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■関西ウーマンインタビュー(女性士業編)


森本 志磨子さん(弁護士/NPO法人子どもセンターぬっく理事長)

 
森本 志磨子さん(弁護士/NPO法人子どもセンターぬっく理事長)
一般民事・家事の中でも、DV離婚事件、虐待を受けた子どもの代理人活動(離縁・親権停止・未成年後見等)、いじめ等に関する学校との交渉、性被害・性虐待事件の代理人活動に力を注ぐ。児童養護施設の当事者グループのスタッフや週末里親の経験等から、NPO法人子どもセンターぬっくの理事長として、居場所のない子どものための緊急避難場所(シェルター)の運営を2016年4月より開始予定。相談、情報発信、ネットワークづくりを進めている。

子どもシェルター:虐待などを受けて、家庭で暮らすことができない10代後半の子どもたちを緊急的に一時保護する施設。「子どもセンターぬっく」は、大阪府内の戸建て住宅を借り、最大2ヶ月無償で受け入れる。スタッフが常駐し、個室と食事を提供して日常生活を支え、一人づつ担当の弁護士を付けて対応する。子どもシェルターは全国で現在14箇所。関西では京都・和歌山に続いて3カ所目となる)

葛城・森本法律事務所:大阪市北区西天満 4-1-4 第三大阪弁護士ビル503 TEL:06-6130-2930
弁護士を目指そうと思われたのはいつですか?
ベタですが、正義感やおせっかいな性格をプラスに活かすことができて、人の役に立てる仕事がしたいと考えていました。大学受験の頃、よくテレビで海外の難民問題が放映されていて、国連の難民高等弁務官になりたいと思い、法学部を選びました。ただ入学して、国際政治的な問題に対する周りの関心の高さを思い知り、そこまででない自分に気づきました。むしろ身近で具体的に人の役に立てる仕事が気になり始め、学校の先生か弁護士かで迷っていました。

大学3年生の後半ころになってやっと、法律という異次元の世界について「おもしろい」と感じるようになったんです。社会の至るところに法律や約款などが存在していて、それらに基づいて日常生活が成り立っているんだと。そして最終的に、司法試験を受験して弁護士になろうと決めました。

弁護士登録してから5年半、雇われ弁護士として法律事務所に勤務していましたが、雇われている立場では、一定数ボスの紹介事件を担当しなければいけません。もっと自由に、自分が出会い選んだ依頼者の事件や、子どもに関わる仕事をしたいと思い、勤務していた法律事務所の弁護士の勧めにそのまま乗る形で独立しました。
子どもに関するお仕事が多いそうですが、そのきっかけは?
弁護士になって1年目に、「子ども権利委員会」に入ったことがきっかけです。その後、学校のいじめの問題や、虐待の問題など、少年事件を担当し、2年目に、近畿弁護士連合会主催のシンポジウムでの講演で、CVV(Children’s Views and Voices)と出会い、児童養護施設の当事者の人たちの話を聞いて、初めてその過酷な状況に触れました。

彼らはまだ小さい時に、親との別離や死別を経験したり、貧困で家に帰っても食べるものが無かったり、親からの経済的搾取や裏切り、そんな理不尽で過酷な経験をしています。そんなマイナスからのスタートにもかかわらず、児童擁護施設を退所後、まだ10代の若さで完全な自立を強いられ、孤独でさまざまな苦労をしているという現実。それを全て受け止め、たくましく生きている彼らの姿にとても惹きつけられたんです。そこで、何か私にできることはないかと、いろんな活動に関わるようになりました。

私自身、会社員の父と専業主婦の母で、4人姉妹の三番目に生まれて、家族仲が良いし、母も子どもたちの栄養や健康を考えてくれて、ちゃんと家事もしてくれるという、ごく普通の家庭に育ちました。弁護士を目指し、司法試験には26歳で合格したのですが、いつ受かるか分からない、受かるかどうかの保証もない、周りは就職していくのでだんだん焦りも出てくる、そういう中でも両親は私を信頼し応援してくれました。なにより実家にいられたので、いろんなことに振り回されることなく勉強に集中できたんです。

