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流星シネマ(吉田篤弘)

この街に行ってみたい

流星シネマ
吉田篤弘(著)
吉田篤弘さんの小説『流星シネマ』を読みました。
200年前、鯨が川をさかのぼって来たという伝説を持つ街に住んでいる太郎は30歳。ミニコミ誌「流星新聞」の記者をしている。

「流星新聞」を立ち上げたのはアメリカ人のアルフレッドさん。太郎が子どもの頃、すでに「流星新聞」はあった。

流星新聞の編集室にはピアノと大きな本棚があり、誰でもピアノを弾いていいし、いつでも本を読みに来て良い。だから新聞に関係がない人が時々編集室にやってくる。

ある時、アルフレッドの両親の具合が悪くなった。アルフレッドは家業を手伝うため、流星新聞と愛犬モカを太郎に任せアメリカへと帰って行った……。 (吉田篤弘さんの『流星シネマ』の出だしを私なりに紹介しました)
私は最初、この小説をなかなか読み進められずにいました。

というのも、なんということはない日常生活の中に、言葉や音や時間などに関する考察が所々に出て来て、なにやら哲学的な感じがしたからです。小難しい小説なのかもしれないと思ったわけです。

ところが、太郎の子どもの頃の話が出て来てからは、ぐっと引き込まれていきました。

それまで、小難しいと感じたものが、自分ごとに感じられて来たのです。例えば、記憶と忘却に関するこの部分。
それで、人は進化の過程において、「忘却」を身につけた。快く前へ進むためにだ。ゴミの仕分けをするように、人の頭の中は絶えず「記憶にとどめるべきもの」と「記憶にとどめるべきではないもの」とに仕分けされる。(中略)

ただ、人生には、もう少し複雑な記憶があり、出来れば、忘れてしまいたいけれど、決して、忘れてはならない記憶というものがある。
(吉田篤弘さん『流星シネマ』P115〜116より引用)
わかる気がしませんか?

忘れてしまった方が楽になるのに、どうしても忘れられない出来事や、苦しくても忘れてはならない出来事が、誰にでもあるのではないでしょうか。

そんなことを考えながら読むと、後半はあっという間でした。

ストーリー以外に、私はこの街のお店に惹かれました。例えば、深夜営業の「オキナワステーキ」。

文字通りステーキのお店なのですが、店主は太郎の幼馴染ゴーくん。沖縄で深夜営業の喫茶店をしていたゴーくんのお父さん。

沖縄では飲んだ後、シメのラーメンならぬ、シメのステーキが定番なのだとか。

そして転居後、開業したのが「オキナワステーキ」。

ゴーくんの代になると、街の人口減少に伴いお客さんが減ってしまったけれど、頑張って深夜営業を続けています。

夜更にもステーキが食べられるんですよ。

シメのステーキ、一度経験してみたい。

100gから注文できるっていうのが嬉しいではないですか。

この街にはもう一つ「バイカル」という不思議なお店があります。

「バイカル」の人気メニューはバイカルカレーとロシアンコーヒー。

ここのカレーはクセになるそうだけど、私はバイカルカレーなんて聞いたことがありません。

どんなカレーなんでしょう?

また、ロシアンティーなら知っているし、飲んだこともあるけれど、ロシアンコーヒーは知りません。

ああ、食べてみたい、飲んでみたい。

ということで、小説なのに、太郎くんの住む街に行ってみたくてたまらなくなりました。

ちなみにタイトル「流星シネマ」の意味は最後にわかります。頭の中に映像が浮かんできました。
流星シネマ
吉田篤弘(著)
角川春樹事務所
都会のへりの窪んだところにあるガケ下の町。僕はその町で、“流星新聞”を発行するアルフレッドの手伝をしている。深夜営業の“オキナワ・ステーキ”を営むゴー君、メアリー・ポピンズをこよなく愛するミユキさん、「ねむりうた」の歌い手にしてピアノ弾きのバジ君、ロシアン・コーヒーとカレーが名物の喫茶店“バイカル”を営む椋本さん、ガケ上の洋館で、“ひともしどき”という名の詩集屋を営むカナさんー。個性的で魅力的な人々が織りなす、静かであたたかな物語。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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