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四十歳、未婚出産(垣谷美雨)

あっという間に読了

四十歳、未婚出産
垣谷美雨(著)
転職、結婚、嫁姑問題、老後の備え…

人生の難問に取り組む女性を生き生き描く作家 垣谷美雨さん。

今回読んだのは、未婚のまま出産するかどうか悩む女性が主人公の小説です。

しかもその女性は四十歳。初めての妊娠ですって。

どんな事情なのか、知りたくないですか?
宮村優子、今年の冬で四十歳になる。

大卒で都内の旅行代理店に就職し、国内外の旅行パックを企画してきた。当たった企画もいくつかあり、会社からある程度評価されているし、部下もいる。気がつけば17年間働いて来たことになる。20代の頃に不倫にはまり、婚期を逸してしまった。今恋人はいないし、この先いい人が現れる予感もない。

そんな優子が妊娠してしまった。心当たりは一つしかない。海外旅行の下見で行った南の国で、ふとした出来こごろというか、成り行きの結果だ。

お腹の子どもの父親は「おめでた婚」に持ち込める相手ではない。結婚どころか「あなたの子どもよ」と言える気もしない。だったら堕すべきなのだろうか。しかしこの機会を逃したら、おそらく一生子どもを産むチャンスはないだろう。未婚で出産して働き続けられるだろうか?悩んでいる間にもお腹の子どもは成長していく。
(垣谷美雨さん『四十歳、未婚出産』の出だしを私なりに紹介しました)
私は子どもに恵まれませんでした。

ですから、冒頭で優子の妊娠がわかったときに「産めるうちに産んだほうがいいよねぇ」と思いました。

もちろん、私は現在、夫との二人暮らしに満足していますが、もし子どもがいたなら、また別の喜びを得られたであろうことも想像できるからです。

しかし高齢出産で、いきなりのシングルマザーとなると、今後のことが心配になるのもわかります。結婚しても働き続けられるかどうかわかりません。

そしてもう一つの悩みは実家にどう知らせるか。

優子は三人兄弟の末っ子。姉も兄も結婚して東京に住んでおり、父が亡くなってから田舎の実家には母が一人暮らしをしているんですね。その田舎というのは、おそらく兵庫県の北部だと思うのですが、他人の家の事情があっという間に広がるような昔ながらの「田舎」。

もし優子が未婚のまま出産なんてことになったら、もう田舎には帰れないことになるかも。

とにかく問題が山積み。

しかも問題の一つ一つが現実味に満ちているため、小説の中の出来事というよりも、実際に知っている人か、親戚の誰かの悩みのように思えてきて、先が気になって仕方がなくなり、半分徹夜で読み切りました。とてもじゃないけど、途中で読むのをやめられなかったのですよ。

問題を抱えているのが優子だけではないのも現実的。

人間生きていれば悩みがつきものであるように、子どもの受験や、国際結婚、不妊治療など、登場人物それぞれに悩みがあります。

読者として優子や周囲の人たちの人生を眺めながら、最後は笑いと元気をもらえる小説でした。こんな解決方法があるのか?!と。

男性がこの小説を読んだらどう感じるのかはわかりませんが、多分、女性ならほとんどの方が面白く読めるのではないかと思います。
四十歳、未婚出産
垣谷美雨(著)
幻冬舎文庫
四十歳目前での思わぬ妊娠に揺れる旅行代理店勤務の優子。これが子供を産む最初で最後のチャンスだけど…。お腹の子の父親であるイケメン部下、偏見のある田舎の母親、パワハラ上司、不妊治療に悩む同期、誰にも相談できない。シングルマザーでやっていけるのか?仕事は?悩む優子だったが、少しずつ味方が現れて気持ちは固まっていく。 出典:楽天
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池田 千波留
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コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

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『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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