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■関西ウーマンインタビュー(医師)


土岐 明子さん(大阪府立急性期・総合医療センター リハビリテーション科副部長)

 
土岐 明子さん 大阪府立急性期・総合医療センター リハビリテーション科副部長
広島大学医学部医学科卒業。1年半各科研修後、平成10年10月から関西労災病院リハビリテーション科勤務。日本リハビリテーション医学会専門医取得。平成22年3月男児出産後、平成23年4月復職。平成24年4月から現職場で勤務している。リハビリテーション全般にわたって広く診れる医師でありたいと考えているが、専門分野を挙げるとすれば、脊髄損傷(特に呼吸管理)、嚥下障害、ブロック療法、義肢・装具療法である。
大阪府立急性期・総合医療センター
大阪市住吉区万代東3丁目1番56号 http://www.gh.opho.jp/
お仕事の内容を教えてください。
リハビリテーション科医として、頸髄損傷や頭部外傷、脳卒中、切断、神経筋疾患などで障害が残っている方の障害の軽減、社会復帰・在宅復帰に向けた全身管理、調整を行っています。主に入院の必要な患者さんの主治医として働いており、その他、外来診療や院内の他科入院患者の診療も行っています。
リハビリテーション科医になられたきっかけは?
大学時代に、日本赤十字社の学生奉仕団で、高校卒業後の重度心身障がい者を在宅介護されている父母の会の学生ボランティアをしていました。その時のお母さん方から、障がい児を診る医師が少ないと言われたことがきっかけだったと思います。医療だけじゃなく、障がいを持つ方の生活する環境や状態など、全般に関われるようになりたい。それにはリハビリテーション科が一番近いと思い、この道に決めました。
これまでどんなことに悩みましたか?
リハビリテーション科医というと、それって何?と思う方も多いと思います。リハビリテーション科の専門医として働いている人も少ないので、整形外科や脳外科の先生が兼任されているケースが多いですし、内科医でもできるじゃないと思われていることもあります。

訓練は訓練士さんがされますし、別の科の医師が処方するとなると、リハ科医のアイデンティティって何だろう、という思いが、やっぱり私たち自身の中でもあるんです。5年目くらいまでは、リハビリテーション科医の専門性とは何か、リハビリテーション診療の中での医師の役割とは何か、ということに悩みました。

でも専門医となると、やっぱり診る視点が違うので、これくらいの状態だった人が、訓練した後、どのくらい良くなって、家に帰ったらどのくらいの生活ができるかということは、ある程度予想できるんですね。

もちろん変な期待はさせられませんが、ここまでならいけるから頑張ろうとか、そのためにはここまでしないといけないとか、的確なアドバイスができるんです。

また、退院後、家に帰って生活するにあたり、どんなサービスがあって、それをどう申請すれば良いかということも、患者さんとその家族にとっては大事な情報ですから、そこをきちんとアドバイスできる医者と関わりながら、身体の治療を並行していくというのは重要なことなんです。

年数を重ねていくと、だんだんリハ科医としての必要性や強みも見えてきて、「やりがい」も実感として分かってくるようになりました。専門医を取得するとまた、その深さや難しさが見えてくるので、おもしろくなってくる。すると「リハ科医って何?」という悩みはなくなっていきました。
結婚後、産休育休を経て復職されましたが・・。
当時は公的な病院でしたので、産休育休までは取れたのですが、復帰すると出産前の仕事はなくなっていました。もともと、リハビリ科には私と部長しかいなかったのですが、私が産休を取っている間に、その上司も辞めてしまったんです。すると帰ってきたときにはもう、他の科の先生がリハビリの処方を出すことになって、リハ科医の実務は要らない形になってしまっていました。

これまで専門性を持つリハ科医として、患者さんに必要な訓練の処方や、全身管理、検査、治療、必要な制度の説明や紹介などをしてきましたが、診察する機会すらありませんでした。それに対し、私なりにこれまでの体制に戻して欲しいと伝えたり策を考えたのですが、とはいえ子どもがいて、いつ休むか分からないのに、一人でどこまでできるのか。この状態で入院患者を持つことは難しい。もうここで頑張っても、らちがあかないなと思ってしまいました。

