心を通わせることができます。

やっぱり音楽っていいな、好きだなって、日々確信するんです。
大塚 ゆきさん
幼い頃より歌手である母の影響を受けて、音楽に親しむ。3歳からピアノを、中学時代からフルートを始める。大阪音楽大学音楽学部器楽学科卒業後、アメリカのインディアナ大学音楽学部に留学。パフォーマーディプロマおよびアーティストディプロマを修了し、2004年に帰国した。2006年にアメリカ・ピッツバーグで開催された『第34回NFAフルートコンベンション』にゲストとして特別公演&期間中コンサートに出演。以降も『2006年度日本演奏連盟主催フルートリサイタル』などさまざまな演奏会に出演するほか、コンサートホールや教会、美術館、公民館、レストラン、カフェなどでライブやコンサートを行ない、演奏活動の場を広げている。子ども対象の音楽教室『にこ音楽教室』を開講するほか、『ドルチェ・ミュージックアカデミー』や『大阪音楽大学』で講師を務める。2012年にはファーストアルバム『Eventually(イベンチュアリー)』をリリースした。
HP: http://yukiotsuka.com/
にこ音楽教室
尼崎市東難波町3-20-28 ※ほか、尼崎・武庫之荘でも開講
TEL:06-6481-5875
HP: http://nico-music.com/
(取材:2017年11月)
大塚さんはフルート演奏について「言葉」「語る」「しゃべる」と表現されていました。ラジオで、あるパーソナリティーが「歌うように語れ、語るように歌え」と言っているのを聞いて、ご自身も「語たりかけるような演奏ができたら」と思われたそうです。

歌う曲でなければ歌詞はありませんが、大塚さんには「この作曲家にはこんな背景があるから、きっとこういうふうに問いかけているのだろう」「この作曲家は人生について書いている。人生は苦悩ばかりだけど、最後に一瞬の光が・・・と語りかけているのだろう」など、歌詞がなくても「語り」や「会話」に聴こえることがあると言います。

大塚さんにとって音楽は「言葉」であり、時には「語るように」、時には「しゃべるように」、演奏されているようです。

「自分の中にあるものでしか、言葉もしゃべれないですから、どれだけ自分の中にストックをつくることができるのかが大事」という大塚さんの一言にもあるように、人生すべての経験や出会いを「言葉」として、音楽を通して語っているのだと思いました。
小森 利絵
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』

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