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■関西の舞台芸術を彩る女性たち


徐 玉芬さん(一般社団法人 古典芸術振興会 大阪事務所所長)

徐 玉芬(じょ ぎょくふぁん)さん (一般社団法人 古典芸術振興会 大阪事務所長)
中国・広東省出身、神戸在住。25才で日本に私費留学する。日本語学校と専門学校を卒業。28才で日本人と結婚。二児の母として専業主婦となる。夫の転勤について、埼玉、仙台、盛岡、仙台を転住し、2004年に大阪の八尾に移る。2012年より神戸に在住。2007年、神韻芸術団の日本公演を観て感銘を受ける。 2014年12月より現職。
一般社団法人 古典芸術振興会 http://www.afpca.or.jp/
神韻芸術団 日本公演 :http://ja.shenyun.com/osaka
一般社団法人 古典芸術振興会のお仕事について教えていただけますか。
一般社団法人古典芸術振興会は、伝統芸術の普及を目的に創設されました。水墨画、書道、中国伝統楽器(二胡・琵琶など)の演奏、中国食文化体験などを通して、地域での交流イベントへの派遣などを行っています。また、最も大きな仕事として、毎年2月から4月の間に来日する「神韻芸術団」世界ツアー日本公演をサポートしています。その関西・東海エリアを担当するのが、大阪事務所です。
お仕事の中で、どんなことに力を入れていますか?
古典芸術振興会は、伝統文化の復興が目的で創設されました。現在、中国国内では、自国の伝統文化が壊されてきたという現状があります。

ご存じのように、文化大革命(1966年から1977年まで続いた中華人民共和国の権力闘争)でほとんどの中国伝統文化は壊されました。中国の伝統文化は、 二胡を個人的に教えるなど、個人レベルでのみ残されています。

行政や団体が継承のために動いていることはありません。今まで中国の歴史の中で重んじられてきた「仁・義・礼・智・信」さえも、文化大革命の批判の対象になってきました。

今、中国経済は発展してきて、裕福な中国人が旅行者として来日していますが、モラルやマナーが悪いと言われています。人のためではなく、自分が良ければいいという考えが植え込まれているように感じます。中国の大気汚染問題もそうですよね。自然破壊が進んでいるのです。人間が住めるところではなくなっていますが、海外の情報が入ってこないので、中国国内の人は、自分がそういった環境にさらされていると言うことをあまり感じていません。人権、言論の自由もかなり制限されていることは、私自身も来日するまで、気づきませんでした。

中国国内では、正統文化がどんどん失われていっていますが、 その文化は海外に残されているんです。世界中で、一番中国の伝統文化が残っている国と地域はどこだと思いますか?台湾と日本です。日本の中でも特に関西なんですよ。奈良や京都の暮らしや歴史的建造物の中には、中国文化が多く残っています。

『神韻』の舞台では 中国各地に残る民族舞踊や伝説、王朝文化などが展開され、観るだけで中国五千年の歴史が分かったとおっしゃる方もいるほどです。観劇前には中国が大嫌いだった方も、正統文化に触れることで、観劇後に好きになったという話も耳にします。『神韻』という舞台の美しさ、意義を理解していただくことを大切にしていきたいと思って活動しています。
古典芸術振興の醍醐味はなんでしょう?
何と言っても、観ていただいたお客さまからの感嘆の声です。そういう声を聞いたとき、やりがいを感じます。『神韻』では、本当に毎年たくさんの感想をいただいており、舞踊のすばらしさ、衣裳やオーケストラの演奏に触れ「伝統文化の神髄を見た!」とおっしゃっていただけることが、協会の設立された目的ですし、みなさんにお伝えできて良かった、と私自身が感動する瞬間でもあります。
なぜ今のお仕事に関わることになったのですか?
2007年に私自身が初めて『神韻』を観て感動し、これを多くの人に伝えたい!何かお手伝いしたい!と思ったのがきっかけです。

神韻芸術団が、中国では失われてしまった五千年の伝統文化を甦らせるという主旨に感銘し、大阪事務所の営業の仕事に携わるようになりました。特に日本の中でも、伝統文化の残る関西で、中国元来の真の伝統を伝えたいと思ったこともあります。初めはボランティアでお手伝いをしていましたが、2014年12月から、前の大阪事務所長の緊急な海外転居に伴い、大阪事務所長を担うことになったんです。