そう考えている時、たまたま今の病院からお声がけいただいたんです。以前からずっと、救命救急センターにいる時期から患者さんのリハビリテーションに関われるところで働いてみたいと思っていたこともあり、転勤を決意しました。
子育てしながら医師として働き続けるのはやはり大変ですか?
それまで仕事において、男性との違いを感じることはありませんでしたし、同じように仕事ができると思っていました。患者さんが急変すると、いつまでも残って安定するまで診ることができますし、勉強会や学会にも行きたいときに行けます。

でも子どもが生まれると、それまでと同じようにはできませんし、自分のやりたいことを制限しないといけない。また、そういう制限があることで、「いつでも頼める先生じゃない」ということになる。そんな現実に直面し、周囲との調整がいかに大切かということに、ようやく気づきました。

私が産休育休を取ったことで、リハ科の医師がいなくなってしまった時、すごく大変なことをしてしまったと気にしていましたが、それでも組織というものは何ごとも無かったように動いていくんです。そう考えると、もちろん周りに迷惑をかけないことは大事だけど、我慢してそこにしがみつくよりも、自分に何ができるのか、自分がやりたいことは何か、どうしたらそれができるのかを考えて、柔軟に働き方や働く場を変えるのもいい。そういう考え方に変わりました。

なかなか自分の思い通りにならないことがたくさんありますし、そこで迷惑をかけるかもしれないけど、別のところでお役に立つかもしれない。100%が無理でも7割くらいできればいいじゃないという気持ちでいればいいかなと思っています。
こちらの病院では、「女性医師の会」という活動をされているそうですね
医師だけでなく、看護師や事務職も含めた女性職員が働きやすいようにというところを目指して、主に院内保育所と病児保育に関わる活動をしています。子どもを預けて働く女性は、どうしても「子どもに申し訳ない」と考えてしまいがちですが、ここだったら引け目を感じずに預けられる。ここなら子どものためにもなるし、自分も安心して働ける。そんな内容に改善していけたらと考えています。

時短勤務などの制度はきちんとありますが、でも現場ではまた別の話で、難しい患者さんを誰に任せるのか、早く帰った後、誰がそれをカバーするのかなど、いろいろな問題はあります。今の日本ではどうしても、いかに仕事だけに集中できるかがその人の評価に繋がってしまいがちですが、育児や介護など、仕事以外にやらなくてはいけないことを持っている人がだんだん増えてきているので、そうした人たちを含めた上で、全体の業務が成り立っていけることが必要なんじゃないかと思います。

保育所に子どもを迎えに行くには6時に出ないといけない。でもそれまでの時間はフルで働けますし、当直や時間外で働く時も、予め予定が決まっていれば、誰かに手伝ってもらう手配ができれは良いことです。時間配分のメリハリがきちんとできていれば、自分の生活を大切にしながら、でも仕事の質は落とさず、責任持ってしっかり働けると思います。
子育て中の女性医師の方へ伝えたいことは?
どうしても周りの協力が必要になりますから、フォローされてばかりだと申し訳ない、もう辞めたいと思ってしまうこともあるかと思います。それでもやっぱり辞めずに働き続けて欲しいですね。諦めないコツは、やっぱり自分が本当にやりたいことを見つけることだと思います。

やりたいことがあれば、困難があっても頑張れますし、いろんな問題にぶつかっても、それを解決するのが楽しかったりしますから。いろんな方面での「やりたい、やってみたい」という思いを大切にして、それらをジグソーパズルのように、限られた時間の中に組み入れられればと思います。

あとは、いろんな人の話を聞くことですね。私は子育てしている先生と一緒に働いた経験が無かったので、もしそういう人がいれば、また違った考え方ができたんじゃないかと思うことがあります。これからは、私自身が若い先生たちと働きながら、この仕事の面白さを伝えていきたいですね。
ありがとうございました。
(取材:2015年9月 関西ウーマン編集部) 

 

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