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サブキャラたちの日本昔話(斎藤洋)

日本昔話の三人の「太郎」について語る。

サブキャラたちの日本昔話
斉藤洋(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、斎藤洋さんの『サブキャラたちの日本昔話』です。

日本昔話の主人公たちが登場する某携帯電話会社のCMがあります。

男性の登場人物は桃太郎、金太郎、浦島太郎。日本人で彼らを知らないという人はほとんどいないと思います。それくらい「三太郎」は有名な登場人物です。

『サブキャラたちの日本昔話』では、その三人の「太郎」について、それぞれのサブキャラ、つまり脇役が語ります。

浦島太郎について語るのは、亀の玄武。

浦島太郎を背中に乗せて竜宮城へ連れて行った、あの亀に立派な名前があったとは。しかも彼の地位は竜宮国右大将なんですって。

玄武が語る『浦島太郎』の物語は、通常の日本昔話とは随分趣が違います。

そもそも浦島太郎という名前は仮の名前。

彼は主人の敵討ちのため、漁師に身をやつし、浜辺に仇が通りかかるのを待ち続けていたんですって。

彼の主人というのはどうやら平敦盛。

一の谷の合戦で熊谷次郎直実に討ち取られ、16歳で亡くなった武将です。

そして、玄武の話を聞いていると、浦島太郎が玉手箱を開けておじいさんになった経緯も、今まで知っていた昔話とは全然違います。

玄武の言っていることが全て本当だとしたら、『浦島太郎』は、とても気高い物語なんです。

はー、知らんかったなぁ。

『桃太郎』について語るのは、イヌの源三郎。

きびだんごをもらって、桃太郎の家来になり、鬼ヶ島にもお供をする犬です。

『金太郎』について語るのは、クマの金太郎。

のちに坂田金時となる金太郎と相撲を取っていたあのクマです。

なぜクマの名前も金太郎なのかは、実際に読んでみてください。

この物語が面白いのは、著者である斉藤洋さんが、カメ、イヌ、クマそれぞれにインタビューをして、聞いた通りに書き取ったものだという前提にしていること。

つまりルポルタージュ(報道)という前置きがあるので、カメ、イヌ、クマが意図的に嘘をついているのでない限り、書かれていることが真実なのだということになります。

『浦島太郎』、『桃太郎』、『金太郎』全て、意外な「真実」が解き明かされ、読み応えがありました。

私はこの本に描かれた浦島太郎には感動してしまいました。

金太郎も以前より好きになりました。

ですが、桃太郎にちょっと厳しいのは作者のお好みでしょうか。

実は私も『桃太郎』という話自体が、以前からどうも好きになれないでいました。

だって、鬼たちは鬼ヶ島で自分たちなりに平和に暮らしていただけのに、いきなりズカズカ踏み込んで来た桃太郎にやっつけられた上、金銀財宝を強奪されてしまうのですよ。

桃太郎の方がよっぽどオニですやん?!

きっと著者の斉藤さんもそう思っていらっしゃるのでしょう。イヌの源三郎の口を借りて、割と厳しいことを書いておられます。

この本は児童書なのだけど、子どもさんだけが読むのはもったいないです。大人にもおおいにお勧めします。
サブキャラたちの日本昔話
斉藤洋(著)
偕成社
浦島太郎のカメ、桃太郎のイヌ、金太郎のクマ。脇役たちが話してくれた、もうひとつの昔話!小学校高学年から。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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