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■関西ウーマンインタビュー(士業)
溝上 久美子さん(社労士・行政書士/ぽぷりサポート事務所)
溝上 久美子さん 社労士・行政書士 大阪市立大学法学部卒業後、関西の大手生活協同組合に入所。ホームヘルパー2級、介護福祉士を取得し、司法書士・行政書士事務所に補助者として勤務。債務整理・相続・成年後見などの実務を経験し、行政書士試験合格を機に社労士資格もあわせて開業。 ぽぷりサポート事務所 〒543-0055 大阪市天王寺区悲田院町8-26-502号 TEL:06-4303-4991 HP: http://popli.o.oo7.jp/index.html |
「福祉系社労士」とされていますが、ずっと福祉に関わってこられたのですか? |
大学卒業後、女性が働きやすいことと、地域密着で転勤も少ない生協に入所しました。 福祉に携わりたいと思ったのは、阪神大震災がきっかけのひとつになったと思います。震災時は神戸にいて、たまたま自分の地域は被害が少なかったのですが、あまりの酷い状況にいてもたってもおられず、生協のトラックで炊き出しに行ったり、ボランティア活動にも参加していました。 そのボランティアをする中で、高齢者をお風呂に連れて行って欲しいという依頼があったのですが、当時は見よう見まねで、とにかく一緒に銭湯に行きましょうとなって、着替えを手伝ったり湯船に入れてあげたりしました。すると「久しぶりのお風呂で気持ちいいわあ」と喜んでいただけて嬉しかったことを覚えています。同じボランティアに来ていた学生たちも、将来は福祉の仕事に就きたいという子もいましたね。大変でしたが、楽しかったです。 大学は法学部でしたが、一般教養の中に女性問題論や民族問題論など社会問題についての授業がある中に、障がい者問題論というのがあって、精神病院を見学させていただいたり、重度の障がいをお持ちの方のお話を聞かせていただく機会がありました。それがきっかけで授業とは別に、障がい者の介護ボランティアをさせていただいたこともありました。物心ついた頃から、身近に障がいを持つ方がいましたし、高校の同級生の友人にも車椅子の方がいて、わりと関わりは持っていたほうだと思います。 |
生協でも介護の仕事をされるようになりました |
生協では最初はトラックを運転して配達や営業をしていましたが、震災後、壊れた店舗を建て直すというとき「創造的復興」といって、西日本最大級の福祉用具売り場を作ろうというプロジェクトが立ち上がったので、そこに応募しました。 最初は福祉用具の販売に携わりましたが、人事異動で知的障がい者の職業訓練校に出向することになりました。そこは兵庫県の職業能力開発校からの委託事業を受けていた食品加工工場だったんですが、一緒に作業しながら、知的障がいの方に就職するための訓練をする仕事です。7年半いましたからここのキャリアが一番長いですね。 |
新卒で生協に入社されてから14年で退社されますが、辞められたきっかけは? |
その訓練校からさらに人事異動になったんです。介護福祉士の資格を取っていましたから、やっぱり介護の仕事をしたいと思っていたのですが、以前いた福祉用具の店舗に戻れと。上司も資格があるからそれを活かせる部署にと考えてくれたのだと思うのですが、その頃は結婚して子どもがまだ小さかったこともあって、店舗だと社職員の私が最後のレジを閉めなければいけませんし、そうなると帰宅が夜の9時10時になってしまいます。なのでやむを得ず退職することにしたんです。 当時は震災後にリストラもあったり、嘱託の職員もいたりで事業所内の空気も厳しかったですね。一生働き続けられると思って入社しましたから、退職する時は悔しくてボロボロ泣きました。 でもそれより少し前に、買い物に出たとき、駐車場で事故を起こしてしまったんです。少し傷がついた程度だったんですが、その相手が介護事業をされている方で、名刺をいただいたときに思わず「私も介護福祉士の資格を持っているんです」と言うと、「もったいないですね。今人が足りないんですよ」と言われたんです。なんだか、それも転機になる言葉だったかと思います。 |
そこからようやく念願の介護の仕事をされるのですね |
