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■関西ウーマンインタビュー(ドクター編)


田野 友美さん(歯科医/『たの歯科』院長)

『私らしく』でいい」という選択を重ねると、
自分に正直に生きられる

田野 友美さん
『たの歯科』院長
ご実家の1階が歯科医院で、幼い頃から診療するお父さまの姿を見てきたという田野友美さん。「自分も大人になったら、歯科医師になるんだろうなあ」と思っていたそうです。その夢を実現して歯科医師となり、お父さまの歯科医院の勤務医になりました。

当初は独立・開業をめざしていなかったそうですが、独立して『たの歯科』を開業します。周囲からも「実家が歯科医院だから、後を継いだらいいのに」と言われ、自分自身も「私には無理かもしれない」と思っていた中での決断でした。

その勇気を出した第一歩には、どんな想いやはじまりがあったのでしょうか?
「自分がやりたいこと」を見つけたから
お父さまの歯科医院で長年働いた後、ご自身で歯科医院を開業されたそうですね。独立するきっかけは何だったのですか?
自分のやりたい方向性が見えてきて、父とどうしてもぶつかってしまったからです。私が意見や提案をしても、まったく聞く耳を持ってもらえませんでした。

父は「女性は家で家事と子育てに専念していたらいい」という考えだから、「子育てしているんだから、お小遣い程度に稼いで家事と子育てをすればいい」「意見するな」という感じに見えたんです。意見が通らない、頼りにもされていない・・・自分の存在さえも認めてもらえていない気がして、しんどくなりました。

「このまま、ずっと我慢して生きていくことはできない」「父のところを離れて、自分で自由に考えて仕事をしたい」と思う一方、「私には無理かもしれない」「家事や子育てとの両立は難しいのでは」と不安な気持ちも。

まわりからも「実家が歯科医院だから、後を継いだらいいのに」「借金を背負ってまで独立する必要があるの?」と言われることも多かったので、3年ほど悩みに悩みました。

でも、40歳を前にして、やっぱり後悔はしたくないって。

ずっともやもやしているのも嫌だったし、このままでは父のこともどんどん嫌いになってしまう。自分を好きになるためにも、勇気を出そうと思い立ったんです。
リスクを背負ってまで勇気を出して独立。そこまでして、田野さんがやりたかったこととは何だったのですか?
「歯の悪い状態を治療して痛みをなくす」ではなく、「健康な歯を健康なまま保ちたい」ということです。

年配の患者さんを診療する中で、「なんで、ここまで歯が悪くなってしまったんだろう」「子どもの頃から歯に手をかけてあげれば、こんなにも歯で苦しまずに済むのではないか」「治療して痛みをなくすのではなく、その前に何かできないか」と思うようになっていました。

自分が子育てをするようになって、視点が変わったんだと思います。子どもに来てもらえる、治療ではなくてメンテナンスに通ってもらえる歯科医院をつくりたいと思いました。
自分で考えたことがちゃんと形になる幸せ
実際に開業してどうですか? ご自身が実現したいことはできていますか?
開業して、もやもやから解放されたと喜んだんですが、やっぱり大変! 医院をオープンするのは勢いだけでできましたが、1年ほど経つと恐怖がどっと押し寄せてきたんです。

「健康な歯を健康なまま保ちたい」というコンセプトを実現するために、「誰でも来てください」ではなく、「ここに来たい」という人に来てほしいと、友人や知人を中心に口コミで地道に患者さんを増やしていこうと考え、当初は外観に目立つ看板を出していませんでした。

暇な日が続いても、「そのうち増えていくから、ゆっくりでいいやん」と思えていたのですが、スタッフの給料や材料費、経費など毎月お金が出ていきますし、開業時の借金もあります。開業から1年経ってから「このままではあかん!」と焦り始めたんです。

