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■関西マスコミ・広報女史インタビュー


木原 みな子さん(一般社団法人 共同通信社 大阪社会部記者)

 
 
木原 みな子さん(一般社団法人 共同通信社 大阪社会部記者)
2011年共同通信入社。同年5月から山口支局。周南市の5人殺害事件など事件事故のほか、岩国基地や上関原発問題を取材。13年冬に大阪支社、14年春からは大阪府警捜査1課を担当。連続青酸事件、中1男女殺害事件など。16年5月から遊軍・科学担当。大学を中心に研究成果やノーベル賞の取材に取り組む。赴任地以外に尼崎連続変死事件、王将社長殺害事件、広島土砂災害、熊本地震などの応援に赴いた。
一般社団法人共同通信社 http://www.kyodonews.jp 大阪市中央区高麗橋1-4-2
お仕事の内容を教えてください。
通信社は世の中のあらゆるニュースを迅速に加盟社(新聞、ラジオなど)に配信するのが仕事です。記者には、“記者クラブ持ち”と呼ばれる、府警担当、司法担当、行政担当があり、それ以外のものを“遊軍”と呼びます。オールラウンダーとして多様なカテゴリーの情報収集を行っています。

現在、「遊軍・科学担当」で、大阪の大学や研究機関を中心に、色んな研究成果を発信しています。成果だけでなく、研究者自身のヒューマンストーリーや、研究を支える制度にも関心があります。ノーベル賞で話題の「オートファジー」も、実は大阪でも研究が盛んで、以前から取材していました。

他に歴史や文化に関する記事も書きたいと思っているのですが、なかなか手が回せません。もちろん遊軍は「何でも屋」でもあるので、大きな事件・事故や出来事があれば、同僚と総力戦で取材に当たります。
お仕事のスキルはどうやって身につけていくのでしょうか。
実践で学ぶ。ほぼ完全にOJTです。みんなで試行錯誤しながら、身につけていく、怒られながら現場で学んでいくという感じです。入社後は、各都道府県に配属されていきます。どこに配属されるかはわからないのですが、それに関しては全く抵抗がなかったですね。かえってどこに行くのか楽しみだったくらいです(笑)。

山口県配属時代は、3人でほぼ県全域を担当し、大阪に来てからは、警察担当として2年半務めました。警察担当時には、24時間体制で、時間や曜日に関係なく呼び出されることはよくありました。

今は、科学担当として、おもに大学の研究などに関わっているので、土日にお休みを取ることができ、時間的にもゆとりがあります。書くべきものを書いていれば、取材時間や執筆時間は自分で自由に設定できるので、自分のペースで取材原稿を進められるようになりました。

会社には、リリースなどの情報ソースが毎日じゃんじゃん入ってくるので、それらのニュースを判断して取材したり、自分の取材したいネタを温めて執筆していきます。
お仕事の中で、どんなことに力を入れていますか。
実務的には、一定水準の記事を滞りなく出すことを心がけています。当たり前のようですが、日々新しいニュースに向き合う中では、それほど簡単なことではありません。特に警察担当の頃は、「抜く(他社に先駆けてスクープを出す)」こと、抜かれないことに力を入れました。

もちろん、自分の問題意識に基づいて、世の中に知られていないことを発掘して良い記事を出すのも社会的な使命です。ただ、ミスしないこと、抜かれないことは、プロの記者として最低限の責務と思っていました。

一方で、大きな事件・事故や災害を取材する中で、ある意味慣れてしまって、人の痛みに鈍感になってしまうなら、それは記者を辞める時だと、自分に言い聞かせています。先輩記者の受け売りなのですが、記者として一番大事なのは、他人の痛みへの想像力だと思っています。
新聞記者と通信社記者の違いは何だと思われますか。
記事を書くことではほとんど同じですが、届ける先が、新聞記者の場合、自社メディアで、通信社記者の場合は、新聞社へ向けて書いている点でしょうか。私が書いた記事は、ほぼそのまま新聞に掲載されますので、新聞の向こうにいる読者を念頭に置いて記事を書きます。唯一違う点は、締切時間がないことですね。

