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後妻業(黒川博行)

後妻業
黒川博行(著)
出版社: 文藝春秋(2016)【内容情報】(「BOOK」データベースより)91歳の耕造は妻に先立たれ、69歳の小夜子を後妻に迎えていた。ある日耕造が倒れ、小夜子は結婚相談所の柏木と結託して早々に耕造の預金を引き出す。さらに公正証書遺言を盾に、遺産のほぼすべてを相続すると耕造の娘たちに宣言したー。高齢の資産家男性を狙う“後妻業”を描き、世間を震撼させた超問題作。(出典:楽天
今上映中の映画『後妻業の女』。
大竹しのぶが、ちょいと下品で
傍若無人なオバさんを怪演していると噂の映画です。

その原作は黒川博行さんの『後妻業』。
この小説は意外なところで話題になりました。

2013年の12月に、当時75際の男性が死亡。
遺体からは青酸化合物が検出され、捜査の結果、
事件直前に結婚していた妻の
筧千佐子容疑者(当時67歳)が逮捕されたのです。

この千佐子容疑者、正式な結婚は4回。
いずれも入籍後半年ほどで夫は死去しています。
調べが進むにつれて驚愕の事実が。
千佐子容疑者と「婚約」したあと急死した男性も数人。
合計7人もの男性が、千佐子容疑者と結婚(婚約)して
ほどなく死亡している…。

しかも、結婚している場合はもちろん、
婚約だけの相手からも正式な遺言状をとり、
それを盾に遺産や保険金をいただいているということ。
これって本当に偶然ですか?

関西で起こった事件ということもあり、
私は連日のようにワイドショーの報道を目にしました。
その際「この事件にそっくりな小説があります」と
紹介されたのが黒川博行さんの『後妻業』だったというわけ。

『後妻業』は、千佐子容疑者の事件が報道される1年前には
連載を終了していますから、
黒川さんはこの事件をヒントに小説を書いたわけではありません。

***
『後妻業』の主人公は小夜子。
老い先短い老人、しかも資産家の老人を狙って結婚。
たとえ結婚はしなくても、
付き合った早々には公正証書を作成し、
遺産が転がり込むように仕組んでいる。

しかしそんな都合のいい男性をどうやってみつけるのか?
小夜子は大阪でいくつも支店を持つ結婚相談所に登録していた。
それだけではない。
結婚相談所の所長 柏木と組んで、
再婚を希望する資産家老人を回してもらっていたのだ。
得た遺産を折半するという条件で。
そう、これはもうビジネス、生業ですよ。
後妻業です。

父親の葬儀が終わるやいなや、
内縁の妻だった小夜子から、
公正証書遺言を見せられた二人の娘。
どうにも納得できず、弁護士に相談した。
依頼を受けて調査を請け負った興信所の探偵 本多。

彼は元大阪府警マル暴(暴力団)担当刑事で、
つてを頼って、核心に迫っていく。
後妻業の小夜子と、結婚相談所の所長 柏木、
追い詰める本多。
いったいどんな結末が?!
***

やっぱり黒川博行さんの作品ははずれがありません。
登場人物のキャラクターが鮮明で、
本当に実在しているのではと思わせてくれます。

しかも、八尾、河内長野、箕面などなど、
「ああ、あそこね」と思う場所で話が展開していくので、
関西在住やゆかりのある人には、たまりません。

また、後妻業を成功させる3つのポイントや、
警察が事件として取り扱わないのは何故かなどもきっちり説明されていて、
思わず「へぇ〜、なるほどねぇ」と唸ってしまいました。
でも良い子は絶対真似してはいけませんぞ。

映画『後妻業の女』の予告編はコミカルな感じですが、
小説『後妻業』は非常にブラック。
(解説では「ノワール」と表現)

私が個人的に肩を持ちたくなった登場人物も、
哀れな結末で、読み終わった後、
「ああ、面白かった」という充実感と、
「ああ、怖。やっぱり真面目に生きなアカン」という
複雑な気持ちになりました。

私は、本屋さんの店頭でなんども『後妻業』を手にして、
買おうかどうしようか迷っていました。
表紙が怖すぎて、読む勇気が湧かなかったんです。
読みながらも、どうしてこんな表紙なんだろうと
ずっと思っていたのですが、
読み終わると、この表紙がぴったりだったなと、
納得しました。

余談になりますが、
映画のキャストは、
小夜子:大竹しのぶ
結婚相談所所長 柏木:豊川悦司
元刑事の探偵 本多:永瀬正敏
ですってね。

私はまだ映画を見ていませんけど、
来年の日本アカデミー賞の助演男優賞は
映画『64(ロクヨン)』と『後妻業の女』の
永瀬正敏に決まりだなと思いました。
それくらい本多は重要な役です。

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BLOG ⇒PROページ

著書:パーソナリティ千波留の読書ダイアリー
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。
だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。

「千波留の本棚」50冊を機に出版された千波留さんの本。
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