でも彼らにはその実家も無ければ、生活するのもままならない。高校に進学しても、携帯電話代を稼ぐために、クラブ活動をあきらめてアルバイトをせざるを得なかったりする。もしこの子たちが私と同じ環境で育っていれば、たぶん今の生活とは違っていただろうと思うと、そこの違いって大きいと思うんです。それは何が違うんだろう。子は親を選べないのに、なぜ親によって人生に差がつくのか。なぜこんなことになっているのか。それを常に感じ、せっかく「法律」という武器を持っているんだから、私にできることをやりたいと思ったんです。
大阪府内で初めて「子どもシェルター」を開設されました。
児童養護施設は、学校に通う子どもたちを対象にしており、非行や犯罪行為がある場合は児童自立支援施設、心理的問題を抱える場合は情緒障害児短期治療施設というように、義務教育までの子どもたちには、いくつか受け皿的な「生活の場」はあるんです。でも義務教育を終え、中学校を卒業したとたん、その子たちは既存の制度からはみだしてしまいます。

特にその狭間に落ちやすいのが10代後半の女の子。中卒のまま高校に行っていないとか、高校進学しても中退してしまって、仕事もみつからないとか、そもそも帰る家が無かったり、家庭内で性的虐待を受けている子もいたりと、さまざまな事情で居場所を失ってしまう。友達の家やネットカフェを転々としてきたけど、もう今日寝るところが無いとか、家にいてもアルバイト代を親に全部取られて、もう生活のめどが立たないとか、ずっと親の暴力に我慢してきたけど飛び出してきたとか、子どもシェルターはそうした子どもたちを、一時的に受け入れて保護する緊急避難場所なんです。

シェルターでは、共同生活ですが個室があって、1日三食手作りの料理が食べられます。まず生活が保障され、また暖かいまなざしの職員が常にいて、弁護士も必ず一人ずつつきますから、何かあればいつでも相談ができます。安全に安心して大人と一緒に過ごすことで、「信じられない大人ばかりじゃないんだ、自分の人生を自分らしく生きていいんだ」ということを体験できるんです。虐待したり、養育を放棄していた保護者の中には、シェルターに入った後にも、不当な干渉や妨害をしてくることもあるので、場合によっては子どもの代理人となり、親権停止を家裁に申し立てるケースもあります。

退所後は家庭を調整して家に戻ることもありますし、一人暮らしになることもありますが、やっぱり生活面や対人面での悩みは出てきます。自分から相談できずに「もういいや」となってしまう子が多いので、月1回程度ボランティアスタッフらが連絡を取り、一緒にお料理したり、食事をしたりすることで、自分で生活できるよう頑張ってみようかなという気持ちになってもらいたい。そんな「場」になることをめざしています。
シェルターに来る子どもたちは、どのように自分の人生を取り戻せるのでしょう。
親の都合で住むところが変わったり、転校させられたり、家族関係が複雑だったり、一番信じたい親に裏切られていたり。それも裏切られていると思っていない。しかも自分が悪いと思っている子が多いんです。心も身体も傷ついてしまっている。そうなると、「もういいや」と諦めてしまう性格になって、自分のことを大事に思えなくなるのは当たり前なんですね。

ほとんどの子が、シェルター来て初めて1日三食食べましたと言うんです。それはそもそも親に人的資源が無いので、社会のコミュニティに繋がっていないし、親の意識も低いんです。特に貧困だとお金もないので、子ども自身も、「そういうものだ」と思っているんですね。そんな状態で育ってきた子どもたちは、そうじゃない人生があるなんて信じられないんです。私も親がいてくれたから今があるのであって、やっぱり励ましてくれたり、自分に期待してくれる人無しに、何かをやり遂げることなんてできないと思うんです。

シェルターの中で、大人の暖かいまなざしを体験することで、こういう生活ができるんだとイメージできる。人って温もりを経験して初めて問題に立ち向かえると思うんです。自分を自分だけで支えるなんて、そんなことできないし、誰もできてはいない。あたりまえの生活が保障され、自分らしく生きることを願ってくれる人がいるから、この人たちを裏切りたくないと思える。そういう経験をしないと信じられないんですね。

