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■海外暮らしの関西ウーマン(台湾)


モノ作りの輪を広げる空間を ― レザー・木工クラフト『好貨概念實驗室』

モノ作りの輪を広げる空間を
レザー・木工クラフト『好貨概念實驗室』

你好(にーはお)!台湾在住の京都人、竹内裕美子です。台湾クリエイターへのインタビューVol.4、今回の取材地へは、台北MRTグリーンラインに乗車。終点松山駅の一つ手前、南京三民駅から徒歩5分。「好貨概念實驗室」(以下、好貨と表記)のスタジオは、アクセス抜群の立地です。
天井に吊るされたドライフラワーや、木材を基調として白と茶系の温かみのある色調で統一されたインテリア。そして中央には6名ほどが作業できる大きなテーブル。一見するとカフェと見間違う、おしゃれなスタジオです。
店内には好貨の作品をはじめ、委託販売の作品なども展示されています。珍しいデザインが人気のキーケースやパスケースは、バッグのワンポイントにぴったり。
こちらは子ギツネ眼鏡ケース。鼻の部分には留め具が隠れています。中には眼鏡のブリッジを支えるパーツがあり、取り外してペンケースとしても使用できます。
レザーの切れ端を再利用し、台湾の日常風景をユーモラスに描いたポストカード各種。
様々なシーンで使用できる、シンプルな財布やバッグなど、大型の作品もあります。
好貨のレザー商品の他、他ブランドの委託販売商品も。
こちらはテキスタイルブランド「印花樂(inBlooom)」とのコラボ作品。inBlooomを代表する台灣八哥(ハッカキョウ)デザインのミニポーチ(写真左・中央)やミニウォレット(写真右)。合同ワークショップ開催時の作品です。
好貨概念實驗室 Haohuo.lab
2014年設立。Justinさん(写真左)とChiliさん(写真右)ご夫婦が経営するレザー・木工ブランド。

心に描いた夢やコンセプト、それを実験(作品制作)で形あるものにする。その創作過程も含めて、人々に手作りの温もりと幸せを届けたいという思いが込められています。

ブランド名の「好貨」には、作家自身が胸を張っていいと言えるモノ作りをして、人々に届けたいという気持ちが込められています。「概念」は目に見える良さに加え、モノ作りのコンセプトも伝えたいという思いを表しています。

最後にレザーと刺繍など異なる技法を合わせてみる等、「実験」を重ねて新鮮さのある作品を生み出すブランドとして「實驗(実験)室」と加え、「好貨概念實驗室(Haohuo.lab)」が誕生しました。
好貨のスタジオにはワークショップスペースというもう一つの顔があります。

自らの手で作品を生み出す感動体験を広めたいという思いから、スタジオを外部の作家さん方にも貸出してワークショップを開催しています。各種ワークショップを通して、好貨に関わるすべての人々に幸せを届けられるような空間づくりを目指しています。

Justinさんは本業をお持ちのため、普段はこのスタジオをChiliさん、そしてスタッフの一員の妹さんが管理していらっしゃいます。今回の取材では、Chiliさんにお話を伺いました。
INTERVIEW
Q:どのようなきっかけから、レザー作品の創作を始めたのですか?
Chiliさん(以下Chili): 実は先に始めたのは夫です。手作り関連の書籍を読んでレザー作品に興味を持ち、すぐに二人でワークショップへの参加を申し込みました。

あまりにも楽しくて、参加後その足で道具を買いに行きました!でも、その後夫は木工の方にのめり込んだので、革細工は私に任せたようです(笑)

(Justinさんの作品)
Q:どのような経緯で、好貨を立ち上げられましたか?
Chili: 手作りへの愛を取り戻したからです。以前は出版社でグラフィックデザイナーとして勤務。結婚を機に転職を考え始めていたそんな折、ちょうど手作りがテーマの書籍出版に携わりました。昔から手作りが好きだった私は、「思い切って自分の好きなことをしてみよう」とチャレンジすることに。

