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■関西ウーマンインタビュー(起業家)


中田 しのぶさん(Nude写心家/株式会社しのぶれど 代表取締役)

ヌード撮影は女性が生まれ変わるきっかけになる

中田 しのぶさん
Nude写心家/株式会社しのぶれど 代表取締役
200人以上の女性の人生の転機にヌード撮影をしてきたというフォトグラファーの中田しのぶさん。

メイクアップアーティストからフォトグラファーに転身し、たくさんの人たちの心が動くウェディングの撮影を通して、写真は心を写す「写心」と感じ、「この仕事が天職」と思われたそうです。

以降、10年以上に渡ってウェディング専門でお仕事をされてこられましたが、現在は「Nude 写心家」として女性のヌード撮影に特化されています。

「ヌード撮影は女性が生まれ変わるきっかけになる」と話す中田さん。ヌード撮影を始めるきっかけとは? 撮影を通して「女性が生まれ変わる」とは一体、どういうことなのでしょうか?
心を写す「写心」家を天職として
以前は臨床検査の営業やメイクアップアーティストをされていたそうですが、フォトグラファーに転身するきっかけは?
メイクアップアーティストとして仕事をしていた時、使い捨てカメラでメイクの作品撮りをしていたら、フラッシュが光って、顔が「志村けんのバカ殿様」みたいに真っ白に飛んでしまうので、なんでこうなってしまうんだろう、と。そうならずに撮影できる方法を知りたいと写真教室に通い始めたんです。

その教室で知り合った人がウェディングの撮影をするというので連れて行ってもらったら、私も撮ってみたいと興味が湧きました。偶然にも当時勤めていた化粧品会社の隣のビルに結婚式場にカメラマンを派遣する会社があったので、カメラマン経験なんてないのに応募してみることにしたんです。

しばらくは音沙汰がなかったんですが、結婚式繁忙期に向けて人手が必要だったんでしょうね。面接も受けていないのに連絡があって、カメラマンとして仕事ができることになったんです。

本来であれば先輩に10回ほど付いてからデビューするのですが、コミュニケーション能力の高さを買われて、3回でぽーんと放り出されて(笑)。現場で頭を打ちながら、経験を積んでいきました。
その後、15年以上に渡ってフォトグラファーをされているわけですが、この道でと思われたのは何か理由があったのですか?
私の天職だと思ったからです。

結婚式というのはたくさんの人たちの心が動く時間。撮った写真をチェックしていても、自然と涙がこぼれ落ちました。

たとえば、新婦のお父さんがお酒で酔っ払いながらも娘の名前を叫びながら泣いているという場面に出会った時、私もそのお父さんの気持ちの動きを感じながら撮影しています。

写真にはその時の状況だけではなく、気持ちの動きもちゃんと写っていて、その1枚を見ただけで、その瞬間のことを思い出し胸が熱くなります。

写真って心を写す「写心」なんだなあと思いました。

心が通い合う撮影に立ち会えたなら、私はまさに「全身全霊」という表現がぴったりなくらいに突っ込んで撮影します。心の底から喜びを持って撮影できるから、幸せでたまらないんです。
フォトグラファーに転身して契約カメラマン兼フリーランスでお仕事をされていましたが、完全独立したタイミングや理由は何だったのですか?
契約会社の制限に縛られて、表現の自由や関わり合いの深さを持てなかったからです。自分の想いとの温度差があって、その都度、会社に想いや考えを伝えて変えていただいてきたところもあったのですが、限界でした。

たとえば、結婚式当日に新郎新婦さんとはじめてお会いして、「カメラマンさん」「新郎さん、新婦さん」という関係性の中で撮影することに違和感があって、駆け出しのカメラマンながらも事前に新郎新婦さんと打ち合わせできる「指名制度」を利用できるように会社に交渉しました。

事前にお会いして打ち合わせをすると、おふたりが出会ってから今までのことを共有できるので、私自身も一緒にお祝いしながら全身全霊で撮影できます。撮影のクオリティも上がって、新郎新婦さんに喜んでもらえますし、会社にとっても私にとっても嬉しいことでした。

またある時は、指名以外の仕事を受けることは、わざわざ指名料を支払ってまで私に撮影をお願いしてくれる方に申し訳ないですし、事前にお会いしてお打ち合わせできないのであれば「写心」は撮れないと会社に交渉しました。一部の人から「何を天狗になってんねん」など非難されましたが、指名だけに専念できることになりました。

