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■関西ウーマンインタビュー(女性士業編)


大島 祥子さん(建築士・技術士/スーク創生事務所)

 
大島 祥子さん 一級建築士・技術士(建設部門/都市及び地方計画)
一級建築士事務所 スーク創生事務所代表 建築・都市計画の領域から京都の魅力づくり・発信、住まい・まちづくりに関連する調査研究や企画、実践、コーディネートを行う。「まちづくりの裏方を究める」をモットーに活動。都市居住推進研究会事務局、NPO京都マンション管理評価機構事務局次長、京都岡崎魅力づくり推進協議会マネジャー、一般社団法人住まい評価機構理事、公益財団法人京都市景観・まちづくりセンター 理事などを務める。京都産業大学非常勤講師。 
お仕事の内容を教えてください。
「建築士事務所」なので、設計をしているかと思われますが、建築設計はほとんどしていません。建築の領域に「建築計画」というものがありますが、私の専門は計画です。仕事の領域は「建築士」よりも「技術士」の方がイメージしやすいと思います。京都に特化して、京都の住まい・まちづくりに関連する調査研究や企画、実践、コーディネートを行っています。
建築士を目指されたのはいつですか。
子どもの頃は岩倉に住んでたので、当時は高度成長期の開発時代で、建設中の家がたくさんありました。新聞折込に入るちらしの間取り図に関心があったり、建ちかけの家に友達と忍び込んで、家が出来上がってくるワクワク感を感じていました。父親も機械のほうですが、設計をしていたので、設計するという環境が身近にあったからかもしれません。

建築士というと皆、図面を書く人と思う方が多いですが、建築設計というより、都市計画やまちづくりをメインに勉強しました。都市計画というと橋や道路を作るといったダイナミックなものもありますが、地域のお祭りをどのように伝承していくかとか、あるいは、町の防犯を考え、安全性を確保するのにはどうすればいいかなど、そういうことも含めて「計画」なんです。特に京都という場所柄、そんなにガンガン開発が行われる街ではないので、むしろそういうソフト面のほうが多いですね。

大学院修了後は、大阪の都市計画のコンサルタントで3年間勤め、その後、京都市の外郭団体である、財団法人京都市景観・まちづくりセンター(現在は公益財団法人)のプロジェクトディレクターとして5年間務めました。
まちづくりのプロジェクトディレクターとは、どんな仕事をされていたのですか?
今から15年くらい前、マンション建設に地域住民が反対するという、いわゆる「マンション問題」があって、当時はかなりの社会問題となっていました。とはいえマンションも人が暮らす大事な形態でもありますから、まちづくりとしてマンション開発と住民との軋轢を無くしていくというミッションを主に担当していました。

法律に合っていればマンションという建物は建ちますが、住民の反対を強固に押し切ってまで建設してもいいのでしょうか。一方、住民の反対も感情的なものになっていないか。あるマンション開発の反対運動で、白紙撤回になった土地を、開発事業者、地域住民、地域活動団体、行政が同じテーブルについて、土地利用を検討した「地域共生の土地利用検討会」に事務局として関わることになったんです。

そこで、地域の皆でわいわい仲良くするのは、あくまでも一つの側面であり、地域の祭りや伝承を継承したり、自分の資産をきちんと維持し、向上させていく、その活動が「まちづくり」なんだということを思い知りました。京都という土地が持つ力と可能性に大いに魅せられ、新しいまちづくりの可能性を感じたんです。このことが現在の仕事のスタンスに至る、大きなターニングポイントの一つになったと思います。
独立されたきっかけは?
京都市景観・まちづくりセンターの移転に伴い、組織の変更もあって、プロジェクトディレクターという契約形態がなくなったことを機に独立しました。「将来はこうしたい!」という目標を定めて奮起したわけじゃないのですが、じゃあ独立かな、という感じで、スーク創生事務所と名乗り始めました。主に官公庁や大学などからの依頼で調査・研究を受託することが多いですが、京都マンション管理評価機構など、いくつかのNPOにも携わっています。
京都といえば町家。まちづくりに町家の保存も欠かせないですね。
今から15年くらい前は、なんでそんな古い町家を残すんだという気運もありましたが、現在では、町家は京都の街の個性を表している認知も高まり、行政施策として、また民間の活動として、古い建物を保存するためにはどうすればいいかという活発な活動が展開されています。

町家は店舗として活用すると観光客の方にも好評ですし、地域の人たちにとっても、街並みが露骨に変わらないから良い。でもその一方で、防災という立場で言うとやっぱり危険な面も少なくありません。祇園の南側には昔ながらの町並みがありますが、あの木造の格子も建築基準法上では再建できないのですが、でもあのエリアでは良い。なぜなら地域の方の自主的な防災活動があることから、条例により、準防火地域が解除され、歴史的な建物の意匠が継承できるようになりました。

国にすれば、「京都は何してくれるんだ」という感じでしょうけれど、やっぱり街の価値というのは、その土地の立地や形状だけじゃなくて、周辺にどんな風情があるか、どんな安心安全のための活動をしているかが重要であり、まちづくり活動というのは、そういうソフト面の活動がすごく大きく効いてくると思います。
一方で京都はどんどんマンションが増えていますね。
京都に大規模なマンションが建ち始めたのは郊外からですが、街中で中小規模のものが建ち始めたのは今から25年前くらいでしょうか。産業構造が変わって、大店の町家が、商売が立ち行かなくなるなどしてマンションになっていきました。その後一気に建ったのは14~15年前ですから、そろそろ1回目の大規模修繕を迎えるかなという頃ですね。街中にあるマンションはだいたい20~50戸くらいの小規模のものが多いですが、中京区は人口の半分以上がマンション居住者です。

