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■海外暮らしの関西ウーマン(メキシコ)


Vol.27 こんなところでメヒコ、の巻

Vol.27 こんなところでメヒコ、の巻

オラー、こんにちは。あみりょうこです。元気にお過ごしでしょうか。

メヒコから日本に帰ってきて4か月くらいがたとうとしています。帰ってきて以来ずっとコロナ一色なので、時間の感覚が通常とは異なるのでそれが長いのか短いのかよくわからない気持ちです。

オアハカのことはもちろん恋しいですが、日本に帰ってきてから、家族や友だちと頻繁に会えるようになったので、それは本当にありがたいと感じています。特に、このような状況下で海外にいたら不安に感じることも多かったのだろうと思います。

久しぶりの日本での生活と言ってもやはり母国なので、言っていることにしても、仕組みにしても「まったくわからない」ということはありません。メヒコだったらああなのにな、と悪いこともいいこともとりあえず比較して物事を見てしまうことはありますが、文化の異なるところへ引っ越してきたのだから、ついついしてしまう普通の行為だと思うようにしています。

それよりも、「うっっ!!」と思わず声が出そうになる時は、不意に日本の日常の中でメヒコ感を(勝手に)(ひそかに)(個人的なレベルで)感じてしまったときかもしれません。その一つに「歯医者の看板」があげられます。

メヒコの店の看板はゆるさが爆発しているものが多いのです。

肉屋さんやタコス屋さんなどは特にゆるキャラの宝庫で、豚肉のタコス屋さんなどの看板が、かわいい豚が熱湯につかりながら「いい湯だな、あははん」気取りでウインクなどをしていたり、鶏肉屋さんでマッチョな鶏がかっこいいポーズをとったイラストが描かれてるのを見るにつけ、「いやいや、あんたら売られてるがな、食べられる運命やのに、めっちゃうれしそうやな……」と、ある種同情のような不思議な思いを抱きます。

そんな看板が楽しすぎるメヒコなのですが、歯医者もまた思わず笑みがこぼれるタイプのものが多いです。歯をモチーフに、歯のキャラクターがこちらに微笑みかけてくるような感じです。
フォントもディズニー風で、まさかこれが歯医者だなんて、な看板。
これは歯医者の看板ではないのですが、メヒコでは様々な問題を啓発する一環として、村の開いている壁などに壁画が描かれている場合があります。その一つです。

「DVはだめ」とか「ドラッグに手を出すな」とか「水をきれいに使いましょう」とか様々なトピックですが、これはおそらく「歯を大切にしましょう」的なメッセージだと思われます。

日本はあらゆるものや場所・施設にキャラクターが存在するゆるキャラ大国ですが、メヒコも結構その傾向があると思います。

日本のほうが、圧倒的にかわいく仕上げられているのですが、あらゆるものが擬人化されるあたりに妙に日本とメヒコの共通性というか、実は似ているのかも、というのを感じてしまいます。

そう、日本の歯医者の看板も、結構歯を擬人したものが多いことに最近気が付いたのです。歯に目が……!! 歯が歯ブラシを持ってうれしそうにしている……!!

それらが妙に目に入ってきて、いやな気分じゃない、むしろなぜか懐かしい……とすら無意識的に感じていたのは、メヒコでもよく見かけていたからだったのです。

歯医者の看板で、のちにメヒコと日本の共通性を見ると思っていなかったし、そしてまさかそれをコラムに書くなんて想像していなかったので、持っている写真を見返しても歯医者の看板写真が見つからず、実際にお見せすることができず実に残念です。

ここからは余談になるのですが、海外で病院に行くのは意外と敷居が高いというか、敬遠しがちです。しかし、一度歯の詰め物がとれてしまったので、どうしても歯医者に行かなければならなくなってしまったことがありました。

知り合いの医者に、おすすめの歯医者を教えてもらうことにしました。やはり、口コミの安心感は強いです。一応予約の電話を入れたのですが、「詰め物がとれる」というのをスペイン語で説明しきれず、「まぁ、とにかく来てください」となったのです。

対面で話していると、わからない単語があっても実際に指をさして見せることができるのですが、電話はそういうわけにもいかず難易度がぐっと上がります。しかし、対面でなくても必死さは伝わるようで、人間のコミュニケーション能力と意志をくみ取る能力に感謝です。