生活が保障され、規則正しい生活ができてくると、次は働くことを考えるようになります。でも働くことって、実は高度な技術が必要ですよね。対人関係をうまくこなさいといけないし、いろんなストレスに耐えないといけません。自分の気持ちをマネジメントしたり、仕事が自分に合わなかったら違うところに行ってみたり、そうしたいろんな経験ができる「場」にしたい。それでもやっぱり壁はありますから、簡単にはいきません。シェルターに何度も入ったり出たりする子もいるだろうけど、細く長く繋がりを続けていきたいと思っています。
子どもに関連する事件が起きると、そうなる前になぜ、周りの大人は気づかなかったんだろうと思ってしまいますが、社会の人がこういう子どもたちの存在や現状を知るためには、何が必要だと思われますか?
大阪は児童虐待対応件数や性被害発覚件数が全国1位(2014年度)という現状が新聞に出ても、「本当にこういう子いるの?」と思う方は多いと思います。自分の住む地域に児童養護施設があれば知っているかもしれませんが、児童養護施設は全国的にも少ないですし、施設から通っていることを隠している場合もあります。施設に入所している子の割合は約700人に1人。学校の先生がずっと先生をしていても、自分の担任にあたるかどうかの割合ですから、知らない先生もいっぱいいるのが現状です。なので、こうして知ったことを、自分の周りの5人くらいにお話してくださいとお願いしています。

また、気になる子どもがいたら、知らん顔せずに暖かいまなざしで、できれば暖かい言葉をかけて欲しい。声をかけて、何かされたらと思うかもしれませんが、やっぱり声のかけ方だと思うんですね。例えば就職して、朝寝坊をしてしまうと、どうしよう・・と思うけど、もう行かなくなってしまう。そういう時、「どうしたの?」と声をかけて、少し歩み寄って、やり直しできるチャンスがあれば、その子はまた仕事を続けていけるんです。

「なぜそうなったのか」を聞かないまま、その行為だけで非難し、「お前はあかん」で終わってしまうと、もうその子は人間不信になって離れるだけ。いじめにしても、非行にしても、なぜそうなったのかをまず聞いて受け止めることが大切。そののちに、どんな理由があっても、そういう行為は許されないということを、私メッセ―ジで伝えながら話し合う。そうして初めて子どもは学び、次に行けると思うんです。

バッシング社会ってよく言ったもので、誰しも自分が生きてきた環境と異なるものや知らないことは、恐れたり批判してしまいがち。それは、自分と同じ社会の中で起きていると思うと安心できなくなるので、「違うもの」とみなして安心を得ようという心理が働くんですね。

でも、彼らだって、そうしたくてしている訳じゃないんです。表面の行為だけで非難したり、「そんなこと理解できない」と思考停止しないで、そうせざるを得ない理由があるんじゃないか、その背景には何があるのかという発想と、理解しようという気持ちで見たり考えたりするだけでも、そういう子どもたちは生きやすくなると思います。
今後どのような展望を考えておられますか?
この子どもシェルターの運営が軌道に乗れば、数年内にステップハウス(経済的にも精神的にも就労するに至らない子どもたちに、実家の代わりとなって生活を保障する。ここでは、子どもたちは、治療に専念し、またはアルバイトしたり勉強したり身体を鍛えたりなど、自らに必要と思われるチャレンジや日課を自ら計画してこれを行い、半年から1年かけて自立の準備をする施設)も作っていきたいと考えています。

この活動を始めたことで、いろんな方が関心を持ってくださり、応援もしてくださるので、やりがいもありますし、人の繋がりをすごく感じています。みなさまに支えられているということを実感しています。

また、やっていくほどに次の課題も見えてきますし、子どもたちとの関わりは即効で満たすことはできないので、一人ひとり時間をかけてやっていくことが一番の早道。関心を持ってくださる人、それぞれですでに活動をしている人たちに声をかけ、地道に繋がってネットワークを広げていきたいと考えています。

私自身40歳を超えて人生も折り返し地点。将来のためというよりは、一日一日を充実させていきたいですし、後悔のない一生を終えたいと思うようになりました。二人の姉妹の週末里親を始めたことで、この子たちに恥じない生き方をしたい、自分が楽しく生き生きと生きていなければ、彼女たちに対して説得力がないと、腹をくくることができました。
最後に、森本さんにとって弁護士の仕事とは?
弁護士はどんな分野でも活躍することができる仕事です。「ありがとう」「出会えてよかった」「先生は心の支えです」と言ってもらえたり、「先生の名刺をお守り代わりにしています」と、何年も経ってボロボロになった名刺を見せてくださることもあります。この仕事は、しんどいことも多いですが、とても幸せを感じられる仕事だと思っています。
ありがとうございました。
(取材:2016年2月 関西ウーマン編集部) 

 


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