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■関西ウーマンインタビュー(起業家)


下戸 眞由美さん(京都癒しの旅 案内人)

 
下戸 眞由美さん (おりと まゆみ) 京都癒しの旅 案内人
京都生まれ京都育ち 金融機関・教育機関に勤務後、地元京都を案内する「京都癒しの旅」(京都府知事登録旅行業第3-638号)開業。総合旅行業務取扱管理者/京都検定2級/京野菜検定/ホームヘルパー2級
京都癒しの旅」 http://ameblo.jp/kyoto-iyashinotabi
取材地協力:源光庵 京都市北区鷹峯北鷹峯町47
1346年(貞和2)大徳寺の徹翁義享によって創建1694年 (元禄7)曹洞宗に改宗。本堂には本尊、釈迦牟尼仏及び霊芝観世音像を祀る。本堂の丸い窓は「悟りの窓」四角い窓は「迷いの窓」と呼ばれており、仏教の真理を表している。
下戸さんは京都生まれの京都育ちなんですね。
子どもの頃からおばあちゃん子で、両親が離婚したあと、12歳から結婚する29歳までずっと祖母と二人で暮らしていました。祖母は厳しかったけれど大好きだったんです。苦しい生活の中で、祖母と二人で旅行に行くことが唯一の楽しみでした。だんだん祖母も年を重ねて弱ってきて、団体旅行に行ってもついていけなくなるし、旅館でお食事をたくさん出していただいても食べきれず、残すのがもったいないと言うようになって、晩年はほとんど二人で、近場の温泉などに出かけることが多かったです。
それが今の旅行のお仕事に繋がっているのですね。
旅は祖母と私を幸せにしてくれて、日常のしんどい生活の中でもほっとできる時間でした。若い頃から旅の仕事って良いなと思っていたんですけど、当時、旅行業界はかなり激戦だったので、なぜか固いところに行こうと信用金庫に就職しました。9年間勤務しましたが、結婚を機に退職して、その1年後に祖母は亡くなりました。
下戸さんをお嫁に出すために頑張ってこられたんですね。
そうなんです。そこで緊張が途切れたのか、1年後に亡くなってしまって。それからの私は本当にきつくて、ウツになってしまったんです。新婚の夫はいましたが、家族を失くした辛さや寂しさ、悲しさを共感し合える人がいなかったんですね。

そこから心理学に興味を持つようになって、4年ほど心理学の講座等に通っていました。その間カウンセラーになろうと思っていましたが、今の私ではまだ無理だと思って諦めていました。

祖母と一緒に行った旅行が楽しかったことを思い出していると、「そういえば私、旅の仕事がしたかったんだ」と思い出したんです。

それを知人に話すと、「今日の日経新聞を見て」と教えてくれて、高齢者や障がい者の方の旅行をサポートされている、東京のベルテンポ・トラベルさんの記事が載っていました。

それを見て私、旅行の仕事の経験も全く無いのにいきなり電話したんです。「私、京都に住んでいるんですけど、京都の旅行をご案内したいと思っています。興味があったので電話しました」って。すると社長さんが「今度京都に行くので会いましょう」と仰ってくださったんです。それから、京都のツアーの際に同行させていただいたり、東京にも行かせていただいたり、いろいろ教えていただきました。
そこから旅の仕事がスタートするのですか?
それが、今からという時に、義父と義母と義祖母が3人いっぺんに倒れたんです。義父は1ヵ月後に亡くなってしまって、丹後の夫の実家で、義父の仕事を2年間、廃業するまで手伝っていました。その後京都に戻って、平日は専門学校で働きながら、週末介護で丹後に通う生活が8年続きました。

その専門学校では広報の仕事をさせていただいていて、高等学校の進路部の先生に学校の案内をしたり、高校生向けのガイダンスを行ったり。奨学金の担当もしていたので学生の相談も受けたりもしました。ここでは8年半もお世話になったんですが、ある日突然、体と心が動かなくなってしまって、退職させていただいたんです。
自分を生きていない時期だったんですね。
どこかでごまかしていたんですね。忙しい毎日の中で、「これで良いと思おう」「こんな恵まれた環境に感謝しよう」と思っていましたが、やっぱり旅の仕事がしたいと頭にあったんでしょうね。

退職後、しばらく放心状態で動けなかったんですが、1ヶ月経った頃から、京都の町を歩くようになったんです。好きな神社に行ってみたり、鴨川に行ってぼーっと好きな本を読んでみたり。すると自分がどんどん元気になってきたんです。私、やっぱり京都の自然とか神社とかお寺とか、京都の人たちに癒されて、勇気を貰って生きてきたんやなとすごく感じて。

以前は高齢者やお体の不自由な方に京都をご案内したいと思っていたけれど、私みたいな女性ってきっとたくさんいると思ったんです。仕事もあり、家庭もあり、外ではもうシャカリキになっていて、なかなか自分の時間を見つけられなくて苦しんでいる女性が。そういう方に京都に来ていただいて、ほっとする時間を持っていただくというのもできるんじゃないかと。
ようやくたどり着いた感じですね。
そこから「京都癒しの旅」というブログを始めたんです。最初は個人の案内人として京都の情報などを書いていたんですね。するとある方が、京都で歩くツアーガイドもしていて、添乗員の経験もあるんだから、始めてみたらいいじゃないと言ってくださったんです。じゃあモニターツアーをしましょうということになったのが始まりでした。

