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■関西ウーマンインタビュー(社会事業家編)


ナカガワエリさん(即興音楽家/即興楽団UDje( )主宰)

 
ナカガワエリさん(即興音楽家/即興楽団UDje( )主宰)
専門学校を卒業後、美術家となり、国内外で作品を発表する。その後、車を扱う会社に就職するが、3年ほど勤めた後に退社。2009年に『即興楽団UDje( )』を立ち上げる。歌、叫び、踊り、楽器演奏などを素材とし、人間が持つばらばらで多様な個性を活かして一つの場を即興的につくる実践に取り組む。参加型の即興ライブを行なうほか、障がいを持つ人たち、乳幼児から高齢者までと幅広い人たちとの声や身体・太鼓のワークショップを各地で実施。近年、自閉症を持つ子どもと絵を描く「移動造形教室(仮)」を始めた。
即興楽団UDje( ) HP:http://erinakagawa.wixsite.com/xxxxx FB: UDjeUDje
歌・踊り・楽器。各自が好きなものを使い、多様な個性を表現する『即興楽団UDje( )』。 障がいを持つ人たちや、さまざまな環境に暮らす人、乳幼児から高齢者までが皆一緒になって、即興ライブやワークショップを行っています。 エネルギー満タンで笑顔が眩しいナカガワエリさんですが、この活動を始めたのは、意外にも「頑張れない」日々があったからでした。
家族と私。何を頑張ればいいの?
ナカガワさんが主宰されている『即興楽団UDje( )』とは?
演者と観客という垣根を取り払い、その場に居合わせた人たちと、歌、叫び、踊り、楽器演奏などを通したコミュニケーションや関係性づくりをしています。楽譜通りに演奏するものとは異なり、演奏や歌のうまいへたよりも、「一人ひとりが自分を表現しながら、いかに楽しく他人とつながることができるか」がテーマです。地域のイベントなどで参加型の即興ライブを行なうほか、学校や社会福祉施設、公民館などでワークショップを実施しています。
以前は美術家として10年以上も活動されていたんですね。
展示場所にステンレス素材を持ち込んで、映り込む人や物、風景を絵として記すパフォーミングアートをしていました。作品をつくることは自分自身と向き合うこと。作品をつくるほどに、自分の根っこにある家族との問題と嫌でも向き合わなければならなくなって、ある時、大爆発してしまったんです。

私には3歳下の弟がいて、全盲で自閉症・知的障がいを持っています。父は時々、家出することがあって、家庭のことに協力的ではありませんでしたし、両親ともに実家とうまくいっていなかったので、母は一人ですべてを抱えていました。そんな母が愚痴をこぼせる唯一の相手が私です。何かあると、夫婦のこと、姑とのこと、家族のことを話してくるので、私はまるで母の母親代わりのように受け止め、励まし続けてきました。

中学2年生の時に父が亡くなって以降、周囲からも「頑張れ!」と言われ、自分がつらいことや悩んでいることをこぼせる状態ではありません。自分の気持ちを抑え込んで頑張ってきたのですが、それを認めてもらえず、28歳の時には結婚や墓守の話になり、母から「あんたが頑張らないと!」と言われ、「これ以上、何を頑張ればいいの!」と感情を抑えきれなくなって家を飛び出しました。

一人暮らしを始めても、しばらくは美術家を続けていましたが、作品をつくると、どうしても家族の問題に突き当たってしまうからしんどくなって、会社勤めをすることにしたんです。

 
アフリカの太鼓「ジャンベ」との出会い
美術家から一般のお仕事へ。どうして『即興楽団UDje( )』立ち上げることになったんですか?
会社での人間関係がうまくいかず、他人との関係性に悩みました。その上、セクハラやパワハラにも遭い、上司に相談してもどうにもならなかったので、ついには会社に行こうと家を出ようとした途端、気持ちが悪くなって行けなくなってしまったんです。

会社を辞めて家で引きこもるようになり、寝たり本を読んだりの毎日のなかで、心の支えになっていたのがアフリカの太鼓・ジャンベです。太鼓なら音符が読めなくてもできるし、叩くと無心になれるからストレス解消にもなると、会社勤めと同時に習い始めました。

ジャンベ仲間ができて、一緒に叩くようになって、それが『即興楽団UDje( )』の始まりです。引きこもっている間も、ジャンベ仲間とセッションするために出かけることを繰り返すうち、だんだんと日常生活を取り戻せるまでになりました。

仲間とお祭りでライブするようになり、この歌、叫び、踊り、楽器演奏などを通したコミュニケーションなら、盲重複障がいを持つ弟とも一緒に楽しめるのではないかと、弟が所属する団体にワークショップへ行くようになって、そこからさまざまな団体から声をかけてもらって、今のように活動するようになりました。
曲演奏ではなく、「歌、叫び、踊り、楽器演奏などを通したコミュニケーション」に
着目された理由は?
最初は曲を演奏していたのですが、仲間と即興でセッションをするようになった時、音を通したコミュニケーションのおもしろさに気づきました。

言葉でコミュニケーションすると、後になって「言いすぎちゃったかもしれない」とくよくよするんですが、音でコミュニケーションすると、言葉では越えられない壁をパーンと越えられる!みんながニコニコするし、「これはなんだろう?」と思うくらいの一体感がありました。

ジャンベ演奏に加えて、即興で歌うようになると、バラバラだった音がシュッと一つにまとまっていく感じがしました。「まとめようぜ!」ではなく、声を出すとそうなる。「しなければならない」「すべき」ではなくて、楽しいから、そうしてしまう。

