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■関西マスコミ・広報女史インタビュー
渡辺 幸代さん(グンゼ株式会社 広報IR室)
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■関西マスコミ・広報女史インタビュー
渡辺 幸代さん(グンゼ株式会社 広報IR室)


渡辺 幸代さん グンゼ株式会社 広報IR室 1992年グンゼ株式会社入社。東京でアパレル製品(ストッキング、インナー)の営業にたずさわる。1998年大阪に転勤しストッキングの企画に。2000年より神田うのさんプロデュースの「Tuche」の企画を担当し、大ヒットとなる。2008年に38歳で長男を出産し、産休・育休を経て2009年広報IR室に復職。現在は主にグンゼの機能ソリューション、ライフクリイト事業の広報を担当している。 取材協力:グンゼ株式会社 大阪市北区梅田2-5-25 ハービスOSAKAオフィスタワー http://www.gunze.co.jp/ |

広報IR室でのお仕事の内容を教えてください。 |
来年(2016年)に創業120周年を迎えるグンゼの広報を担当しています。 グンゼというとインナーやストッキングの会社と思われますが、ペットボトル飲料のラベルなどの包装フィルムやタッチパネル、メディカル材料などの機能ソリューション事業、スポーツクラブやショッピングセンターの運営などのライフクリエイト事業まで幅広く展開しています。 その中で、私はグンゼの事業や商品をPRするのが仕事ですが、主に機能ソリューション事業とライフクリエイト事業を担当しています。グンゼが運営しているスポーツクラブなど、担当範囲は多岐にわたっています。 |
お仕事の中で、どんなことに力を入れていますか? |
まずは、一般の方に役立つグンゼの情報を発信したいと思っています。単なる会社や商品のPRではなく、「自分の生活に役立ちそうだな」とか、「これを着ると心地よく暮らせそうだな」と思ってもらえたり、単純に「なるほど!」と思ってもらえるだけでもいいのです。みなさんが自分事として感じていただける情報を出せたらいいなと考えています。 また、仕事への姿勢という点では、会社のコーポレートメッセージ「明日をもっとここちよく」を、仕事でご一緒する人に感じていただけるように心がけています。商品やサービスなどの事業内容だけでなく、電話に出たときの第一声や、マスコミから問い合わせがあった時の情報の正確さやスピード感など、基本的なことなんですが、これが意外と重要だと思っています。 |
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広報の醍醐味とは何だと感じられますか? |
自分の思い描いたストーリー通りにメディアに掲載され、それに対する反響がある事だと思います。 たとえば、テレビ東京の「カンブリア宮殿」で当社を取り上げていただいた時(2014年4月)には、得意先やOBなど、様々な方から「グンゼっていい会社だね」「児玉社長って素敵な人だね」という反応をいただきました。中でも当社の従業員が会社を好きになってくれたことが、従業員調査の結果から伺え、それが一番嬉しかったですね。 放送から1年以上たった今でも、初めてお会いした人から「番組を見ました」という声をいただくこともあって、これこそ広報の醍醐味、だと思います。 実際の取材期間は、お話をいただいてから放送されるまで半年がかりで、社内の調整やスケジュールのやりくりなど大変だったのですが、番組のスタッフとも「同志」という感じになれて、一緒に番組を作っているという感覚がありました。 |
広報という仕事についたきっかけは何ですか? |
社内異動で営業→商品企画→広報と仕事内容が変わってきました。それぞれの仕事で前の職場での経験が役に立ちました。営業を担当してお客さまのニーズを感じた上で商品企画へ、商品企画を担当して企画意図がわかった上で広報へという流れできました。 商品企画の時に、もっとこんな風に広報してもらえれば・・・という思いもあったので、育休から復帰する時に広報を希望しました。会社に聞き入れてもらったわけですが、以前いた広報担当の女性が退社したところだったので、「広報に女性がほしいタイミングのはずだ」と、ちゃんとマーケティングもしたんですよ(笑) |
お仕事でのターニングポイント(転機)を教えてください。 |
「転機」という点では、難しい仕事をやり遂げた時に、次への方向が定まった気がします。 ストッキングの商品企画では、「Tuche(トゥシェ)」というブランドを任されて、神田うのさんプロデュースの柄ストッキングを立ち上げたときです。 苦労も多かったですが、仕事の面白さに目覚めました。 うのさんとは感覚的に分かりあえて話が早いのに、社内の上司や取引先の男性バイヤーを説得する(=企画書を書く、プレゼンをする)時にはスムースにいかなくて。男性の説得にはデータとロジックが重要ということも、この時に学びました。 広報では、異動して1年程度の時に、「秘密のケンミンショー」の取材を、初めて一人でアレンジしたのですが、この時が広報としてのターニングポイントでしたね。インナー工場の取材だったのですが、「番組制作側のニーズを汲み取りながら、当社側のアピールしたい点も入れていただき、それに向けて社内調整をする」という、広報として基本的なことを行いました。ここで、「媒体の向こうにいる人を常に意識して、マスコミの方々と同じ目線を持つ」という自分自身の広報スタイルが確立したのはあの時だと思います。 |
これまでに「壁」を感じたことはありましたか? |
![]() 長時間労働する時代ではないですし、小学生の子供がいて毎日午後7時までに学童に迎えに行かなくてはならないので、限られた時間の中でこれまで以上の結果を出したいとなると、仕事の優先順位をつけて、やり方を工夫するしかないと思っています。 ただ、実力より少しレベルの高い仕事を与えられて「壁」にぶつかった時というのは、自分が成長する時だと思うようにしています。逆に苦しくないときや仕事が楽なときは、成長が止まっているのかもしれません。「山には勾配のゆるい坂道(つまり、それまでためた自分の実力で楽に仕事ができるとき)もあれば、急な坂道もある。でもその苦しさを抜けると、頂上の素晴らしい眺めに出会えるし、達成感も味わえる。」そう考えているので、今は少し苦しいけれど、これを通り過ぎればいい景色を楽しめると思うようにしています。 |
「自分の時間」の作り方、使い方をおしえていただけますか? |
仕事と自分の時間は通勤時間がほどよい緩衝材になっていると思います。私の場合、電車に乗っている時間は20分程度で、朝の通勤時は新聞を読んだりWEBで当社の露出をチェックしたりする「仕事モードに変わる時間」。帰りの電車はママ友にメールしたり、読書したり「自分モードに変わる時間」と位置付けています。(その通りにならないことも多いですが) 自分の時間は、子どものころから本を読むのが好きなので読書をすることが多いですね。年間52冊(週1冊)本を読むという目標も立てているんです。 |
人生のきっかけになった本、または心に残る本をご紹介ください。 |
■東レ経営研究所・渥美由喜さんの「イクメンで行こう!育児も仕事も充実させる生き方」 「ワーク・ライフ・バランス」とはライフを重視するために、ワークをいい加減にこなすということではない。ライフを充実させるためには、業務効率を上げる、つまりワークの質を高めることが必要不可欠だ。など、日ごろから感じていたことを言葉にしてもらった感じです。 しかも、育児と仕事を両立する働き方を、女性ではなく男性の視点から書いてあるのですが、職業人としては一緒なんだなということが嬉しかったです。 「職業人、家庭人、地域人という、市民の三面性をあわせもつ男性が増えてほしい」という言葉に、自分に足りなかった「地域人」も実行したいなと思い、今年、西宮市の子ども・子育て会議の公募委員に応募して採用されました。これからは地域人としての活動も充実させていきたいと思っています。 ■玉岡かおるさんの「負けんとき」 大丸心斎橋店などの建築家ヴォーリズの日本人妻、満喜子を主人公にした小説です。タイトルの「負けんとき」は廣岡浅子(大同生命の創始者)の言葉で、「勝とうとしたらあかん。相手を勝たしてなんぼが商売。けど、自分には負けたらあかん。負けんとき」ということで、この言葉に共感しました。実は会社での業務や、他社の広報の方とのネットワークで、上記の筆者お二人とも実際にお会いする機会があるんです。一層、印象的な本となっています。 |
同じ業界を目指したいと考える女性へメッセージをお願いします。 |
最近、複数のアラサー女性に「やりがいのある仕事も、家庭も、子どもも全て欲しいなんて贅沢だ。何かを優先させたら何かを捨てて、取捨選択しなきゃいけないと思う」と言われました。人それぞれの価値観があると思いますが、私自身はやりがいのある仕事も、家庭も、子どもも、地域人としての自分も両立したい。さらには、おしゃれもしたいし、もっと素敵な女性になりたいと思っています。 優先順位の付け方が、仕事を捨てて家庭とか、その反対とか極端なものではなくて、家事に完璧を求めない、仕事も手を抜ける部分は抜くといった工夫で可能なのではないかと思います。 渥美由貴さんの言葉ではありませんが「職業人、家庭人、地域人という、市民の三面性をあわせもつ女性が増えてほしい」と思います。その方が、人生絶対楽しいです。 |
渡辺幸代さん、ありがとうございました。 |