当時はまだそれを仕事にしようとは考えていませんでした。でも作れば作るほど好きになって、次第にこれを本業にしたいと思うようになり、今に至ります。

現在は主に私がブランド経営と作品制作を行い、夫は別に本業があります。それでもブランドとして大きな決断を下す際は、彼の意見も聞いて尊重します。
Q:ここからは作品についてお伺いしていきます。現在の代表作「手染宇宙星空」シリーズ制作のきっかけは?
Chili:創作を始めてから、レザーを好貨オリジナルと呼べるような特徴のある色に染めたいと考えていました。そんな頃に『インターステラー』(SF映画)を鑑賞し、宇宙や星空の色にインスピレーションを得て制作を開始。出来上がった試作品をイベントの景品にしました。すると驚くほど好評で、そのまま商品として扱うことにしました。
Q:染色工程についてお聞かせください。
Chili:まず仕入れたレザーをまるごと一枚、2、3回に分けて青と紫で染色。刷毛ではなく綿布を使用します。

綿布なら力加減や染料の量で濃淡をつけたり、輪郭をぼかしながら染められ、場所によって異なる表現ができ、オンリーワンの生地に仕上がります。染色直後は水分を含んでいて色が濃く見えます。2、3日後の色が一番きれいですが、完成まではもう少し待ちます。
Q:夜空の星を表した白い点は、どのように描くのでしょう?
Chili:大きな黄色い星は手書き、白い星はブラシを棒で叩き、アクリル染料を細かい霧を噴射するような技法で描いています。水とアクリルの比率がポイントです。

刺繍で施した星は、雲形コインケースだけの細工。他の作品との差別化を図りました。他にもファスナーの縫製、刺繍、磨きをかけて装飾を施して…。小さな作品ですが、実は多くの工程があります。
Q:手染宇宙星空シリーズに対するお客さんの反応はどうですか?
Chili:オンリーワンの生地だからこそ、選ぶのにかなり時間をかけるお客様が多いです。青がと紫どちらの比率が高いか、レザー本来の色の影響や、星の位置と多さなどの違いがあります。選ぶもので個々のお客様の好みも見えて面白いです。
Q:素材選びへのこだわりはありますか?
Chili:昔よりも上等な素材を選ぶようになりました。素材選びの回数を重ねるごとに目利きできるようになったんです。

素材選びのポイントは、まずレザー本来が持つ色。薄い色のレザーが紫と青に合います。元々黄色みを帯びていたり、長い間空気にさらして色が濃くなったものは使えません。

もう一つのポイントは品質レベル。私たちは染色後の状態にこだわっているので、傷が少ない高品質のものを選ぶように気を付けています。スキンカラー状態では表面の傷が肉眼で見えないかもしれませんが、染色後にはっきり見えるようになります。

産地別にみるとヨーロッパ産、特にイタリアのレザーを選ぶことが多いです。ヨーロッパの牛は飼育されているので、けんかで肌が傷つく機会が少ないです。対して南米は放牧が多いので傷が多いです。

手染宇宙星空シリーズ以外のものも、同じように選ぶことが多いです。品質が変わらず良い状態のままであれば、同じものを使い続けています。
Q:台湾は湿気が多い国でレザーにカビが生えないか心配です。取り扱い上の注意点はありますか?
Chili:極力毎日使えば、レザーが手の皮脂に触れて自然とケアができるので問題ありません。普段カビが生えてしまうのは、使う機会の少ない革の服や鞄などが多いです。

あまり使わないものは、乾燥した場所で保管することをお勧めします。しっかりとケアをすれば、経年変化を感じながら10年、20年と一緒に過ごせます。
Q:他にも、紹介したい作品はありますか?
Chili:もちろん!中でも紹介したいのは、「素材を無駄にしない」という思いから、レザーの切れ端と組み合わせて制作したポストカードです。手書きのデザインをスキャンし、カードとレザーの部分を分けて制作します。