そういうふうに組織の中でも、交渉することで自分が大事にしたいことを貫いてこられたのですが、完全独立の引き金となったのは納期のことでした。

一生の宝物となる写真ですから、クオリティをしっかりと保ちたい。そのためにお客さんからの了承を得られれば、少し納期をずらしたいと申し出ました。ですが、「クオリティよりも、会社で定めた納期が優先」と言われて、個人でやっていこうと決心がついたんです。

「写心」を撮るには、私自身もクリーンでいなくてはなりません。だから、思ったことは言うし、自分が大事にしたいことを大事にできないのであれば見限るのも早い。あかんところに注力していてももったいないから、「じゃあ、次にどうしよう」と考えて行動します。
ヌード撮影を通して、女性の生まれ変わりを導く
「フォトグラファーは天職」と思わせてくれたウェディング撮影をメインでされていたそうですが、現在はヌード撮影に特化されています。移行されたきっかけは?
はじめてのヌード撮影は2008年のこと。あるご縁で、乳がんの女性から「乳房を切除するから手術前に撮影してほしい」という依頼を受けました。

当時、私はヌードを撮影した経験も、乳がんの経験もありませんでしたから、正直不安もありましたが、その女性のまっすぐな想いを受けて、緊張しながらも撮影に臨んだんです。

彼女はただ立っているだけなのに、内面から満ち溢れる輝きが凄まじくて、私の心は強く揺さぶられました。「命」を選んだ彼女から溢れる凛とした美しさ、すべてを受け入れて生きると決めて運命に寄り添う強さ。女性が覚悟を決めて、前に進むということは、こんなにも美しいんだって。

これまでに感じたことのない感情に包まれて、涙が止まらなくなったんです。

それから数年はウェディング撮影に特化していたのですが、日本の結婚式場のシステムに対して「なんで、新郎新婦さんのためを考えられないんだろう」という憤りや切なさを感じる出来事が続いて、嫌になって離れることにしました。

今後どうしていこうかと模索している時に、たまたまヌード撮影の依頼をいただいたんです。

プロボディデザイナーの方が施術したお客さんのヌードを撮影したいとのことで、そのプロジェクトに携わっていることをSNSなどで発信したら、ヌードを撮りたいという女性が多くいることがわかりました。
どんな想いからヌード撮影を希望される人が多いのですか?
きれいになりたい、コンプレックスを解消したい、トラウマを断ち切りたい、正直になりたい、自分を大切にしたい、自分らしく生きたい、自信を持ちたい、勇気がほしいなど、女性はさまざまな想いを抱えているものです。

どの想いの根本にも「今の自分から生まれ変わりたい」という願いがあるのではないでしょうか。変わりたいと思って、すぐに変われるのなら苦労はありませんが、何かしらのきっかけが必要です。「ヌード撮影」はその1つのきっかけになるんだと思っています。

希望される方は40代や50代が多く、子育てに一段落ついたなど、自分自身の「これまで」と「これから」を感じずにはいられない、人生を見つめ直したくなるタイミングなんだと思います。
ヌード撮影を通して、どのように生まれ変わっていくのですか?
撮影する1時間の中で、ご自身で自然と変わっていかれるんです。

最初に「どうしてヌード撮影したいと思ったのか」などご自身の想いを共有し、裸に薄い布を纏った状態から撮影を始めます。

「胸をもう少し張って」など声をかけて、前かがみになっていた姿勢から胸を張るだけで、体と心はつながっているから開いていくものがあったり、撮影しながら私がピンときた言葉をかけたことで、本人の中で「ああ」と腑に落ちることがあれば、さらに変わっていくものがあったり。

撮影前はすごく恥ずかしそうにしていても「これまで恥ずかしがっていたけれど、自分の行動に自分で制限をかけていたのが原因。そんなん、気にせんでいいと気づいた」と自分のことを振り返れた人、「ヌードを撮影したいと思ったけど、全身はちょっと」とためらっていても最終的には「すべてを撮影してほしい」と今の自分を受け入れる覚悟を持てた人などがいました。

生きれば生きるほど、さまざまな経験をするがゆえに、心に余計な殻がこびりついていきます。それがコンプレックスや自信のなさにつながることもあって、自分に素直に生きられなくなっていることもあるものです。

