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■関西ウーマンインタビュー(士業)


小谷 晴美さん(ファイナンシャルプランナー)

 
小谷 晴美さん ファイナンシャルプランナー/中小企業診断士
熊本県出身。国立大阪教育大教育学部卒業。経営コンサルタント会社に所属し、商業等の経営診断や研修講師を務める。専門学校、産業能率大学等において委嘱講師を務めた後、2006年ファイナンシャルプランナー資格を取得、独立系ファイナンシャルプランナーとして起業。 ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)/中小企業診断士/住宅ローンアドバイザー 日本FP協会平成23年「くらしとお金のFP相談室」相談員  マネーの達人コラムニストFPファクトリー所属
小谷晴美 HP: http://hkotani.jimdo.com
小谷さんは大阪教育大学を卒業されましたが、なぜ先生にならなかったのですか
小学生の頃から学校の先生になることが夢だったので教育大学に入りましたが、3回生の終わりごろ、「このまま世の中のことを何も知らずに学校から学校へ行っちゃうけど、これでいいのかな」とふと思い、それから就職活動も考えてみようという気持ちになりました。

教育大は先生になる方が圧倒的に多いですが、中には就職活動をする学生もいましたので、あまり異色という感じはありませんでした。私の中では、ずっと「先生になる」と一途に思い続けてきて、何の疑いも無くそうなるものだと思っていたからこそ、疑問が起きてきたのかもしれません。当時はバブル時代で、これが不況の世の中だったら迷わず公務員になっていたかもしれないですね(笑)
どんな職種に興味を持たれたのですか
就職するときの条件は、男女差の無い処遇をしてもらえて、ちゃんと女性も管理職になれる企業を希望していたので、おのずと中小企業になったんですね。当時はまだ日本の企業にそうした処遇のあるところが少なかったので、IT系の外資系企業に就職し営業職に就きました。

そこは本当に男女差が無くて、女性も夜10時まで働け、という感じでした。(笑)一応週休二日とうたっていましたが、その週休めるかどうかは目標の数字で決まり、達成していないのに休むのかという空気もあって、土曜日も日曜日も無くフルでずっと出ていたということもありました。また、ある程度力がついてきて契約が取れるようになると、今度は3人くらいのチームを持たされるんです。

「主任」とか呼ばれて、それまで自分が1本上げれば良かったのが、チームで3本と責任を持たされるんです。すると3本上げてないのに今週休むの?となるので、このままだと結婚もできないし子どもを産むのも無理だなと。上を見ると結婚している女性は誰もいませんでした。将来を考えたとき、一旦リセットしようと思って辞めてしまいました。
20代で中小企業診断士の資格を取られて、その後ファイナンシャルプランナーになろうと思われたのは?
経営コンサルタントの会社に転職したので、経営の知識が必要だと思い、中小企業診断士の勉強をはじめました。27歳の時に取得して、その後は企業研修の講師をさせていただくことが多かったですね。財務管理研修や、中小企業診断士資格取得講座の講師など。講師業は結婚後も続け、出産を機に仕事を辞めました。

ちょうどそのタイミングで、主人が事務所(法律事務所)を立ち上げることになって、私が経理や総務を担当することになったのです。企業の財務諸表は読めるので、個人の事業なんて簡単だろうと思っていたら全然違う。法人税の考え方と所得税は違うんですね。

また、金融機関の方に「事業資金を普通預金に預けていますよね。利息もつかないのにもったいないですよ、奥さん」と言われて投資信託を勧められたり、保険会社の方からも「もうサラリーマンじゃないんですから、旦那さんが病気したらどうします?」とか言われて保険を勧められる。「ああなったら、こうなったら不安でしょ?」と、言われると確かに不安になりますよね。

「だから、こんな保険があります、亡くなったら五千万、六千万・・」と言われるままに契約すると、保険料がどんどん高くなってきて、もう60歳までに死んでもらわないと困るというくらい(笑)これって、生きていくためのお金であるはずなのに、何かおかしい。そこで、自分でちゃんと分かって判断できるようになりたいと思ったのが、ファイナンシャルプランナーの勉強をするきっかけです。
金融商品の格好のお客さんだったんですね(笑)個人事業と法人会社、また勤務しているのと経営者では考え方が異なりますものね。
知識が無かったんだなと思いました。よく考えると、企業の財務諸表は読めても、自分の給与明細は読めていなかったんです。「なんで5万円も引かれているんだろう」と思いながらも、その5万円がどれだけ私を助けてくれるものなのか、どういう意味の保険を払っているのかも分からないままだったということに気がついたんです。人を雇う側になって初めて、会社が保険料の半分を出してくれていたんだ、会社員って有り難かったんだなと思いました(笑)
小谷さんのホームページに、「私は今までこんな大切なことを知らずに生きてきたのか、と憤りさえ覚えました」とありますが、何に対する憤りだったのでしょうか。
せめて高校生までに、最低限の社会保険や税金のしくみを教えて欲しいと、国に腹が立ちました。例えば住宅ローンを3%というとピンとこないけど、35年ローンで3%というと3,000万円が4,500万円になりますね。でも金融機関は「3,000万借りていただくと4,500万お支払いいただきます」とは言わない。自分で計算して初めて、「えっ、こんなに払うの?もうひとつ小さい家が買えそうじゃない」と驚くんです。