20年以上ずっと専業主婦で来ましたので、社会での動き方も知識がなく、最初はお断りしていたんです。その後、日本人の方が営業に加わってくださり、日本公演を開催するための営業の仕方を少しずつ学ばせていただき、これが下積みとなって、2014年12月に所長を一任されることになりました。
これまでに「壁」はありましたか?
本当の中国文化を定義付け、日本の方々に深く受け入れていただこうとするとき、言葉でうまく説明できずに壁を感じています。思ったことをどう表現して、みなさんにより理解してもらえるかを試行錯誤しています。あまり自分のことばかり考えず(自意識過剰にならず)、まず相手の立場に立ち、本当に観ていただきたいと思うことが大切だと学びました。

ニューヨークを拠点とする『神韻』は、中国国内では公演できません。毎年のように、圧力や妨害がかかります。中国国外にいても本国の影響を受けることに毎年気づかされています。

現代中国の文化は表面的な「器」の部分だけを修復したり創作したりしています。そこには内面の「精神」や「善の心」は伴っていないということにも気がつきました。「善悪には報いがある」とわれるように、善いことをすれば、必ず自分にも返ってくると思います。

中国のことだから日本には関係がないと思われるかも知れませんが、一国の道徳が低下すると、どんどん社会も悪い方向に行ってしまい、その被害は世界に広がります。中国からの汚染食品などを考えると、日本にとっても対岸の火事ではありません。

『神韻』は、伝統文化を通して、倫理やモラル、マナーの心を継承する芸術団としてニューヨークで結成されました。この団体を支援することがどれだけ大切かを痛感し、こういうことに携わる機会が回ってきたと受け止め、大阪事務所長という大任を引き受けることにしました。
「自分の時間」をどのように作っていますか?またその時間に何をされていますか?
「多くの人に中国の伝統文化芸術のことを知ってもらいたい!」その思いだけでこの活動をしていますが、ほとんど自分の時間はありません(笑)。主人の理解もあり、子どもたちが独立した今だからこそできる活動だと、がんばっています。

朝から夜遅くまで、事務所長としての活動に身を投じますが、毎朝欠かさず行っていることがあります。それは、約1時間の気功です。静功(座禅瞑想)と動功(法輪功)を行うために早起きをして、瞑想をすることで、心を落ち着け、人のことを思いやっているかを自問します。自分の1日を整えるための大事な日課ですね。
今の徐さんの人生に影響を与えたものはありますか?
2004年の年末頃でした。香港に住む姉に勧められて『転法輪』という本を読みました。最初に読んだときには、「悪い本じゃないわね」くらいの感想しか持ちませんでしたが、半年後にもう一度読んでみたとき、私の生き方に影響を与える本となりました。

その本から得たことは、他人を批判したり、不平不満を持つことなく、悪いことが起きたら常に自分をみつめて、自分の中から原因を探すことで、自分を変えていくということ。自分は変えられるけれど、他人は変えられません。このような心構えでいると、不満やストレスのレベルを下げて生活できることが分かりました。やはり、ここでも、自分のためではなく、人のために生きることの重要性を学びました。
最後に「関西ウーマン」読者へメッセージをお願いします。
芸術振興に関わらず、どんな仕事にも言えることですが、自分のためでなく、人のために役立ちたいという信念を抱き、「やりたい」という一念があれば、助けの手が差し伸べられ、道は開けます。私も大阪事務所長のお仕事の話をいただいたときは、「日本社会での経験もない、積極的な性格でもない、ノウハウもない」と断っていたのですが、最終的には「これもご縁、そういった役目があるのかも知れない」と、受け入れることにしました。大変な責任が伴う仕事ですが、いろいろな方に助けられてやってきています。信念を持って、人のために動いてみてください。
ありがとうございました。
(取材:2016年1月)
このお仕事をするまでは、20年以上専業主婦だったとは思えないほど活発な仕事ぶりです。自由意志の尊重という点でも、大きく違いを感じる中国と日本ですが、中国の伝統文化の継承のために、ことばの壁も物ともせず、努力されている徐さんに強い信念を感じます。政治的な国の関係に関わらず、「良いものは良い。貴重な歴史文化を後生に継承する」その思いは、世界中を巡り、広がっていっています。

取材:なかむらのり子
Splus+hスプラッシュ 代表
フリーコーディネーター/コピーライター/プランナー

舞台芸術に関わる取材コーディネートも多く、観劇数は年々増え続けている。自らも市民演劇に参加するなど、舞台の表と裏からの視点を持つ。インタビューする方の人生にスポットを当てる取材を心がけ、教育、医療、地域活性に関する取材など、そのフィールドは広い。

 


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