第一弾はプレゼントにぴったりな、心温まる応援メッセージシリーズ。第二弾は台湾シリーズ、これは2018年日本でのマーケット出展のために制作しました。同じものを作り続けるよりも、いつも新しいモノ作りを考えています。「どうすればもっと遊べるかな」と(笑)。

「僕/私はキミの山、いつも陰から見守っているよ」

スランプの時に夫がくれた「自分の好きなものを作ればいいんだよ」という言葉が、新たな挑戦への勇気を与えてくれました。夫はまるで頼れる「山」のような存在。きっと、誰にでもそんな存在がいると思うんです。
「頑張り続ければ、綺麗な羽になる」

この蝶は羽だけでなく触覚もレザーなんです。自身の創作について、まず言葉を思いついてからイメージを膨らませました。辛い事を乗り越えたからこそ、きれいな羽ができると思うんです。
「願い続ければ、全宇宙はキミの味方でいてくれる。」

ブランドを立ち上げたときの前向きな気持ちを表現しました。
Q:ここからは好貨スタジオが持つもう一つの顔、「ワークショップスタジオ」としての魅力に迫ります。まず、ご自身のワークショップ開催のきっかけは?
Chili:実はある方からの打診で、作品販売よりも先にワークショップを始めました。突然のお誘いへの驚きや、未経験の取り組みへの不安もありました。まずはそこを訪ね、彼らと腹を割って話してみることに。

先方はオープンしたてのハンドメイドスタジオで、経験が浅い者同士、このような縁から始めてみるのも悪くないと思い、チャレンジしてみることに。

ありがたいことに、開催の度にお客さんが途絶えないという大盛況。この成功体験が自分たちのワークショップスタジオを構えるきっかけにもなりました。そのきっかけをくれた方はまさに恩人です。
Q:現在開催されている好貨スタジオでのワークショップについてお伺いします。
Chili:好貨スタジオは、外部の作家さんにもワークショップスペースを提供しています。作家にとって、スペース探しは立地以外にも決め手があります。

例えばスタジオの雰囲気は良くても、オーナーやスタッフが作家に協力的ではない場合も。私たちにはその苦労がよく分かるからこそ、作家がリラックスしてワークショップに集中できる環境作りを追求しています。

現在好貨スタジオでは、元々友人だったり、紹介で知り合った作家さん達が講師としてワークショップを開催しています。スタジオ同士は商売敵ではなくチームのよう。いい講師を紹介し合い、経営が上手くいくように支え合っています。

SNSなどから連絡をくれた方も講師として活躍しています。また、元々は趣味でモノ作りをしていただけの方が、ここでワークショップを始めてみるのも面白いと思います。スタートの場として好貨スタジオを選んでくれるのが嬉しいです。
Q:どのような性質、内容のワークショップを開催していますか?
Chili:小さな作品なら1回2時間程度、通常の作品は3~4時間です。参加者の大半はプレゼントを手作りしたい、もしくはモノ作り体験に興味がある方。

もし初心者なら一つの作品にどれだけの時間がかかるか、なかなか予想できませんよね。そのような方に1回数時間で完成する安心感が提供できるのも、私たちのワークショップの魅力。その点に惹かれて来店される方も多いです。

好貨のレザークラフトワークショップなら、材料はすぐに使える状態のものをお渡しし、お客様には縫い穴開けのための線引きから始めてもらいます。縫製後は仕上げの磨きを入れます。基本的に参加者の皆さんには、このような工程を行っていただきます。

今後は長期ワークショップを開催したいです。1回の体験コースを経て「もっとレザークラフトを知り、作りたい」という方向けのクラスです。今開いているクラスは長財布なら2~3回ほど。今後は計画を練って工程を細分化し、もう少し複雑な作品のワークショップも開催予定です。
Q:印象深いワークショップ参加者のエピソードをお話しください。
Chili:友達へワークショップの体験をプレゼントした方がいました。その方は以前好貨のワークショップでサボテンのキーケースを作ったんです。それを見た友達が「いいな」と言ったのを覚えていて、誕生日に体験をプレゼントしたそう。

