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■関西ウーマンインタビュー(医師)


山田 郁子さん(神経内科医/なんば山田クリニック院長)

 
山田 郁子さん (神経内科医/なんば山田クリニック院長)
近畿大学医学部卒。神経内科に入局後、国立泉北病院や近畿大学医学部堺病院などで神経内科医として勤務。平成22年なんば山田クリニック開業。
なんば山田クリニック
内科/神経内科/リハビリテーション科
大阪市浪速区難波中2丁目7-23 広和ビル5F
http://www.n-yamada-cl.com
神経内科とは、普通の内科とどう違うのですか?
よく精神科とか心療内科と間違えられやすいのですが、メンタルではなく、脳に病気があって筋肉や手足が不自由になる病気を扱う内科です。例えば、脳梗塞で手術をする場合は脳外科になりますが、手術をせずに点滴で治す場合は神経内科になります。その他、パーキンソン病などの神経難病の治療や、人工呼吸器を装着されている方や胃ろうの方の管理、また認知症も神経内科の代表的な病気です。
医師を目指されたのはいつですか?
家族や親戚のほとんどが医療関係の仕事に就いていることもあり、子供の頃から父親から医者になることをすすめられていました。人の役に立つことのできる、こんなにやりがいのある仕事は他にないから、手に職を付けて自分で食べていきなさいと。

学生時代、認知症や身体の不自由な方のところへボランティアに行かせていただいて、福祉関係に進みたいと考えたこともありましたが、治すことのできない疾患を診る仕事につきたいと思い、医者になることを決めました。今、認知症の方やいろんな方と関わってやっていけるのは、自分がやりたかったことなので有難いことだと思っています。
開業されたきっかけは?
長く勤務医をしていましたが、勤務医の当直は次の日は休みではなく、場合によっては一睡もできなかったとしても、朝9時からいつもの仕事があります。それが年齢と共にしんどくなってきて、30代までは大丈夫でしたが、40歳を過ぎるとだんだん、当直のない職場に変わりたいと思うようになりました。そこで知り合いから、「ここ空いてるから、開業したら?」と言われて、なんとなく「じゃあ、そうしようかな」と。成り行きと思いつきで開業したので、最初は大変でしたね(笑)

ここは駅から近いのですが、住民も少なく、古くから住んでいる方は既にそれぞれの先生のところに行かれていますから、開業当時は外来患者さんもとても少なかったです。ただ、もともと勤務医のときに診ていた方たちがいましたので、最初は1~2人くらいの往診から始めました。
今も往診に行かれることが多いそうですね。
在宅で人工呼吸器を装着されているような重症な患者さんや、パーキンソン病などの神経難病の方は、遠いところからでも来て欲しいと仰いますし、認知症の方も、病院に来られるのを嫌がられたり、内科的な疾患も合併されている方もおられますから、往診には数多く行っています。大阪市内だけでなく大阪府下一円、車で周っていますので、患者さんの数は少なくても移動の距離はかなりありますね。

訪問診療は、「血圧が高いから下げましょう」と患者さんに薬を出すだけじゃなく、介護されているご家族に、「こういう風に対応しましょう」とか、「こうなったらお家では無理だから。施設に入ったほうがいいじゃないですか」といったアドバイスや、社会的なサポートをお伝えすることもあります。少しでも患者さんの症状や苦しさを和らげたいと思うと同時に、ご家族の身体的、精神的しんどさを少しでも分かりたいと常に考えていますが、まだまだ充分にできていないのが実状です。
認知症の患者さんも多いそうですが、「告知」についてはどのようなお考えですか?
ガンの場合は治療が必要ですから「告知」は必要だと思いますが、自分が認知症じゃないかと心配して来られる方が、「あなたボケていますよ」と医者に言われて、いい気する人は絶対いないと思うんです。中には自分が認知症と聞いて、興奮して怒りだしたり、さらに悪くなる場合もありますから。なので私は、「ちょっともの忘れもあるけど、あまり悪くならないように、薬でも飲んでおきましょうね」というふうに、本人のプライドはできるだけ傷つけないようにしています。

でもそれは私の考え方であって、告知したほうが良いと仰る医師もいます。若くして認知症の症状が出始めている方の場合は、これからの身の振り方をご自身で考えたいでしょうから、告知したほうが良いこともあるので、ケースバイケースですね。
家庭内介護は女性の負担が大きいと聞きます。
男性も看ておられることもありますが、総じて女性が多いですね。中には私でさえほとんど動かせないおじいちゃんを、70代の奥さんが一人でお風呂に入れておられるケースもありますし、人工呼吸器や「胃ろう」など、たくさんの処置が必要な方を看ておられるのは、ほとんどが女性です。やはり女性は上手に細やかですし、その姿を見ると、ああ、この人は仕事もできる人なんだろうなと分かりますね。

今日本は、在宅医療や在宅介護を推進しようという方向にどんどん進んでいます。末期ガンの家族を、最後は自宅で看取りたいと思うことは良いことだと思いますが、認知症の場合は先が長いので、介護する家族のことも考慮するべきだと思います。

今の時代、女性だから家にいて仕事をしていないというわけではありません。仕事をしながら親や夫を看なければいけないので、その負担やストレスは身体的にも精神的にも大きい。なので、「介護が大変だから、仕事を辞めようかな」と仰る方も少なくないんです。

認知症に限って言えば、排便などの不潔行為があったり、家族の顔も分からなくなってしまうと、「お父さんがこんな風になってしまった」と情けない想いでいっぱいになると思うんです。そこで仕事を辞めてしまって、その生活にどっぷり入ってしまったら、「私の人生は何なんだろう」となってしまいます。

私の知っている方で、とても人柄の良い高齢者のご夫婦ですが、ご主人の認知症が進んで、どんどん不潔行為が出てくると、介護していた奥さんがうつになってしまい、ご主人を攻撃するようになってしまったんです。それは病気のせいでそうなってしまったことなので、どちらが悪いという問題では無い。そこで娘さんには、「お父さんにはちょっと我慢してもらって、施設に入ってもらったほうがいいですよ。その分、毎日施設に行ってあげたらいいんだから。」と言ったケースもあります。

よく「施設に入れるなんて、かわいそうだ」と仰る方もいますが、今の施設はそんなに悪いところばかりじゃないですし、そんなに酷い扱いをされることはほとんどありません。離れて暮らす兄弟や親戚に言われても、口は出しても絶対手は出さないでしょうし、もちろんお金も出してくれません。親戚が何と言おうと、自分たち家族にとって精神的にラクなほうが良いんです。なので、介護されている方は一人で抱えこまず、自分の人生を大事にして、仕事は辞めないで続けて欲しいと思いますね。
先生ご自身のこれからの夢は?
難病の患者さんや認知症の患者さんだけでなく、誰でも最期があります。患者さんにとっても家族にとっても、自分たちの生きたい「生き方」が選べるサポートをしていきたいと思っています。
ありがとうございました。
(取材:2015年12月 関西ウーマン編集部) 

 

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