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■関西ウーマンインタビュー(アーティスト)


臼井 優子さん(ジャズシンガー)

 
臼井 優子さん(ジャズシンガー)
ピアノ教師である母親のもとで3歳からクラシックピアノを習い始める。大阪音楽大学短期大学部に入学し、ピアノを専攻。在学中にジャズに触発されて、ジャズシンガーとして活動を開始する。卒業後まもなく、ジャズの老舗『ロイヤルホース』のヴォーカルオーディションに入賞。2011年にはファーストアルバム『summer me』を発表した。
HP:http://yuko-usui.com/
ジャズシンガー臼井優子さんの歌声には、その場にいる人たちのさまざまな感情が集約され、昇華されていくような、フシギな一体感と心地よさを感じます。3歳からクラシックピアノを習い始め、学生時代にジャズに目覚めて、ジャズシンガーへ。現在では、関西を中心に、関東や東北、九州など全国各地でライブ活動を展開しています。音楽の道をまっしぐらのように見えますが、一時期はジャズシンガーを諦め、音楽と距離を置いていた時期があったそうです。
どうしても諦められないこと
3歳からクラシックピアノのレッスンを始められたそうですが、どうしてジャズシンガーに?
短大の先輩がジャズライブで即興演奏する姿を見て「かっこいい!」と思ったのがきっかけです。高校生の頃からサラ・ヴォーンの歌を聴いていて、ジャズへの憧れもあったので、「やってみたい!」と触発されました。

ジャズの楽譜にはガイドラインとしてメロディーラインとコードネームが書かれているだけで、アクセントやリズムのパターンはありますが、あとは演奏者の自由。一人ひとりがその場で、アレンジやアドリブを加えながら演奏することが魅力です。

ただ、私はこれまでクラシックピアノで楽譜通り演奏するということをしてきましたから、即興演奏はできる気がしませんでした。「歌うことならできるかも!」と、ジャズ喫茶でミュージシャンが集まって即興演奏するセッションに参加するようになり、ジャズの世界にどっぷりはまってしまったんです。

卒業後はジャズシンガーとして仕事を始め、ジャズのメッカであるニューヨークへ移住。とはいうものの、1年半しか暮らしていません。ほどなくして妊娠・出産したため、子育てや今後のことを考えて日本に帰国したんです。「もうジャズシンガーはできない」と諦めました。
ジャズシンガーを諦めた理由は?
私のなかに「お母さんは家にいるもの」「子育てに専念しないといけない」という考えが根強くありましたし、ジャズは夜にライブがあるため、実家も遠く、身近に頼れる人がいなかったので、子どもが幼いうちは難しいと思いました。4年後には第二子にも恵まれ、その間ずっと専業主婦に専念し、音楽と距離を置いてきたんです。 
音楽活動を再開されます。何がきっかけだったのでしょうか?
下の子が生まれてから、子ども連れで参加できるゴスペルに通うようになりました。久しぶりの音楽活動はすごく気持ちがよかった! 「ジャズシンガーは諦めなきゃいけない」と思いながらも、やっぱり諦められるはずもなかったんです。

誰に言われたわけでもなくて、自分で勝手に思い込んでいただけなのに、いつも不満だったんだと思います。「これは自分の人生じゃない」と、他人の人生を生きているような気持ちがずっとありました。ゴスペル参加をきっかけに、だんだんと自分の気持ちに素直になれた気がします。
その後、ジャズシンガーとして仕事を再開されたんですね。
近所でジャズのセッションがあることを聞きつけて参加したら、ピアノ奏者から「一緒にライブをやろう!」と声をかけてもらいました。ライブの時は、その方の奥さまが子どもたちをみてくださって、月1~2本と定期的にライブができるようになったんです。

子ども達が幼いうちは細々と活動して、本格始動したのはこの5年くらいです。今では、関西を中心に、関東や東北、九州など全国各地で月15~20本ほどライブをしています。

 
自分の気持ちに、素直に
“自分の気持ちに、素直に”。歌う時も、それを心がけているそうですね。
誰の真似でもなく、かっこよく見せようとするのでもなく、自分が素直に歌いたいことを歌う。若い頃は「サラ・ヴォーンのように歌いたい」と真似したこともありますが、なろうとしても、声のタイプや年齢も経験も違いすぎて(笑)。何より、他人の真似は中身が伴わないから薄っぺらい。それっぽく見えて、わかりやすいかもしれませんが、その歌は説得力に欠けると思うんです。

その人が歌いたいことを、その人のスタイルで歌えば、また聴きたいと思ってくれる人が増えるのではないでしょうか。ジャズの世界でレジェンドと呼ばれる人たちは、自分のスタイルで歌ってるからこそ、みんな個性的なのだと思います。
臼井さんらしい歌のスタイルとは?
歌詞を歌いあげるというよりは、しゃべるように歌う。俳優が役柄を演じるように、歌詞の意味を理解して、誰かの言葉ではなくて、「自分がそう思っている」という確かな意思がこもった言葉で、自分が経験したことをしゃべるように歌います。

歌詞を覚える時も、一つひとつの言葉から想像を広げて、自分のなかで物語を描きながら覚え込んでいくんです。

歌い継がれている定番曲の歌詞は本当に美しい。短い歌詞のなかに、たとえば今まさに恋が始まるという一瞬が描かれている。一瞬のことを表現しているんだけど、短い言葉のなかに、その人物のこれまでの人生さえも表れていて、いつも魅了されます。歌詞の一つひとつの言葉に魂を宿すように心から語って、その場の空気に波をたてたい。
“心から語って、その場の空気に波をたてたい”とは?
ライブによって、バンドメンバーも、聴き手も、さまざまです。一度きり、二度とない場ができます。私の歌とバンドメンバーの演奏がシンクロすることがあって、聴き手にも伝わって、その場にいる人たちと気持ちが一緒になるというのでしょうか。わあっと波が立つことがあるんです。時には涙が出そうになることもあるほど。何をどうしたらそうなるということはなくて、偶然が重なって起きること。その瞬間限り、同じことは二度と起きないからおもしろい!
近い将来、実現したいことは何ですか?
もっと、いろんな人たちに歌を聴いてもらいたい、生演奏を楽しんでほしい。夜に限らず、昼間でも気軽にジャズを楽しめたり、小さな子ども連れでも聴いてもらえたりできる機会をつくれたらいいなあと思っています。
ありがとうございました。
取材:2016年7月
臼井さんのお話のなかで出てきた「自分の気持ちに、素直に」。シンプルなことですが、それが一番難しいのではないでしょうか。自分をよく見せようとしたり、「こうあるべき」という思い込みがあったり、さらには自分でも自分の気持ちがわからなくなることがあります。

自分の気持ちに素直であることは、「自分が思うまま=自分勝手」とは異なり、自分が感じる小さな一つひとつの気持ちを大切に、自分とちゃんと向き合っていることだと思います。だからこそ、どんな時も「私は」を主語として他人と向き合えるから、相手に想いや気持ちが伝わるし、相手の心のなかにあるものに響いたり、重なったりもする。それが「心から語って、その場の空気に波をたてる」ことなのかなと想像しました。
取材:小森利絵
ライター/HP:『えんを描く』
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。



 

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