友達はスタジオに来てようやく「あ!今日はキーケースを作るんだね!」と知ったんだとか。元々手作り体験が好きな人にとって、嬉しいプレゼントですね!
Q:ここからは、Chiliさん自身のお考えなどについてお伺いします。Chiliさん自身がブランドの経営に求めていることとは?
Chili:自分の感覚を大事にしながら仕事することです。大学の頃「将来はデザイナー」と憧れていましたが、いざデザイナーとなると、理想通りではなく落胆しました。

有名デザイナーになれば、自分の発想を活かしたデザインを仕事にできますが、企業に属するデザイナーとして許されるのは一握り。

自分のブランドを経営し始めてからは「これこそ私のしたかったこと、好きなこと!」と実感でき、胸を張ってそう言えるようにもなりました。
Q:ブランド経営の利点や悩みはありますか?
Chili:利点は様々なジャンルの作家やブランドとの出会い・交流です。異なる発想に触れるのは創作への刺激になりますし、ブランド経営の相談や、助け合うこともできます。

普段は別の仕事をしながら、時間を捻出して制作やマーケット出展に取り組んでいる方もいるので、そういった方々とお互いの経験をシェアするのがとても新鮮です。

お客様との出会いも面白くて、「私の会社に、あなたたちのワークショップが必要なんです」と、新しい案件を紹介してもらえたこともあります。

悩みは「収入」。スタッフの賃金、店舗レンタル料などの必要経費支払いのため、安定した収入が必要です。主な収入源はECサイトでの販売利益、スペースレンタル料、ワークショップ参加料など。更に収益を上げるには、市場の需要調査やマーケティングも重要です。

正職としてクリエイターを続けるには、生活維持できる収入が必要です。その場合、作品制作のゴールは「作品完成」ではなくその先に販売、利益を上げるという流れがあり、ニーズを意識して現実的に妥協が必要な場合もあります。

安定した収入源としての作品制作と、自己表現のための創作には明確な線引きが必要です。ブランド経営開始当初、夫が自分の好きな作品作りにこだわっていた私に「少しは現実を見なきゃ、ブランド経営はしていけないよ」と言いました。その「現実」という部分が何なのかを自分なりに突き詰めました。

今の主な収入源は高単価のバッグではなく、手に取りやすい価格の小さな日用品。カードホルダーやミニウォレット、ノートカバーなどです。
一方、自分が本当に作りたいものとして制作したのはこのミニポーチ。スマホもすっぽり入るサイズでとっても便利。私自身は、ちょっとしたお出かけに便利だと思うのですが、小さすぎて実用性がないとも言われることも。自分が好きだから作った商品は売れないこともありますが、この作品は幸い需要がありホッとしました。
Q:Chiliさんは台湾の文創について、どのようにお考えですか?
Chili:近年、文創は台湾で一世を風靡する言葉となりましたね。皆さんもきっと、それらから常に新しいインパクトを受けていることと思います。

でもよく観察していくと、文創の根底にあるべき文化の意義が消えつつあることに気付くでしょう。そのような状態では、文創は文化を代表するものではないとの辛辣な意見もよく耳にします。

この乱れたイメージの中、私たちデザイナーはどのように「台湾」要素を含んだ本質を取り戻すか。それを解決できれば文化創意の価値を高められるのでは、と考えています。
Q:Chiliさんが考える、台湾で創作家として活動することの意義はなんでしょうか?
Chili:創作に携わる者として台湾は恵まれた環境だと感じています。様々な創作家の作品に触れられたり、コラボをする機会があり、いつでも新鮮な気持ちでいられます。そんな中、私自身も新たなアイデアを加えることで、皆さんをあっと驚かせるような創作し続けようと心掛けています。
Q:台湾人デザイナーとしての誇りとは?
Chili:創作以外にも当てはまることですが、自分の好きなことであり、得意分野でもあると言えるスキルを持っているのは幸せなこと。自分のスキルや作品などを通して、台湾をより多くの人に見て、知ってもらうことができるのは素晴らしいことだと思います!
Q:ここからはプライベートについてもお伺いします。休日はどのように過ごされますか?
Chili:両親が子どもを見てくれる時は、夫婦で映画鑑賞や買い物をして過ごします。インテリアに興味があるので、気になるお店に足を運ぶことも。レイアウトや経営の仕方を見ます。休日でも仕事しているみたいですね(笑)今の仕事が好きだからこそ、気になるんです。
Q:得意なこと、好きなことを教えてください。
Chili:好きなことは手を動かすこと全般、その中でも得意なのは料理です。台湾は外食文化が根付いていますが、私自身は料理をする機会が多く、お弁当やデザートを手作りします。

