書店員は見た!(森田めぐみ)
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![]() こんな本屋さんが実在するの? 書店員は見た!
本屋さんで起こる小さなドラマ 森田 めぐみ(著) 森田めぐみさんは本屋さんにお勤めされています。
森田さん一家は旦那様の転勤に伴い、石川県に引っ越されました。 下の娘さんが小学校に入学されたことで、森田さんのひとり時間は増えたものの、住み慣れない場所では、読書くらいしかすることがない…それにも飽きて立ち寄った書店併設のカフェで、偶然にもスタッフ募集のポスターを発見、応募されました。 その際、森田さんはカフェスタッフに応募したつもりでしたが、面接を受けてみると求められていたのは書店員。 まぁいいか、大好きな本を扱う仕事だし…とそのまま採用されたのでした。 そして、森田さんが勤務中に出会ったお客様とのエピソードが雑誌『サンキュ!』に連載されることになりました。 この本は雑誌『サンキュ!』2018年6月号から2023年1月号までの連載に加筆修正を加えたものです。 私はかつて、本屋さんで働きたいと思っていたことがありました。中学生くらいのときだったと思います。 それ以前、小学生の頃は新聞記者に憧れていました。 でも中学生になって、兄姉のいる同級生から、新聞社に入るには国立大学を卒業していないと難しいのではという噂を聞き、あっさり断念。 新聞記者を諦めた私は単純にも、本が好きだから次は本屋さんに勤めたいと思ったのでした。 お察しかと思いますが、私の頭の中では、レジ台の向こう側の椅子に座って日がな一日読書を楽しむ自分の姿がイメージされていたのです。 でもこれも同級生の「働いている時間に本を読むことはできないんじゃないの?」という指摘を受け、それもそうだなと目が覚めました。 加えて、現実派の別の友人には「本屋さんって力持ちでないと無理なんだよ。ぶっとい重たい本何冊も一度に持てる?持てないでしょ」と指摘され、完全にアウト!本屋さんの仕事は楽ではないのだ、と悟ったのでした。 いやはや我ながらなんという幼稚な発想の中学生だったことか。あのころの私にこの本を読ませてあげたいものですよ。 では、書店員さんの仕事とはどんなものでしょうか。 まずはレジ業務。書籍に立ち読み防止のラッピングがされている場合、それをはがして、ご希望によってはブックカバーを付けます。 時にはノベルティグッズなどを渡すこともあります。このあたりはきっとマニュアルがあり、手順などを覚えて対応しておられるんでしょうね。 でも、書店員さんの業務には、マニュアルどおりに行かないもの、そもそもマニュアルがないようなものがあります。 それはお客様の問い合わせ対応。『書店員は見た!』には、このあたりのエピソードが豊富に納められています。 まず「『◯◯』というタイトルの本はどこにありますか?」という基本的なお問い合わせですら一筋縄ではいきません。 冒頭の第1話に、とても面白いエピソードが紹介されています。 「ちょっと店員さん!『名を名乗れ』って本をさがしてるんだけど」
(森田めぐみさん『書店員は見た!』 P8より引用) お客様は70代後半かと思われる男性です。
森田さんは『名を名乗れ』というタイトルに聞き覚えがありません。 もしかして時代小説かな、と予測。 現代はコンピュータで在庫管理をしているので、さっそくパソコンでタイトルを検索してみました。 でもヒットしません。そんなタイトルの本はなさそうです。 おじいさんは著者名も、いつ頃出版されたのかもわからないのですって。 おそらくタイトルを覚え間違えたか、勘違いなさっているんでしょうねぇ。さあ、どうしたものか? あなたはおじいさんがお探しの本に見当がつきますか? 予測してから下の文章を読んでみてください。 全く見当がつかない森田さんの様子に、あきれたおじいさんはこう言いました。 「映画にもなった本だぞ。本当にないのか?孫に頼まれたのに!」
(森田めぐみさん『書店員は見た!』 P9より引用) 森田さんはこの言葉にピンと来て、正解にたどり着きました。
おわかりですか?ここに至っても、私にはまだわかりませんでした。 正解は『君の名は。』 おじいさんはお孫さんからのミッションコンプリートで上機嫌になったそうです。 それにしても、『君の名は。』が『名を名乗れ』に脳内変換されるとは。 意味は似ていなくもないけれど、ちょっと上から目線すぎます(笑)。 でも語呂(語数)はちゃんと合っていますね。 「き み の な は。」 「な を な の れ」。 他人事だと笑えるけれど、書店員さんって大変ですねぇ。 本好きでないと無理だわ。 このように、ピンポイントでお探しのお客さんばかりではありません。 恋人やこどもにプレゼントする本をお探しのかた。 料理や育児、病気に関する本など、ジャンルを指定して質問されるかた。 漠然とお勧め本を求めるかた。 十人十色なのです。 私が驚いたのは、森田さんが本を巡ってそれぞれのお客様とお話しする内に、お客様それぞれが抱える家族の問題や心の問題にまで触れる会話をされていること。 そして、書店を離れて、別の場所でそのお客様と出会っても、普通に会話しておられることにも驚きました。 私は、これまで本屋さんで店員さんとほとんど話をしたことがありません。 あるとしたら、最初に紹介したおじいさんのように、目的とする本が見つからず探しているときくらいです。ましてや、個人的な話をしたことがありません。 私だけではなく、本屋さんでお客様と店員さんが親しく会話しているのも見たことがないと思います。 もしかしたら、これは著者が書店員である、という設定の小説だったのだろうか? そうも思いましたが、あとがきをみると、やはり森田さんの実体験ベースのお話のよう。 こんな本屋さんが実在するのねぇ。 私自身は、本に限らず買い物のときにお店の人に話しかけられるのが苦手なので、森田さんのお店に本を買いに行っても、黙っていると思います。 でも森田さんが他のお客様とお話ししている内容を近くで実際に聞いてみたくなりましたよ。 この本には59のエピソードが収められています。 それぞれのエピソードの最後には、話題に関連する森田さんのお勧め本が2冊紹介されています。 そのどれもが読んでみたい本ばかり。私の「今後読みたい本リスト」が一気に増えました。 これから一冊一冊制覇するのが楽しみです。 ちなみに、中学時代の現実的な友人の言ったとおり、森田さんはお仕事で重たい本を何冊も扱うため、腰を痛めがちなんですって。 友よ、あなたは慧眼でした。 書店員は見た!
本屋さんで起こる小さなドラマ 森田 めぐみ(著) 大和書房 本屋ですが、よろず人生相談承ります!世界一話しかけられやすい(当社比)現役書店員が、100冊超の本をすすめまくる、笑えて泣けて、そして本屋さんに行きたくなる本!雑誌「サンキュ!」人気連載待望の書籍化! 出典:楽天 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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