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野良犬の値段(百田尚樹)

読後スッキリ!

野良犬の値段
百田 尚樹(著)
前代未聞の誘拐事件を描いた百田尚樹さんの小説『野良犬の値段』。

最後どうなるのか気になって、読みふけってしまいましたよ。ネタバレしないように注意してご紹介しますね。
インターネットに「誘拐サイト」なるものが立ち上げられたことが始まりだった。

通常、誘拐とは犯行も身代金要求も秘密裏に行われるもの。しかしこの犯人はネット上で犯行を表明した。多くの人が「誘拐サイト」にアクセスし、次の声明に注目することになる。

最初はいたずらではないかと思われていたが、犯人は人質の名前や顔、身代金の要求まで全てネット上で公開した。

人質の身元が特定され、しかも現在行方不明であることがわかり、この犯行はいたずらではないことがわかる。

人質は6人。全員中高年男性のホームレスだった。そして犯人は大手マスコミに身代金を要求した。

億を超える身代金要求に困惑する大手マスコミ。なぜ赤の他人の、しかもホームレスのためにお金を支払わねばならないのか?!しかし、犯人は支払わなければ人質を殺害するという。

日頃ヒューマニズムを謳いあげているマスコミにとって、自分たちの行動次第で人質の命がなくなるのは、本音はどうあれ、耐え難いこと。しかし身代金を渡すことは、犯罪を助長することでもある。身代金を要求されたマスコミは二律背反に苦しむ。
(百田尚樹さん『野良犬の値段』の出だしを私なりに紹介しました)
犯人の狙いは?
身代金は支払われるのか?
警察は犯人を逮捕できるのか?

本当に面白いです。

誘拐事件という縦軸に、報道の偏向、ネット社会の功罪が絡められ、現代の社会問題が浮き彫りになっています。

そして人気テレビ番組制作に長く携わってこられた百田尚樹さんだけに、身代金要求に揺れるマスコミ内部の描写がとてもリアル。

きっと本当にこんな感じなのだろうなぁと想像できます。

もしかしたら登場人物にもモデルがいるのかも。

少なくとも、身代金を要求された報道機関の一つ、某放送局の経営委員の一人である八田尚義という人物は百田尚樹さんご本人ではないかと思いました。

それにしても、卑劣な犯罪である誘拐事件を扱っていながら読後感がこれほど良い小説は、なかなかありません。

天藤真さんの『大誘拐』以来かな。

あ、『大誘拐』をご存知の方には大きなヒントになってしまったかも!

ただ結末がきれいごとにすぎる気がしなくもないけれど、それは、口は悪いが心が優しい百田さんの特徴かと。
野良犬の値段
百田 尚樹(著)
幻冬舎
突如としてネット上に現れた、謎の「誘拐サイト」。“私たちが誘拐したのは以下の人物です”という文言とともにサイトで公開されたのは、6人のみすぼらしい男たちの名前と顔写真だった。果たしてこれは事件なのかイタズラなのか。そして写真の男たちは何者なのか。半信半疑の警察、メディア、ネット住民たちを尻目に、「誘拐サイト」は“驚くべき相手”に身代金を要求するー。日本全体を巻き込む、かつてない「劇場型犯罪」が幕を開ける! 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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