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■関西の舞台芸術を彩る女性たち
竹井 ゆかりさん(劇団四季『ライオンキング』大阪公演コスチューム担当チーフ)
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■関西の舞台芸術を彩る女性たち
竹井 ゆかりさん(劇団四季『ライオンキング』大阪公演コスチューム担当チーフ)


竹井ゆかりさん 劇団四季 『ライオンキング』 大阪公演 コスチューム担当チーフ 2008年劇団四季入団。20名を超える劇団衣裳部門の中で、『ライオンキング』のコスチューム担当チーフとして舞台裏を支える。服飾デザイン、洋服販売、オーダーメイド&リメイク店での就業を経て現職。チーフとして持ち前の明るさで風通しの良い仕事環境を作るムードメーカーでもある。 |

コスチューム担当とはどのようなお仕事ですか? |
演目が決まると、ひとつの演目に対して平均2〜3人の衣裳担当がつき、それぞれの衣裳を出演俳優が着用できるよう調整していきます。ロングランなど長期間着用して消耗したものは新規制作することもありますし、演目によってデザインに手を加え変更することもあります。 また、毎週のようにあるキャストチェンジに合わせて衣裳のリサイズも行っています。衣裳を俳優の体型や動きに合わせて調整する技術は、演目が変わるごとに学んでいきました。 また衣裳担当は「本番付き」といって、上演中に舞台袖にある「小屋」と呼ばれる着替え場所でスタンバイし、出演俳優たちの着替えも手伝います。公演終了後の衣裳のメンテナンスやクリーニングもコスチューム担当の重要な仕事です。 『ライオンキング』では、ひとつの役(キャラクター)に対して、衣裳、靴、帽子等はコスチューム。マスクやパペットは小道具、カツラ、体へのペイントなどはヘアメイクといったように各部署に分かれていますが、1つのチームとしてひとつの役を創り上げています。 |
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どんなきっかけでこの仕事に携わるようになったのですか? |
学生の時から舞台衣裳に興味がありました。当時は今のようにインターネットの時代ではなかったので、どこにそんな仕事があるのか探せず、カジュアルファッションの服飾デザイナーの見習いを経て、ドレスの裁断縫製工場に就職しました。 ここでパターンについての知識を身につけて、その後ショップでの販売にも携わりました。それから洋服のお直し屋さんへ転職したのですが、縫製のみならずオーダーメイドも受けることがあり、ここで初めて服を作ることの一から十までを経験しました。 ある時上司の娘さんが、劇団四季で衣裳担当を募集していると教えてくれました。その頃、時々小さい劇団の衣裳をつくる機会がありまして、一日中そういう仕事に携わりたいと思っていたところでしたので、これはチャンスだと思いました。 劇団四季でしたら一日中衣裳の仕事に専念できるし、舞台には様々な専門のスタッフが集まって一つの作品を創り上げていくでしょう? 私もその中に入りたい!という夢がふくらみました。 |
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幼い頃から洋服に興味のある女の子だったのですか? |
母は編み物の先生をしていましたし、叔母がオーダーメイドの洋服を作るアトリエをしていたので、小さい頃はよく服を作って着せて頂きました。叔母の作る服がとても好きで、アトリエにもよく遊びに行っていましたから、その影響は大きいですね。でもまさか自分が洋服を作る側になるとは思ってもみませんでした(笑)。 |
衣裳が好きだったと伺いましたが、自分が衣裳を着ることは考えなかったのですか? |
以前他の劇団で衣裳を作らせて頂いた時に、とても感動したんです。自分が作った衣裳を俳優達が着てくれて、舞台でスポットライトがあたって、「とてもキレイ!」って(笑)。自分が着ることは考えなかったですね。自分が着ると衣裳を見ることが出来ないですから(笑)。着てもらって舞台に立ってもらえることがすごく嬉しいんです。 |
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コスチューム担当という仕事のおもしろさとは? |
衣裳のデザインは決められていますが、俳優の体型や動き、こだわりに合わせて、着心地、履き心地を工夫しています。俳優の快適さを考えて、例えば汗が表面に出ないようにするといった見えないところを工夫することが楽しいですね。 仲間同士で工夫情報を交換したり、何よりも俳優から、「動きやすかったよ」と言われるとすごくやりがいを感じます。着心地が悪いもの、動きによって我慢している部分があると、やはり俳優のストレスにもなりますから。 作品全体のクオリティーを維持しながら改善することが、私たちコスチューム担当の使命でもありますし、一番の喜びだと思っています。 |
この業界を目指す人へのメッセージをいただけますか? |
![]() 『ライオンキング』の衣裳デザインでは、アフリカの要素だけでなくアジアの文化も取り込まれているなど、さまざまなものが集結しています。また天然素材や手作り感にこだわっていますので、そんな部分にも注目したり、多くを学び楽しめることが魅力でもありますね。 また演目ごとに俳優もスタッフメンバーも変わり、仕事の進め方も違ってきます。何よりもチームワークが大切な世界ですので、コミュニケーション力は一番大事。舞台の裏方で働く仕事ですが、そこにだけしかない「面白さと楽しさ」があります。やはりなんといっても体力と情熱(笑)。これからもロングランを支えていきたいと思います。 |
竹井ゆかりさん、ありがとうございました。 |