「口コミで広げるといっても、そもそもの母体数を増やさないと広がらへん」と看板を替えたり、通信をつくって近所に配付したりするなど戦略を練るようになっていきました。

今でも経営面を考えると、夜中も目が覚めるくらいのプレッシャーがあって、父はこういったプレッシャーと常に向き合っていたんだと気づきました。それにも関わらず、私は勝手なことばかりを言っていたんだって。父に認めてもらえなかったんじゃなくて、認めてもらうような仕事をしていなかったんだと痛感したんです。

でも、独立したことに後悔はありません。
「後悔はない」、そう言いきれる理由とは?
自分で考えたことがちゃんと形になる幸せがあります。

たとえば、この待合室。「歯医者っぽくない、歯医者にしたい」と本をたくさん並べて、まるで図書館のような場所にしました。

独立するかどうか悩んだ時、いろんな本を読んだことで考えがまとまったり救われたりしたので、訪れる人たちにもそんな本との出会いがあったらいいなあと考えたからです。

また、開業当初に掲げた「健康な歯を健康なままに」というコンセプトから「子どもたちの歯を守りたい」、さらには「子どもたちをもっともっと元気にしたい」と想いが膨らんで、昨年は外部講師を招いて親向けに考え方や発想法などのヒントになる講座を実施しました。

親自身がいろんな世界を知り、自分の人生を楽しめるようになることが、子どもたちにもいい影響を与えると考えたからです。
「自分の想い」と「経営者の視点」の狭間で揺れますね。
自分で考えたことを実現できるものの、経営者としては不安や心配事が山盛りです。自分の軸がぶれそうになることもあります。正直、スタッフがいなければ、ここまで続けられなかったかもしれません。

私がぶれそうになっている時、スタッフが「医院のパンフレットを読んでください。これが先生の最初の想いですよ」「先生の想い、考えでいいと思います」と励ましてくれます。時には「それは先生の想いと違うんじゃないですか」と厳しく指摘もしてくれるから、再び立ち戻ることができています。

開業する時に、どんな医院にしたいか、どんなスタッフと働きたいかについて、すごく考えて開業したからこそ、その時の想いが自分の軸になっているんだと思いました。

そして、スタッフの存在の大きさ。私は昔から個人主義で、何でも自分で決めて、自分でやっていると思ってきましたが、こうやって支えられているからこそ、大きなことができているんだって感謝できるようになりました。
チャンスが巡ってきたら、掴みたい
昨年から海外で口腔衛生指導をされていますね。何がきっかけですか?
患者さんにフィリピンのパンダノン島に支援に行く方がいて、「現地で口腔衛生指導してもらえないか?」と声をかけてもらいました。

せっかくなら患者さんも巻き込んで、その想いも一緒にフィリピンに持って行きたいと、歯ブラシの寄付を募る『レインボープロジェクト』を始め、最終的には1600本もの歯ブラシとともに現地へ。

歯の大切さや虫歯予防について伝えて、子どもたちに歯磨きをしてもらおうと考えて行ったのに、自分の無力さに落ち込みました。

向こうでは歯が痛くなったら、歯医者がいないので、痛み止めを飲むか、糸を歯に巻き付けて抜きます。貧困ゆえに歯を失うことよりも、甘いものでお腹を満たすことのほうが大切で、「歯ブラシは優先順位が低いので購入しない」「虫歯になったら痛いけど抜けばいい」という状況です。

この子たちの現実と、歯を守るということをリンクさせることがすごく難しいと感じました。

今後も継続的に取り組んでいきたいと考えていて、島の人たちに歯の大切さをわかりやすく伝えてわかってもらい、歯を守る手助けができたらいいなあ、と。

また、その島出身の女の子が、島初の歯科医師になるべく奨学金で歯科大学に行っているので、その子と一緒に、島で自立した女性が後に続くような活動をしたいとも考えています。
以前から海外で活動したいという想いがあったのですか?
キリスト教系の小学校に通っていましたから、ボランティアは身近で興味を持っていました。生まれ変わったら青年海外協力隊に応募してみたい、とも。「生まれ変わったら」というのは、生まれ変わらないと勇気が出ない・・・今は実現できないと思っていたからです。

