恋歌(朝井まかて)
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朝井 まかて (著) ある方のお勧めで、浅井まかてさんの『恋歌(れんか)』を読みました。
主人公は歌人 中島歌子。 明治時代に私塾「萩の舎」を主宰して、上流・中流階級の子女に和歌と書を教えており、門下生には樋口一葉がいます。 小説は、門下生の一人である三宅花圃が、入院・死去した師匠宅を整理していて師の書き置きを見つけるところから展開していきます。 師は自分の半生を書き残していました。 江戸小石川にある宿屋「池田屋」の娘 登世(のちの歌子)は、厳しい母に躾けられながらも、のびのびと育っていた。池田屋は水戸藩士が多く利用しており、登世はその中の一人と運命の恋に落ちる。
結婚は親が決める、そんな時代にもかかわらず登世は想う人の妻になることができた。江戸から水戸に嫁いでみると、習慣や生きる規範など、あらゆることが江戸とは違い、戸惑うことも多い登世だった。 黒船来航、大老井伊直弼の暗殺、第十四代将軍の死去と、風雲急を告げている。これからどうすればいいのか、政治の舵をどう取ればいいのか、水戸藩の中でも大きく意見が対立している。登世の知らぬところで、夫もその波に飲まれていくのだった… 師・中島歌子が書き残したものを読まずにはいられない花圃。
それを読んでいる読者は、ほとんど花圃と同じ視点になっています。 ページをめくるのは自分の手なのだけど、それは花圃でもあるわけで、そこがまず面白いです。 次に、時代背景。 幕末を舞台に描いた小説はいろいろあります。 例えば司馬遼太郎さんで言えば『世に棲む日日』『燃えよ剣』『竜馬がゆく』で、それぞれ長州、会津(新撰組)、土佐がメインです。 どれも本当に面白かった。 私は司馬遼太郎さんが大好きだったし、新撰組が好きだったので、幕末といえば、薩長土肥、会津、あとは徳川家で、水戸藩のことはほとんど知らなかったのです。 そういえば、歴史の教科書で見た「天狗党の乱」がこれなのね? 水戸藩の内紛と、巻き込まれていく女性たち、そして明治の世になってすら続く因縁のすさまじいこと。 明治の人は強い、とはよく言われたことだけど、そりゃ強くもなるわねぇ、と思わずに入られませんでした。 一見甘やかなタイトル『恋歌』。 その奥に潜んだ、中島歌子の壮絶な想いに引きずられて、最後まで一気に読みました。 第150回直木賞受賞、むべなるかな。 恋歌
朝井 まかて (著) 講談社 (2015/10) 樋口一葉の師・中島歌子は、知られざる過去を抱えていた。幕末の江戸で商家の娘として育った歌子は、一途な恋を成就させ水戸の藩士に嫁ぐ。しかし、夫は尊王攘夷の急先鋒・天狗堂の志士。やがて内乱が勃発すると、歌子ら妻子も逆賊として投獄される。幕末から明治へと駆け抜けた歌人を描く、直木賞受賞作。 出典:amazon ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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