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遠い唇(北村薫 )

日常に埋もれてしまってもおかしくない謎

遠い唇
北村薫 (著)
北村薫さんの短編集『遠い唇』。珍しく巻末には著者ご自身の解説が添えられていました。この短編集は謎と解明の物語を中心にまとめたものだそうです。

とはいえ「真犯人は君だ!」といった種類の謎解きではありません。日常に埋もれてしまってもおかしくない謎の解明です。

収録された短編のタイトルを紹介しましょう。
『遠い唇』
『しりとり』
『パトラッシュ』
『解釈』
『続・二銭銅貨』
『ゴースト』
『ビスケット』
(北村薫さん 短編集『遠い唇』の目次から引用)
タイトルにもなっている『遠い唇』。
初老の大学教授 寺脇は、ひょんなことから大学時代のサークルで一年先輩だった女性を思い出した。

大学時代の品物をしまっておいた箱を開けてみると、彼女から届いたハガキが出てきた。

それは追い出しコンパの案内状で、ハガキの縁にアルファベットがランダムに並べられていた。

当時彼女からは、ただのいたずら書きだと説明されたのだったが、眺めているうちにそれが暗号であることに気がついた。

もう半世紀以上前の暗号から明らかになった文章は……。
(北村薫さん『遠い唇』を私なりに紹介しました)
暗号が読み解かれて出てきた文章を見て、ああ、とため息をつきそうになりました。

もし、そのハガキをもらってすぐに暗号が解けていたら、寺脇氏と先輩はどうなっていたのか。

暗号はともかく、誰の人生にもありそうな、切ない「もし」です。

タイトルから中身が想像できなかったのは『パトラッシュ』。
美術館の広報担当の「わたし」は現在同棲中。彼は、企画展の時に絵を運んできた業者の一人だ。

やりがいのある仕事をしている自負はあるが、期限付きの契約社員であり、契約が延長されるかどうかはわからない。

大きな企画展の時には残業があるし、マスコミ向け内覧会の記者会見を行ったりもする。

とにかくストレスが大きく、疲れ果てることも多い。そんな「わたし」は、彼が待つ部屋に帰るとホッとする。そんな相手なのだ。

ところが、ある日帰宅してみて違和感を覚えた。もしかしたら誰か女性を連れ込んでいたのかもしれない?!

湧き上がる疑惑を否定したくて、その違和感の理由を考えた「わたし」。その推理は当たっているのか?彼は浮気をしたのか?
(北村薫さんの『パトラッシュ』を私なりに紹介しました。)
「なんだ、そんなことか」と笑える結末で良かったです。

そして、タイトル「パトラッシュ」の意味は、ぜひ実際に読んでみてください。

どの短編もスラスラ読めますが、『続・二銭銅貨』は江戸川乱歩さんの作品をご存知のほうが面白いと思います。

また『ゴースト』『ビスケット』はそれぞれ同じく北村薫さんの『八月の六日間』、『冬のオペラ』の登場人物が関係してきます。

未読でも支障はありませんが、読んでおられると、より面白いと思います。
遠い唇
北村薫 (著)
角川文庫
小さな謎は大切なことへの道しるべ。解いてみると一筋縄ではいかない人の心が照らし出される。学生時代に届いた想い出の葉書には、姉のように慕っていた先輩が遺した謎めいたアルファベットの羅列があった。数十年の時を経て読み解かれたとき、現れたものとはー。表題作のほか、宇宙人たちが日本の名著を読むユーモア作「解釈」、乱歩へのオマージュ「続・二銭銅貨」など、ミステリの名手が贈るバラエティに富んだ謎解き7篇。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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