それが昨年の初めに、カンボジアの『くっくま孤児院』を運営する団体の方と出会い、「向こうに日本人がいるなら心強い」と勢いで現地に行ってみたんです。その経験があったからこそ、今回のフィリピン行きにも挑戦できたんだと思います。

ずっと心の底にあることって、いくつになっても浮上してくるんでしょうね。きっとチャンスも巡ってくるのだと思うのですが、それを見逃すか、諦めるか、掴むか。

私はチャンスが巡ってきたら掴みたい・・・そう強く思うようになりました。
「チャンスが巡ってきたら掴みたい」と強く思うようになったのは、どうしてですか?
子どもたちが私を見た時に、「おかんの生き方っておもしろいなあ」「人って思えば、何でもできるんだ」と1人の大人として、子どもたちが未来を楽しみになるような生き方をしていたいというのが、根本にあります。

そう思えるまでにはハードルがありました。

そもそも私が生まれ育った家庭は「女性は専業主婦で家にいて、子どもが家に帰ってきたら出迎える」という感じだったから、自分も子育てをするようになって、そうしなければならないのではないかと葛藤しましたし、そうしないことに対して罪悪感もありました。

それが独立・開業を決めた時、「私は『私らしく』」と思えたから。これでいいんだって。

ちょっとずつ、ちょっとずつ、「『私らしく』でいいんだ」と選択して生きていると、まわりにもそういう生き方の人が増えてきます。大丈夫、大丈夫と言ってくれる人たちが現れてくるし、「子どもをみたらな、かわいそうや」と言っていた母も、だんだんと「そんな生き方もあるんやなあ」「そんな生き方もいいね」と反応が変わってきました。

いきなり大きく変わることはできないけれど、ちょっとずつ、ちょっとずつを積み重ねて。自分に正直に生きられるようになったかなと思います。
profile
田野 友美さん
1999年に大阪歯科大学卒業。同大学で研修後、父の歯科医院をベースに、堺市内の複数の歯科医院でも経験を積む。勤務医として15年働いた後、2015年1月に独立して『たの歯科』を開業した。『日本ヘルスケア歯科学会』『アンチエイジング歯科学会』会員、『臨床分子栄養医学研究会』認定医、『国際食育士協会』認定食育アドバイザー、『ナード・アロマテラピー協会』アロマ・アドバイザーなどの資格を有する。
たの歯科
堺市中区深阪2丁10-51 青柳建設ビル2F TEL:072-290-7824
HP: http://www.tano-shi-dc.com
(取材:2017年11月)
editor's note
「ずっと心の底にあることって、いくつになっても浮上してくるんでしょうね」という田野さんの一言が心に残っています。

「こんなことをやってみたい」「本当は・・・」と思っても、「今は」「一般的に」「私には」無理と諦めてしまったり、「そんなことを思ってはいけない」と押さえこんでしまったりすることがあります。でも、自分の気持ちややりたいことは、ずっとあり続けるんだと思います。

ふとした瞬間に浮上してくるから、その時どうするのか。見逃すのか、諦めるのか、掴むのか。

田野さんは勇気を出して一歩踏み出されました。以降は、心の底にあることを少しずつ表に出せるようになって、出会う人たちが変わり、いつしか否定的に見えたまわりの人たちの反応も変わっていったそうです。そうした「ちょっとずつ」の積み重ねによって、以前は「無理」と思っていたことにも挑戦されています。

田野さんにとっての最初の一歩は独立・開業という大きな一歩でした。

日常の中でも、たとえば服を選ぶ時などささやかな場面でさえも「本当は・・・」と自分の気持ちに正直に選択できるようになるだけでも変わってくるものがあるのではないかと、お話をうかがいながら思いました。そうした「ちょっとずつ」の積み重ねが大切なのだ、と。
小森 利絵
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』

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