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希望病棟(垣谷美雨)

不思議な聴診器

希望病棟
垣谷 美雨(著)
ハズレのない作家さん 垣谷美雨さんの『希望病棟』を読み終えました。黒田摩周湖という風変わりな名前の女医さんとその患者さんのお話です。
女医の黒田摩周湖は、幼い頃から成績優秀だったが、コミュニケーション能力に問題があるのか、いつも「冷たい」「ひどいことを言う」「失礼だ」などと周囲から責められている。

この度も二人の末期がん患者を担当することになり、顔を合わせたところ、自覚せずに、医師として言ってはいけないことを言ってしまったようだ。

そんな時に、摩周湖は病院の中庭で、不思議な聴診器を拾った。その聴診器を患者の胸に当てると、患者の心の声が聞こえたり、回想が見えるのだ。

摩周湖が担当することになった末期がん患者の一人は児童養護施設で育った16歳の桜子。もう一人は代議士の妻貴子。

摩周湖は不思議な聴診器で二人の心の声を聞きながら治験を続ける。

まだ実験段階の遺伝子レベルのがん治療は幸いなことに二人には効果を発揮し、桜子も貴子も無事に退院していった。

一度、死と直面した桜子と貴子は、自分の生き方を真剣に考えるようになる。
(垣谷美雨さんの『希望病棟』の出だしを私なりにご紹介しました)
関西の人気ラジオパーソナリティに大津びわ子さんがいらっしゃいますが、摩周湖とはすごいですね。苗字が「霧野」だったら、完全にダジャレです。

摩周湖先生は、実はいい人なのだけれど、気持ちや状況を正確に伝えようとするあまり、うまく言葉を操ることができず、周囲に誤解されがち。それは見ていてかわいそうなぐらい。

ところが、不思議な聴診器のおかげで、相手の本心がわかるようになって、変わっていきます。

まだ高校生なのに末期がんを患うことになった桜子は、周囲に勧められるまま、一流進学校と呼ばれる高校に進学してしまったことを後悔していました。

なぜなら、高校卒業と同時に児童養護施設を出ていかねばならず、それまでに住む場所の確保や、経済的な自立の目処が立たなければ大学進学など全く夢物語。

しかし、進学校ゆえに「就職します」とも言えず、そのストレスで病気になったのではないかと疑うくらい、将来に希望が持てないでいました。

一方、代議士の妻の貴子は、代議士である夫のために尽くしてきたこれまでは、票欲しさのため、有権者を騙してきただけの日々だったと悟ります。

治験の成果があり、無事に元の生活に戻った桜子と貴子は、一度死に直面したことで、自分が本当にやりたいこと、自分らしく生きるにはどうしたらいいかを真剣に考え、実行していくように。

摩周湖先生がそのサポートができたのも、不思議な聴診器のおかげなのでした。

ファンタジーとも言える小説ですが、児童養護施設育ちの子供達が抱えている問題などを教えてもらえるリアルさもあり、読み応えがありました。垣谷美雨さんらしく、読後感もさわやかです。

ただ一つ、後悔していることがあります。それは、読む順番を間違ったこと。

この『希望病棟』には前編があり、どうやら不思議な聴診器も前作からの続きのよう。順番が逆になりましたが、これから『後悔病棟』を読もうと思います。

どちらもまだ読んでおられない方は、ぜひ『後悔病棟』『希望病棟』の順番に読んでくださいね。
希望病棟
垣谷 美雨(著)
小学館
神田川病院に赴任した女医の黒田摩周湖は、二人の末期癌の女性患者をみている。先輩のルミ子に促され、中庭で拾った聴診器を使うと患者の“心の声”が聞こえてきた。児童養護施設で育った桜子は、大人を信じていない。代議士の妻の貴子は、過去に子供を捨てたことがあるらしい。摩周湖の勧めで治験を受けた二人は快方に向かい、生き直すチャンスを得る。“従順な妻”として我慢を強いられてき 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

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『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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