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■関西の舞台芸術を彩る女性たち
福島 直美さん(ダンサー/ダンス講師)
福島 直美さん バレエ・ダンス講師、振付師 幼少の頃よりクラシックバレエを習い、その後様々なジャンルを習得。兵庫県立宝塚北高校演劇科卒業。大阪芸術大学・同大学院を首席入学。卒業制作では学長賞受賞。様々なコンクールにおいて入賞・入選多数。また、所属するダンスカンパニー「Memorable Moment」でも、国内コンテストにおいて優勝多数。世界大会でも3位入賞を果たす。テレビ出演、神戸コレクション・東京ランウェイにダンサーとして出演など、活動の幅は広い。 Facebook:https://www.facebook.com/naomi.fukushima3 |
お仕事の内容を教えてください。 |
ダンススタジオで、クラシックバレエやダンスの指導。さらに、兵庫県立宝塚北高等学校演劇科、大阪府立咲くやこの花高等学校演劇科では、舞踊科目の講師として生徒への指導を行っています。また、「Memorable Moment」というダンスカンパニーに所属し、ダンサーとしての活動も続けています。劇団の公演振付、イベントのオープニングアクトの振付などの依頼をいただくこともあり、指導者、舞踊家、振付師など、いろいろな顔を持っています(笑)。 |
舞踊に関するお仕事を選ばれたきっかけは? |
幼少期より兄弟全員がピアノを習っている家庭で育ちました。そんな中、なぜか7歳のときにどうしてもバレエが習いたくなり、母に懇願するも、却下され(笑)。
我慢しきれず、公民館でやっているバレエ教室のレッスンを窓の外からのぞいていたんです。そして、ある日、意を決して、ひとりでその教室の中に入り、習いたいと志願したんです。教室の方が驚いて親へ連絡し、「そこまでやりたいのなら」ということで、習うことを許可してもらいました(笑)。 その時からずっとクラシックバレエを続けています。当時からバレエの先生になりたいと思っていました。 |
高校・大学・大学院と舞台一直線ですね |
舞台全体のことを学びたくて、演劇科のある高校へ進学しました。芝居や歌、クラシックバレエなど、さまざまな分野での自己表現や振付なども学ぶ3年間でした。 そこで出会った恩師・秋浜悟史先生(劇作家・演出家)※ に多大な影響を受け、先生が教鞭を取っていた大阪芸術大学・舞台芸術学科へ追いかけるように入学。さらに院まで進んだのは、自己表現する楽しさや、それゆえの苦しさもすべて教えてくださった秋浜先生がいてくださったからこそでした。 その後も様々なジャンルの表現を経験する中で、舞台に携わるお仕事をしたいと強く思うようになったんです。 秋浜先生の教えが私の人生の基礎となっています。自分が自分であることへの感謝と挑戦というか。人生で選択に迷うとき、疲れたとき、今でも先生の本や言葉を読んだり思い出したりしています。先生に出会わなかったら、今の私はいなかったと思っています。それほど、大きな存在ですね。 ※ 故・秋浜悟史:日本の劇作家・演出家。 戦後演劇を牽引し、演劇教師として様々な実践活動を行った人物。全国初の県立劇団である「兵庫県立ピッコロ劇団」創立時より代表を務め、98年に第52回文化庁芸術祭賞優秀賞、第32回紀伊國屋演劇賞団体賞を受賞している。 |
これまでにぶつかった「壁」はあったのでしょうか? |
自分自身を見つめれば見つめるほど、コンプレックスの固まりでした。大学院卒業後は、ダンス講師の道を歩みはじめましたが、ずっと方向性についての葛藤がありました。自分は、ただ踊りに専念するバレリーナでいくのか、ダンサーでいくのか、振付などもできる舞踊家でいくのか、ひとつに決めないと行けないと思っていたんです。
そんなとき、NYに行く機会があったんです。NYに降り立った瞬間、街の大きさに今まで悩んでいたことが全部ちっぽけに思えて(笑)。ひとつに絞ろうと持っていた自分は「なんてナンセンスだ!」と感じたんです。 レッスンを受ける中でも、目から鱗が落ちましたね。いろいろな国籍の仲間がいて、良いところを見つけては褒めてくれたりして、アジア人にはアジア人の良さがあるんだって感じたんです。 ある時、車イスに乗っているおばあさんがダンスのレッスンを受けているのを見たときは衝撃的でしたね。足が動かないからダンスをやっちゃいけないなんてことはないんだ!。やりたいことをやりたいようにやっているだけでいいんだ。「〜してはいけない」「〜しなければいけない」なんてどうでもいいことだと思えるようになりました。 自分は舞台に立ち続けたいけど、クラシックもジャズもやる私って偽物なんじゃないかーと思う自分がいたんです。だけど、このNYでの体験で、自分にしかできない表現をしたらいいと思えるようになりました。何も恥ずかしくなくなりましたね。それは、現在の指導にも生かされていて、その生徒さんの骨格や性質をみて指導するようになりました。私と同じように、生徒さんたちにもいろいろな経験をして欲しいなと思っています。 |
お仕事をされる中で、いつも心にある「想い」は何ですか? |
舞台芸術は、人と人のコミュニケーションの中から創造されると思っています。踊り手がいて、照明や音響、舞台装置があって初めて作品が生まれる。だから、生徒さんとのコミュニケーションも重要で、人生を賭けて子どもたちと向き合っていきたいと思っています。 |
近い未来、お仕事で実現したいことは何ですか? |
2012年にTV番組のダンスコンテストに出場した仲間で結成したダンスカンパニー「Memorable Moment」で現役ダンサーとしても活動しているのですが、このチームでオリンピックに出演することが夢であり目標ですね。 |
お仕事をする女性として、ライフワークバランスをどのように実現されていますか? |
私は、仕事も自分でやりたいと決めたこととして取り組んでいるので、やりたいことをひたすら頑張っているという感じです。大切な仲間との大切な活動に全力投入しているので、公私のバランスを考えたことがないんです(笑)。 バレエを踊りながら、指導者でありながら、「Memorable Moment」にも参加しながら、世界へいく。これが当面の目標です。生涯をかけて取り組みたいのは、講師としての活動ですが。 |
ダンスや舞踊を仕事としたい方に、アドバイスをいただけますか? |