![]() 広報という仕事には、多方面を巻き込んで、スムーズに進めていくコミュニケーションスキルが必要です。その難しさを感じさせない穏やかで自然体な渡辺さんですが、商品や事業を通して、マスコミでグンゼを発信していく姿勢は、プロフェッショナルのみが持つバイタリティにあふれていました。 |
![]() S plus+h(スプラッシュ) 代表 フリーコーディネーター/コピーライター/プランナー マスコミ・出版メディアへの取材も多く、インタビューする方の人生にスポットを当てる取材を心がけている。舞台芸術、教育、医療、地域活性に関する取材など、そのフィールドは広い。 |
■関西マスコミ・広報女史インタビュー 記事一覧
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「記者として一番大事なのは、他人の痛みへの想像力」さまざまな事件やニュースを追い、世の中に伝える木原さん
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「記者は自分自身が丸ごと問われる仕事」どんな経験も仕事につながると言う新聞記者の寺尾さん
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「新しい出会いを創造できるのも、この仕事のまさに醍醐味」同社初の女性管理職として働く田中さん。
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「アナウンサーは良くも悪くも「人間性」が出る仕事」野球好きが高じてアナウンサーになられた市川さん
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「どでかい好奇心と辞めない決意」フリーエディターから著名雑誌の編集長に。誰にも作れない記事を目指す中本さん
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関西の番組らしい「おもしろい」を作りたいテレビ番組制作会社のディレクターとして働く日高さん
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「24時間夢の中でも仕事のことを考えていた」たくさん怒られたことが今でも仕事のベースになっていているという麻未さん
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「70歳になっても続けたい」テレビ局のADからディレクターを支えるリサーチャーに転身、関西のテレビ番組の多くに携わる赤松さん。