そういえば、幼い頃から学校の教室を飾り付けしたり、カード作りなどをしていました。今は、昔から持っていた手作りへの情熱をゆっくり取り戻しているような感覚です。
Q:お子様の存在が創作活動に与えた影響はありますか?
Chili:大きく変わったのは創作ペース。制作時間は確保できても、新たな作品を生み出すには時間が要るので、その分創作ペースが落ちました。時間には限りがあるので、大がかりな作品を作るのも難しいです。

いい影響としては、ブランドの将来や子ども用作品を構想する時間が増えました。レザーならミニバッグ、木工なら子どものおもちゃなど。子どもが私たちの創作の世界を広げてくれました。
Q:生活と仕事のバランスについてどのようにお考えですか?
Chili:生活とブランド経営、どちらか一方のためにもう一方を犠牲にしたくありません。その考え方を通すため、人手不足の解消にスタッフを募集し、今は妹が手伝ってくれています。平日は両親たちが娘を見てくれて、休日には連れて帰ってくれることも。

子ども好きな両親たちに感謝していますし、娘も楽しみにしているようで安心です。夫は仕事から帰宅後、娘をお風呂に入れたり相手をしてくれ、その間に私が家事に取りかかれます。家族たちの応援と協力があるからこそ、ブランドが経営できています。

これまでに、育児にかかり切りになりブランド経営を諦めてしまった友人を数多く見てきました。私たちは多くの人に協力してもらえて、とてもありがたいです。
Q:創作のスランプに陥ってしまったとき、どのように対応しますか?
Chili:自分のマインドをポジティブにコントロールすること。経営者としてブランドをいい方向に進ませるためにはネガティブ思考はよくないです。辛いと感じても、その状況から自分の力で抜け出す努力が必要です。

心身共に不調の時はいいモノ作りができません。後から見てもやっぱりだめだと思うだけ。そんな時は心を落ち着けてから、もう一度制作に向き合うようにしています。
Q:Justinさんと創作の意見がぶつかった時の解決法は?
Chili:最近はレザーと木工を合わせた作品制作にチャレンジしているので、意見の食い違いから喧嘩に発展することも。お互いに専門分野には譲れない信念をもっています。異なる意見は聞き入れがたいですが、心の中では相手の意見に耳を傾けていることも。

そんな時は、落ち着いて考える時間が欲しいと伝えます。その場ですぐに伝えると喧嘩に発展しそうですから。制作してみて、結果から判断することもあります。
Q:最後の質問です。今、一番挑戦したいこととは?
Chili:レザーと木工を組み合わせた作品作りです。ずっと後回しになっているので、早急に取り掛かりたいです。まずは鞄を試作したのですが、建物の水漏れでダメになってしまいました…(苦笑)。またすぐに次回作に取りかかります!
持ち手は木で、鞄本体はレザー。実はそこまで重くないです。この素材を組み合わせて扱う作家は珍しいでしょうから、興味を持ってもらえるはず。今の主な顧客層は20~30代女性ですが、木工が加われば主要客層に男性も加わるでしょう。

