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■関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)


中塚 華奈さん(大阪商業大学経済学部 大学専任講師)

 
中塚 華奈さん  (大阪商業大学経済学部 大学専任講師)
神戸大学大学院自然科学研究科博士後期課程修了。博士(農学)。大学時代に有機農業について学んで以来、有機農業の普及啓発および検査認証制度に関する調査研究を行っている。日本学術振興会特別研究員、数々の大学非常勤講師をしながら、NPO法人食と農の研究所設立に参画。専門は農業経営、食農教育。農林水産省有機JAS検査員・判定員、NPO法人有機農業認証協会理事長、 (株)トーホー顧問なども務めている。現在大阪商業大学で「環境論」「農業経済学」「食と農のデザイン論」「食料環境経済学」を担当。
大阪商業大学 経済学部:http://ouc.daishodai.ac.jp
特定非営利活動法人 食と農の研究所:http://www.agri-design.jp/index.php
有機農業に興味を持ったきっかけは?
もともと生物の授業が大好きで、カラダの仕組みに興味がありました。医学や薬学の道に進みたいと思っていましたが、最後の共通一次&最初のセンター試験の両方にわたり大失敗。予備校の先生から、二浪するか医学薬学を諦めるかと言われ、半ばなげやりで農学部に入ったんです。

入学しても、農業には全然興味がわかないし、芽が2ミリ伸びたといっては記録するとか、本当に面白くない。当時バブル全盛期で、大学のレジャーランド化が世相のひとつとなっていた時代だったので、1年生の時は遊びとアルバイトに明け暮れていました。

2年生になって、そろそろ講義を聴かないと、単位取得に支障がでるため、つまらないなりに授業に出ていると、たまたま受講した講義で有機農業の話を聞いて、「食べ物がカラダを作る」というところに、これはおもしろい!と思ったんです。これなら勉強してみたいと、農業経済学のゼミナールに進んだのがきっかけでした。

当時90年代、「有機農業」という言葉は、食や農業、健康などに意識の高い人にしか知られておらず、非農家かつ農業体験もほとんどしたことがなかった私は、気にしたことがなかったのですが、「食べ物がカラダをつくる」こと。その食べ物の質を決めるのは、農業の土づくりや育て方。農業とカラダと地球環境のつながりに気づいたとき、農業のおもしろさ、奥深さに感動しました。
どんな研究をされていたのですか?
今は有機JAS法(2000年に施行)がありますから、検査と認証を受けて合格したものしか「有機農産物」と表示できませんが、それまでは、「私は有機農業をしています」と言えば有機農産物という表示ができていたので、農家さんによって栽培基準にバラつきがありましたし、なかには農薬や化学肥料を使っていても虫食いがあるだけで「有機」をうたうニセモノもまざっていたんです。

私が研究していたのは、本当は何が有機なのか、どういう表示が一番良いのかというのを、有機農業をされている農家さんの現場に行ったり、販売店舗である百貨店のお客様を対象としてアンケートをとったりして、論文を書いていました。今は全都道府県に認証基準がありますが、当時は岡山と兵庫くらいしか無く、新幹線で調査に行くなんて、私カッコいいと思っていました(笑)
就職難に悩まれたそうですね
4回生の時、本当は就職しようと思っていたんです。しかし当時はバブルがはじけた就職氷河期。就職活動しても、受けては落ち、受けては落ちで、「ほな大学院に行こか」と進みました。その後ドクターを取った後も、団塊ジュニア世代ですから、人も多ければ運も縁もなく、ことごとく不採用つづきで、再び就職難。かなり落ち込んで泣きました。そこから非常勤講師とNPO活動をするようになったんです。
NPOを作ろうと思ったきかけは?
「不採用が続くなら、自分たちでNPO法人をつくって仕事していったらええやん。」と夫(当時はゼミの後輩)が言ってくれたのがきっかけです。農学部のゼミの後輩たちと論文を書くための調査をするために、農家さんにはよく行っていたのですが、行くだけでは誰も何も教えてくれません。なので、後輩たちと一緒に農家さんのところにいっては、草取りやイベントの企画運営を手伝いながら、経営内容や農家の想いを調査することができました。

