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置かれた場所で咲きなさい(渡辺和子)



 
置かれた場所で咲きなさい
渡辺和子(著)
出版社:幻冬舎(2012)【内容情報】(「BOOK」データベースより)第1章 自分自身に語りかける(人はどんな場所でも幸せを見つけることができる/一生懸命はよいことだが、休息も必要 ほか)/第2章 明日に向かって生きる(人に恥じない生き方は心を輝かせる/親の価値観が子どもの価値観を作る ほか)/第3章 美しく老いる(いぶし銀の輝きを得る/歳を重ねてこそ学べること ほか)/第4章 愛するということ(あなたは大切な人/九年間に一生分の愛を注いでくれた父 ほか)(出典:楽天ブックス
私は「本」との出会いは、一種の流れの中にあると思っています。
ベストセラーとして、本屋さんに平積みされていても、
なんとなく手に取る気持ちにならずに前を通り過ぎるのは、
まだその本を読むタイミングではないのでしょう。
逆に、ひっそりと書棚の隅にあったタイトルに
どうしようもなく惹かれるのは、その本に呼ばれたから。

名著であると、絶賛されていて、
いつかは読みたいと思っていた『置かれた場所で咲きなさい』。

初版は2012年4月25日。
3年以上経って、ようやく読むタイミングが巡ってきました。

きっかけは一枚の写真です。



この写真は、高校の同級生が今年6月末にSNSに掲載したもの。
今回許可をもらって転載しました。

ラベンダーが咲いている場所は、友人の隣家の雨樋です。
友人がこのラベンダーに気がついたのは、8年ほど前のこと。
当然のことながら、水はお天気まかせだし肥料は皆無なのに、
毎年花を咲かせてくれるのだそう。

でもやはり、栄養がたりないのでしょうか、
毎年色が褪せてきているそうですが、
それでも そよそよと風に揺れる様子が、
なんとも心を和ませる…という友人のコメントを読んで
ピーン!!と閃きました。

これは『置かれた場所で咲きなさい』そのものやん!
ついにあの本を読むべき時が来たのだ!と。

前置きが長くなりました。
エッセイ集『置かれた場所で咲きなさい』の著者は、
ノートルダム清心学園理事長の渡辺和子さん。

30歳間際に修道院に入ることを決意し、
アメリカでの修練を経て、36歳の若さで三代目の学長に任命されています。
1927年生まれの著者がこの本を書いたのは80代半ばのことで、
「人生山あり谷あり」なんていう言葉が陳腐に思えるほど、
さまざまな経験をなさったあとでした。

そんな方から発せられる人生訓なのに、
一つ一つの言葉は柔らかく優しく、まったく重たくありません。

たとえば、タイトルの「置かれた場所で咲きなさい」は
人間はどんな場所でも幸せを見つけることができるし、
そこで咲くことは諦めとは違うということが、
誰にでもわかることばで書かれています。

どのページ、どの言葉も全て素晴らしかったけれど、
特に心に残ったエピソードをあと3つだけご紹介します。

1つめ。
来日したマザー・テレサに感動した学生たちが
奉仕団を結成してカルカッタに行きたいと願い出た時のマザーのお答え。
マザー・テレサは学生たちの思いに感謝しつつも、
カルカッタに行くことよりも、
自分たちの身近にある「カルカッタ」を見つけて、
そこで尽力することが大切ですよ、という内容の言葉を残されたそうです。

2つめは、年令を重ねることについて。

ダイレクトに言えば、老いることについて語った文章です。
若い時にできていたことが、できなくなる。
それをなげくばかりではなく、
失ったものの代わりに何か別のものを得ていることに気付きましょう。

それに、人間はだれもが、あした今日より若くなるなんてありえない。
今日が自分の一番若い日として輝こうとすることが、
老人に与えられた一つのチャレンジだ、という内容でした。

私は以前、箕面市のシニア劇団「すずしろ」の舞台『このゆびとまれ』を見た時、
「今日が最初の日。
毎日が残りの人生の最初の日。
人生に遅すぎるってことはないの」
というセリフに感動して、客席で震えたことがありました。
それとほぼ同じことをおっしゃっているのだと思います。

心に残ったことの3つめは
「どんなに親しい相手でも100%信頼してはいけない。98%にしておきなさい」
ということ。

では残りの2%はなんなのか。
それは「不信」ではなく「許し」なんだそうです。

相手を完璧に信頼するからこそ、相手に間違いがあった時に
腹が立ったり裏切られた気分がする、
だからこそ、相手を許せる余地を最初から持っておきなさいとおっしゃるのですね。

私はAll or Nothingなところがあって(早い話が心が狭い)、
ご指摘の通り「裏切られた〜!こんな人とは思わなかった!」という感情を
これまで何度も味わってきました。

そうか、いくら信頼できる人であっても、
人間であれば失敗はある。
それを思っての98%の信頼なのだなぁ、
これは私への戒めと受け取ります。
それに、自分だっていつも許してもらっているんですものね。

いま上げたのは ほんの一例で、
最初から最後まで、心にしみる言葉の数々でした。

著者、渡辺和子さんは9歳の時に、お父様を亡くされています。
ご自分のほとんど目の前で。

歴史で習った事件の当事者でいらっしゃったのです。
お父様とお母様について書かれた章は、
胸が締め付けられました。

そして、このような体験をなさったかたの言葉かと思うと、
たんなる「良いことをおっしゃいますなぁ」という一般論に終わらない
説得力を感じるのでした。

一読した後、もう一度最初からかみしめたくなる本でした。
ぜひ、ぜひお読みください。
お勧め度は★★★★★
です。

ところで、渡辺和子さんが育たれた家庭環境について。
お父様がたどる運命は特殊ですが、
そこに至るまでの家族像は、
良い意味で、戦前の日本のあちこちに見られた姿ではないかと推測します。
表面的なものは変わっているでしょうが、
現代でも親から子にこんなふうに伝えられるものがあり続けていますように。

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BLOG ⇒PROページ

著書:パーソナリティ千波留の読書ダイアリー
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。
だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。

「千波留の本棚」50冊を機に出版された千波留さんの本。
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