あとは季節感のある作品の創作。季節のイベントに合わせた作品制作を構想してはいるんですが、いつも考えているうちにそのイベントが終わってしまいます(笑)。

最後に、もう少し大きなワーキングチーム結成です。開店当初は自分のペースで制作と経営をしようと考えていました。でも最近、私たちはデザインや創作に集中し、スタッフにある程度店舗の運営や制作を任せてもいいと思うように。今はブランド経営のペースを抑えているので、育児が少し落ち着いてからの計画になりそうです。
POSTSCRIPT
今回Chiliさんに伺った中で印象的だったのは、作家にとっての「場所」の問題。クリエイターズマーケット等のイベントは、新規顧客の開拓チャンスの場です。

その一方で出店申請後に抽選などの理由で必ず出店できるとは限らなかったり、屋外開催の場合は天候等に大きな影響を受けたりと、「安定した収入」には直結しにくい場でもあります。

今回のインタビューでは、好貨スタジオは作家向けレンタルスペースとしての一面も持つとご紹介いただきました。例えばまだ駆け出しの作家でも、ワークショップで知名度を上げて今後の活動の幅を広げられますし、人気のワークショップになれば安定した収入に繋がります。

また、副業クリエイターでスタジオを持つ人は少ないでしょう。必要な時間のスペースレンタル料だけで済むのは、彼らにとってありがたいシステムです。

好貨にとっても、副業クリエイターのレンタルスペース収入は安定した収入になるので、双方の利害が一致した状態と言えます。

台北は作家としてのチャンスが多い一方、大都市ゆえのテナント料(家賃)の高さが彼らの足かせになります。自身のスタジオを構えられない作家が多いからこそ、好貨スタジオのような「場所のシェア」の需要があると言えます。
それでは、実際に台湾の家賃事情はどのようでしょうか。

一般に「台北」と言われる地域は、大きく分けて台北市と新北市の2つ。台北市は日本だと東京都23区、新北市は東京都内の市(町田市、八王子市など)のような地域です。

その両方に中心と郊外があります。台北市の中心地と新北市の郊外の家賃を比較すると、同じ条件でも1.3~2倍ほどの差があります。

それに対して、台湾の平均収入は日本の4、5割程度。新卒の収入は一般的に23,000元スタート、台北市中心地に住めば家賃は安くても10000元以上(新北市郊外なら約6000元以上)、台北市中心地は、収入に対する家賃の負担が相当大きいことが分かります。

作業スペースとしてならわざわざ台北市中心地を選ぶ必要はありません。しかしスタジオで販売やワークショップをする場合、お客様との接触率と認知度を上げ、売上につなげる必要があります。それには自然と人の往来の多い台北市中心地を選ぶことになります。

しかし「家賃と収入のバランス」の問題から、多くの作家は個人スタジオを設立できず、作品発表・ワークショップ開催の機会を持てずにいます。

そんな現状を解決する「好貨スタジオ」の存在は、多くの作家の助けになっています。MRTの駅から徒歩圏内で立地も良く、ワークショップに必要な道具もあります。

そして「好貨」のお二人自身も作家で、その苦悩も身に染みているからこそ、他の作家にも親切に対応するようにしているとおっしゃっていました。

好貨スタジオには、他のスタジオでは見たことのない特別さがありました。好貨とお客様の二者間だけでなく、他の分野で活躍する作家も交え、「モノ作り」という共通点からできる人々の大きな輪があるように感じたのです。これからもその輪が広がり、台湾の文創シーンが盛り上がればいいな、と思います!

Chiliさん、取材へのご協力ありがとうございました!

スタジオ所在地(2020年5月現在)
好貨概念實驗室
住所:松山區南京東路五段286巷1-1號
アクセス:台北MRTグリーンライン松山行きに乗車、南京三民駅下車、徒歩5分。
ワークショップは毎週月・水定休

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writer
竹内裕美子
ワーキングホリデーで台南に滞在中。現地で中日翻訳及び通訳、日本語教育などに携わる。台湾のカルチャークリエイティブシーンに興味を持ち、クリエイターのサポート及び情報発信を続けている。
Facebook:yumiko.takeuchi.555

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