お手伝いといっても、私にとっての農作業やイベント運営は、見るモノやるコトすべてが新鮮でとても楽しいものでしたし、農家にとっても「ネコの手よりはまし」だったようです。

卒業を控えたある日、農家さんから 、君たちが卒業して、誰も手伝いに来てくれなくなるのは困ると言われたんです。

そこで、NPO法人を作って、学生が農作業を手伝う仕組みを作っていけば、後輩がどんどん育っていくんじゃないかと考えたんです。現在、それは「農村ボランティアバンク(ノラバ)」という仕組みとして取り組みが継続されています。

夫は花の専業農家の隠居の息子で、造園コンサルタント会社に就職した後、村づくりや街づくりに関わる仕事をしていた関係もあり、食と農業をもっと身近にしていく世の中にしたいといういう想いで、私たち夫婦と友人とでNPO法人 食と農の研究所を立ち上げました。

当初は、大学の先生になれなかったという思いも半分ありましたけれど、そこは卑屈にならず、NPO法人理事の肩書きで学会発表をしたり、実践活動を聞かせて欲しいと呼んでくださったり、それはそれで当時の立場でできることがいっぱいあったんです。大学の時、「学ぶことは農家の現場にしかない」と先生に教えられてきたので、逆に現場での活動をいかにアカデミックな学びにするかというのはおもしろいです。
NPO食と農の研究所では、どんな活動をされているのですか
NPO法人食農教育プログラムの開発を実施したり、ファーマーズマーケットを開催したり、八百屋兼カフェを経営したりなど、都市と農村をつなぐ様々な活動をしてきました。

今は農村と街の人との交流を楽しんでもらおうという、「ムラノマ」というプロジェクトを立ち上げています。兵庫県三木市にある空き家を自分たちで改修して、村の中の「お茶の間」を作り、自然農法を学んで、お米や小麦を作ったり、パンを作ったり。子育て中のママさんたちや、自然やオーガニックに興味のある人たちが集まってきています。

ここを拠点としたり、ノラバでさまざまな企画をたちあげたりして、都市住民の「まちとも」と生産者の「のらとも」とのマッチングの場をつくり、農業を理解して手伝う消費者作りに重点を置いています。
エコ農産物や有機農業の現状とは
今、日本の有機農地面積は全農地面積のたった0.4%。国が掲げている目標は1%(2018年度)で、まだまだ浸透していないという思いはあります。

個々の農家にとって農業とは、限られた農地と人数で経営していくもの。植物工場や電照を使用しないなら、日照時間もみな同じ。そこで、どのような農業技術を用いるかで生産する農産物の見た目や味などの品質が変わります。今の時代、世界的にも農薬や化学肥料を減らしていきましょうという風潮がある中、ついつい効率を重視して、カラダや環境に悪いかもしれないけど、農薬を使って病虫害を減らせば、出荷量が増えたりして、収入が増えるという理論がまだまだ主流になっているのが現状です。

その中で、大手量販店でもPBブランドのこだわり農産物の販売棚ができたり、直売所やマルシェの開催などが増えて、生産者の意識も変わってきているとは思います。多少の傷が付いていても、有機やエコなど第三者認証のマークがついていれば、有利に売ることができ、出荷量が少なくても価格によってその差を補填できる。生産者と消費者が直接、顔見知りになれるチャンスを増やす。そうした流通がうまく機能すれば、もっと有機農法にチャレンジする農家が増えると思います。
有機農法に変えるためには何が必要ですか?
有機農法を実践していない農家さんは、市場や農協に出荷したら、あとは市場や農協まかせという人が多いと思うんですね。自分で袋詰め作業はしても、営業したり、自分の農法を言葉にしてPRしたりしなくていい。でも、卸売市場でのセリではなく、相対取引にのせたり、インターネットやマルシェなどで直接販売をするためには、「自分の野菜はこうです」とアピールして、自分で売っていかないといけません。それにはマーケティング力も必要ですし、単に「オーガニックが良いと聞いたので有機を作ります」じゃなく、生産者さんも自分で最後まで売っていく覚悟が必要です。