記事の締切時間は、新聞社さんによってまちまちなんです。なので、私たちは、「書いたら直ぐ出す」。これを基本としています。スピードが求められる仕事ですね。特に事件・事故などは「生のニュース」と呼び、1秒を争って、どこよりも早く出すことに務めています。
この仕事の醍醐味はなんでしょう。
醍醐味というと語弊があるかも知れませんが、人の喜怒哀楽に向き合えることでしょうか。絶対に負けると予想されていた元派遣社員たちの地位確認訴訟で、原告の要求が認められたことがありました。その時の原告団の歓喜、腹の底からわき上がるような興奮は忘れられません。中立の立場ではありますが、感動せずにいられない法廷シーンでした。

また、土砂災害の現場で、小さな子を亡くした家族が遺品を探している場面を取材させてもらったことがあります。後ろ姿の撮影だけで、言葉は頂けませんでしたが、表情、仕草、涙から伝わるものを、精一杯の記事にしました。災害のむごさ、悲しさが少しでも伝わっただろうかと思います。例を挙げたらきりがありません。人間の心からの喜び、悲しみ、憤りに接して、それを多少なりとも社会に共有できるのが、記者としてのやりがいにつながっています。

あとはやはり、歴史的瞬間を身近に取材できることに興奮します。2016年夏はオバマ大統領の訪問や(テレビ越しの)カープ優勝など、広島に応援に行った際に立ち会えました。取材は一期一会。全く同じネタを同じ人に同じように取材することは有りません。次から次へと新しいことに関われることも醍醐味のひとつかも知れません。
なぜ通信社の記者になろうと思われたんですか。
大学で、国際協力に携わったり起業したりする「すごい人たち」をたくさん見て、自分はそういうすごいコトはできないけど、「すごいんだよ」って他の人に伝えたいな、と思いました。共同通信の記者が書いた『もの食う人々』というルポを読んで、「世の中でまだ知られていない大切なことを発掘したい」という情熱を抱いたのも、共同通信を志した理由です。あとは、飽きっぽいから、毎日違う仕事ができる記者の仕事が向いていると思ったかな(笑)
木原さんのお仕事でのターニングポイントを教えてください。
これまでの人事はほとんど自分の意志ではありませんが、各時点で、あてがわれたポジションに興奮し、楽しんでいます。特に大阪府警捜査1課担当の2年間は劇的でした。殺人や虐待事件ばかり取材していると、自分自身の心も重くなる気がします。朝早く夜遅い生活リズムもきつかった。

でも、この時期を多くの人に支えられて乗り切ることができたのは、大きな自信になりました。弱い者が虐げられる現状を、自分が伝えなければ誰が伝えるのかという使命感もありました。やりきったという達成感が、仕事でもプライベートでも、ポジティブな変化につながっていると思います。

今は難病の治療に役立つかも知れない研究成果など、夢のある科学の取材が楽しくて仕方ありません。本当は文系脳で、科学は全くチンプンカンプンなんですが、怖い者知らずになりました(笑)
これまでにどんな「壁」を経験されましたか。またそこからどんなことを学ばれましたか。
何度も壁にぶつかっています。東京の実家を離れて、初めてひとり暮らしした山口時代。麺をゆでるのも、車を運転するのも初めて。乾杯の仕方も取材の所作も知らず、最初の一年は先輩に怒られっぱなしでした。落ち込みますが、本当に時たま、「成長したな」と褒められるとすごく嬉しくて、それが励みになりました。

山口時代にお世話になった居酒屋のママ、取材先の人たちとは今も大切な交流を持てています。もちろん先輩とも仲良しです。大阪の1課担の時も、苦しい毎日を、同僚や取材先の支えがあって乗り切れました。ここまで来れたのは自分一人の力ではないこと、色んな人への感謝を実感するようになったのが、一番の「学び」かも知れません。

一方で、やはり取材は「人対人」ですから、取材したり、記事にすることで相手(特に遺族)を傷つけてしまったり、わだかまりを残してしまったことも、ゼロではありません。「ああすれば良かった」と後悔することもありますが、正解は分かりません。心に残ったしこりを忘れることなく、前を向いて行くしかないと思っています。
「自分の時間」はどのように過ごされていますか。
山口時代は、休みに車で萩に遊びに行ったり、他社の記者とご飯に行ったりしていました。いつ呼び出されるか分からないので、温泉に入っている間も携帯が気になって…。大阪で大阪府警捜査1課担当だった頃は、取材の合間をぬって「風呂」と「美術館・寺社巡り」に費やしましたね。冷え性なので、特に冬は、帰宅がどんなに遅くなっても湯船につかり、翌朝また入っていました。