恩師(劇作家・演出家の秋浜悟史先生)の言葉に「楽しいことは苦しい。苦しいことは楽しい。」という言葉がありました。まさにそうだと思っています。楽しいから、大好きだから、苦しさは本当の苦ではなく、喜びへの道でしかないと思います。そして、舞台芸術には必ず仲間がいます。最高のお仕事です!! |
福島直美さん、ありがとうございました。 |
生徒さんたちからは「怖い先生」といわれているんですよ、と笑う福島直美さん。自らがコンプレックスに落ち込んだ時期を、視点一つ変えることで克服した経験から、生徒さんたちにも、自由に表現することを身につけて欲しいと指導されています。「怖い」くらいに熱心に指導する姿は、舞踊への情熱を物語っているのではないでしょうか。 |
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取材協力:ダンススペース北野 〒650-0012 神戸市中央区北長狭通4-2-5 ローレル元町201 TEL・FAX:078-321-1215 http://fukijazzdancecompany.web.fc2.com/dancespacekitano.html 写真協力:Memorable Moment 関西を拠点に活動し、国内外で高い評価を得る『表現系ジャズダンス』チーム。2016年6月にはロームシアター京都にて新作公演を予定している。http://memorable-moment.net |
取材:なかむらのり子 Splus+hスプラッシュ 代表 フリーコーディネーター/コピーライター/プランナー 舞台芸術に関わる取材コーディネートも多く、観劇数は年々増え続けている。自らも市民演劇に参加するなど、舞台の表と裏からの視点を持つ。インタビューする方の人生にスポットを当てる取材を心がけ、教育、医療、地域活性に関する取材など、そのフィールドは広い。 |
■関西の舞台芸術を彩る女性たち 記事一覧
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「見えないところへのこだわりが、舞台の基盤をつくりあげていく」初日の幕が開く時が新たな作品へのスタート
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「三人だからこそ人形の想いを表現できる」大阪府の伝統芸能事業として、能勢人形浄瑠璃を伝える橋本さん
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「パズルを考えるようにたまらなく楽しい」役者と一緒に芝居する舞台美術こそ、転換の妙と話す加藤さん
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「緊張感は裏も表も一緒。自分の作品に妥協はしない」劇団四季で俳優のヘアメイクを担当する芳賀さん
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「役者は出会いが大事な世界」17年在籍した劇団四季を退団後、俳優として活躍する傍ら後進の育成に力を注ぐ森さん
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「この仕事を「点」ではなく、どんなに細くとも「線」にしていきたい」無形文化財保持者の豊澤住輔さん
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「好きな分野なら勉強も楽しむ余裕を持てる」歴史と古典芸能好きが高じて業界へ。現在は上方芸能研究家の森西さん
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「失われた中国五千年の伝統文化を伝えたい」20年以上の専業主婦から一転、中国の伝統文化の継承を担う徐さん
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「どれだけ目から鱗を落とせるかが勝負」1冊の本に出会い、建築士から劇作家に転身された石原さん
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「三味線は魂の生きものといえる楽器」常磐津節三味線方の三都貴さん
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「洗練された歌舞伎を子供が演じる。そこにマンネリ化は無い」子供にこそ本物をと子供歌舞伎を教える向平さん
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「着付けは自分の腕ひとつ」日本舞踊の舞台を彩る衣装を担当されている松竹衣裳株式会社の辻野さん
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「女だからという考えは一旦置いて、とにかくがむしゃらに働く」国立文楽劇場の大道具として舞台を支える森本さん
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「大好きだから苦しさは喜びへの道でしかない」ダンサーとして振付師として国内や海外の舞台で活躍する福島さん。
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「社会の様々なシーンで演劇の力を活かしていきたい」公立劇場で働くことを選んだ古川さん
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「舞台制作という仕事は人と人をつなぐ仕事」プログラムディレクターとして数々の演劇公演を企画されている福島さん
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伝統芸能に魅了され「女がやる仕事じゃない」と断られながらも国立文楽劇場初の女性床山となった晃子さん。
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「舞台の裏方で働く仕事は、そこにだけしかない面白さと楽しさがある」衣装が大好き!と笑顔がはじけるコスチューム担当の竹井さん。