八百屋さんも、流通という仕事に関わろうとする人も、そうした生産者の言葉をもっと消費者に代弁したり、流通をとおすことでよりいっそう付加価値をプラスすることができれば、作る人も扱う人も増えると思います。同時に消費者にも、「こういうものを食べたい」と思ってもらわないといけません。

市場流通において、生産者と消費者が離れていることがいちばん歪みの原因だといわれているので、そこを近づける、流通を介して流通の利点を活かしながらも直接流通が有する機能ももつオルタナティブな流通の仕組みができるといいなと思いますね。

東大阪市は今、ファームマイレージ2運動という取り組みを市の機構がやっているのですが、エコ農産物の直売所で販売する野菜にシールが貼ってあって、それを集めると、「あなたは東大阪市の何平方メートルの農地を守りました」という感謝状と農産物が買える商品券をもらえるんです。

生産者が出荷農産物をエコ農産物にすると、シール代は東大阪市農業振興啓発協議会が補填してくれますし、野菜の袋には電話番号も載せているので、消費者から「おいしかった」と言われるとすごく嬉しい。そこで、他の普通の農産物作っている人に、「こんなん言われたよ」と自慢するんです(笑)。すると、「うちもエコ農産物作ろうかな」という生産者が増えてくるんだそうです。今、東大阪市は農地も少ないのに、大阪府下の中でエコ農産物生産者の申請件数がダントツ一位なんです。そういう波及の仕方もあるんだなと驚きました。

これまで農学部で、環境に良いエシカルなものだからという、生産者側の場にいましたが、ここ経済学部では、まず消費者が買い物をすることでお金が回り、そこから作った人にお金が回って、また生産できるという考え方になります。

オーガニックや有機野菜を買うことによって社会が変わると思いますし、そう考える消費者を増やしていきたい。いわゆるコトラー博士のいうスペンドシフトですね。そのためにも、買いたくなる啓蒙活動を教育やNPO活動を通してやっていきたいと思っています。
今、ロハスや農業自体に興味がある方が増えていますね。
有機農業やオーガニックというと、古くは市民運動や宗教的なイメージがありましたが、最近は、自分達の暮らし方を極めてオーガニックを選ばれているようです。石油がダメだから化粧しない、というのではなくて、自分にとって心地良いものを選びたいという方が増えています。

ロハスやエシカルといった言葉には、ファッション性の強いイメージをもつ人も少なくありませんが、環境学や土壌学、栄養学、脳科学などの科学的見地からも、その必要性および重要性は明らかです。

農業は生命産業といわれますから、流通も販売も含め、普及する人も生命産業の一つ。生産、製造、流通、調理、消費、デザイン、研究などさまざまなスタンスのかたたちと一緒に、オーガニックの輪をこれからも広げていきたいと思っています。
NPO活動を通して、どんな展望を持っておられますか?
NPOの理念としては、食や農をもっと身近にとりいれるライフスタイルを提案をしていきたいですね。

ディズニーランドに行くように、自分たちが食べるお米を作りに行く。自分のカラダの原材料である食べ物を、ただ単に「どこかで買ってくる」だけじゃないライフスタイルを、もっとたくさんの人に知ってもらいたい、取り入れてもらいたいと考えています。

生産者と消費者が一度顔を合わせると、農産物の美味しさがアップする。消費者がそれに味をしめると、お米は誰々さんから、桃は誰々さんからと、美味しいアイテムを増やすようになる。それが友達に広がり、美味しさの連鎖が始まる。結果として、一人の「のらとも」にちょこちょこ「まちとも」が繋がっている。生産者と消費者の個々の点が線となり、それらが重なりあって、たくさんの面が日本全国にいっぱいできるといいなと思っています。
ありがとうございました。
取材協力:
大阪商業大学
大阪府東大阪市御厨栄町4−1−10
http://ouc.daishodai.ac.jp/

(取材:2015年7月 関西ウーマン編集部) 
 

 

 

 


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