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■関西ウーマンインタビュー(美術・芸術編)


青江 鞠さん(童画家)

自分の絵をこよなく愛し、自分の絵に執着する。

青江 鞠さん
(童画家)
ファンから「マリ(鞠)ブルー」と称される青を基調とした絵が印象的な青江鞠さん。太陽と月、島などをモチーフに、想像を広げた物語が、絵に宿っています。

青江さんは中学生の頃にはすでに画家をめざしていたそうです。夢を叶え、美大卒業後から画家として活躍。これまでの画家人生を「執着しかない」と振り返ります。

「執着」という言葉が表す意味とは一体、何なのでしょうか?
原点に立ち戻って
幼い頃からずっと絵を描き続けてこられたそうですね。
幼稚園にお絵描き教室があったので、それからずっと。その時に出会った先生の存在が大きかったんです。

パレットに絵の具を全部出して混ぜて自分で色をつくり出したり、先生がつくった物語を聞きながら想像を広げて描いたり、絵を描く楽しさを知りました。

いつしか自分の物語を描くようになって、次はこんな世界を描いてみようと、尽きることなく、どんどん広がっていったんです。

でも、中学生の時に美大をめざして美術研究所に入ったことが一つの転機になりました。

それまでは想像画を描いていたのが、急に鉛筆デッサン中心に。途端に「絵を描くのは楽しいだけではだめなんだ」「うまく描けなければならない」という意識が芽生え、だんだんと描くことにおもしろみを感じられなくなっていったんです。

美大に進学して現代美術を志し、画家の登竜門とされる展覧会で入選して道は拓けましたが、自分の気持ちが見えない。私が描きたいのは、本当にこれなんだろうか。

そんな時に思い出したのが、幼稚園のお絵描き教室のこと。あの時の楽しかった気持ちを取り戻そうと、想像を広げて絵を描くようになりました。
以前は銅版画を、現在は童画を。分野を変更したのには何か理由がありますか?
「もう一度、楽しい気持ちで」と表現方法を探している時に、銅版画と出会いました。

それから20年ほど銅版画家として仕事をしてきたのですが、シンナー系や塩化鉄溶液を使用するので、頭痛がしたり、手がかぶれたり。

受注が入ると、多い時で月100枚ほどを手作業で行なうこともあり、年々つらくなってきていたんです。

そんな時、百貨店から展覧会で、銅版画だけではなくて原画も展示してほしいとの依頼。数十年ぶりに絵を描き、そのまま童画家としてのスタートを切りました。

銅版画でも、童画でも、描いている世界は同じです。ただ銅版画は百貨店など契約している会社やお店が買い取ってくれるので定期的な収入があるのですが、絵画は展覧会だけ。展覧会で売れないと収入にはなりません。

来場者が来ない、絵が売れないなどあると落ち込みますし、何より展覧会の担当者から売上を確認されて、結果次第では今後その会場では展覧会できなくなる可能性もあります。シビアな世界だと感じました。
「執着」しかない
展覧会次第というシビアな世界に身を置く中で、「売れる絵」を意識することはありますか?
売れる絵しか描かない画家もいて、確かに売れているから「すごいなあ」と思います。一方で、ずっと自分のテーマに向かって描き続けている画家もいます。

私は後者で、自分の中にあるものを追求していこうと腹をくくっています。トータルで30年以上のキャリアがあるから言えることかもしれません。

絵を仕事にすることは人⽣の目標でしたが、自分の好きな絵だけを描いていては仕事になりません。

大学時代にイラストレーターのアルバイトをしていた時は「今流行りのあの人のタッチで」と言われて描いたこともあります。

銅版画家として作品を販売するようになってからも「この絵が売れ筋だから、もっとこういう絵を描いてほしい」とクライアントからの注⽂や売れることを優先に描かなければならない時代もありました。

そこから脱却できたのは、続けてきたから。「継続は⼒なり」とはまさに、その通りだと思います。

いつしか、私の絵が好きと言ってくれるファンがついてくれましたし、青江鞠オンリーの絵を注⽂してもらえるようにもなっていました。

また企業のカレンダーやポスターのプレゼンで、自分の絵で勝負したら、採用されたこともあります。

無理して、流行りに合わせたり、売れるものを追い求めたりしなくても認められるんだと自信がついて、腹をくくることができたんだと思います。

童画家に転身して収入面がしんどくなった時も、「自分に嘘をついて売れる絵を描こう」ではなくて、「他のアルバイトをしよう」という選択肢に自然になっていました(笑)。
自分の絵を描き続けてこられたのは、どうしてだと思いますか?
「執着」という一言に尽きると思います。流行りや売れる傾向を求められていた時代にも、仕事以外で個⼈的に自分が好きな絵をずっと描き続けてきました。