ヌード撮影を通じて、服だけではなく、心に何十にもこびりついている殻を脱ぎ捨て、何も身にまとわない裸んぼうの自分と向き合い、ぎゅっと抱きしめてみる・・・そうやって内側から溢れる気持ちに、素直に正直になると、「変わりたい」という願望が「変われるんだ」という実感につながっていくようです。
ヌード撮影に特化して、世界観を確立させる
独立して、まもなく5年。独立してから、どんな「壁」または「悩み」を経験されましたか?
撮影だけではなく、経営も宣伝も、自分でしなくてはなりません。その分野がとても苦手なんです。

独立して数年は、自分で何かしなくても、まわりの人たちがSNSなどで情報を拡散くださり、テレビなどのメディアに取り上げてもらう機会もあって、ひとりでに仕事が回っていっているというラッキーな状況でしたが、それも一巡して次のステップに進まなければならなくなりました。

そこで、展覧会開催とフォトエッセイ制作をめざして、昨年末からクラウドファンディングに挑戦しました。頑張れば自費で実現できるかもしれませんが、よりたくさんの人たちに知ってもらうために、よりたくさんの人たちに関わってもらえる手段を選んだんです。

実際に、クラウドファンディングを始める際に相談にのっていただいたコンサルタントの方から「あなたが持っているのは、世界観ではなく、自分観」と言ってもらえたことが、転機になりました。

友人や知人から「これはしのぶさんの写真でしょ」と当てられることもすごく多いかったから、自分の世界観というものを確立しているつもりでいました。

でも、世界観というのは、誰が見ても「これはこの人の世界観」とわかる圧倒的なもの。友人や知人以外にもわかってもらえるほどのものが、私にはないと気がつきました。

ただ、自分がしたいことはわかっています。ヌード撮影を通して、1人でも多くの女性に勇気と希望と自分の可能性に気づいていただける機会をつくり、生まれ変わりへと導くことです。それまで「写心家」として受けていたプロフィール写真や七五三写真などをやめて、「Nude写心家」としてヌード撮影に特化していくことを決めました。

さらには世界観を確立するために「裸心画」を始めたんです。

より多くの自分らしく生きたい女性に「自分を表現する喜び」を感じていただきたいと、私自身がその人から受けたイメージを表現するアート写心のことです。私の中に広がったイメージに合わせてヌード撮影し、独自の方法で幻想的に仕上げます。
近い未来、お仕事で実現したいことは何ですか?
ヌード撮影はまだまだたくさんの可能性を秘めています。「ヌード」を追求すればするほどに、「命」や「愛」など深まっていくものがあるんです。

まずは今年「生まれ変わった女性たちのNude写心展」を大阪で開催し、その後は東京やニューヨークでも開催したいと考えています。
profile
中田しのぶさん
飲食のアルバイト、臨床検査の営業職などを経て、化粧品関係の職につき、メイクアップアーティストになる。2000年から写真に興味を持ち、ウェディング専門のフォトグラファーを派遣する会社に登録する。登録フォトグラファーとして在籍している時、「ゼクシィ大賞」(2003年)、「ジャパンウエディングフォトグランプリ」準グランプリ(2007年)、「ジャパンウエディングフォトグランプリ」 3位(2010年)を受賞。2010年にフリーランスになり、2014年に「株式会社しのぶれど」創業。プロフィール写真や七五三写真などの撮影もしていたが、2018年から「Nude写心家」として女性のヌード撮影に特化した。
HP: http://nakata-shinobu.net/
BLOG: https://ameblo.jp/shinokitti/
(取材:2019年1月)
editor's note
中田さんは登録フォトグラファーとして組織に所属しておられる時から、世間や組織の「こういうもの」という価値観や押し付けなどには、流されず、妥協せず、ご自身が想う「写心」を追求し続けてこられた結果、「自分が大事にしたいこと」をどんどん研ぎ澄まされて、今があるのだと感じました。

キャリアを積み重ね、中田さんだったらもう十分に「中田さんの世界観」というものがあると思うのですが、それは「自分観」だったと思い、世界観をより明確にして発信するために、さまざまなことを試みておられます。

止まることなく、常に常に前上がりに。突き進まれるごとに、純度が高くなっておられる印象です。大事にしたいことを貫いていくと、余計なものや不要なものがどんどんそぎ落とされて、純度が高まり、強くもなっていくのだと、中田さんのお話をうかがって感じました。
小森 利絵
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP: 『えんを描く』

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