歯医者さんに到着しておそるおそる受付に行くと「ああ!さっきの!」と早速診察室へ通されました。先生と思しきおじさんは、もう1台ある診療台で他の患者さんを診察中でした。キリがよくなったところで、私の方へ「どうしたんだい?」とやってきてくれました。

「実はかくかくしかじか……」
と説明をすると、「あ~!とれちゃったか!大丈夫大丈夫!でも今日はほかの予約が埋まっててできないからまた後日改めて予約を取ってきてくれるかな?」ということになった。

明るい優しそうな先生で、大丈夫というので一気にほっとして、心配しなくて済みそうだと胸をなでおろしていると、先生が続けて何やら言っていました。

「で、君はここをどうやって知ったの?」
「医者の○○先生に教えてもらいました。」
「ああ~!○○先生の紹介か!なるほどなるほど、で、君はどこの国出身だい?」
「日本です。」
「日本!やっぱりね!オアハカにはどれくらい住んでいるの?」
「3年くらいです。」
「あ、そう!3年も!それでスペイン語も話せるわけね!もうオアハカ人じゃないの!」
「まぁ、一応は。オアハカ人と呼ばれるにはまだ足りませんよ~。」
「で、メヒコ人の彼氏はいるの?」
「いや、いないですよ。」

と、メヒコでありがちな、どこから来たのかという質問をされたその次には彼氏がいるかという流れになったので、当たり障りのない感じで答えておくかとあしらうと、

「あ、そう!ここにいるよ!」
と隣の診察台のティーンエイジャーくらいの男の子をさしてケタケタと笑っているのです。

「この子はいい子だよ~。」
と気が付けば歯科医ではなくただのお節介の親戚のおっさん(あるいは近所のおばちゃん?)みたいになっているので、本当にメヒコ人は冗談が好きだなと改めて感じました。

余りにも屈託のない笑顔でニコニコしていて、悪気のみじんも感じられないので、思わずこちらも笑ってしまい

「またそんなことばっかり言うて、よう言いますわ。」
というようなやり取りになり、歯医者中がほわ~んとした、和やかな雰囲気に包まれたのでした。

歯をキャラクターにして看板にしてしまう感性は似ていますが、日本の歯医者さんとはえらい違いだなぁ、メヒコ人はおおらかだと感じる一方で、もしこれを日本の歯医者さんがしてきたとしたら、なんか通報されてニュースにでもなってしまいそうだな、と思ってしまったりもしました。

もちろんすべての場所がそういうわけではないと思うのですが、私が行ったところはものすごいアットホームな歯医者さんだったのです。(ちなみに、後日きちんと治してもらいました。)

そろそろ日本でも歯医者に行かなければいけない予感。ううう、気が進まない……。

それでは、まだ雨の日が続きますが、みなさんどうぞさわやかにお過ごしくださいね。
works
【今月の作品】
You’re awesome!(あんたって本当に最高!)

私は、言語というものはコミュニケーションをスムーズにしてくれる道具のようなものなので、別にそれがすべてではないと思っています。

でも、ほかの言語に触れていると、言われて思わずドキッ!!!とするような直球の言葉に出会います。

日本語では褒められてもついつい謙遜してしまいがちです。だからなんだかふわふわとした雰囲気が漂ってしまうのですが、AWESOME! THE BEST!! なんてドストレートで褒められたら、受け取るしかないというか。そして、受け取ったそのボール(ことば)は熱くて心までじいんと温めてくれるような気がします。

以心伝心やから伝わってるよな、言わなくてもわかってるよな、と思うことが多かったのですが、やっぱり言われたらめちゃくちゃうれしくて心に響く言葉たち。言語はすべてじゃないけど、でも言葉の力を感じずにはいられません。

そんな直球の言葉を伝えるカードを作ってみました。
profile
あみ りょうこ
1982年大阪生まれ、兵庫育ち。メキシコのオアハカ州での暮らしを経て、2020年から日本に。 ものつくりが好きで、オアハカで版画に出会い制作を続けている。
HP:http://mexicot.wordpress.com
instagram:ninjacco

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