ひとつの舞台が華やかに上演される裏で、さまざまな人たちがそれを支えています。そのバックヤードに入り込み、舞台裏で働く女性たちにスポットライトを当てるこのシリーズ。![]() |
![]() Splus+hスプラッシュ 代表 フリーコーディネーター/コピーライター/プランナー 舞台芸術に関わる取材コーディネートも多く、観劇数は年々増え続けている。自らも市民演劇に参加するなど、舞台の表と裏からの視点を持つ。インタビューする方の人生にスポットを当てる取材を心がけ、教育、医療、地域活性に関する取材など、そのフィールドは広い。 |
■関西の舞台芸術を彩る女性たち 記事一覧
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「見えないところへのこだわりが、舞台の基盤をつくりあげていく」初日の幕が開く時が新たな作品へのスタート
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「三人だからこそ人形の想いを表現できる」大阪府の伝統芸能事業として、能勢人形浄瑠璃を伝える橋本さん
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「パズルを考えるようにたまらなく楽しい」役者と一緒に芝居する舞台美術こそ、転換の妙と話す加藤さん
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「緊張感は裏も表も一緒。自分の作品に妥協はしない」劇団四季で俳優のヘアメイクを担当する芳賀さん
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「役者は出会いが大事な世界」17年在籍した劇団四季を退団後、俳優として活躍する傍ら後進の育成に力を注ぐ森さん
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「この仕事を「点」ではなく、どんなに細くとも「線」にしていきたい」無形文化財保持者の豊澤住輔さん
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「好きな分野なら勉強も楽しむ余裕を持てる」歴史と古典芸能好きが高じて業界へ。現在は上方芸能研究家の森西さん
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「失われた中国五千年の伝統文化を伝えたい」20年以上の専業主婦から一転、中国の伝統文化の継承を担う徐さん
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「どれだけ目から鱗を落とせるかが勝負」1冊の本に出会い、建築士から劇作家に転身された石原さん
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「三味線は魂の生きものといえる楽器」常磐津節三味線方の三都貴さん
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「洗練された歌舞伎を子供が演じる。そこにマンネリ化は無い」子供にこそ本物をと子供歌舞伎を教える向平さん
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「着付けは自分の腕ひとつ」日本舞踊の舞台を彩る衣装を担当されている松竹衣裳株式会社の辻野さん
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「女だからという考えは一旦置いて、とにかくがむしゃらに働く」国立文楽劇場の大道具として舞台を支える森本さん
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「大好きだから苦しさは喜びへの道でしかない」ダンサーとして振付師として国内や海外の舞台で活躍する福島さん。
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「社会の様々なシーンで演劇の力を活かしていきたい」公立劇場で働くことを選んだ古川さん
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「演劇する“場”が好き」クラシック音楽専用いずみホールでコンサート広報の魁として働く森岡さん
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「舞台制作という仕事は人と人をつなぐ仕事」プログラムディレクターとして数々の演劇公演を企画されている福島さん
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伝統芸能に魅了され「女がやる仕事じゃない」と断られながらも国立文楽劇場初の女性床山となった晃子さん。
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「舞台の裏方で働く仕事は、そこにだけしかない面白さと楽しさがある」衣装が大好き!と笑顔がはじけるコスチューム担当の竹井さん。