以前お世話になったベルテンポ・トラベルの社長さんとは、年賀状のやり取りだけで疎遠になっていましたが、本を出版されることになり、その出版パーティで12年ぶりに再会したんです。あれだけお世話になったのに、パタッとできなくなってしまったことと、何も動けていない自分が情けないこともあったんですが、「本気でやるんだったら、やってみたら」と笑顔で言ってくださって。12年前のやりたい!と思っていた時の記憶が蘇ってきたんです。それからです。自分の中で覚悟を決めて、旅行業の届出を出しに行きました。
個人でされているのと「旅行業」としてされるのとでは、下戸さんにとってどんな違いがありますか?
社長に再会していなければ、いままでどおり個人でやっていたかもしれません。私自身これが最後のチャンスなので賭けてみたい。人生に後悔したくないから本気でやってみたいと思ったんです。それまで自分の中では同じつもりではあったんですが、やっぱり個人だとどこかで甘さが出てしまう。その迷いはありました。

以前、遠方から来られた方がぽろっと言われたんですね。「私、まゆみさんを信用して申し込んだんだけど、友達から、ネットで見つけた人に申し込んで大丈夫なの?と言われたの」って。その言葉がすごく頭に残っていて、旅行業者の番号があれば、そんなこと言われずに済むし、お客様に信用していただくためには必要だと思ったんです。
「旅行業」になられて内容は何か変わりましたか?
いえ同じです。以前添乗員をしていた時、例えば、明日50人のツアーで北海道に行ってくださいと言われると、全く知らない土地に行くのに分かったふりして歩かないといけない。もちろんバスガイドさんがいるので細かいことは要らないですけど、自信満々で行かなければいけない。また50人皆一人ひとり名前も顔も覚えることはできません。それは私には向かないなと思ったんです。

私はやっぱり一人ひとりの顔を見てお名前を呼んで、お客様のことも分かって、自分がしっかり知っているところにご案内したい。なので、2~3ヶ月前からメールのやり取りして、お客様のお好みを聞いてから、行程を組ませていただいています。
コンセプトは最初から決まっていたのですね。
そこは最初からずっと変わらないですね。大手さんと違う色を出しながら、自分の旅行会社としてやっていきたいので、スーツは着ない、旗を上げない、名札をつけない。京都のお友達に会いにくるという形でお越しいただけたらと思っています。

今いろんな旅情報で、キラキラピカピカを謳っておられるところが多いですが、そのハイテンションについていけない方もいらっしゃると思うんですね。それぞれに合ったものを選ばれると良いと思いますが、私はどちらかというと、静かにゆっくりじっくりほっこり。私自身が癒しを求めていたので、同じ感性をお持ちの方もいるはずだと。

京都という土地は、長い歴史の中でいろんなことが起こってきて、それを収めるために建った神社やお寺がたくさんあります。特に私は鴨川に行くと気持ちが楽になるんです。やっぱり鴨川もいろんな人の心を見てきて、辛い思い悲しい思いを水に流してくれていると思うので、「辛い思いは鴨川の水に流してください」と言うんです。寺社仏閣だけでなく、そうした京都の自然も大きな力を持っていると思います。
下戸さんと同じように「旅案内人」になりたいと方もおられるのでは?
ご自身の土地でも「案内人」をしたいので、どういうことをされているか知りたいとお越しになる方もいます。その土地土地でそういう方がおられると良いなと思うんです。将来、全国に広がってみんなで連携していけたら、もっと旅の楽しみも広がりますし、そうなるのは夢ですね。
では「旅案内人」として、ここは外せないということは何ですか?
やはり聴く力だと思います。お客様は何を望まれているのか、京都に来て何がしたいのか。ほっとしたいのか、美味しいものを食べたいのか、静かなお寺に行きたいのか。私はどれか1つだけ言ってくださいって聞くんですね。一個だけ上がってきた段階で、ブログをされていたら過去記事まで遡って読みます。ネコがすきな方だと分かればネコのいるお寺をご案内したり、本が好きな方には珍しい本を置いているお店をご案内したり。それをサプライズでご案内すると喜ばれるんですよ。

一応行程は作りますが、スタンプラリーの旅ではないので、ランチの場所だけは予約して、あとはゆるやかに臨機応変に対応しています。当日行ってみて、「ここの場所、すごく気に入ったからここにいたい」と言われたらそこに2時間でもいます。ご案内が終わってお別れした後、私がお礼のメールを送るより先に、「今帰りの電車の中です」とほとんどの方がメールをくださいます。「また何ヶ月か後に会いにいきますね」と、「会いにいきます」というのが嬉しいですね。
ステキですね。下戸さんに京都をご案内いただくと、「癒し」の他にどんな喜びを感じておられるのでしょうか
何でしょうね。共感が大きいと思います。「生きる力が湧いてきました」という言葉をいただくことが多いですね。お客様は同世代の方が多いので、「次は両親を連れてきます」と仰る方も少なくないんです。それは以前、私が祖母と一緒に旅行に行くことが楽しかったように、お客様にもその楽しさと嬉しさを体験していただけると、幸せだなと思います。
ありがとうございました。
 
(取材:2014年9月 関西ウーマン編集部) 
 

 

 

 


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