2007年に街全体のダウンゾーニングを導入した「景観条例」ができたんです。建物を高く建てることができると容積を多く確保できるので土地価値が上がりますが、高い建物は建てられなくなることで、自分たちの資産の価値を落としてしまうんじゃないかと、当時は熾烈な反対運動もありました。多くの世論として、京都らしい景観が守れるのであればということで条例が施行されましたが、京都のマンションは高くなりすぎて売れなくなると言われていました。でも結果として、マンションの価値が上がるという現状になっています。
京都マンション管理評価機構では、どんな活動をされているのですか?
マンションは共同管理なので、タイルが1つ剥がれても、1住民が貼り直すことはできません。総会で協議して、皆の合意を取るという手続きが必要なので、参加する住民が少なかったり関心が無ければできないんです。するともう汚れていくしかないので、資金力のある人は、こんなところに住んでいられないといって出て行ってしまいます。結局、資金力の無い人が住み続けるので、マンションの価値も下がっていく。価値が下がればヘンな人が入ってくる可能性も高まり、また価値が下がり、だんだん街の価値も下がってしまう恐れもあります。

観光客が来てお金を落としてもらうのを期待するというのもありますが、やっぱり住民が増えないと行財政は厳しい。それには魅力的な街を作っていかなければ人は増えない。特に都心部のマンションがスラム化すると非常に問題です。今京都市内に「要支援マンション」が60棟近くもあり、行政が税金を使って支援することもはじめています。私たちNPOもそれを未然に防ぐための活動をしています。空き住戸が増えている中、新しくマンションも建っており、マンションはサバイバル戦争に入っていると思います。
京都に憧れて移住される方も多いと聞きます。
最近は移住も増えてきていますが、「ひと旗上げたい」という人ではなく、自分らしく素直に生きて行きたい、あるいは自分の好きなことを極めたいという志向の方がたくさん京都に集まってきていると思います。東京にいて世界中で仕事をしてきたけど、京都に住み着いたという人も結構いらっしゃいます。

ただ京都は「大奥」じゃないですけど、「ふすま」がいっぱいあるんですよ(笑)。最初のふすまが開いて仲良くしていても、もっと奥がありますから。次の襖を開けてもっとディープに付き合っていくと、もっと面白いものが見えてきます。祇園祭もただ見に行くだけだと最初の襖だけですが、どこかの鉾町に参加して一緒に担いだりすると次の襖が空くんです。さらに関わっていくとどんどん奥があって、入って行けば行くほど、都市の面白みを知り、その居心地の良さにはまります(笑)

「排他的」とよく言われますが、実は身内をすごく大事にするんです。 でも、ヘンに知ったかぶりして、「京都って、こうだからサア」なんていうと、ピシャっと襖は閉まりますけどね(笑)「イケズ」というのも本当は愛情なんです。愛情の反対は無関心なので、無関心だったら何も言わないですから。それを間接的に気付かせてくれようとしている、いわばおせっかいなんでしょうね(笑)
今一番力を入れているのは何ですか?
今のタイミングでは、2015年9月に開催する「岡崎ときあかり2015」です。これは京都市の「京都岡崎魅力づくり推進協議会」が主催するイベントですが、参加型のプロジェクションマッピングのコンペを導入しています。学生や若いクリエイターにプロジェクションマッピングの作り方を伝授して、上映して審査するというイベントなので、岡崎のまちづくりを見据えた人材育成も兼ねているんです。

行政がお金を出していますが、近い将来その費用も無くなるでしょう。それを地元の活動として、どう離陸させるかというところまでのシナリオが必要です。こうした活動も都市計画の領域で捉えていて、医学でいうところの漢方みたいなものですね。体質をどう変えていくかが大事なので、その体質を変えていくための素地づくりを、イベントの実施とともにトライアルしています。単に参加してもらうだけのイベントではなくて、継続的な事業にしていくという処方箋を書いているようなものです。
「まちづくりの裏方を極める」その楽しさとは?
楽洛まちぶら会」という任意団体でも2004年から2006年に取り組んだものが私の原点です。「三条通りの夜をアートで明るくしよう!」と取り組んだ「三条あかり景色」は、多様なスキルを持った人が自然発生的に集い、拡がりながら取り組んだものです。報酬ではなくスキル研鑽、愉しさ、ネットワークの拡大という新しい価値観で行動をすることができる市民の可能性に魅せられました。

NPOからの依頼、また自らが関わるNPO等が自分たちで企画して活動することも多いので、仕事とプライベート、報酬ありなしの境界がシームレスな活動が多いですが、お金のために仕事をする、というスタンスはとっていませんし、報酬はあとからついてくるものだと思っています。でもその仕事や活動を通じて得られるものは、金銭的メリットだけではなく、多様な有形無形のものが重要だと考えています。

何のために仕事しているかというと、それは何といっても京都のためです。皆が良い街にしていこう、お世話になっているこの街に恩返ししていこうと思えば、街は絶対に良くなると思います。京都にはその種がいっぱいありますから。「ボランティアばっかりしてる」と思われながらも、見ていてくれる人はいる。そういう意味では絶対に孤独にならないですね。
ありがとうございました。
(取材:2015年6月 関西ウーマン編集部) 

 

 

 


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