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■関西のクリエイターが綴る手紙コラム『手紙の小箱』


テーマはノスタルジー (酒井育子さん)

テーマは“ノスタルジー”

酒井 育子さん
(紙モノ作家)
奈良・新大宮駅からすぐにある工房「雨の日製作所」。そのオーナーで紙モノ作家の酒井育子さんは、貼り箱や紙袋など紙を使った作品を作っています。アンティーク調のアトリエの中は、すてきな紙がいっぱい!月初めに開かれるイベントでは、さまざまな作家さんたちの作品も並び、今とっても人気のアトリエ&ショップです。酒井さんが作られたノスタルジックなお手紙アイテムをご紹介いただきました。
刺繍図案の一筆箋
紙好きの私の、自分でも気づかなかったテーマは“ノスタルジー”。

日本では、ツルっとして光沢のある綺麗な紙が当たり前ですが、近頃はまた見直されている、白色度の低い、ざらっとした手触りの紙が好きです。

それらは少し懐かしく、なぜだか妙に愛おしい。

古い時代の東欧雑貨や、日本の古い書物にあるような、やや黄味がかったアンティークな風合いがあるものや、グレーっぽい紙。

和紙の風合いも好きですが、それも洋の世界感で使えることが私にとっては大事。

普段から、何か物を送ったりするときに重宝する「一筆箋」は、私自身もよく使います。

この定番の一筆箋は、ヨーロッパ辺りの古い刺繍の図案集から選んだ絵柄を、消しゴムはんこの作家さんにお願いして彫ってもらい、それをスタンプで押してスキャン。それから印刷しています。

紙もざらっとしていたり、透け感のあるものを選びました。何度もリピートで買ってくださる方があるととても嬉しい、お気に入りです。
便せんセット
モノづくりの、もうひとつのキーワードは、手作り感のある紙作り。

元々は箱作りをしていて、そこに貼るための紙をあちこちの紙屋さんを周って集めていました。その一方で、一般的なコラージュとは違う「切り抜き」という紙の実験に出会い、切ったり貼ったりを続けていくようになりました。

そんな中、絵は描けずパソコンも自由に使いこなせない自分でも、紙のデザインができるのでは?と思うようになりました。

絵の具で描く線や色は、失敗してもワンクリックで消すことができません。それと同じように、ハサミで切った自由な丸や四角は、まったく同じサイズの同じかたちを量産するのは難しく、手が変わる度にかたちも変わります。

なので私の作るものは、とても拙くてアナログ感満載です。

それでも手間をかけて生まれた便せんは、紙の色や種類を変えてゆくことで色々に楽しめます。封筒に貼るシールも手作りで作っています。 変化も楽しみながら、少量ずつ完成していきます。

パッケージもしっかりと印刷されたものより、夜店で買ったような、何かの付録のような、そんなラフさを残していたいと思っています。すぐにパパっと使ってもらえたらいいなと。
窓付き封筒
事務用の封筒にある、地紋が好きで、窓付き封筒というのにもノスタルジーを感じます。

通常の地紋封筒を、わざわざ裏返して貼りなおしてみたりしていたこともありますが、自分でも手作りしたくなって作ってみました。

地紋を表の柄に出し、カッターで1枚ずつ窓を切り抜いてグラシン紙を貼るので、これはもう、商品にはなりません。趣味の世界??笑

綺麗な写真のポストカードも、書く部分が少ないなと思ったら、ここに入れて。

このグラシンの窓から、ほんのり写真の色が映って、おまけに別紙のメモも入れられます。ポストカードそのものをプレゼントにする時や、DMを手渡したい時などに遊び心で使ってもらえたらなあと、眺めてはニヤニヤしています。
「手紙」について思うこと
手紙を書くのは。
あまり得意ではありません。

手紙のコラムなのに、あんまりですね(涙)
でも続きはあって。

手紙をもらうのは、特別に嬉しいのです。

子供がまだ小さかった頃、亡き母がくれた葉書の中に、とても思い出深いものがあります。

1歳の誕生日を迎えた長女に、お祝いのコメントと、「あなたのお父さんとお母さんは、あなたが生まれてから毎日毎日、何百回も、可愛いと言い続けているよ…」と、まだ文字など読めるはずもない孫にむけて綴ってくれたのです。

たくさんの写真と共にアルバムに貼ってある宝物です。その文字は、いかにも母らしいきっぱりとした感じやいつもの笑顔をも浮かび上がらせてくれます。

時を経て、今年、その長女に娘が生まれました。 長女もまた、自分の娘に、「可愛い」と声を出さずにはいられない姿を見ていて、今度は私が孫に、その日々を綴って送ろうと思います。

こんな風に手書きの手紙は、心に届くと同時に、何度も手に取って読み返し、時間をかけて味わうことができるもの。

今は、スマホで写真も動画も、もちろん言葉も、リアルタイムに送ることができる時代。便利だし、喜びも届きます。

ですが、手軽な分だけ、すぐに上書きされていきます。

手もとにおいて、触れて眺めて。
早いスピードに呑みこまれたり上書きの心配がない、このゆったりとした気持ちの味わい方もまた、手紙の醍醐味かもしれません。

そんな手紙のやりとりの影の役者である便せんや封筒に、手を動かした分だけの、アナログの時間経過が温かみを添えられたなら、こんなに嬉しいことはありません。
profile
酒井 育子さん
紙箱、のし袋、包装紙など、紙にまつわるモノづくりをしながら、 雨の日製作所を拠点に活動しています。 毎月初めの1.2.3(ワンツースリー)には、いろんなテーマの企画で、多様な人の交流がごく自然にできる場を提供したいと考えています。4人の子育てを越えての自由時間は、家族旅行から冒険旅行のような日々になり、 時折は、一人旅にもチャレンジ中です。
http://www.eonet.ne.jp/~nuland/
このレターセットはここで買えます。
雨の日製作所
〒630-8114 奈良市芝辻町4丁目6-16 セイシェルビル2F
TEL.090-8829-4447
http://www.eonet.ne.jp/~nuland/
営業日は毎月初めの1.2.3日
下記カレンダーを御確認下さい。
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