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■関西ウーマンインタビュー(女性士業編)


小笠原 絵理さん(一級建築士/一級建築士事務所 間工作舎)

 
小笠原 絵理さん(一級建築士/一級建築士事務所 間工作舎)
熊本県出身。国立奈良女子大学住居学科を卒業後、住宅メーカー、建築設計事務所を経て、1992年、間工作舎/一級建築士事務所を設立。個人住宅を主に、幼稚園、高齢者施設、リクレーション施設などを手がける。主な受賞として、南阿蘇の家:JIA熊本住宅賞受賞。錦綾幼稚園:第2回JIA関西建築家新人賞、平成19年日本建築士会連合会優秀賞、2008年JIDビエンナーレ大賞受賞、など。京都工芸繊維大学、大阪工業大学の非常勤講師を歴任
間工作舎/一級建築士事務所 〒561-0882 大阪府豊中市南桜塚2-4-14
HP : http://kankousakusha.sakura.ne.jp/
お仕事の内容を教えてください。
住宅を主に、幼稚園や高齢者施設などの建築設計と現場管理です。建物だけでなく、庭などの自然環境を含めた、「心地いい、その人の居場所」をカタチにすることです。
設計士になろうと思われたのはいつですか?
大学は自分探しで行ったようなところもあって、最初から設計士になろうと思っていたわけではないのですが、もともと「ものづくり」が好きだったので、将来的に仕事に繋がればいいなと思い、住居学科のある奈良女子大に行きました。ゼミの先生が建築家の方で、そこで設計を学んだことがきっかけですね。
30歳で独立されたそうですが、そのきっかけは?
大学卒業後は住宅メーカーに就職して、商品開発の部門にいましたが1年で辞めました。自分は組織の中では向いていないと思ったことと、ここに10年いて勉強しても、たぶん一人ではやれないだろうと思ったんです。

たまたま個人の設計事務所の所長さんに出会う機会があって、「来るか?」と言われ、「何も分かりませんが行きます」と言って転職しました。その後1年半~2年で転職していますが、3軒の個人の設計事務所で働きました。

個人事務所は基本的に、そこの所長個人の考え方に沿っていくので、そこで合う合わないが出てくるんですね。こういう考え方で創るとなっても「自分だったらそう考えない」と気づくこともある。そこでよく所長さんたちともぶつかりましたが、逆に、「じゃあ自分はどうしたいのか」「自分は何にこだわり、何を大事にしたいと考えているのか」という問いかけになったと思います。

所長さんたちにはわがままでご迷惑をかけたと思いますが、その経験を積み上げてきたからこそ、1から10まで自分が関わってやりたいという想いを蓄えてきたのかなと思います。とにかく自分で考えたい。自分の視点でモノコトを受け止め、カタチにしたい。まず自分の時間が欲しかったので独立しました。
独立された後、ご苦労もあったのでは?
何の準備もせずに事務所を出ましたので、全てイチから。はじめは仕事はありませんでした。自分の時間をつくりたくて辞めたので、建設現場のガードマンのアルバイトをしながら、設計のコンペに出したりしていました。

ガードマンの仕事は現場に行ける機会にもなりますから、設計監理の立場と違って、職人さんともいろんな話もできたりして、それはそれで面白い経験でしたね。事務所を始めてしばらくは、ガードマンをしていた頃に仲良くなったおじさんやおばさんから、「ちゃんとやってるか?」と電話がかかってくることもありました(笑)

もちろん不安はありましたけど、自分の時間ができるのが楽しくて。とにかく1年やってみよう、もう3年やってみよう、という感じで。そのうち友人の紹介で仕事を受けるようになり、そこからお施主さん同士が繋がって、今に至っています。

(写真:間工作舎HPより)
小笠原さんが考えていた「仕事のやりかた」とは?
まだ勤めているときの経験ですが、ある方の紹介で店舗付き住宅をつくる機会があって、初めてお施主さんとお会いした時に、案と模型をつくって持っていってしまったことがあったんです。本来ならお施主さんにお話を伺い、それを元にしてご提案するのが普通ですが、もう若気の至りで、やりたい思いがすごくいっぱいで、お会いする前に紹介してくださった方から話を聞いて、ご提案してしまったんですね。

喜んでいただいて完成したのですが、お施主さんは、本当は家づくりについて、いろいろ話をしたかったのに、コミュニケーションできないプロセスをふんでしまったことが、私自身ずっとひっかかっていました。