これまで相手がどう思うだろうと様子をうかがいながら、コミュニケーションすることが多かったのですが、そこから解き放たれて自由になれたんです。また、他人がいるからこそできること、他人がもたらしてくれる素晴らしさに気づいて、うまくいかないことがあっても、少しずつでも越えていけるのではと期待を持てるようになりました。
 
自分が楽しむ。だから他人が見える。
『即興楽団UDje( )』を通して実現したいことは何ですか?
私自身が『即興楽団UDje( )』でさまざまな人たちと関わるなかで、自分なりの表現や他人との関係のつなぎ方などを学ばせてもらって、生きやすくなってきたので、それを共有していきたいんです。

本人がやりたいことをするのが一番素敵だなと思っています。だから、目の前の環境や社会にすでにある枠組みに自分を当てはめて何かをするのではなくて、自分が自由にしていても、それが表現や生き方の一つになればいいなあと。

練習して、何かをできるようになることももちろん大事ですが、「自分が楽しい!」から「こうしたい!」「ああしたい!」という気持ちを育んで、何かをつくり出すのもいいんじゃないかと思うんです。

『即興楽団UDje( )』の活動も、「こうしなければならない」「誰かに何かをしてあげたい」ではなくて、自分が「楽しくて、楽しくて、しょうがない!」から今につながっている。それを「いいね!」と言ってくれる人たちがいるから、結成して8年経った今も続けられているのだと思います。
「自分がやりたいこと」「自分が楽しい!」を追求することで、
それぞれの「自分勝手」につながってしまうことはないのですか?
私がこうした活動をしているのも、自分が十分に楽しんで、それではじめて他人に目が行くようになったからです。『即興楽団UDje( )』では、うまいから褒められるのではなくて、自分がしたいことをしたら「いいね!」、すごく楽しんでいたら「かっこいいね!」と言われます。自分がしたいことが立っていることでもいい。そうするうち、「あれ?これでいいの?」「できるじゃん!」と自信がついてくるんです。

注目されて、そのままの自分を受け入れてもらって、自信がついて、どんどん自分を表現できるようになって、満足すると、今度は他人に目が行くようになります。「自分も褒められているけど、あの人も褒められている。何をやって褒められたんだろう?」と他人に注目して、相手の意見も聞けるようになります。ワークショップでそういう場面をたくさん見てきましたから、自分が満足して、納得してはじめて、他人に注目したり気遣えたりするようになるんだろうなと思うようになりました。

 
人と人との縁のつなぎ方を新たに見つけた。
東日本大震災をきっかけに、関西に来られたそうですね。
震災当時、私は関東で暮らしていたのですが、さまざまな問題に直面しました。中でも、今いる場所で暮らすことに何の疑いもありませんでしたが、それが一気に崩れてしまったので、これからどのように生きていくかを考えたんです。今は関西にいますが、「ずっと、ここで」とは考えていなくて、たまたまご縁があって関西にいるだけ。関西に呼び寄せてくれた人がいて、迎え入れてくれた人がいるから「ホーム」になったんです。

『釜凹バンド』ボーカルの井上登さんと一緒に
ナカガワさんにとって、「ホーム」とは?
親とも親戚とも異なるけれど、心配してくれたり、「お帰り」と迎えてくれる人がいれば、それぞれの場所が私にとって「ホーム」です。そう思うになったのは、関西に来たことが大きいかもしれません。

釜凹バンドのボーカルである井上登さんと出会い、釜ヶ崎で亡くなった人たちを弔う『釜ヶ崎夏祭り』を知りました。血のつながりはなくても、この場所に集う仲間として、その死を悼み、慰霊するというあり方に、こういうつながりもあるんだと感じました。他人とのつながりに悩んできた私ですが、人と人とのご縁のつなぎ方を、新たに見つけることができたんです。
近い未来、実現したいことは何ですか?
1回限りの楽しいという体験も大事ですが、その楽しさを積み上げることで育っていくものがあると思うから、日常の中にも『即興楽団UDje( )』のコミュニケーション、関係性づくりを取り入れていけないかなと考えています。

たとえば私の弟は、作業所を辞めて家に引きこもっているのですが、なんとかして外へ出かけるように仕向けるのではなくて、家がオープンであれば、誰かが来てくれるようになります。すると、彼は何をしなくても、ただそこにいるだけでいい。人が集えば、一人で家にいるのとは異なる、何かが生まれると思うんです。

そんなふうに日常の中で、『即興楽団UDje( )』のワークショップでしているようなことを、実現できたらいいなあと考えています。「うじゃの家」「うじゃバー」「うじゃ図書館」等々・・・やってみたいことはいっぱいです!
ありがとうございました。

取材:2016年6月
以前、『即興楽団UDje( )』のワークショップに参加して、「私は私でいいし、他の人もそれでいいんだ」と思えました。ナカガワエリさんという、その場をつくり導いてくれる人がいて、一人ひとりがそれぞれの思うままに表現しているようで、それが一つのうねりになっていくという一体感があったからこそ得られた体感です。自分というものを知って表現できるようになると、「こんな自分がいる」「こんな自分でもいいんじゃない?」と思えるから、他人のことも「こんな人がいる」「それもいいんじゃない?」と大切にでき、そこから編むコミュニケーションを始められるのだろうなあと思いました。
取材:小森利絵
ライター/HP:『えんを描く』
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。



 

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