あと、殺人事件などで心が重くなった時、美術の力に惹かれました。お気に入りは奈良。自然と文化に癒されたくて、取材の合間に通いました。美術館は制度や舞台裏にも興味が湧いて、遊軍になってから学芸員の勉強を始めたんです。社内では「転職か!?」とか言われていますが、仕事にも役立つと思っています。

レポートや実習が大変ですが、色んなバックグラウンドの人と同じ目標に向かって頑張るのは楽しいです。もちろん、休みをとって東京の実家に帰り、家族と過ごすのも、かけがえのない時間です。
人生のきっかけになった本、あるいは心に残った本を教えてください。
子どもの頃に読んだ本ですが、「山月記」。「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」というフレーズに、自分のことを言われていると、ドキっとしました。先述した「もの食う人々」は、「食べる」という人間にとって最も身近な営みを世界中で書き取ったルポ。当時、大学の農学部で「食と人」に関心があったこともあって、衝撃を受けました。共同通信を意識したきっかけでもありました。

大阪府警捜査1課担当の頃は、谷崎潤一郎などの古典ですね。美しい文章は、最初難しく思えましたが、夢幻の世界に誘い込まれるような感覚にはまりました。中野京子さんの「怖い絵」シリーズなどビジュアル豊富な美術本も、風呂で読めば癒やし効果倍増でした。

最近は、大阪大の岸本忠三元総長の「私の履歴書」単行本が大変面白かったです。科学の難しい話はさておき、一人の少年がノーベル賞候補と言われるほどの免疫学者に育つまでの人生譚は痛快でした。「(今望んでいることは)もう一度研究に全力を傾け、世界の研究者たちと存分に競ってみることだ。マラソンに例えれば、まだトップ集団からそれほど離されていないのではないかという感触はある。追走は可能ではなかろうかと考えている」。この部分に、心揺さぶられました。

なぜならこれを書いた約15年後の現在、77歳の岸本先生は一研究員として、今も研究に取り組まれているから。どんなに偉くなっても、何歳になっても、全力で向き合うものがある先生が、羨ましく、感銘を受けました。
記者を目指したいと考える読者女性へメッセージをお願いします。
記者を目指す理由は、人によって千差万別で、正解はないと思います。自分なりの理由に自信を持って、そして情熱を持たれると良いと思います。私は就職活動で他の職種もたくさん受けて、一度はマスコミ以外の会社の内定を頂いていました。でも記者だけはどうしても諦められず、最後のチャレンジで共同通信に入れました。

その頃の「記者になりたい」という強い気持ちは、実際に記者になって様々な壁にぶつかっても、揺るがない基盤になっていたと思います。もちろん、入ってみて「違う」と思ったら、その時に行動するのもアリです。

ただ、記者の仕事は、その時は「違う」「もうだめだ」と思っても、次の日は別のニュースが降ってくるものですから、挽回の機会はいくらでもあります。そんな起伏に富んだ毎日を楽しみたいという方は、ぜひ挑戦してみてください。
ありがとうございました。
取材:2016年10月
学芸員の資格取得を進めていらっしゃる木原さん。仕事にも役立つし、今後、さらに得意とする文化関連の記事も書いていきたいとの思いが溢れます。インタビュー後の雑談の中で、「舞台も好きでよく観に行くんですよ」という話から、英語劇団の経験もあると聞き、思わぬ共通点を発見!木原さんの違う一面が垣間見れ、もう少しお話を聞きたくなりました。今後は、普段読む新聞記事の中で、木原さんが取材されている記事に出会うのも楽しみです。「自分が伝えなければ誰が伝えるのか」。そのことばに記者の誇りを感じたインタビューとなりました。
取材:なかむらのり子
S plus+h(スプラッシュ) 代表
フリーコーディネーター/コピーライター/プランナー
マスコミ・出版メディアへの取材も多く、インタビューする方の人生にスポットを当てる取材を心がけている。舞台芸術、教育、医療、地域活性に関する取材など、そのフィールドは広い。 



 

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