それって、学校でパーセントとは勉強するけれど、「金利」という形で勉強した覚えは無いですよね。でもアメリカではやっているんです。 数学の世界ではなく生きていくための知恵、お金に関する基礎知識を教えて欲しいと思うんです。

それこそ独立したら社会保険がこんなに無くなってしまうなんて思ってないですし、遺族年金も、会社員だったら10万円ほどは保証されていますが、個人事業になってしまうと子どもが18歳になると妻に対する保証は何もありません。自分の未来の生活を考え、生きていくためのベースとなる知識を、なぜ高校生までに教えてくれなかったのかという憤りですね。

もしかしたら国も金融機関も、国民が疎いほうが都合が良いと思っているんじゃないかと思うわけです。だったら私が伝えていこうと、ファイナンシャルプランナーとしてセミナー講師を始めました。
ファイナンシャルプランナーとして、どのような活動をされていますか?
最初は生協や市民センターなどでお話させていただくなど、主婦の方を対象にお話をしていましたが、最近は大学や学校で「マネー授業」をさせていただくなど、少しづつ学校関係も増えてきましたし、金融機関で「ライフプランの提案力強化研修」もさせていただいています。

それは例えば、住宅ローンを販売される際、お客様の生涯を見据えて「今は返せるかもしれないけれど、本当に大変なのはお子さんが高校、大学になられた時ですよ」といったお客様の心配ごとや将来に向けて気がつかれていないことを、プロの目からアドバイスできれば、というものです。やはり金融機関も、もう「お願い営業」ではなく、本当のご提案ができる営業能力が必要になってきているそうです。
女性のための起業セミナーもされていますね
子育て中のママを対象に起業セミナーをしています。ママさん起業家の方々が最初に悩まれるのは、いくら稼いだら申告しないといけないのか。税務署に聞けば教えてもらえますが、なかなか聞き難いですよね(笑)ちゃんと知識を持っていれば落ち着いて動き出せますので、診断士としてマーケティングの知識と、ファイナンシャルプランナーとしてお金の管理、その両面からサポートできればと考えています。
扶養家族の130万円の壁については、どう思っておられる方が多いですか?
気持ち的には自立したいという方が多いですね。夫の所得によりますが、夫の所得税の税率が10%か20%くらいであれば150万円くらいが損益分岐点。それを分からずに「なんかわからないけど135万だった・・あちゃー」ではなくて、155万を目指すんだと思って働くのとでは大きく変わってきます。

今まで専業主婦で子育てに専念されていても、動き出すきっかけができると、女性同士のネットワークも繋がって、刺激を受けながらお互い良いように回転されることがよくありますから、女性の力ってすごいなと思います。
最後に起業したい女性に向けてメッセージをお願いします。
起業セミナーでは、「何かやりたいけど、何をしていいかわからない」という方もいらっしゃいます。「私には何をやったらいいんだろう」と考えるとき、世の中や社会を見て考えますね。でもまずは自分自身を振り返ってみて欲しいんです。

小さい頃に好きだったことや得意だったこと、おじいちゃんやおばあちゃんに誉められたこと、または、お父さんやお母さんが大事にされていた考え方など、一つ一つゆっくり振り返ることで、自分ができるもの、やりたいことが見つかってきます。

思うのは、やっぱり好きなことは苦にならないので、勝手に続けられるということですね。ピアノでも何でも最初から天才がいるわけじゃなくて、長く練習できるほど続けられたからできるようになるわけなので、自分に合っていることを探すのは、飽きずに続けられることを探すことだと思っています。

ファイナンシャルプランナーになりたい方も、個人の相談を受けたり、セミナー講師をしたり、そのやり方自体も、過去を振り返ってみて、何に自分の気持ちが奮うのかという、自分自身の根底にあるものを大切にされると良いと思います。
ありがとうございました。
(取材:2014年9月 関西ウーマン編集部) 
 

 

 

 


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