その人が気持ち良いと思える「居場所」を創るのだから、私の作品をつくっているわけでは無い。初めの出会いを大切に、「こんな暮らしがしたい」という思いを聴くところから始めたい。なぜ初めにそんなものを持って行ってしまったんだろうという想いが残り、同じ繰り返しはしないでおこうと思ったんです。やっぱりお施主さんと直接コミュニケーションを取って一緒に考え、向き合ってできる仕事がしたい。独立したときはそう決めていました。
「居場所を創る」というのは、どんなプロセスがあるのですか?
住宅は生活する場ですし、その人にとっての拠り所であり、ありのままでいる場所。つまり「すっぴん」でいられる場所です。その「すっぴん」でいられ場所を創るためには、本音でやり取りできるかどうかです。

話のキャッチボールの中で、なんか違うなと感じたことは、後からいろんなことでひっかかってくるかもしれません。この人となら向き合って話ができると思える人と一緒に家創りをされたほうがいいですよ、というお話はさせていただいています。それはお互い様で、私たちも不安に思うことがあれば、やっぱりうまくいかないんです。

打ち合わせは、お施主さんのお家に伺って話をすることが多いので、周りにはお子さんたちがいたり、中には一緒に食事をしながら話しましょうということもあります。お子さんたちとご夫婦とがどんなふうに接しているか、そのやりとりを見るだけでも、その家族のありようがいろいろ伝わってくる。一緒に過ごす時間を積み重ねていくことで、「こんな暮らしをしたい」という想いが見えてきます。

(写真:間工作舎HPより)
敷地もいろんな場所があるので、自然豊かなところもあれば、周りを住宅に囲まれたところもあります。窓から見える景色や、光の入り方、風の抜け方。マイナスの要素があれば、逆にプラスの要素を見つけていくというように、その環境を最大限に活かしていく。自然環境も含めた「外」も大事な「居場所」になります。

そうして私とスタッフが一緒になって案を出し合い、模型やスケッチ、プランなどをつくります。その「案出し」も、それで決定という話ではなくて、これから料理をする魚と一緒で、要はコミュニケーションを取るための「タタキ」なんですね。

ご提案したものを基に、お施主さんは毎日の暮らしを見直していくわけです。「ゴミ捨てはどうしてたかな?」「それはあなたの仕事でしょ」とか(笑)そこから初めて「こうしたい、ああしたい」という具体的なやりとりが始まります。お施主さんにとっては、「暮らしの振り返り」のようなプロセスですね。
「どんな家を創るか」というより、「どんな暮らしをしたいか」なんですね。
私たちが大事にしているのは、建物をつくっても、それだけではその人にとっての居場所にはならない、ということです。他人から「これどうですか?」と言われて買うものではなく、カタチの無いところから共に創っていくので、やっぱり住まい手、施主とのコミュニケーションが基になります。

こういう暮らしがしたいという、お施主さんの言葉の奥にある想いやイメージを引出す役目ですね。且つそれを見える形にすることだと考えています。お施主さんたちも、これだけ話をして、悩み、夫婦でケンカもし、苦労しながらも自分たちで決めたことだから納得がいく。そして、いろんな家族の顔をした家ができてくるんだと思います。
これまでにどんな「壁」を経験されましたか?
10数年前、ある住宅を手がけた時のこと。通常通りに進み、完成後もお施主さんには喜んでもらったのですが、引渡し後に、施工会社と施主との間で、工事費用の残金支払いの件で裁判になり、その後、施主側から瑕庇(かし~欠陥)を問われたんです。

私も真実を明らかにしたいと、設計の立場で反論するために時間を費やしてきましたが、調停で和解するまで2年間、仕事をしながら意味の無い時間を過ごすのはすごく辛かった。折り合いがつかないことって世の中にはあるんだな、もう二度とこんな思いはしたくないと思いました。

それまではまだ若かったので、どんな仕事も誰とでもできると思っていたと思います。でも世の中には、話が通じない、交わることのできない相手もいる。「誰と一緒に仕事をするか」、その「ものさし」がいかに大切かということと、想いを共有できる相手と仕事をすることの大事さを学んだ経験でした。
これからの夢は?どんな仕事をしたいですか?
「心地いい、その人にとっての居場所」を創ることは、自分の人生とともに考え、体験していける仕事です。「こんなんできたらいいなあ」という想いをもちながら、目の前にある仕事を、ともに関わってくださる人たちと一つ一つカタチにしていくことですね。「花咲かおばさん」じゃないですけど(笑)、楽しく過ごせる場を創り続けたいなと思っています。
最後に、小笠原さんの『居場所』とは?
家だけでも事務所だけでもなく、想いが通じる身近な人たちと一緒に過ごせる「場所」が全て、私の「居場所」ですね。
ありがとうございました。
(取材:2015年12月 関西ウーマン編集部) 

 

 

 


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