この絵を描いて、次はこんな絵を描きたい、もっといいものが描けるのではないか・・・毎日そんな気持ちなんです。

絵を描かない日が続くと、心の中の泉が枯れているような気持ちになります。

泉に水を注ぐために、山に登ったり、海外を旅したり、いろんなところに出かけるのですが、やっぱり行きつくのは自分の絵、描きたいという気持ち。

バラエティ番組を観ていても、ニュースを観ていても、いろんなところから想像が、物語が広がっていく。生きること、すべてとつながっているんです。

憧れだけでは続かない仕事だと思います。ひたすら描き続ける、発表するを繰り返し、ずっと続けていかなければなりません。

自分の絵をこよなく愛し、自分の絵に執着する・・・それをどこまでできるかではないでしょうか。
描きたいものを、そのまま描く
青江さんのテーマとして「自分に素直に描くこと」があります。それはどういうことなのでしょうか?
自分が描きたいと思う、頭の中にあるそのままを描く。

下手にこねくり回したりすると、訳のわからないものなるし、何を描いているんだろうとなるから、シンプルに描きたいものを絵に落とすことが一番大事。

自分に嘘をついている絵は、自分でも恥ずかしくなるし、描いている途中で居心地が悪くなってくるので、「これじゃない」とわかるんです。そんな時は潔く消すか、新しいものを描きます。

集中力がいるんです。周囲に誰かいたり、前後に予定があったりするのは絶対無理!3日前から挑む姿勢で、頭の中をからっぽにして集中して、コンディションを整えてから描き出します。

描くだけでクタクタ。起きて描いて寝て起きての繰り返しで、まるで耐久レースのように、自分の頭の中にあるものをひっぱり出して描くんです。
今後、実現したいことは何ですか?
2つあって、1つはニューヨークで展覧会を開催すること。もう1つは、10年前に書いた物語を、今年中には絵本にして、子どもたちに楽しんでもらうことです。

物語はすべて書き上げていたのですが、絵が追いついておらず、10年もずっと温めてきました。

それが、今年1月の個展で物語と絵の一部を発表したら、劇団を運営している方とコラボレーションすることになったんです。絵をプロジェクターで映し、朗読する会を開催することになりました。

私にとって子どもと関わることも喜びなんです。大学を卒業してから十数年ほど絵画教室を開いていて、今は地元・住吉のイベント『すみよし博覧会』で子ども向けのアートイベントを担当しています。

今後も子ども向けイベントを企画・実施して、私が幼稚園の時に教えてもらった絵を描く楽しさを伝えていきたいですね。
青江 鞠さん
童画家。1983年に京都精華大学洋画コース卒業。全国の百貨店等で展覧会を開催するほか、企業のポスターやカレンダー制作、介護施設や保育園等の絵画制作、オーダー注文も受け付ける。1989年以降は毎年、個展の開催や国内外の展覧会出品を続けている。大阪市住吉区のイベント『すみよし博覧会』において子ども向けのアートワークショップを担当するほか、実行委員として参画し、2年間は事務局長を務めた経験がある。2010年に住吉大社に絵画を奉納。2015年には株式会社ブライトファクトリーを設立した。京展入選や全関西美術展入選、童画芸術協会新人賞をはじめ、受賞歴多数。
株式会社ブライトファクトリー
HP: http://www.mari-bright.com/
FB: brightfactory1111/
(取材:2017年6月)
絵を仕事にすることは人⽣の目標でしたが、自分の好きな絵だけを描いていては仕事になりません」「クライアントからの注⽂や売れることを優先に描かなければならない時代もありました」。好きなことを仕事にすると、ぶつかる壁ではないでしょうか。それをどう乗り越えるかは人それぞれ。

青江さんは、仕事で求められる絵を描きながらも、個人的に自分の絵を描くことも大切にされていました。仕事が順調で忙しくなると、いつしか自分の世界観は置き去りになってしまうこともあるのではないでしょうか。

でも、青江さんは企業カレンダーなどプレゼンの機会では自分の絵で勝負されます。「続けること」「勝負すること」の繰り返しで、今があるのだと思いました。そんな青江さんだからこそ出てくる「執着」という言葉が、心に残っています。
小森 利絵
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』

■関西ウーマンインタビュー(美術・芸術編) 記事一覧

  • 「自分の絵をこよなく愛し執着する」「マリブルー」と称される青を基調とした絵が印象的な青江鞠さん。
  • 「日常の視座と違う視点を持って生きたい」見る側にさまざまな想起を投げかける風景画を描き続けている安喜さん
  • 「自分の生きてきた証として書を残していきたい」技術を高める鍛錬が自分の自信になると話すみゆきさん

 


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