生協を退職して、自宅近くで働けるところをハローワークで探し、訪問介護の仕事に就きました。そこで2年くらいいましたが、1年を過ぎた頃から、股関節が痛むようになって、変形性股関節症と診断されました。調べてみると、もともと骨盤のかぶりが浅いそうで、年齢もあってゆがみが出てきたようです。医者からは、そんな体に負担のかかる仕事はやめなさいと言われました。 |
行政書士と社労士の資格はいつ取得されたのですか? |
社労士の資格は、生協にいた頃、震災の前年に取得しました。当時トラックで配送と営業の仕事をしていて、営業の成績を上げたら希望の部署に行けるという話があったのですが、なかなか営業が取れなくて。そこで何か資格をとってみようと思い、人事や人材開発の仕事がしたくて通信教育で勉強して合格しました。 その後ケアマネージャーの勉強もしていたのですが、これまで働いてきた知的障がい者の訓練校も実務経験にあたらないし、介護用品の販売業務も、変形性股関節症がわかってからあと半年実務経験が足りなかったこともあって断念しました。 介護の仕事をやめてからどうやって食べていこうかと悩んでいた頃、たまたまテレビで「カバチタレ(行政書士事務所を舞台にした漫画)」の原作者が出ておられて、行政書士には個人支援にかかわる仕事があるんだと知ったんです。 学生の頃、行政書士というと、あまり身近じゃないイメージがあったんですが、介護の仕事をしていたとき、高齢者の方が相続手続きのための印鑑証明を取りに行きたいから役所までついてきて欲しいとか、認知症の方の成年後見人が事業所に来られたりとか、高齢者の方々が困っているのは何も介護だけじゃないなということを知ったんですね。それなら行政書士になれば何か役に立つことができるんじゃないかと思い、勉強を始めました。 その後、独立されている士業ってどんな感じなのか知りたかったので、司法書士と行政書士の事務所でパートで働くことにしました。そこは成年後見を受任していたので、介護に強い人ということもあって採用されました。 |
開業を決めたのは、いつですか? |
パートで入ったときは独立を考えていませんでしたが、開業しようと思ったきっかけは、やっぱり給料ですね。資格を取る前は補助者で、時給は最低賃金だったんです。少し時給を上げるよと言われていましたが、上がると扶養から外れますし、そうなると負担も大きくなってきます。かといってこのままでは、勉強したくてもお金が無いし、ほとんどフルタイムですから休みも取れない。これでいいのかなとずっと考えていました。 それに開業して本当に食べていけるのかという不安もありましたから、当時「スキルアップ研究会」という社労士の合格者の会をたまたまネットで知って、行き始めたんです。女性はそれほど多くなかったですが、開業された方の話を聞いたりして、だんだん開業しようと思うようになりました。 |
最初は自宅で開業されたのですね |
自宅の一室を事務所にして開業しました。最初は全く仕事がなかったんですが、年金の関係で行政に協力する仕事を紹介してもらえて本当に助かりました。独立して今年で5年目になります。 社会保険労務士としては、障害年金の請求代行を専門に、障害年金の請求がご自身で難しい方の依頼を受けて、受診履歴の調査や診断書の依頼、申立書の代理作成などを行っています。また行政書士としては、成年後見の普及や相談を行っています。 |
資格を取得したけれど、何をしようか迷う方にアドバイスをお願いします。 |
無駄に見えることも、振り返れば無駄じゃないということでしょうか。私も何がしたいのか、何ができるのか、あっちにぶつかり、こっちにぶつかりながら、手探りできましたが、気がつくと何かまとまっていて、結局ここに来るべくしてきたのかなと思います。なので何も無駄にはならない。 その時は、せっかく資格を取ったのに、何をしてるんだろうと思うかもしれませんが、何かで役に立つ時がきっと来るんじゃないかと思います。 ただ、資格を取るだけでは食べていけませんから、これまでやってきたことを活かせるようなものを見つけて欲しいと思います。 私もよく、やりたいことがはっきりしているからいいですねとよく言われますが、逆にやりたいこともわからないのに、起業を考えるのはすごいなあと思うこともあります。何が役に立つかはわからないですが、やりたいことを見つけて、続けることですね。 |
ありがとうございました。 |
(取材:2014年7月 関西ウーマン編集部) |
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